SMBCが推進する「シャカカチBOON BOON PROJECT」の一期生である北海道教育大学 旭川校 陸上競技部。応募当初から「ただ強くなるだけではなく、地域のためになることをしたい」という地域への想いが、具体的なイベントとして形になりました。

2025年11月、地元の小中学生を同校に招き、陸上体験イベント「ミライ・フェスティバル 2025(以下ミライ・フェスティバル)」を初開催。プロジェクトの支援金で整備した陸上競技用スパイク対応のゴムチップを敷設したトラックも活用し、さまざまなイベントを行いました。

学生たちがつくり上げた“地域とつながる新しい挑戦”の一日をレポートします。

採択団体

北海道教育大学
旭川校 陸上競技部

応募
内容
●春秋季のトラック整備 ゴムチップを使用して陸上用スパイク対応に。
●夜間練習の安全性向上 充電式LED照明を導入し、夕方以降の練習を可能に。
●冬季トレーニングの充実 自転車エルゴメーターなどを導入し、
冬季の環境を改善・整備。
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コンセプトは
「何度も挑戦! 失敗は友達!
夢中になれる体験を」

「ミライ・フェスティバル」の会場となったのは、北海道教育大学旭川校の体育館とグラウンド。企画から当日の運営までを担ったのは、陸上競技部の学生たちです。地域の小学生に陸上競技の魅力を伝えようと、およそ半年をかけてゼロから準備を進めてきました。

当日は旭川市内や近郊から約120名の小学生が参加。50m走やハードル走、走り幅跳び、砲丸投げ、ジャベリックスローなどの陸上体験ラリーに加え、最後にはチームで力を合わせるリレーも実施。SMBC「シャカカチBOON BOON PROJECT」のプロジェクト・パートナーである為末大さんも来場し、学生たちの初挑戦を温かく見守りました。

ミライ・フェスティバル 2025

開催日
2025年11月2日(日)
場所
北海道教育大学旭川校 体育館、グラウンド
参加者
地元小学生 約120名
内容
陸上体験ラリー(50m走、砲丸投げ、走り幅跳び、ハードル走、ジャベリックスロー)・リレーなど

ゼロから形にした、
半年間の「ミライ」づくり

イベントの準備が本格的に動き出したのは、2025年の5月ごろ。陸上競技部キャプテンの二階堂翔生(しょうま)さんが実行委員長となり、実行委員として部員8名に声をかけてイベントチームを立ち上げました。実はこのイベント、2024年8月のシャカカチBOON BOON PROJECT応募時に、社会貢献活動として二階堂さんが計画していたもの。「このイベントを、部員一人ひとりの成長の場にしたい」という二階堂さんの思いから、あえて責任の伴うポジションを用意し、事務、会計、運営などの役割を分担していきました。

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実行委員長を務める陸上部キャプテンの二階堂さん。
準備段階から当日まで実行委員をけん引した

しかし、授業や日々の練習と並行しながらの準備は簡単ではなかったようです。事務部長を務めた古田太心(ふるた・たいしん)さんは「初めてのことばかりでしたし、僕ら3年生は、教育実習後に本番を迎えるスケジュールだったので準備は大変でした。でも、結果的にものすごく良い経験になった」と振り返ります。空き時間を見つけては打ち合わせを重ね、台本づくりや部員の配置、進行の段取りなど、話し合いを重ねました。

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困難な場面もあったが、みんなで知恵を出し合って
乗り越えてきたと話す古田さん

準備の過程では、為末さんもオンラインミーティングに参加。「最初の資料では、陸上競技を少し変化させたような内容を企画されていて、少し複雑と感じました」と為末さん。「そこから内容を磨いていき、まずは“陸上のど真ん中”の楽しさを体験してもらう形に整理してくれた。役割分担もはっきりしていて、最終的には『よくここまで作り替えたな』と感じました」と、学生たちの軌道修正力を評価します。

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企画段階からアドバイザーとして参加していた為末さん

会計担当の蝦子力翔(えびこ・りきと)さんは、参加費や協賛金を踏まえた収支計画にも挑戦。参加者数が思うように伸びず、赤字試算が出たこともありましたが、そのたびに「何を削ってもいいのか」「逆に何は絶対に削ってはいけないのか」を議論し、保険料や景品、備品などの予算を一つひとつ洗い出していきました。

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イベント運営に欠かせない会計担当に挑戦した、
3年生の蝦子さん

為末さんから「スポンサーを募る」アイデアをもらったことから、地元企業やお店への協賛依頼にも足を運び、地域を巻き込みながら協力の輪を広げたといいます。

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為末さんのアドバイスで、地元企業へ協賛依頼。
当日は壁面に協賛企業の広告を掲出

ほかにも地域の小学校・企業への広報など学生たちにとっては初めてづくしのタスクばかり。それでも「1人で抱え込まず、仲間や大人に頼ることの大切さを学べた」「社会のルールや仕組みも知ることができた」とさまざまな学びや発見があったといいます。イベントづくりのプロセスそのものが、教員を目指す彼らにとって大きな“社会経験の授業”となりました。

雨や寒さにも負けない、
笑顔と熱気にあふれる一日

ついに迎えた「ミライ・フェスティバル」当日は、あいにくの雨模様。リハーサル段階では屋外での開催を想定していましたが、急きょ体育館を中心としたプログラムに切り替える判断に。開会式では、実行委員長の二階堂さんが「昨年、陸上部は創立100周年を迎えました。地元の子どもたちに陸上の楽しさを知ってほしい、そして未来につながる場をつくりたい。そんな願いを込めて『ミライ・フェスティバル』と名付けました。今日ここから未来の選手が生まれたら嬉しいです」と呼びかけ、参加者を出迎えました。

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「このイベントが皆さんの“未来”につながるきっかけになれば」
と、開会式で話す二階堂さん

続いて登場したのは、プロジェクト・パートナーの為末大さん。子どもたちと一緒に身体を動かしながらウォーミングアップを行い、クイズ形式で自身の経歴や陸上競技の魅力を紹介しました。

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為末さんの登場により、会場は子どもたちの笑い声と
拍手に包まれ、一気にリラックスした雰囲気に。

陸上体験は、体育館内でのジャベリックスローからスタートしました。その後、屋外に移動し50m走、ハードル走、走り幅跳び、砲丸投げをラリー形式で体験。学生たちがスタートの姿勢や走り方の手本を見せたり、砲丸投げの方法や踏み切りのポイントを伝えたりしました。

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プロジェクトの支援で整備したゴムチップトラックを使い、
50m走のスタート方法を教える学生

体験した子どもたちからは「学校よりも早く走れた!」「ちゃんとハードルが跳べた!」といった声が次々と上がりました。

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学生たちは計測を担当するかたわら、子どもと一緒に体験に
参加し、種目の楽しさも共有

プログラムを通じて、陸上の楽しさに触れた子どもたち。閉会式の「今後、陸上をやってみたい人?」という司会の問いかけには、多くの子どもたちが手を挙げ、大盛況のうちにイベントは終了しました。

参加者の声

菅原美優さん

小林 豊さん、
蒼(そう)さん(小2) 親子

蒼さん「大学生のお兄さん、お姉さんが優しく教えてくれて、いろんな種目を体験できたのが嬉しかったです。陸上は初めてでしたが、また参加したいです」
豊さん「小学校でもらったチラシを見て参加しました。僕もこの大学のOBなので、こうして旭川の子どもたちのために企画してくれるのが本当に嬉しいです」

野崎虎大郎さん

窪田 このみさん、
こはるさん(小6)、瑛太さん(小4)親子

こはるさん「走ることが好きなので参加しました。為末さんに走るコツを教わることもできて嬉しかったです。中学に行ったら陸上をやりたいと思います」
瑛太さん「学校で走ったときより速く走れて嬉しかったです。初めてだった砲丸投げも楽しくできました」
このみさん「子どもたちが楽しそうに取り組んでいて、連れてきて良かったです。学生さんたちの優しく明るい雰囲気も印象的でした」

全力でぶつかったからこそ見えた、
次のミライへのチャレンジ

イベント後、為末さんと学生たちが今回の取り組みを振り返りました。「雨天時の案内が直前まで確定できず、保護者の方を不安にさせてしまった」「アンケート配布のタイミングなど、細かい詰めの甘さもあった」といった反省はあったものの、学生たちは怪我がなく無事に終わった安堵感と最後までやり遂げた達成感を感じていました。

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イベントを終え、為末さんと振り返りを行った学生たち

司会や運営を担った島影 姫愛(しまかげ・きらら)さんは「会場全体を温かい雰囲気にしたくて、表彰や声かけの一つひとつを大切にした」と振り返ります。終了後には、保護者から「来年もぜひ開催してほしい」という声が相次ぎ、学生たちは手応えを感じたようです。

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イベント中、明るくわかりやすい司会進行が印象的だった島影さん

「陸上競技の楽しさを伝えることはもちろんですが、子どもたちにとって“身近な大学生”として関わり続けることで、将来の進路や夢を考えるきっかけにもなれば」と実行委員長の二階堂さん。

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「このイベントをきっかけに、僕らの存在を地域の方々にもっと
知ってもらえたらうれしい」と話す二階堂さん

為末さんは、「イベントには、うまくいかないことや想定外のトラブルがつきものです。でも、その“失敗”や“つまずき”こそが成長のタネ。頼まれていなくても自分から動く力が育つと、やがて“自分の夢を自分で描ける人”になれます。まわりの人を巻き込みながら、地域の未来をつくっていける。そういう力こそが、これからの社会を動かしていく原動力になると思います。今回の経験を通じて、『頼まれていなくても自分から動く力』を身につけていってほしい」とエールを送りました。

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「自分たちの手でイベントをつくり、地域を巻き込めているのが
素晴らしい」と学生たちを称える為末さん

地域と関わりながら、自ら考えて動くことで、ゆくゆくは社会にもインパクトを与えられる人へと成長していく。今回の取り組みは、その“第一歩”を確かに踏み出したことを感じさせるものでした。
為末さんも「陸上×教育×地域という領域は、彼らにしかつくれない未来がある。長く生きていく中で、陸上と関わる道はいくらでもあるし、社会を変える力にもつながる」と期待を寄せました。
北海道教育大学旭川校陸上競技部が、陸上競技を通じて地域と未来をつなぐ挑戦は、まだ始まったばかり。これからも地域とともに走り続けていきます。

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「シャカカチBOON BOON PROJECT」
について

二階堂さん

北海道教育大学旭川校陸上競技部主将・実行委員長

二階堂さん

二階堂さん

プロジェクトに採択されたことで、旭川の外にも同じように悩みながら挑戦している学生チームがたくさんいることを知り、「自分たちもできるかもしれない」と視野が広がっていった感覚があります。SMBCの皆さんが細かい相談にも真剣に向き合ってくださったことで、“失敗しても一緒に考えてくれる大人がいる”という安心感を持ちながら準備を進めることができました。今度は自分たちが、次の世代のチャレンジを後押しできる存在になれたらと思います。

土橋監督

北海道教育大学旭川校陸上競技部監督

土橋監督

土橋監督

このプロジェクトの面白さは、単に部の予算が増えるのではなく、学校以外の社会とつながる仕組みになっているところだと感じました。協賛企業へのお願いの仕方や、参加費の設定、安全面のリスクをどう考えるかなど、指導者だけでは用意しきれないテーマを学生たちが自分事として考えるきっかけになりました。今回は学生たちが主体的に動き、地域と関わる姿勢を持てたことが何よりの成果。競技力の向上だけでなく、人としての成長や将来教員として子どもたちと向き合う力にもつながるはず。今回得たノウハウを今後の授業や部活動にも生かしていければと思います。

為末大さん

シャカカチBOON BOON PROJECTプロジェクト・パートナー

為末 大さん

為末大さん

この大学の特徴は、競技者である以前に“これから教育現場に立つ人たち”の集まりだという点です。子どもたちを前にしたときの表情や声のかけ方を見ていて、教えることそのものを楽しんでいるのが伝わってきました。スポーツを通して地域と関わる経験は、将来どこかの学校で担任を持ったときにも必ず生きてくるはずです。シャカカチBOON BOON PROJECTが、競技成績だけでは測れないこうした成長の場になっていることを、今回あらためて実感しました。

シャカカチ BOON BOON PROJECT
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