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JTBが修学旅行返金業務をDX。SMBCと業務提携するウェルネットの「送金サービス」を導入した理由

三井住友銀行の業務提携先であるウェルネットが提供する「送金サービス」はあらゆるシーンで送金の効率化を図り、付随作業や費用の削減を実現するサービスです。全国各地の教育旅行業務を手がけるJTBも同サービスを導入することで、長年にわたり抱えていた修学旅行後の返金業務の課題を解決しようとしています。政府の掲げる「働き方改革」やコロナ禍により顕在化した業界特有の問題に対し、三井住友銀行はどのようなソリューションを提示したのでしょうか。JTB、三井住友銀行、ウェルネット三社の関係者から意見を伺いました。

アナログで負担が大きい修学旅行積立金の返金業務を効率化

修学旅行などの教育旅行に関する業務が従来から抱えていた課題を教えてください。

JTB 横山修学旅行の費用は、実施1年以上前から積み立てて、旅行終了後に生徒の保護者に差額を返金するという仕組みになっていることがほとんどです。返金と一言で言っても、1校あたり数百名の参加者全員に対して作業が発生するので、大きな負担となっていました。コロナ禍により一時的に修学旅行の件数は減りましたが、中止に伴う全額返金作業、政府の「全国旅行支援」による旅行代金との差額返金なども発生して、社内の返金にまつわる事務作業はひっ迫した状況でした。

従来の返金業務は基本、アナログな形で行われていたのでしょうか?

横山そうですね。差額分の現金を生徒毎に封筒に小分けにし、学校へ持参するケースも多くありました。また、銀行振込の場合でも返金先である口座情報の取得が大きな手間になっていました。すぐにご提出いただける方もいれば、情報を教えていただくまでに時間を要する方もいたり、口座情報が間違っていて二度手間になったりとさまざまな問題がありました。ある程度の口座情報を集めてから皆さまに返金を行いますので、早めに情報をご提出いただいた方をお待たせしてしまうこともありました。

SMBCグループはこれらの課題に対してどのようなアプローチをしたのでしょうか?

SMBC 椎根本課題をJTBさまよりお伺いしたのが2022年の4月頃です。以前よりJTBさまは膨大な返金作業についてマンパワーで乗り越えてきましたが、コロナ禍による業務負担増加や国を挙げて推進されている働き方改革を背景に、なんとか業務効率化により解決しなければいけない課題として顕在化してきました。そのため、すぐに行内で情報共有をし、最適なソリューションを見つけ出すだけでなく、ニーズに合った形でサービスを導入する必要があるとウェルネット社とともにご提案させていただきました。

ウェルネット社が提供する「送金サービス」の概要を教えてください。

ウェルネット 宮本私どもの送金サービスは、返金やキャッシュバックをはじめとする送金を効率化するサービスです。受け取る方法は銀行口座への振込、コンビニ店舗での現金受け取り、Amazonギフトカードでの受け取りなどがあります。

SMBC 三和以前は「ネットDE受取サービス」という名称で提供していましたが、銀行以外のプレイヤーが送金サービスに参入してくるようになり、より利便性の高いサービスが求められるようになりました。そこで幅広いお客さまのニーズに応えられるよう、今年の2月より、ウェルネット社との業務提携内容を見直し、銀行口座振込以外にも受け取り方法がある送金サービスを当行から紹介できるようにしました。
送金にはいろいろな形があります。今回の送金サービスは、通信販売での返品や個人売買でのやり取りから、大型のライブイベントのキャンセル時に発生する返金まで、多岐にわたって対応できます。

ウェルネット 吉田「返金」だけではなく使えるニーズが多くあるということで、「送金サービス」という名称で提供しています。

受け取り方法が銀行口座以外にも増えて、コンビニやAmazonギフトカードでの受け取りも可能になったんですね。

三和例えばとあるスマホゲームのサービス自体が終了するときに、それまで貯めたゲーム内でのポイントを返金する際は、銀行振込よりもコンビニやAmazonギフトカードでの受け取りのほうがユーザーの年齢層的に喜ばれるかと思います。この送金サービスはお客さまのユーザー層や返金シーンに合わせ、非常にフレキシブルにご利用いただけるサービスです。

「働き方改革」の時代に応じて、超過勤務を是正

修学旅行の返金業務にまつわる課題を解決するソリューションとして、ウェルネットの「送金サービス」を採用された理由を教えてください。

横山今回は三井住友銀行さまだけでなく、我々とお取引のある他の銀行さまからもご提案をいただきました。そのなかで三井住友銀行さまとウェルネットさまが優れていたのは「提案スピードの速さ」と、我々の課題に対する「的確な解決法の提示」です。弊社としてもこれまでさまざまな他社システムを導入してきましたが、なかには発生したトラブルについての対応が遅かったり、的を射ない回答を繰り返したりする業者もありました。

その点、三井住友銀行さま、ウェルネットさまとは事前に入念にヒアリングを重ね、非常に心強いご提案をいただきましたので、そういった姿勢も導入後の安心感につながりました。

椎根教育旅行を担当するJTBさまの支店は全国に80数カ所存在しています。年間100万人近い学生さんの修学旅行を取り扱っており、返金業務についてはそれぞれの支店のやり方もありますので、送金サービスを導入するにあたっても一筋縄では行きません。しかし、ウェルネット社が開発した送金サービスは柔軟なカスタマイズが可能であり、そういった個々のニーズにも応えられた点を評価していただけたと考えています。

今回の送金サービスを導入することで、どのくらいの業務効率化が図れるのでしょうか?

横山一番大きいところは労働時間の短縮ですね。勤務時間が減ればそれだけ費用も削減されますから、数千万円単位の削減につながると予想しています。働き方改革では長時間労働の是正が掲げられているので、その実現に向けての大きな一歩になったかと思います。

脱アナログ作業で、情報のミスや記入漏れを防ぐ

社内からはどのような反響がありましたか?

横山以前から返金業務を効率化するシステムについての要望は多く挙がっていました。特に大阪や札幌などの支店では単独で返金業務効率化のシステムを導入する動きがあったので、今回の送金サービスを導入する前よりヒアリングを重ねて社内の意見を吸い上げてきました。先日開催した社内向けの説明会では非常に多くの支店から問合せが来ましたので、潜在的なニーズは非常に高かったと感じています。

ちなみに、旅行業界全体におけるDXの推進度はどのくらいでしょうか?

横山弊社の代表である山北は「DXを含めたデジタル化を社として推進していく」と明言しています。ただ、どうしても旅行業界、特に教育旅行のマーケットではDXの取り組みがまだまだという状況です。とりわけ公立学校では紙の資料が多く、電子化の導入が遅れていることが課題となっています。若い世代の教員の方はITへの理解もありますが、公立学校全体で見るとDXという概念はまだまだ浸透していないのが現状です。

生徒の保護者の負担はどのくらい減るのでしょうか?

横山これまで保護者の方が口座情報を学校に伝えるには、手書きの記入用紙を回覧板のように回して学校に提出していました。非常にアナログな作業なので記入漏れやミスも多く、個人情報の観点からも高いリスクがありました。送金サービスの導入で、そういった煩雑な手間が大きく解消され、学校としても返金業務については電子化の導入を望んでいたので、とても好意的に受け入れられています。

椎根今回の送金サービスでは、まず保護者の元に専用のハガキが届きます。そこで「銀行受け取り」か「コンビニ受け取り」かを選択いただき、「銀行受け取り」を選んだ場合は専用のURLから口座番号を入力して終了です。他人に個人情報を開示することもなく、自動的に返金が完了します。学校も専用のハガキを送るだけなので、これまでのような手間もありません。

専用ハガキ以外の伝達手段はないのでしょうか?

椎根メールでもいいのですが、実は事前にメールアドレスを学校に伝えている保護者はまだまだ少ないとのことでしたので、現状はハガキがメインとなっています。もちろんメールでの対応も視野に入れています。

今後は教育旅行以外のマーケットにも進出

今年の2月から三井住友銀行とウェルネット社は、送金サービスに関する業務提携を開始したということですが、今後はどのような企業に同サービスを使ってほしいと考えていますか?

三和送金サービスは通販やイベントキャンセル時の返金、スマホゲーム等でのポイント返還、キャッシュバックキャンペーンでの利用に加え、今回のJTBさまでも一部実施されていた現金払いのキャッシュレス化も実現可能なサービスですので、そういったBtoC事業を手がけている企業さまを中心に、幅広くご活用いただけるサービスだと思っています。当部としては、今回のような送金に関する課題解決に留まらず、社内DXやキャッシュレス推進等、これからもそれぞれのお客さまの課題と真摯に向き合いながら、SMBCグループやウェルネット社をはじめとする提携先のソリューションを最大限活用して、お客さまにとって最適なソリューションをご案内できるようこだわっていきたいです。

横山返金以外にも想定されるシーンは多々あります。例えば大人数を対象に現金を直接手渡す場面などでは、現金を用意して封筒に小分けして手渡しをするという諸々の作業に加えて、現金を取り扱うリスクもあります。そういった場面で送金サービスを導入していただければ、業務効率化とリスクの低減が見込めます。

現金の手渡しではなく個人間で口座振込をする場合も、口座番号を聞く手間がありますので、送金サービスを導入する余地はあるかと思います。実際に社内でも教育旅行を扱ってない支店からの問い合わせがありました。

宮本JTBさまをはじめとする旅行会社は「BPO※(Business Process Outsourcing)業務」として、さまざまな自治体や行政の事業を受託されています。具体的には、コロナ禍での給付金や協力金の事務局運営、振込代行などです。そこでの振込や返金対応にも今回のサービスは活用できるかと思います。

※BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング):企業活動における業務プロセスの一部について、業務の企画・設計から実施までを一括して専門業者に外部委託すること。

送金サービスを開発したウェルネット社として、今後の展望を教えてください。

宮本このBPOの中に送金サービスを組み込むことで、効率的かつ低コストに事業を受託できる可能性が広がります。新たなサービスを一緒に生み出していけるようなお客さまにご活用いただければと思います。

ウェルネット 髙沼今回SMBCグループと共にサービスを提供していくことにより、日本全国の多くの企業が抱えている顕在化されてない送金における課題を抽出できれば、さらなるサービスのブラッシュアップにつながると考えております。ぜひ、今後ともご一緒できればと思います。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 株式会社JTB ビジネスソリューション事業本部 管理担当マネージャー

    横山 賢一氏

    1989年大学卒業後、株式会社JTBに入社。法人営業を経て管理部門の業務指導に着任、8年目となる。個所の適正な業務遂行の為に個所指導、相談を行う。

  • ウェルネット株式会社 決済イノベーション推進部 部長

    宮本 恵里氏

    2022年入社。現 決済イノベーション推進部長。

  • ウェルネット株式会社 決済イノベーション推進部 第二グループ長

    髙沼 利光氏

    2018年入社。現 決済イノベーション推進部第二課長。

  • ウェルネット株式会社 決済イノベーション推進部 第二グループリーダー

    吉田 仁氏

    2013年入社。現 決済イノベーション推進部第二課リーダー。

  • 三井住友銀行 トランザクションバンキング営業部 部長代理

    三和 伊織氏

    2012年入行。梅田法人営業第二部にて法人営業に従事した後、2015年1月より、決済業務部(現トランザクションバンキング営業部)に着任。同部にて、決済ビジネスを専門領域とした営業推進や推進企画業務に従事。

  • 株式会社三井住友銀行 本店営業第七部 部長代理

    椎根 康太氏

    2012年入行。上野法人営業第一部、赤坂法人営業部にて法人営業に従事した後、2019年10月に本店営業第七部に着任。

DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。