金融データの活用で、最適なターゲットへ広告を配信。マーケティングの可能性を広げる、小学館とSMBCデジタルマーケティングの施策とは

金融データをもとにした広告・マーケティング事業を手がけるSMBCデジタルマーケティング。同社のサービスを活用する企業のひとつに、2022年に創立から100周年を迎えた老舗出版社 小学館があります。
小学館は昨年、創立100周年企画として生まれ変わった『学習まんが 日本の歴史』のマーケティング活動にSMBCデジタルマーケティングのサービスも活用し、売上を伸ばすことに成功しています。
小学館はなぜ、SMBCデジタルマーケティングのサービスを選択したのか。そして、小学館とSMBCデジタルマーケティングが組むことで広がるマーケティングの可能性とは。小学館 マーケティング局 シニアマネージャー デジタル・プロモーション戦略室 室長 小沢清人氏とSMBCデジタルマーケティングのマーケティングディレクターを務める田中直樹氏にお話を伺いました。
顧客の金融データを活用して、詳細なターゲティングが可能に
小学館がSMBCデジタルマーケティングのサービスをどのように活用されているのか教えてください。
小沢最初に利用を開始したのは2021年で、まず小学館の通販事業センターが手がけていたおせち料理の広告を三井住友銀行のアプリ上に出稿しました。2022年には、フルリニューアルを果たした『小学館版 学習まんが 日本の歴史』の広告をアプリとメールにて展開しています。SMBCデジタルマーケティング様のサービスは、セグメントされたお客さまに商品の情報をピンポイントでお届けできる点が魅力です。

一昨年と昨年でおせち料理と『学習まんが 日本の歴史』というまったく異なる商材にした理由を教えてください。
小沢当社が取り扱う商品は数万アイテムに及び、価格帯も幅広く、期待するコンバージョンも様々です。今回の取り組みでは明確にセグメントされたお客様に単価が高い商品の広告を出したいと考えていました。2021年におせち料理を商材に広告を掲出したところ想定以上の反響がありましので、小学館創立100周年企画として2022年に20巻同時刊行した『小学館版 学習まんが 日本の歴史』のプロモーションにおける取り組みにも、SMBCデジタルマーケティング様の広告サービスを活用することにいたしました。

SMBCデジタルマーケティングの広告サービスにはどんな特徴があるのでしょうか?
田中SMBCデジタルマーケティングでは、お客さまからお預かりしている金融データを活用した広告・マーケティング事業を展開しています。大きな特徴としては、類推のデータではない確実性のあるデータを数多く保持している点です。銀行口座をつくるときには本人確認が必須です。さらに銀行口座は長年ご利用頂くことが多く、その入出金の記録等からお客さまのバックグラウンドやライフステージも分析できます。
今回ご出稿いただいた『学習まんが
日本の歴史』のターゲットを考えると、ひとつの例としては、全20巻セットですから自宅にはそれなりに広いスペースが必要になります。ということで、自宅をお持ちの方が対象になると分析しました。我々の利用しているデータを分析することで、そのような情報も確度高く類推でき、確かなセグメントとターゲティングが可能です。他のプラットフォームにはない、銀行ならではの広告ソリューションです。

メガプラットフォーマーでは困難な「個人」と「世帯」のセグメント
金融取引情報や持ち家の有無といったデータも分析できるのは大きな強みですね。ちなみに、小学館サイドの視点では『学習まんが 日本の歴史』のターゲットをどのように想定していましたか?
小沢ご購入いただく理由は「受験のための購入」が多いのではと想定していましたが、実際には「学校の勉強に役立つから」「自分(親御様)の学び直しのため」といった回答を多くいただきました。親御様がお子さま用に購入するだけではなく、自分も学び直しのために活用するという方が思いのほか多くいらっしゃいました。全20巻で約2万円という価格ですので、親子で共有したほうがお得感が出るというのも要因としてあるかと思います。
今回の出稿を通じてどんな効果があったのか。定性的な視点、定量的な視点の双方から教えてください。
小沢定性的な点からお話ししますと、出版物とは必ずしもマスな商品ではなく細かいセグメントに向けた商品なので、裏付けがしっかりした個人のデータを持っているSMBCデジタルマーケティング様とご一緒できたのは大きな意味がありました。定量的な点では、『小学館版 学習まんが 日本の歴史』は、今までにない初速を見せ、大変好評をいただいています。

メガプラットフォーマーもターゲティングした広告配信はできるかと思いますが、それらと比較したSMBCデジタルマーケティングの強みや特徴を教えてください。
田中ウェブブラウザベースでの配信の場合だと、例えば家族間で一つのパソコンを使って父親が車の情報を調べて、子どもが家でゲームを楽しんでいたら、それは一人の人間として認識されます。対してSMBCデジタルマーケティングでは、IDベースですので、様々なデータを組み合わせることで家族構成を類推した上で、個人でのセグメントも世帯でのセグメントも可能です。そして、お子さま用に購入するものについては母親の意見が尊重される場合が多いと言われておりますので、世帯に向けた広告を配信できることが大きな強みです。
小沢児童書は弊社の中でも大きなボリュームを占めていますが、インターネット広告の施策には悩んでいるところがありました。お子様向けの作品ではありますが、購入するのは親の場合が多く、どのようにセグメントすれば、お子様を持つ親御様に情報を届けることができるのか?ということが大きな課題でしたが、その解決の糸口が見えたと感じています。

「金融データ×他業種のデータ」で業界を跨いだDX実現の可能性も
銀行が持っているデータを広告に活かす取り組みは、業界全体としてどの程度浸透しているのでしょうか?
田中メガバンクの中ではSMBCグループが先んじて具体的な広告サービスとして展開しています。今のところ我々がトップランナーとして知見を深めていると考えていますので、今後は広告ソリューションだけにとどまらず、さらなる展開を目指していきます。現状は三井住友銀行アプリ、Eメール、紙のダイレクトメールで広告をお届けしていますが、それ以外にもお客さまとの接点の中で情報を届けられる場面があるはずです。
そして、将来的にですが、情報を届けるだけでなく、他業種のデータも活用することで業界を跨いだDXが実現する可能性もあるでしょう。
SMBCデジタルマーケティングに対して「こんなサービスがあれば嬉しい」といった要望や、期待することがあれば教えてください。
小沢弊社でも「小学館ID」という愛読者のデータを活用していく取り組みを進めています。小学館は漫画や児童書、一般書籍など幅広いコンテンツを取り扱っています。それらを個別の作品として捉えるのではなく、「小学館のコンテンツ」として分析することで、読者の皆様に今まで以上の読書体験をご提供できるのではないかと考えています。
田中銀行の持つデータの強みは本人情報の正確性にありますが、具体的にどんな漫画をいつ、どれだけ買ったのか?といった趣味嗜好については分かりません。私は『月刊コロコロコミック』で育った世代ですが、例えば子どもの頃から『ドラえもん』が好きだった層を追っていくと「趣味が○○になる」といった傾向が見えてくるかもしれません。『名探偵コナン』が好きだった層を追っていくと、また違う趣味の傾向が見えてくるでしょう。その趣味が釣りなのか車なのか、はたまた旅行なのかはまったく分かりませんが、その個人が触れてきたコンテンツを見ていくと一つの傾向が浮き彫りになるのではないかと思います。
私としてはコンテンツホルダーの事業者と連携するのが効果的だと思っています。『ドラえもん』しかり『名探偵コナン』しかり、小学館さまのコンテンツは日本だけでなく世界で愛されています。人々の心の癒しとなるコンテンツの楽しさを世界に提供する。これが実現すればより多くの人々に喜んでいただけるはずです。
小沢出版社と銀行の共通点は「お客さまとの関係性の長さ」にあると思っています。小学館の抱えるデータの量はビッグデータとはいえないかもしれませんが、創業100年という長期にわたってコンテンツを提供してきたことが我々の強みであり、銀行との相性のよさになっているのだと思います。

多様なライフスタイルに合わせた接点を構築していく
小学館の今後のデジタル活用の方向性について教えてください。
小沢電子配信できる作品は、紙と電子版での同時リリースを基本としています。我々のコンテンツとお客さまの最大の接点は書店の店頭でしたが、生活者が様々な人格を使い分ける時代には、一極化した接点だけでなく、それぞれのライフスタイルに合わせた接点を持つ必要があります。その意味で作品の内容だけでなく、デジタルなどコンテンツをお届けする形態は今後も増えていくでしょう。従来のマスを対象にしたデジタルマーケティングだけではない、今回のようなターゲットを絞ってアプローチをかける手法には可能性を感じているので、今後も続けていきたいと思っています。
SMBCデジタルマーケティングとして、今後小学館と取り組みたいことがあれば教えてください。
田中三井住友銀行のサービスをご利用いただいているお客さまに対して、小学館さまのコンテンツを最適なタイミングで提供する取り組みをもっと広げていきたいですね。子どもの頃から小学館の漫画が好きだった方が大人になって結婚をして家庭を持つと、おそらくお子さまにも自分が慣れ親しんだコンテンツを見せたくなると思うんです。そこで最適な小学館さまのコンテンツをご提供できれば、より多くのお客さまに喜んでいただけるでしょう。
さらには、小学館さまが手がけるNFT等のデジタルコンテンツストア「CLOUDEAR」や、メタバース空間「S-PACE(スペース)」でもご一緒できる可能性があると思いますし、今後もいろいろな連携を深めていきたいと考えています。
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株式会社小学館
マーケティング局 シニアマネージャー デジタル・プロモーション戦略室 室長小沢 清人氏
広告部門、電子配信部門を経て、マーケティング部門に所属。
小学館の保有する各種データを活用し、顧客体験価値の向上や、新しいサービス創出を行う。 -
株式会社SMBCデジタルマーケティング
広告・マーケティング事業部 マーケティングディレクター田中 直樹氏
事業会社での経験、CRMおよびダイレクト知見、データプライバシーのスキルを活かしたビジネスプロデュースを得意とする。
現在は、SMBCデジタルマーケティング社にて広告・マーケティング事業をリード。