中高生に新しいキャリアの選択肢を。SMBCグループが「東京大学メタバース工学部×中高生 夏祭り in 広尾学園」に出展

現役東大生や東大教授が直接学校に訪問し、理工系学問の楽しさや深さについてお伝えするイベント「東京大学メタバース工学部×中高生 夏祭り in 広尾学園」が、7月15日に開催されました。SMBCグループは、東京大学大学院工学系研究科・工学部が中心となり、産官学民一体となってDX人材の育成を進める「メタバース工学部」を法人会員として支援しており、その情報網を活用して、SMBCグループの情報発信を積極的に行なっています。今回はその取り組みの一環として、同イベントでのブース出展と現役社員による講演会を行いました。
今回は、「東京大学メタバース工学部×中高生 夏祭り in 広尾学園」について、主催者の東京大学・開催場所である広尾学園・SMBCグループ担当者の三者それぞれにお話を伺いました。イベントの意義や目的とは。どのような未来につながるのか。当日の様子とあわせてお伝えします。
社会と密接に関わる工学部の魅力を、中高生に伝えたい
まず、「東京大学メタバース工学部×中高生 夏祭り in 広尾学園」の主催者であり、東京大学大学院工学系研究科メタバース工学部事務局の青木 緑氏にイベント開催の狙いについてお話を伺いました。
今回のイベント開催の狙いについてお教えください。
青木東京大学の魅力はもちろん、「工学部」について正しく理解していただくことが狙いです。そのために、最先端の研究内容を紹介し、中学生、高校生に工学研究の楽しさを知ってもらえるようにしています。中高生のうちから工学に関連する技術に触れてもらうことで、若い世代にしかできない発想を育むことにもつながると考えています。
とくに、工学部は女性比率が圧倒的に少ない現状がありますので、より多くの女性に工学部の魅力を知ってほしいですね。もともと「東京大学メタバース工学部」という試みが始まった背景にも、理系学部に進学する女性比率を高める狙いもありました。いまだに工学部といえば、機械や電気といったイメージをもたれることが多いです。しかし実際は、法学や心理学、医学や理学といった他の分野と連携をしながら研究を進めています。今のリアルな姿を知ってもらい、将来の進路に関する選択肢の一つに、工学部を加えてもらいたいです。

青木 緑氏
工学部の魅力とは、どのようなところなのでしょうか?
社会貢献に密着した学問であるところです。研究内容を目に見えるかたちで社会実装できるところは、大きな魅力ではないでしょうか。日本にいながら世界中の国の人々を遠隔で診察し、手術までおこなえる世界が、工学部に入れば実現できるかもしれません。
なぜ、企業ブースを設けているのでしょうか?
なるべく早い時期に、就職後の自分の姿についてイメージをもってもらうためです。
少子化、DX化が加速しているなかで、学生も保護者も未来について早めに調べておきたいという需要が高まっています。とくに、日本経済が伸び悩んでいることもあってか、親が子どもの進路設計を手伝う傾向も高まっています。
しかし将来について調べようにも、実際は何をつくっている会社なのか、どのような方向に向かっているのかを知る機会は少ないです。そこで、メタバース工学部では法人会員の力をお借りし、企業のリアルな姿についてお伝えしています。
実際に企業ブースを訪れた、参加者の反応をお教えください。
まだ取り組みを始めたばかりで、進路への影響度合いがわかるのはこれからです。参加された生徒の方々からは「親から言われていた進路以外の選択肢が増えた」という感想や、保護者の方からも企業ブースに参加して、自分達が感じていた企業イメージとは全く違っていたことに驚いたという声も多くいただいております。
他にも、「学校では習わない企業の取り組みを知ることができて、新鮮だった」「国内の仕事しか考えていなかったが、世界で活躍できる仕事がたくさんあることを知った」「AIに仕事が奪われるどころか、人と人とのコミュニケーションが大事になると感じた」など、さまざまな学びと感想を共有していただいています。
工学に魅力を感じ、エンジニアリング的なアプローチのできる生徒を増やす
今回のイベントの舞台となった広尾学園 中学校・高等学校の理科部長で、イベント運営者のうちの一人である小島 雄紀氏に、イベント開催を決めた背景について伺いました。
開催に至った経緯を教えてください。
小島広尾学園はもともと理系教育にも力を入れています。中高6年間を通して、医系・理系大学への進学を目指す「医進・サイエンスコース」を設けているのもその一環です。過去には東京大学工学部を訪れ、実験をさせてもらったこともあります。そのようなつながりから、今回のイベントのお話をいただきました。
イベントの趣旨に共感をしたことはもちろん、これほどまでの規模のイベントを、学校を舞台に実施できる機会はめったにないと思い、開催を決めました。東京大学の教授や職員の方々の本気さを、ひしひしと感じましたね。
広尾学園は、大学や企業と連携したプログラムを実施することもありますが、「工学」といったように1つの分野にしぼり、さらに学校全体を使ったイベントは珍しく、とくに短時間で複数の研究内容や企業の取り組みを見ることができるイベントは初めてでした。生徒たちからすると、自分たちの学校で開催されていることで、より気軽に参加ができ、本音でのコミュニケーションがしやすいというメリットもあるのかなと感じています。

小島 雄紀氏
今回のイベントを通じて期待することを教えてください。
参加した学生にとって、進路選択の一助となる出会いがあるのではと期待しています。
これまでも、課外活動をきっかけに進路希望を変えた生徒は多く、今回のイベントでも同じようなことが起こると考えています。とくに今回は、大学関係者や企業関係者の方々が中高生にわかりやすく、かつ楽しく専門領域の話をしてくれているので、「工学」をより魅力的に感じる生徒が増えるのではないでしょうか。
今回のイベントで経験したことは、進路選択だけでなく仕事を始めてからも役に立つはずです。問題解決手段の一つとしてエンジニアリング的なアプローチを選択肢にもっておくことで、よりスムーズに、より楽しく仕事が進められるシーンもあると思っています。
SMBCグループは「銀行」を越え、幅広いソリューションを提案する
イベント当日は、SMBCグループのブースが設けられ、株式会社三井住友フィナンシャルグループ 経営企画部 前川 拓実氏による講演が、数回にわたって行われました。とくにイベント後半に設けられた20分間の講演の時間には、教室に入りきらないほどの参加者であふれ、人気を博していました。
その講演の一部をご紹介します。
前川皆さんは「銀行」と聞いて、どんなことをイメージしますか?駅前の支店、ATM、キャッシュカードなど、よく見かけるモノをイメージする方も多いのではないでしょうか。また、ドラマや本の影響で、「かたそう」「厳しそう」と思う方もいるかもしれません。今日は、「そうじゃないですよ」という話をさせてください。

私自身、普段は一見すると金融とは関係なさそうに思える仕事をしています。全社的なデジタル化と業務効率化が主な業務内容で、昨今話題の生成AIの導入や活用推進も私の部署で進めています。資料の翻訳や要約はもちろん、アイデアの壁打ちや、会議を録音・文字起こしし、その内容を生成AIに要約してもらうことで、会議に出ていない人でも内容をスムーズに把握できるようになる、といった使い方も可能です。
他にも、簡単なPC作業を自動化してくれるRPA、プログラミングの知識がなくてもアプリがつくれるツールなど、様々な技術を活用しながら会社全体のデジタル化を進めています。
さらに銀行っぽくない業務の例を挙げると、5月にオープンしたばかりのスターバックス併設の銀行窓口「Olive LOUNGE」、中高生でも受けられる新しい検定試験「金融リテラシー検定」や大人気ゲーム「Minecraft」の世界で金融が学べる教育教材「クエスト・オブ・ファイナンス」等の金融教育への取組、「みらい共創ファーム秋田」での農業への取組、メタバースやブロックチェーン等の新技術を活用した新規ビジネスへの取組などがあります。
参考:「みらい共創ファーム秋田」の関連記事はこちらよりご覧ください。
【SMBCグループが見据える農業の未来 vol.1】なぜ、金融グループが農業領域に注力するのか。
【SMBCグループが見据える農業の未来 vol.2】経験・ノウハウはデジタルで継承。SMBCグループがDXで紡ぐ今後の農業
実はSMBCグループが掲げる経営理念に、「銀行」「金融」という文字は1つも入っていません。少し前の採用サイトでは「かつては、銀行と呼ばれていた」という言葉を使っていました。私たちは「銀行」を越えて、新しい挑戦を続けています。SMBCグループのことを「幅広いソリューションをつくり、提供している会社」「社会やお客さまの成長を支えている会社」と、イメージをアップデートして帰ってもらえればと思います。
将来のキャリアを見据え、逆算した進路選択のきっかけを
講演後には、前川氏に今回のイベントや講演について、その意義や感想を聞きました。
「東京大学メタバース工学部×中高生 夏祭り in 広尾学園」の意義をどのように感じますか?
前川中高生の間から将来のキャリアについて考える機会があることは、生徒の方々にとって非常に重要だと感じています。私が中学生だったときは、将来の仕事について考える機会はほとんどなく、鉄道が好きだったので「鉄道に関わる仕事がしたいです」とぼんやり考えている程度でした。学生のうちからさまざまな仕事について知ることで、「興味があることに対してどのような関わり方があるか」までイメージすることができるのではないかと思います。
また、SMBCグループとしては「SMBC=銀行」という先入観を払拭する一つの機会にできるといいなと考えていました。金融以外の領域で新しい挑戦を続けている、「なんだか面白そうな会社」「よりよい社会づくりに貢献している会社」といった印象をもってもらえたら嬉しいですね。
ただ個人的には、一企業について知ってもらえることよりも、将来について考えるきっかけを与えることの方がイベントの意義としては大きいと感じます。なんとなく進路を選び、大学へ進学するのではなく、将来の選択肢を知り、未来からの逆算で進路を考えることは、進路選択のあるべき姿だと思っています。

前川 拓実氏
印象に残っている学生の反応があれば教えてください。
我々の仕事のなかでも、身近なところにある仕事を紹介したときは、反応がよかったです。実際に見たことや使ったことがあるサービスを紹介すると「それもSMBCがやっているのか」と驚かれました。特定のサービスについて、「どのような目的でつくったのですか?」「誰がよく使うのですか?」と質問をしてきた生徒さんもいて、興味の幅を広げることに、少しでも貢献できたのかなと思っています。
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株式会社三井住友フィナンシャルグループ 経営企画部
前川 拓実氏
2020年三井住友銀行入行。法人営業を経て、2022年より現職。従業員目線での各種業務効率化ツールの導入・利活用推進や従業員提言制度の運営、行内情報発信等を担当。
また、社内副業制度を利用してデジタル戦略部にて新規事業立案にも従事。 -
東京大学大学院工学系研究科メタバース工学部事務局
青木 緑氏
2024年1月より東京大学工学系研究科メタバース工学部に着任。前職では長年東大進学を目指す受験生の進学アドバイザーを担当してきた。長年の経験を活かしてメタバース工学部の中高生アウトリーチ担当として、中高との連携を深める業務に携わっている。
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広尾学園 中学校・高等学校 理科部長 教諭(理科・科学)博士(工学)
小島 雄紀氏
早稲田大学大学院 創造理工学研究科 博士後期課程修了後、2011年4月より広尾学園に着任。広尾学園 医進・サイエンスコース設立初年度から研究活動の指導等を担当。現在は、理科の教科部長として学校全体のサイエンス教育発展にむけても活動。