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SMBCグループ初、公募での社長抜擢。「日本の再成長」をDXによる業務効率化で支援する新会社「BPORTUS」

コンビニで公共料金などを支払うときの払込票をペーパーレス化する「PAYSLE(ペイスル)」を提供する「ブリースコーポレーション」と、決済まわりの業務効率ソリューションを提供する「NCore」。ともに、SMBCグループとNECグループの共同出資会社であった2社が合併し、2023年7月1日に誕生した新会社が「BPORTUS(ビーポータス)」です。

この新会社の社長に就任した田中 一基氏は、SMBCグループが従来取り組んでいる「社長製造業」の一環として、グループ初の社長ポストがグループ内公募にて選出されています。

主に決済系のサービスを提供してきた2社が合併することで、どんなシナジーが生まれたのでしょうか。2023年7月より株式会社BPORTUSの代表取締役社長に就任した田中 一基氏にお話を伺いました。

決済に関連する業務をデジタルの力で効率化

ブリースコーポレーションとNCoreが合併し、BPORTUSが誕生することになった背景を教えてください。

ブリースコーポレーションとNCoreはともに、SMBCグループとNECグループの共同出資会社です。

これまでブリースコーポレーションは、独自の技術力を活かし、コンビニでの払込票のペーパーレス化サービス「PAYSLE(ペイスル)」を提供してきました。「PAYSLE」は、コンビニで公共料金などを支払う際に必要な紙の払込票を、スマートフォン上のバーコードに置き換えるサービスです。従来は払込票を持っていって現金で支払いを済ませ、控えをもらうといった流れでしたが、「PAYSLE」を使うとスマートフォン上のバーコードを見せて現金で支払いを済ませるだけになるので、半券の管理や払込票の紛失などもなくなり、ペーパーレスにつながります。

一方、NCoreはお客さまが抱える企業間の請求・回収分野などの経営課題に対して、SMBCグループとNECグループのノウハウを組み合わせて個々にカスタマイズされたソリューションを提供してきました。両社ともに決済関連の業務をメインにしており、両社のビジネスが形になってきたタイミングでさらなる成長を目指すために合併という形を取りました。

ビジネスの港となり、あらゆる企業をつなげていく

BPORTUSという特徴的な社名の由来についても教えてください。

ビジネスの「B」とラテン語で港を表す「PORTUS」を組み合わせました。港のように多くの企業とビジネスが行き交う場所になる、という意思が込められています。社名の冒頭三文字が「BPO」になっているので、私たちが目指す「デジタルを活用したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)※」を行っていくというイメージも浸透させていきたいと思っています。

※BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング):企業活動における業務プロセスの一部について、業務の企画・設計から実施までを一括して専門業者に外部委託すること。

BPORTUSとして、どのような事業を手がけていきたいと考えていますか?

「PAYSLE」についてはNCoreが得意とする決済ソリューションと連携して、シェアの拡大を目指します。NCoreはこれまで、お客さまごとにカスタマイズしたサービスを提供してきましたが、それには多くの時間と手間を要します。NECグループの知見を活かすことで、BPORTUSで予め標準的にご利用いただけるサービスを整備し、その組み合わせで提供する形に変化、発展させていきたいと考えています。さらには、SMBCグループとNECグループ、パートナー企業の皆さまと連携することで、これまでの事業にとらわれない新しいビジネスも視野に入れています。軸となるのはお客さまの業務効率化、業務改善に資するサービスです。デジタルの力を活用して今まで以上の業務効率化を実現していきます。

BPORTUSだからこそ提供できる価値には、どのようなものがあるでしょうか?

そうですね。私はSMBCグループの中でお客さまの企業価値を上げるための支援を10年近く続けてきましたが、ずっと感じてきた次のような問題意識があります。

なんらかの課題を解決しようとする際に、予算も潤沢にある企業はコンサルティング会社に一気通貫で依頼するでしょうし、社内の業務が整理されていて課題が明確な企業はBPO業者にアウトソーシングするでしょう。しかし、私のこれまでの経験からすると、コンサル会社に支払うほどの予算はないが自分たちでの課題解決は難しい、といった企業が多く存在しています。
私たちはお客さまの業務と世の中のサービスソリューションの双方を理解しているからこそ、そういったお悩みを抱えている企業の支援ができると思いますし、それがSMBCグループとしてこれから提供していくべき、金融+αの支援だと思います。

「社長製造業」として初、グループ内公募による社長選出

今回、田中さんはSMBCグループで初めて、公募で社長に選出されたと伺っています。この取り組みは、金融というカラを破ってチャレンジする従業員を支援し、社内ベンチャーの社長に抜擢する「社長製造業」の一環とのことですが、田中さんが新会社の公募に応募された理由を教えてください。

長年、お客さまの支援をするなかで、何人もの社長を見てきました。なかには、事業の再生に取り組まれていた社長もいらっしゃいます。しかし、私は長い間お客さまに寄り添ったサポートを続けてきたといっても、金融機関はお客さまの事業に対して外部からしかアプローチができません。外から根本的に会社を変えるのは難しく、やはり社長こそが最も不安定なリスクを背負い事業に取り組んでいると思います。

当然、従業員もいろいろなアイデアを持っているでしょうから、さまざまな意見がでてきます。それらを吟味し、不確実な物事に対して最終的に意思決定をするのが社長の役割です。不確実な物事にチャレンジし続ける社長を、金融機関はもっとリスペクトするべきだと思うようになりました。自分も早く社長業にチャレンジしたいという想いがどんどん高まってきたタイミングで、たまたま社長公募の話がありました。

SMBCグループには多くのソリューションがあります。それらを活用しながら社長業ができることは非常に魅力的です。しかも、私が関心を持っていた「生産性を高める」ためのビジネス領域での公募です。即日、説明会に応募しました。面接では「ブリースコーポレーションとNCoreという二つのビジネスベースにして、SMBCグループとNECグループとの連携をどの様に進めていくのか?」といったことを、描いているビジョンと想いの丈を語りました。それに共感いただけたのかなと思っています。

対話重視のマネジメントで、社員のパフォーマンスを最大化

2社が合併した新会社において、社長としてどのようなマネジメントをしていきたいと考えていますか?

対話を重視していきたいと考えています。その一環として、まずは全社員と30分の個別ミーティングを行いました。私は現在41歳ですが、社内では半数以上が年上であり、部長ポジションは全員が年上です。さらに私自身が決済ビジネスに特化したキャリアを歩んできたわけではないので、専門外のことも多くあります。自分以上にプロフェッショナルな知識を持つ人が多く、かつ異なる業界を経験してきた社員が混ざり合う中で、全員が最大限のパフォーマンスを発揮してベクトルを合わせられるよう、対話を重視して全体最適のマネジメントをしていきたいと考えています。

今後のキャリアはどのようにお考えでしょうか?

私は一生、社長業をやりたいと思っています。今は人生100年時代などといわれていますが、私は80歳まで社長業をやりつづけるのが目標です。

「日本の再成長」のために。DXによる業務改善支援に邁進

BPORTUSとしての今後の展望を教えてください。

当社の推計では、現在、国内の主要コンビニで年間12億件もの払込票による支払いが行われています。対してバーコード化は未だ数%にとどまっていると考えています。ここに大きなチャンスがあるので、さまざまなパートナーと連携しながら、まずは「PAYSLE」のシェアを20%に伸ばすのが目標です。世の中がペーパーレス化に進めば「PAYSLE」のようなサービスは一気に浸透する余地があるでしょう。10年後も紙の払込票が主流という世の中は想像しにくいので、SDGsの観点からも電子化を進めていきます。

NCoreのサービスもお客さまにとって非常に価値のあるものだと思いますので、今以上に多くのお客さまに導入いただきたいですね。

SMBCグループでは、取り組むべき重点課題の一つに、「日本の再成長」を掲げています。私はこれにとても共感しておりまして、BPORTUSとしても「日本の再成長」に貢献していきたいと考えています。

銀行グループだからこそ、お客さまが抱える経営課題を直接伺うことが多々あります。しかし、経営課題を解決するための社内リソースが足りていない企業も数多くあります。手間のかかる間接業務を私たちが請け負うことで、お客さまが成長するための余力を生み出す支援をしていく。これがBPORTUSの重要な役割だと考えています。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 株式会社BPORTUS(ビーポータス)代表取締役

    田中 一基氏

    2006年株式会社三井住友銀行入行。法人営業や融資先経営支援を中心にキャリアを積み、2020年からは株式会社SMBCキャピタル・パートナーズに出向し企画部長、投資第一部部長を経験。2023年7月より株式会社BPORTUSの代表取締役社長に就任。

この記事でご紹介したサービス
DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。