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メタバース

Metaverse

類義語:

「Meta」と「Universe」から形成される造語で、コンピュータやコンピュータネットワークの中に構築された、3次元の仮想空間やそのサービス。

メタバースとは?注目の背景やビジネスへの活用事例、メリット、注意点を解説

メタバースとは、インターネット上に構築された仮想空間やそのサービスを指します。仮想空間でアバターと呼ばれる自分の分身を使ってほかの人とコミュニケーションができるもので、オンラインゲームで体験したことがある人もいるのではないでしょうか。
近年、メタバースを活用したバーチャル展示会やオンラインイベント、ショッピング体験等ビジネスシーンの動きも活発化しています。メタバースの定義や注目される背景、具体的な活用例ほか、メリットや導入の注意点も含めて解説します。

メタバースが意味するものは?定義やVRとの違い

近年よく耳にするようになった「メタバース」ですが、言葉は知っていてもそもそもどういうものか、よくわからない人もいるでしょう。ここでは基礎知識として意味や定義、VR(仮想現実)との違いを紹介します。

メタバースとは、インターネット上の仮想空間
メタバースとは「超越」を意味する「Meta」と、「宇宙」や「世界」を意味する「Universe」から形成された造語です。コンピュータネットワーク上に仮想空間を作る試みは1980年代に始まったとされています。しかし、メタバースという言葉が多くの人に認知されるようになったのは近年になってからです。

1992年に発表されたアメリカのSF小説で、仮想空間サービスの名称として初めて「メタバース」という言葉が登場します。その後、2003年にはアメリカの企業がインターネット上に3Dの仮想空間を構築しました。これはユーザーがコンテンツを制作したり仮想通貨で取引したりできるサービスで、大きな注目を集めました。2010年代後半になると、ユーザー間でコミュニケーションができるオンラインゲームが普及し、これらが「メタバース(仮想空間)」のサービスとして広く知られるようになりました。今では、バーチャルショップやバーチャルオフィス、オンラインイベント等さまざまな分野にサービスが広がっています。

現在、メタバースの定義としてはさまざまなものが提案されており、統一した解釈はないとされています。たとえば、総務省の研究会では以下のように整理しています。

「「メタバース」とはユーザー間で「コミュニケーション」が可能な、インターネット等のネットワークを通じてアクセスできる、仮想的なデジタル空間であり、①利用目的に応じた臨場感・再現性、②自己投射性・没入感があること、③(多くの場合リアルタイムに)インタラクティブであること、④誰でもが仮想空間に参加できること(オープン性)、を備えているもの。
また、多くの場合は3次元(3D)の仮想空間として構築され、VRデバイスを必須とするものもあるが、スマートフォン等の一般デバイスから利用可能なものもあり、ビジネス向けの一部には2次元で構築されるものもある。」

出典:「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」報告書骨子(P10)より

VRとは、仮想空間を現実であるかのように疑似体験できる仕組み
メタバースというとゴーグルのような形をしたVR機器を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。メタバースを利用するのにVR機器が必要な場合もありますが、機器を必要としないサービスもあります。

メタバースが仮想空間そのものを指すのに対し、VRは仮想空間を現実のように感じ取るための「仕組み」や「技術」を指すという違いがあります。

VRのほかにも、AR、MRなどの技術があります。これら現実空間と仮想空間を融合させる革新的な技術を総称してXR(Extended Reality/Cross Reality)といいます。メタバース周辺の用語として、それぞれの技術の特徴を紹介します。

「VR(Virtual Reality/仮想現実)」
仮想空間に入り込み、現実のように見たり感じたりといった体験ができる技術。活用分野はゲームや音楽フェス等のエンターテインメント分野、就労トレーニング等の教育分野、ショッピング体験と幅広い。

「MR(Mixed Reality/複合現実)」
現実空間と仮想空間を重ね合わせる技術。活用事例として車両整備の研修や、医療現場で手術中に患者のデータを複数で共有する等がある。

「AR(Augmented Reality/拡張現実)」
現実空間にデジタル情報を呼び出して、現実空間を拡張する技術。活用事例として現実世界へのゲーム画面の投影、建築中の現場への完成イメージの投影等がある。

メタバース注目の背景とは?

メタバースが注目されている背景のひとつに、新型コロナウイルスの感染拡大でオンライン需要が高まったことがあります。そのほか、考えられる要因がいくつかあります。

「通信基盤の発展」
モバイル通信の最大通信速度が30年間で約10万倍に向上し、インターネットを介してテキストや音声によるコミュニケーションがスムーズにできるようになりました。メタバースを快適に楽しめる環境が整ってきたのも要因のひとつです。

「クラウドの性能向上」
仮想空間の構築を担っているクラウドの性能が向上したことにより、大量のデータの高速処理が可能に。風景やアバターの動き等を緻密に再現でき、クオリティの高い空間演出ができるようになりました。

「スマートフォンの普及やVR機器等の進化」
スマートフォンのアプリやWebブラウザにアクセスしたりすることで楽しめるメタバースのサービスも多数あり、スマートフォンを通じてメタバースを楽しむ人が増えています。
また、テクノロジーの進化によりVRゴーグルやVRヘッドセットに内蔵されているHMD(ヘッドマウントディスプレイ)でより高精細な3D映像の体験が可能に。仮想空間への没入感が増し現実空間に近い感覚でメタバースに長期滞在できるようになったことも要因のひとつです。

ビジネスへの活用事例から見えるメタバースの可能性

メタバースはオンラインゲームをはじめ、すでにさまざまな分野で活用されたり、活用へ向けた取り組みがされたりしています。ここでは分野別に活用事例を紹介します。

「オンラインゲーム」
ゲームの分野ではさまざまな形でメタバースのサービスを提供しているものがあります。たとえば、ゲーム内でユーザー同士のコミュニケーションがリアルタイムで行える、アーティストのライブを楽しめる、等です。そのほか、ファッションブランドがマーケティング施策のためにゲーム空間内に店舗を開設した例もあります。

「バーチャルショップ」
インターネット上の仮想空間内に構築された店舗で、商品やサービスの購入が可能です。オンラインショップと異なる点は、アバターを通じて店舗スタッフに相談したり、友人のアバターと一緒に入店して買い物を楽しんだりできる点です。

「メタバース内におけるイベント」
有名アーティストによるバーチャルライブや絵画の展示、花火大会等リアルイベントの映像配信、ファッションショーとイベントの種類はさまざまです。アバターを通じて参加者同士がコミュニケーションできるほか、商品の購入が可能なサービスもあります。

「バーチャル観光」
メタバース上に観光地の歴史的建造物や文化、商店街等を再現しているので、訪れた人はアバターを通じてリアルな体験ができます。海外ではVRで自由に観光地を散策できるコンテンツを発信しているケースもあります。

「バーチャルオフィス」
インターネット上にオフィスを構築し、社員のアバターが会議を開いたり雑談したりできます。会議や打ち合わせの際はバーチャル空間内に画像や動画、資料を表示できるため、リモートワークで離れた場所にいてもオフィスに出社するのと同様のコミュニケーションが可能です。

「メタバース展示会」
オンライン上の仮想空間に会場を構築し商品をバーチャル展示したり動画を使ってサービスを紹介したりできます。アバターを通じての来場者とのコミュニケーション、講演やセミナーの開催も可能です。主催者が準備したプラットフォームに複数の企業が出展するケース、企業や自治体等が単独で開催するケースがあります。

「メタバース上での授業や研修・トレーニング」
大学等の教育機関で、はメタバース上での講演や授業開催、バーチャルキャンパスといった試みを行っています。
また、製造業や建設業といった産業分野ではVR技術を活用した体験型研修やトレーニングに活用しているケースもあります。

SMBCグループが開設したバーチャル空間「virtual hoops link」とは?

「virtual hoops link」は、メタバースに関する調査・研究を行う実証実験場として、SMBCグループが2022年9月に開設したバーチャル空間です。

SMBCグループでは新規事業創出を加速させることを目的に、2017年、東京都渋谷区にオープンイノベーション拠点「hoops link tokyo」を開設しており、「virtual hoops link」はこのリアル施設をモデルとしています。リアルの施設と同じようにイベントスペース、会議スペース、コミュニケーションスペースとして利用できるほか、リアルにはない展示室を利用して3Dなどの展示イベントの開催も可能です。

将来的にはさまざまな経済活動が仮想空間内で実施されることが予想されるなか、メタバースに関連した新たなビジネスの機会や、メタバースの実用性を検証する場として注目されています。

SMBCグループの「メタバース」に関する取り組みについては以下の記事も参考にしてください。

メタバースのメリットと注意点

メタバースには現実世界では得られないメリットがありますが、利用やビジネスへの導入にあたっては注意点もあります。

非日常・非現実的な体験等メリットは多数
メタバースのメリットのひとつに、ユーザーとサービス事業者双方とも物理的制約を受けない点が挙げられます。ユーザーはその場にいなくても、また、遠隔地にいても、インターネットを通じていつでも、どこからでもアクセスできます。介護や育児、高齢、病気などで外出しづらい人も移動の必要なくメタバース上での自由な活動が可能です。サービス事業者にとっても同様で、会場の大きさや天候等の影響を受けずに集客を図れます。

また、現実世界ではできない体験や、アバターを介し違う自分になる体験、非日常・非現実的な体験ができる点もユーザーにとっては魅力です。現実世界ではなかなか出会うことのない人、国内外のさまざまな人とコミュニケーションを取って楽しめます。

ビジネス面では、メタバースを活用することで若者世代へのアプローチがしやすくなる点もメリットに挙げられるでしょう。メタバースをマーケティングに活用したりサービスの事業者になったりビジネスチャンスにつなげる企業も出てきています。テクノロジーの進化により、メタバースの可能性は今後さらに広がることが期待されています。

セキュリティ面や法整備等の注意点も!
メリットも多いメタバースですが、注意点もあります。たとえば、アバターのなりすましや悪用、ユーザーのデータ改ざん、情報漏えい、メタバースサービスへの妨害等、さまざまな脅威が指摘されています。

また、ユーザー同士のトラブルやデータの取り扱いといったメタバース内での事象について、新たな法的課題が複数挙げられている点にも注意しなければなりません。メタバースの構築には時間と費用がかかるものの、メタバース構築をサポートするサービスも増え導入しやすくなった面もあります。自社の業務に取り入れたりビジネスに参入したりする際はセキュリティ強化に留意し、専門の事業者のサポートや最新情報を常に意識することも大切です。

まとめ

メタバース上ではその場所にいなくても、インターネットを介してアクセスしさまざまな人と話し非日常・非現実的な体験ができます。リモートワークが一般化し、VRやAR等テクノロジーの進化によってメタバースを取り巻く状況も変化しつつあります。今後ますます可能性が広がる分野と期待されています。

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新着用語

プラットフォーム
(Platform)

類義語:

サービスやシステム、ソフトウェアを提供・カスタマイズ・運営するために必要な「共通の土台(基盤)となる標準環境」を指す。

オープンイノベーション
(Open Innovation)

類義語:

製品開発や技術改革、研究開発や組織改革などにおいて、自社以外の組織や機関などが持つ知識や技術を柔軟に取り込んで自前主義からの脱却し、市場機会の増加を図ること。

仮想通貨
(Digital Currency)

類義語:

  • 暗号資産,デジタル通貨

電子データのみでやりとりされる通貨であり、法定通貨のように国家による強制通用力(金銭債務の弁済手段として用いられる法的効力)を持たず、主にインターネット上での取引などに用いられる。