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中小企業の事業承継をサポート。SMBCグループが手がけるM&Aマッチングサービス「Alliance Research」

近年、中小企業経営者の高齢化が進むなかで、事業承継は重要な経営課題となっています。 事業承継を進めるためにM&Aを検討する中小企業は多く、ニーズは急拡大しています。しかしM&Aを検討する際に「何から始めたらいいかわからない」「誰に相談したらいいのかわからない」と悩む中小企業経営者は多くいらっしゃいます。

SMBCグループは過去30年以上にわたって多くのM&A案件に携わり、お客さまのニーズに寄り添ってきました。その豊富な知見と実績を活かし、新たなかたちでM&Aのお手伝いをするサービスが「Alliance Research」です。Alliance Researchは「M&Aをもっと“身近”な選択肢へ」をコンセプトに、事前の会員登録審査を通過した売手・買手企業の情報が掲載されたオンライン上のプラットフォームで、互いのニーズが合致すれば当事者間にてM&Aを進めることが可能です。

今回はAlliance Research誕生のきっかけや現状のニーズおよび将来の構想について、サービス構築および提供に携わった三井住友銀行法人デジタルソリューション部 上席部長代理 志村 佑輝氏と部長代理 植中 英樹氏に聞きました。

*こちらの取材は2023年3月8日に実施しています。所属および肩書きは取材当時のものです。

全国で中小企業経営者の高齢化および後継者不足が課題

Alliance Researchの概要について教えてください。

植中Alliance Researchは、M&Aや事業承継などの検討機会の場を提供する「プラットフォーム型のマッチングサービス」です。お客さま自身でパートナー探索を行い、ニーズが合致しそうな企業と無料でやり取りをすることが可能で、当行の法人口座をお持ちの全ての企業が申込いただけます。従来、M&Aや事業承継を検討する場合、税理士やアドバイザーへの相談をはじめ、心理的なハードルを感じるお客さまも多いかと思いますが、Alliance Researchでは「M&Aをもっと“身近”な選択肢へ」をコンセプトに掲げ、気軽にはじめの一歩を踏み出せるサービスです。

日本の中小企業の多くが後継者不足に悩んでいると聞きます。Alliance Researchを開発したきっかけもそこにあるのでしょうか?

植中経済産業省の発表資料によると、2025年までに70歳を超える中小企業・零細企業の経営者は約245万人となり、その約半数の後継者が未定になると予測されています。三井住友銀行は以前から各地の営業拠点を介してM&Aや事業承継の支援を行ってきましたが、人員的な限界もあり、すべてのニーズに応えるのは難しいという現状がありました。より多くのお客さまの事業承継問題やM&Aニーズを解決するためにAlliance Researchの開発に踏み切りました。

志村事業承継の問題は多くのお客さまにとって重要な課題の一つです。三井住友銀行は、一定の条件を満たすお客さまに対しては一企業につき一人の担当者がついて、さまざまな支援を行っております。企業ごとに担当者が付くことで財務状況をはじめ事業内容も把握できるため、安心して事業承継に関する相談をしていただけます。Alliance Research以外にもM&Aや事業承継を専門に担当する部署もあり、銀行全体として事業承継に取り組んでいける体制を整えています。

後継者不足の解決から優秀な人材確保まで、M&Aのニーズはさまざま

皆さんどのような目的でM&Aを行っているのでしょうか?実際に登録している企業の傾向、人気の業種などがあれば教えてください。

志村事業承継以外にも、事業を拡大するために「優秀な人材を確保したい」、「自社にない技術やブランドをもった企業とタッグを組みたい」といった目的でM&Aを行う買手企業は多くいらっしゃいます。Alliance Reserachには、中小企業から、名前を聞けば誰でも知っているような大企業まで、さまざまな企業にご登録いただいています。業種としてはITや建設、飲食に関連する企業が多い傾向ですね。

その他にも、開業するために許認可が必要な業種も人気があります。例えば、調剤薬局を開業するには薬局開設許可の申請が必要ですが、M&Aで調剤薬局を営む企業を買収すれば新たに申請することなく事業を継続できます。M&Aは、人材や技術の確保だけでなく、時間を買うといった視点でも有効な戦略です。

Alliance Researchは無料で会員登録が可能ですが、プラットフォーム上に掲載されている会員企業の情報を閲覧するだけのような使い方でもいいのでしょうか?

志村Alliance Researchにはメガバンクである当行の審査を通過した会員企業の情報のみが掲載されていて、会員だけが閲覧可能です。売手企業にとっても、買手企業にとってもそれらの情報を知ることは価値があると思います。より能動的にM&Aを進めたいというお客さまは、プラットフォーム上で情報を掲載している企業とチャットで情報交換もできますし、専門家のアドバイスを希望する企業には提携している税理士法人の紹介も行っています。

植中利用方法も企業によってさまざまです。たとえば売手企業の場合、頻繁にログインして買手企業が掲載した買収ニーズを確認する企業もいらっしゃれば、売却ニーズを登録したあとは完全に買手企業からの連絡待ちの姿勢に徹する企業もいらっしゃいます。Alliance Researchには全国各地の企業が登録していますので、リアルでは生まれない新しいつながりが創出される可能性もあります。

Alliance Researchの登録後の具体的な利用方法について教えてください。

植中無料の会員登録をしていただいた後、売却・買収ニーズの情報を登録・掲載します。この時点では匿名での掲載となりますのでご安心ください。その匿名情報に興味を持った企業からチャットが届いたら、ご自身のニーズに合致する企業かどうかを判断いただくことになります。もちろん、ご自身で他の企業にチャットを送ることも可能です。

チャットでのやりとりを経て具体的な話し合いに発展する際は、Alliance Researchの外で直接やりとりしていただき、成約に至った場合には、買手企業から成約価格の3%を手数料としていただいています。売手企業は成約まで無料で利用でき、買手企業から成約時にいただく手数料も一般的なアドバイザリー手数料よりも安価です。

匿名性は守られているということですね。運営側にはどの程度の情報が見えているのでしょうか?

植中Alliance Researchを担当している一部の従業員を除いて、当行従業員はAlliance Researchを見ることができないようになっています。企業・事業を売りたい・買いたいというニーズは非常にセンシティブな情報であり、必要最低限の従業員のみが見られるように情報管理を徹底しています。

敵対的買収ではなく、M&A後も協力関係を築くのが日本流

かつてのM&Aには「敵対的買収により企業が乗っ取られるのでは?」といった負のイメージもありました。そういったイメージはだいぶ改善されてきているのでしょうか?

志村私がM&Aの仕事に携わるようになった2010年当時は、ネガティブなイメージがあったのも事実です。M&Aの部署に在籍していることが知られただけで、お客さまから警戒されてしまうこともありました。しかし今では、M&Aに関するオンラインサービスも増えてきており、M&Aが事業拡大や事業承継の一つの手段として一般的になってきました。

当時は、買収された企業の従業員がリストラされてしまう、というようなイメージが一人歩きしていた側面もあります。そういった事例がないとは言い切れませんが、これまでの日本のM&Aにおいて敵対的買収は多くありません。私が携わってきた案件では従業員の雇用はもちろん、経営陣にも残ってもらい、買手企業とうまく連携してやっていくというケースが多くありました。

時代とともにM&Aのニーズも変わってきているわけですね。

志村昨今ではコロナ禍の影響などもあり「事業を親族に引き継いでもらうのは難しい」「親族に苦労をさせたくない」と判断した経営者が第三者に売却するケースも増えてきました。
また、M&Aと聞くと企業を丸ごと譲渡するイメージがあると思いますが、事業単位での譲渡もあります。複数事業を手がけている企業であれば、事業Aだけを譲渡して、事業Bへの投資に充てるといったケースなどはよく見られます。

30年以上M&Aに携わってきた経験をもとに、オフラインでのサポートも視野

事業承継の課題も含めて、Alliance Researchをどのようなお客さまに知ってほしいですか?

志村Alliance Researchに登録したからといって必ずM&Aをしなければいけない、ということはありません。まずは売却・買収ニーズを掲載してみて「自分の企業にはどのような企業から声がかかるのか」「企業・事業の何を評価してもらえたのか」を確認していただくだけでもメリットがあると思います。売却・買収ニーズが明確なお客さまはもちろん、M&Aを考えているけれど、まわりに相談できる人もいない、そんな最初の一歩を踏み出せないお客さまには、ぜひとも使っていただきたいですね。

植中事業承継やM&Aについて「誰かに相談するほど気持ちは固まってないけれど情報収集してみよう」「選択肢の一つとして登録してみよう」など、まずは気軽な気持ちで会員申込・利用していただければと思います。特に売手企業の経営者の方は、理由はなんであれセンシティブな気持ちになることもあるかと思いますので、より身近な選択肢として『Alliance Research』をぜひ知っていただきたいです。

志村M&Aの初期的な相談や税務の相談に乗ってくれる税理士法人もご紹介できますし、今後もお客さまにご満足いただけるサービスを提供できるよう努めてまいりますので、Alliance Researchで最初の一歩を踏み出していただけると嬉しいです。

今後の展望について教えてください。

志村SMBCグループは、M&Aに30年以上関わっており、2018年から2020年の3年間は、関与した日本企業関連M&Aの件数でランキング1位となりました。また、30年以上の経験で培った豊富なM&Aのノウハウに加えて、日々お客さまに接している法人営業部の行員たちは、誰よりも深くお客さまのことを理解しています。このような他にはない強みを活かして多くのお客さまのサポートを続けていきます。

さらにM&Aの過程では、どうしても人の力を借りたいというニーズも出てくるでしょう。そのニーズに対して三井住友銀行の行員が適切にサポートできる枠組みがあれば、よりいっそう完成されたサービスになると思います。今後は、Alliance Researchをオンラインとオフラインのハイブリッドなプラットフォームにしていくことも視野に、さらにサービスを拡充させていく予定です。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 三井住友銀行 法人デジタルソリューション部 上席部長代理

    志村 佑輝氏

    2008年に三井住友銀行へ入行。
    法人営業部にて、法人取引に従事した後、SMBC日興証券、コーポレート・アドバイザリー本部 第三部、企業情報部にてM&Aアドバイザリー業務に従事。
    上場企業を含む多くの企業のM&Aに関与し、成約実績多数。
    2020年より法人デジタルソリューション部にて現職。
    法人向けデジタルサービスの企画・開発業務に従事し、直近ではM&A情報掲載サイト「Alliance Research」と衛星データ分析サービス「ジオミエール」等を推進。

  • 三井住友銀行 法人デジタルソリューション部 部長代理

    植中 英樹氏

    2014年に三井住友銀行へ入行。
    法人営業部での法人取引、IT企業(取引先出向)での出資・グループ会社統制など経営企画業務を経て、経営企画部にて全国銀行協会や関係官庁の対応などに従事。
    2020年より法人デジタルソリューション部にて、法人向けデジタルサービスの企画・開発業務を推進し、直近ではM&A情報掲載サイト「Alliance Research」や法人向けオウンドメディア「Business Navi」のプロジェクトリーダーに従事。

この記事でご紹介したサービス
プラットフォーム
(Platform)

類義語:

サービスやシステム、ソフトウェアを提供・カスタマイズ・運営するために必要な「共通の土台(基盤)となる標準環境」を指す。