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POSレジアプリで店舗の経営状況を見える化。2社共同プロジェクト、小売業・調剤薬局向けstera専用POSレジアプリ「assetforce for stera」が目指す未来

三井住友カードが提供する、決済プラットフォーム「stera」。多種多様なキャッシュレス決済手段に対応可能な「stera」に、アプリをダウンロードするだけでPOSレジ機能や商品の棚卸、入出庫作業、売上・在庫管理までを可能にしたサービスが、POSレジアプリ「assetforce for stera(アセットフォース・フォー・ステラ)」です。
小売業および調剤薬局等のお客さまに向けたデジタルトランスフォーメーション支援の取り組みとして提供を開始したこのサービス。開発のきっかけは両社のソリューションを紹介しあう場での担当者同士の会話にありました。当時、三井住友ファイナンス&リースは、「モノの管理」を担う資産管理クラウドサービス「assetforce」の開発を進めており、「stera」との連携によって「モノの管理」と「キャッシュレス決済」を掛け合わせた新たなプラットフォームを提供できるのではというアイデアが生まれました。

「assetforce for stera」はSMBCグループ内の三井住友カードと三井住友ファイナンス&リースが共同で開発し、構想からわずか1年ほどでサービス提供を実現しています。今回はプロジェクトに携わった三井住友ファイナンス&リース ICT開発部 部付部長 兼 デジタルラボ所長 藤原雄氏、DX推進部 マスターブラックベルト 山本竜馬氏と、三井住友カード アクワイアリング統括部(東京)プロフィットデザイン室長 前田将宏氏、アクワイアリング統括部(東京) プロフィットデザイン室 部長代理 横山貴司氏の4名に、スピーディーなサービス提供を実現できた背景やお客さまの反応、そして今後の展望について聞きました。

グループ内企業の強みを掛け合わせ、新たな価値を提供する

お店の販売や運営に必要な機能をパッケージしたstera専用POSレジアプリ「assetforce for stera」は、SMBCグループ内の三井住友ファイナンス&リース(以下、SMFL)と三井住友カード(以下、SMCC)が共同で開発されたと聞きました。まずは、プロジェクト発足の背景を教えてください。

藤原もともとSMFLは、固定資産管理や棚卸に特化した資産管理クラウドサービス「assetforce」を提供しています。SMCCが2020年より提供を開始した「stera terminal」を知った時、Android OSが搭載されており、「stera terminal」上で独自のアプリを動かせることに大きな可能性を感じました。私たちが提供する「assetforce」は「stera terminal」に載せられる基盤があったため、SMCCに「一緒にやりませんか?」と話をしたことが開発のきっかけです。

SMFLのお客さまとSMCCの加盟店を含めるとかなりの数となります。お互いの強みを掛け合わせることによって、他の決済プラットフォームにはない、新しい価値を提供できるのではと考えました。

三井住友ファイナンス&リース ICT開発部 部付部長 兼 デジタルラボ所長 藤原雄氏

前田SMCCは2020年に、1台の端末で様々な決済手段に対応可能なオールインワン決済端末機 「stera terminal」の提供を開始しています。この端末に必要な業務アプリをダウンロードできるstera market事業については、どのようなアプリが加盟店からのニーズがあるのかを戦略的に分析しながら拡充させていこうとしていました。そんな時に「assetforce for stera」のお話が出て、私たちも大きな可能性を感じたと同時に、加盟店からのニーズもあると考えました。

三井住友カード アクワイアリング統括部(東京)プロフィットデザイン室長 前田将宏氏

藤原デジタルの良いところは、容易にコネクトできる点です。例えば、アナログの世界で様々なデータを連携させて活用をしてくのは相当な労力が必要となりますが、デジタルというツールを使えば容易に掛け合わせができるようになります。stera marketというプラットフォームの中に私たちの機能を追加し新しい価値を生み出していくことは、SMBCグループ内のDX連携という観点においても求められており、やるべきだと思いました。

横山私たちはsteraを使って、店舗事業者様を対象に主に決済といったフロント業務の課題解決を行っています。SMFLは在庫管理部分、つまりミドルやバックの部分の課題解決を担っています。

今回のプロジェクトは、構想からかなり短期間での開発・提供が実現したそうですが、その秘訣はどこにあるのでしょうか。

横山プロジェクトを開始してすぐ、SMFLがプロトタイプの前段階のようなものを作ってくれました。私たちは加盟店の店舗業務においてどのようなニーズがあるのかを照らし合わせ、修正すべきポイントや追加すべき機能など、率直な意見をお伝えしました。それらの意見を元に、SMFL側は早ければ翌週、遅くとも2週間後には修正したものを用意してくれています。アジャイル式の開発ができたことが、スピーディーなサービス提供につながったと思います。

通常はサービス内容の検討に半年をかけ、開発に2年ほどの年月をかけるイメージがあります。既にAndroidのアプリを持っているベンダーが「stera」用に少し改修して提供する場合でもおおよそ半年から1年間ほどかかることがあります。今回は1からプランを考えているにも関わらず、構想から1年ほどでサービス提供ができていますので、私たちとしては他に類を見ないスピード感で、グループ内ながら開発スピードの早さに驚いています。

三井住友カード アクワイアリング統括部(東京) プロフィットデザイン室 部長代理 横山貴司氏

藤原私たちにはもともと「assetforce」というプラットフォームがあり、この基盤を活用してアプリケーションをスピーディーに構築できたことも、スピード開発が実現した理由の一つです。また、当社では社内エンジニアが充実しており、全て内製開発で対応できることも挙げられます。SMFLでは、世の中のスピードに合わせるために、スピーディーに開発することに日々注力しています。

お客さまの要望を丁寧にヒアリングし、アプリ開発に活かす

小売店や調剤薬局など、実際の現場からの声を知っているSMCC側からのアドバイスは、開発にどう役立ちましたか?

山本私たちは今まで店舗の方とはビジネス上の接点がありませんでしたので、彼らの声を一番分かっているSMCCからの意見は非常に参考になりました。実際、店舗には社員の方だけでなく、アルバイトやパートの方など、様々な方がいらっしゃいます。こうした方々がアプリケーションを使うという目線を持たないと、実際には使っていただけないというアドバイスを元に、ユーザビリティを向上することはかなり意識しました。

横山多機能なアプリは、多くの店舗課題を解決することができる反面、サービス内容や操作が難しいことがデメリットとして挙げられます。一方、領収書を「stera terminal」から印刷・出力するだけの単純な機能のアプリもご好評いただいており、高機能であることと使いやすいこととのバランスは非常に難しいとよく思います。

前田開発段階では、実際に小売・調剤薬局の店頭の業務に従事している方や経営層の方へのデモおよびトライアルを実施していますが、SMFLはお客さまニーズを深く引き出し、常にその解決方法を提示していましたよね。

山本開発エンジニアもミーティングに同席していましたので、「こうしてほしい」という要望を受けて、その場で作ったこともあります。もちろんエンジニアの能力もありますが、お客さまのニーズがはっきり分かっていたことも、スピード感につながっていると思います。

藤原アプリを開発する際には、お客さまの本当の課題、つまりどういうところに注力して作れば良いのかを理解することがもっとも重要です。SMCCは日々加盟店の方々と接していますので、課題を分かりやすく的確に伝えてもらえたことはとてもありがたく、機能の開発をスムーズに進めることができました。だからこそ、使ってもらえるアプリが開発できたのだと思います。

assetforce for stera

経営課題の見える化を実現し、ファイナンス面でのサポートも視野

小売店など、実際のお客さまからの反応はいかがでしたか?

山本まず「stera terminal」上でPOSレジが利用できるようになり、レジがなくても商品の会計から決済までを小さな端末1台でできることに驚かれるようです。アプリについては、現在行っているレジ業務が同じようにできるかを気にされることが多いですが、たとえば割引機能やタグ機能など、細かいところにも対応していることにご満足いただいています。

また在庫管理や入出庫作業については、今まであまり取り組まれてこなかったお客さまにとっては、たとえ業務をデジタル化したとしても、単純に手間が増えてしまいます。そのため、「assetforce」のスマートフォンアプリを活用いただくことにより、簡単な操作で手軽に作業ができるようにしています。それまでの紙のリストに手書きや、ノートパソコンとバーコードリーダーを使った棚卸作業に比べてより確実に効率は上がりますし、スマートフォンが複数台あれば、棚卸をスタッフで分担して行うこともでき、「業務効率が上がった」「棚卸作業のスピードが上がった」というお声をいただいています。

三井住友ファイナンス&リース DX推進部 マスターブラックベルト 山本竜馬氏

横山ニュースリリースを出したことで、様々なメディアにも取り上げていただき、お問い合わせも増えています。「stera」をまだ導入していないお客さまからも「話を聞かせてほしい」という連絡がいくつかあり、店舗の方からは、「手書きや手打ちを止めてデジタルを導入したい」というご要望をいただくことも多くあります。

藤原「stera」の一番魅力的なところは、アプリが搭載できることです。今は据え置き型のstera terminalのみですが、将来的には店員の方がレジカウンターではなくお客さまのそばに行って決済できるstera mobileにもアプリの搭載ができることを期待しています。さらにお客さま自身がこのアプリをダウンロードしてセルフレジで決済できるようになれば、店頭の業務をさらに効率化することができます。そういった拡張性が非常に大きく、小売のDXを支援するには欠かせないものだと思います。

最後に、今後の展開についてお教えください。

横山今後はグループ全体で、モノや人の流れなど、様々なデータを組み合わせて新しい価値を提供していくことが必要だと思っています。その取り組みの一つとして、決済というフロント部分のデータと、在庫管理等のミドル・バック部分のデータをつなげることに成功した「assetforce for stera」の取り組みは、今後の展開にもつながっていくのではと思っています。

山本業務負荷が高い棚卸や入庫・出庫管理作業を、デジタルの力で効率的に行えるようになり、お店の販売や商品に関するデータが見える化されます。このデータを活用することによって、経営分析や店舗戦略などのサポートまでつなげていきたいです。

前田現時点で顕在化している課題の解決だけではなく、まだ顕在化していない経営課題にまつわるニーズにもアプローチしていく必要があると感じています。 そう考えると、アプリは入り口でしかないのかもしれません。加盟店に対する付加価値を最大化していくために、中長期的な戦略を組み立てていくことが必要だと感じています。

藤原私たちは「assetforce for stera」のプロジェクトで、決済やモノの管理のデジタル化をサポートできます。小売のビジネスにおいては、どれだけの在庫を抱えていて、その在庫の回転率がどうなっているのかは、資金繰りに関わる重要なポイントです。私たちはファイナンスの会社ですが、今までは財務諸表を見てからでないと資金繰りに関するお手伝いができませんでした。しかし今回のプロジェクトによってお客さまのビジネスの実情を、デジタルの力で見える化させていただくことが可能となり、今後はサービス提供の形態も変わっていく可能性があります。まずは経営課題の見える化をサポートし、将来的にはファイナンスの機能を提供することで、お客さまの本当の課題解決まで支援していきたいと思っています。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 三井住友ファイナンス&リース株式会社
    ICT開発部 部付部長 兼 デジタルラボ所長

    藤原 雄氏

    米国にてMBA in Information Systemを取得後、国内システム開発会社、GE コンシューマーファイナンス、ゴールドマンサックスなどで国内外の各種システム開発プロジェクトリーダー、システム責任者を務める。
    2012年にGE キャピタル(現三井住友ファイナンス&リース)に転じ、クオリティ部門にて各種業務変革プロジェクトを担当。
    2015年よりデジタル開発チームの立ち上げ、AIやIOT、RPAを中心とする全体ITデジタルトランスフォーメンション施策の責任者として現在に至る。

  • 三井住友ファイナンス&リース株式会社
    DX推進部 マスターブラックベルト

    山本 竜馬氏

    米国の大学を卒業後、日系SIerのソリューション営業を経て、2006年にGEのInformation Management Leadership Programに参画。
    2008年にGEフィナンシャルサービス(現三井住友ファイナンス&リース)のIT部門に転じ、国内外のシステム導入、システム統合等のプロジェクト管理を担当。
    2016年にデジタルマーケティング部の立ち上げに参画し、Marketing Automationを中心としたWebマーケティングを推進。
    2020年より資産管理クラウドサービス「assetforce」のプロモーション、セールスエンジニアチームのリーダーとして現在に至る。

  • 三井住友カード株式会社
    アクワイアリング統括部(東京)プロフィットデザイン室長

    前田 将宏氏

    ラグジュアリブランドの店舗マネジメントを経て、2005年に三井住友カード入社。
    富裕層向けクレジットカードやデビットカード等、個人向け商品の企画開発に長く従事。
    2019年にアジア市場室長に就任、東南アジアにおける決済関連の新技術調査・スタートアップ発掘及びアライアンス検討を担当。
    2022年より、決済プラットフォーム「stera」における付加価値サービス創出の責任者として現在に至る。

  • 三井住友カード株式会社
    アクワイアリング統括部(東京)プロフィットデザイン室 部長代理

    横山 貴司氏

    2010年に三井住友カードへ入社。個人向けクレジットカード営業等を経て、自社Webサイトの管理・分析・改善や、事務業務のDX、デジタルマーケティングなどのIT分野を担当。
    2021年より現職。stera market事業の中心メンバーとして、アプリラインアップの拡充をリード。アプリデベロッパーに向けたマーケティング、開発フォローのほか、店舗ニーズに寄り添ったアプリ企画も手掛ける。

プラットフォーム
(Platform)

類義語:

サービスやシステム、ソフトウェアを提供・カスタマイズ・運営するために必要な「共通の土台(基盤)となる標準環境」を指す。

POS
(Point of Sale)

類義語:

  • 販売時点情報管理

物品販売の売上実績を商品が販売された時点で「いつ・どの商品が・どんな価格で・いくつ売れたか」単品単位で記録し、集計するシステム。読み方は「ポス」。

DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。