導入事例
new
更新

SMBCグループが支える地域金融機関DX。蒲郡信用金庫、DX推進の歩み

愛知県蒲郡市に本店を置く蒲郡信用金庫。2023年3月、課題であった「金庫全体のDX推進」「非対面チャネルの充実による利益構造の再構築」を進めるため、SMBCグループの支援のもとデジタル推進部を立ち上げ、立ち上げから数ヶ月で新しい取り組みを次々と進めています。

同金庫にとって前例のない挑戦はどのように進んだのでしょうか。
今回は蒲郡信用金庫デジタル推進部の部長である鈴木正之氏、主任調査役の山口健太朗氏、調査役の荒田正次氏、そして三井住友銀行 豊橋法人営業部の石井建幹氏にお話を伺いました。

「新規顧客接点の創出」「既存顧客への伴走時間拡大」を同時に満たすDX

今年に入ってからDXへの取り組みが加速している背景には何があるのでしょうか?

鈴木地域経済にこれまで以上に貢献したいという思いです。2023年は蒲郡信用金庫にとって創立75周年を迎え、新3カ年経営計画『Do The Best!3ヵ年経営計画』をスタートさせた年でした。この新3ヵ年計画の最終年度目標では「断トツ!!に信頼される地域の伴走支援者『がましん』」を掲げております。

今、金融業界ではメガバンクを中心にDXが進み、若い世代を中心にバンキングアプリやインターネットバンキングなど、非対面ツールの利用者が増えています。蒲郡信用金庫でも若年層を中心に来店客数は減少傾向にあることから、今後の店舗施策や営業戦略として「金庫全体のDX推進」と「非対面チャネルの充実による利益構造の再構築」は必須でした。

山口新しい取り組みへ積極的にチャレンジしつつも、地域に根付いた信用金庫ならではの強みの一つ、フェイス・トゥ・フェイスでのお客さまとのコミュニケーションは続けていくべきだと考えていました。そのため、お客さまに寄り添いながら伴走支援できる時間を増やす手段としても、DXによる業務効率化は必要だと思っていました。

鈴木愛知県にはデジタル推進に本気で取り組んでいる地域金融機関はまだ少ないです。とくに我々が拠点としている東三河ではDXの取り組みはほとんど聞きません。今から本気で取り組めば、この領域で先駆者になれる可能性は十分にあります。ならば、早いうちからチャレンジをすべきだという想いもDXへの取り組みを進めた背景にはありました。

本質的なDXを進めるため、部署横断的に動ける専門部署を設立

三井住友銀行は、蒲郡信用金庫が目指す「金庫全体のDX推進」「非対面チャネルの充実による利益構造の再構築」といった目標を聞いて、まず何を提案したのでしょうか?

石井最初は情報提供からスタートしました。蒲郡信用金庫として明確な方針があったので、DXの全国的なトレンド、他の金融機関での取り組み事例など、SMBCグループの知見を活かしながら、参考になりそうな情報を紹介しました。そのなかで、DXを強力に推進させる手法の一つとして「専門部署の立ち上げ」の話もさせていただきました。

蒲郡信用金庫として、デジタル推進部の新設を決めたきっかけは、石井さんとの会話だったのでしょうか?

鈴木そうですね。話を聞いてすぐに取り組み始めたわけではありませんが、間違いなく参考にはなりました。

実は石井さんと話をした後、最初に注目したのは、金庫内の契約を電子化する「SMBCクラウドサイン」でした。なかでも我々のDXに向けた取り組みを大きく前進させるきっかけになったのは、蒲郡信用金庫本部にある13部署の代表者を集めたDXに関する説明会を開催したことです。

説明会を通して、全部署とDXの導入に関する意見交換ができ、改めて各部署が何を求めているのかを認識できました。その結果、ただデジタルツールを導入して終わりではなく、本当の意味でのDXを実現するには組織横断的に動き、部署同士をつなぐ部署が必要だと感じたのです。その経験が、デジタル推進部の立ち上げにつながりました。

石井DX推進のよくある失敗として「何を導入するのか」から考え始めてしまうことがあります。ただ、蒲郡信用金庫さまは初期の段階から、金庫としてあるべき姿を見定めようとされていて、本当に素晴らしいなと感じていました。

デジタル推進部を新設する上で、それぞれ大変だったことや工夫したことを教えてください。

山口そもそも何が大変なのかがわからないというところからのスタートでした。各種デジタルツールについてのリサーチから始めて、自分にできることを模索しました。我々が何をすべきなのかを導き出すため、県内で最もDXが進んでいる別の信用金庫に情報交換をお願いしたこともあります。何をしたのか、何に苦労したのかを教えていただき大変勉強になりました。

鈴木私がデジタル推進部に配属されたのは山口さんよりも数ヶ月後で、すでに部内の規定や権限の整理が一段落した後だったため、山口さんほど立ち上げの苦労はなかったと思います。

ただ、やはり何に取り組むべきなのかを決めることは難しかったです。参考意見を集めるため、本部にある全部署の部長に直接話を聞きに行きました。「現在の業務で何に一番時間がかかっているか」「どのように効率化すると良いのか」「どうすればもっとお客さまと関わる時間を増やせるのか」何度もヒアリングと部内での議論を重ねながら、ようやく少しずつ取り組むべき施策が見えてきました。

現在は、出てきたアイデアを各部署と調整をしつつ実装を進めているところです。定期的に三井住友銀行の担当者の方と連携し、我々がやりたいことを実現するのに最適な手法をご提案頂いています。

荒田今は導入を検討しているツールのベンダーさんと話をしたり、部内のメンバーと打ち合わせを重ねたりしながら、デジタル推進部の方向性を理解している真っ最中です。鈴木さん山口さんとは少し違う目線で、全体を俯瞰しながら2人のサポートをしています。

SMBCグループのトータルサポートにより、多方面からのDX施策を同時進行

現在、SMBCグループと一緒に取り組んでいる施策について教えてください。

鈴木まずはいくつかのDXツールの導入支援です。SMBCグループのDXコンサルサービスを手がけるプラリタウン社にサポートいただき、我々が吸い上げた現場の課題を解決するための手段についてご提案をいただいています。

具体的に導入の検討が進んでいるDXツールに、SMBCグループのポラリファイ社が提供するオンライン本人確認サービス「Polarify」があります。

これまでの本人確認では、我々からお客さまにDM(ダイレクトメール)を送り、必要な書類を用意してもらったり、専用用紙に記入してもらったりしてもらっていました。非常に手間がかかっていましたし、お引っ越しをされていてDMが届かないこともよくありました。

「Polarify」を導入すると、本人確認手続きがWeb上で完結できるようになり、我々からDMを送る必要がなくなります。お客さまにとっても、わざわざ紙で書類を揃える必要がなくなり、スマートフォン一台で手続きが完結できるようになるので、非常に便利になります。

似たような他社サービスも検討しましたが、偽造への対策が不十分に感じたり、画像のアップロードに時間がかかったりと気になる部分があり、結局「Polarify」が一番良いと判断しました。

他にも、先ほどお話しさせて頂いた「SMBCクラウドサイン」や、完全非対面で取引が可能なポートフォリオ型ファクタリング(保証)のオンラインサービス「Amulet」の導入検討も進めています。

SMBCグループの印象について教えてください。

鈴木SMBCグループは、金融業界のDX分野において間違いなくトップランナーであると思っています。様々な取り組み事例があることはもちろん、我々のような他の地域金融機関におけるDX支援も行っていて、膨大なノウハウが蓄積されています。金融の現場に広がっているリアルな課題を解像度高く認識されていて、それぞれの課題に対する解決策も精度の高いものを複数持っています。

我々だけで課題解決の方法を調べると、最適な手法の発見にも、ベンダーの選定にも時間がかかってしまいます。しかし、SMBCグループの担当の方に聞くと、あっという間に精度の高い情報を展開してもらえ、これまでかかっていた時間が馬鹿らしくなるぐらいです。

山口グループ全体で連携をしながらトータルサポートをしていただいていることにも非常に助かっています。「もっとこのツールについて詳細を知りたい」と連絡をすると、すぐにグループ会社の担当者を紹介してもらえ、我々から連絡をしたその日中にはミーティングがセットされます。SMBCグループ全体でトータルサポートをしてくれるからこそ、立ち上げ間もない新部署でも、同時多発的に複数施策に取り組めているのだと思います。

地域の中で、DX領域でトップを走る信用金庫に

蒲郡信用金庫として今後、SMBCグループに期待することはありますか?

鈴木今後、DXは間違いなく金融業界に浸透していくと考えています。そんな状況の中で、先駆者にサポートに入っていただいていることは心強く、今後も的確なアドバイスをいただけるパートナーとして関係性を深めていければと思っています。

石井蒲郡信用金庫さまは、長年地域のために尽くしてこられ、地元の方々の圧倒的な支持を獲得されています。そんな蒲郡信用金庫さまにSMBCグループのサービスを導入いただくことで、我々のサービスを東三河の方々にお届けできます。販売パートナー連携も視野に入れつつ、今まで以上に良い関係を築いていければと思います。

今後の展望についてお聞かせください。

鈴木これからさらに金庫内のDXを推進し、蒲郡信用金庫が愛知県東三河エリアにおいて、金融のDXに取り組むトップランナーになれると良いなと考えています。そしていつの日か、我々がデジタル推進部を立ち上げるときに助けてもらったのと同じように、悩んでいる同業種の方々の力になれると嬉しいです。

我々が大きく成長を遂げることで、地域のお客さまのために提供できる価値が増やせます。それを目指してこれからも挑戦を続けていきたいです。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 蒲郡信用金庫 デジタル推進部 部長

    鈴木 正之氏

    1997年蒲郡信用金庫入庫。
    営業店支店長を経て、2023年3月から現職。

  • 蒲郡信用金庫 デジタル推進部 主任調査役

    山口 健太朗氏

    2005年蒲郡信用金庫入庫。
    営業店勤務を経て、2023年2月経営企画部デジタル推進部開設準備委員。
    同年3月から現職。

  • 蒲郡信用金庫 デジタル推進部 調査役

    荒田 正次氏

    1996年蒲郡信用金庫入庫。
    営業店勤務を経て、2017年1月退職。
    2023年4月再入庫(中途採用)、現職。

  • 株式会社三井住友銀行 豊橋法人営業部

    石井 建幹氏

    2020年三井住友銀行に入行以来豊橋にて法人取引に従事し、現在に至る。

この記事でご紹介したサービス
DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。