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IT人材の男女間格差是正の一助に。三井住友フィナンシャルグループ協賛「東大ガールズハッカソン2023」開催

SMBCグループがゴールドスポンサーとして協賛するイベント「東大ガールズハッカソン2023」が9月8日、21日、22日と3日間に渡って開催されました。

東大ガールズハッカソンは「プログラミングをゼロから学ぶ」をコンセプトに、2016年から開催されているイベントです。対象は女子学生に限られますが、東京大学在籍者以外の参加も可能。毎年複数のチームにわかれ、参加者はテーマに沿ったアプリの開発をアイデア出しからプログラミングまで一貫しておこないます。2023年のテーマは「思い出を作る・残す」でした。

今回は、そんな東大ガールズハッカソン2023について、主催者、メンター、審査員それぞれに話を伺いました。東大ガールズハッカソンの意義目的とは。なぜSMBCグループは協賛したのか。最終日の様子と合わせてお伝えします。

エンジニア比率の、男女間格差を是正する

まずは、東大ガールズハッカソン2023の運営事務局を務める、公益財団法人 東京大学新聞社 編集部の板橋 一真氏にイベント開催の狙いについて話を伺いました。

東大ガールズハッカソン開催の目的を教えてください。

板橋理工系分野の女子学生が少ない現状を改善し、男女の不均衡を解決するためです。具体的には、大きく2つのテーマを持って運営しています。

1つ目は、プログラミングに親しんでもらうことです。東大ガールズハッカソンでは、ありがたいことに協賛企業の協力のおかげで、プログラミング未経験の方でも学習できる環境が整っています。参加者それぞれが自分たちのアイデアを、ゼロからカタチにする達成感を味わえるため、プログラミングにさらに興味を持つきっかけになると思っています。

2つ目は、プログラミングやIT関連の仕事をキャリアの選択肢に加えてもらうことです。東大ガールズハッカソンでは、チームごとに開発に挑みますが、各チームにはメンターとしてプログラミングに詳しい人材がつきます。参加者にとっては、困ったときに助けてもらえる存在であると同時に、普段どんな仕事をしているのか聞ける存在でもあります。会話を通して、理工系分野の仕事に興味を持ってもらうことを期待しています。

公益財団法人 東京大学新聞社
板橋 一真氏

参加した女子学生が自分の専攻を情報系に移すことも、目的の一つなのでしょうか?

板橋必ずしも専攻を変えてもらう必要はないと思います。

エンジニアのなり方にはいろんなルートがあり、仮に文系学部出身であっても同職種で働いている例はいくらでもあります。学生のうちに専門的な勉強をして、ファーストキャリアでエンジニアにならなくても、長いキャリアのどこかのタイミングでプログラミングに携わる仕事を任されるパターンもあると思います。

我々としては、まずはキャリアの選択肢にエンジニアを加えてもらうことで十分だと考えています。

運営の立場から見て、本イベントが長く続いている理由はどこにあると思いますか?

板橋意義のある活動で、世の中から求められているからでしょう。

加えて、他の類似イベントとは違う特殊性があることも継続の理由だと思います。一般的にハッカソンと言うと、本職の人が自身のスキルアップやポートフォリオづくりのために参加するケースが多いです。一方、東大ガールズハッカソンでは、協賛企業の皆さまからのサポートのおかげで、プログラミング初心者が0からアプリ開発を経験できます。

また、細かいですが最終成果物が、Androidのアプリであることも特殊なポイントです。今は、なにかしらのシステムをつくる際、ノーコードで各種生成AIを組み合わせる選択肢もあります。しかし我々としては「自分で考えたものを自分でつくる」という経験を提供したいと考えていて、そのためにAndroidでのアプリ開発にこだわっています。

今回のハッカソンを振り返って、今年ならではの特徴はありますか?

板橋実は去年まで、東大ガールズハッカソンは東大生限定でした。それが、今年からは他大学の生徒も参加できるようにしています。

また、新型コロナウィルス感染拡大の影響でオンライン開催だったものが、3年ぶりに対面開催になったことも特徴の一つです。オンラインだとチームメンバー同士がスムーズに関係性を築けず、互いに遠慮してしまう傾向がありました。しかし、今年は自然と会話が弾み、全体的に盛り上がっていたと思います。

個人的に一番印象的だったのは、数年前の東大ガールズハッカソンの参加者が、エンジニアになり、今年はメンターの一人として協力してくれたことです。良い循環が生まれていることをうれしく思います。

学生の学びを最大限引き出すサポート

ハッカソン最終日はほとんどの時間が開発に当てられ、会場は今までの議論を形にするためプログラミングに向きあう学生たちの熱気に包まれました。各チームは協賛企業から選出されたメンターと相談をしながら、思い描いたアプリを形にします。

学生たちにどんなアドバイスをしていたのか、メンターを務めたうちの一人、株式会社日本総合研究所 DXシステム本部 ITアーキテクト エキスパートの小西 信次氏にお話を伺いました。

メンターとして、どのようなアドバイスをしましたか?

小西アプリの方向性に関わるアドバイスは極力避け、学生たちの「これがやりたいけどうまくできない」「動かなくなったけど原因がわからない」といった相談にだけ答えるよう意識していました。私から見るとうまくいかないだろうなとわかっていることも、本人が実際に動かしてみて失敗することで学びになり、うまくいったときの感動も大きくなると考えていました。

余談ですが、プログラムの基礎となるような取り返しのつかない部分は、うまくいくのかどうか、他のメンターと一緒に裏でこそっと検証していました笑。「これならいけるかな」「これは当たりそう」と我々も楽しみにしながら、学生たちの開発を見守っていましたね。

株式会社日本総合研究所 DXシステム本部 ITアーキテクト エキスパート
小西 信次氏

三井住友銀行賞は、お祭りのノウハウ継承を可能にする「イベント開催お助けアプリ」

開発の時間が終わると、5チームそれぞれがつくったアプリを審査員にプレゼンしました。どのチームのアプリも独創的で、高いクオリティでしたが、最終的に三井住友銀行賞に選ばれたのは、チーム「なつやさい」の「イベント開催お助けアプリ」でした。

イベント開催お助けアプリは、地域で開催されるお祭りの記録を残し、次の世代へノウハウを継承するためのツールです。人員管理、備品管理、議事録のストックができ、情報共有のためのQRコード発行機能もあります。

審査員を務めた三井住友フィナンシャルグループ執行役員 デジタル戦略部長を務める白石 直樹氏から講評がありました。

白石5チームの発表はそれぞれに良いところがありましたが、なかでもとくにSMBCグループの考えと合致していたのが「イベント開催お助けアプリ」でした。

三井住友フィナンシャルグループ 執行役員 デジタル戦略部長
白石 直樹氏

開発された5つのアプリのうち、3つは体験の記録をアプリに残すという発想からつくられたものでしたが、実は同じ発想でSMBCグループでもアプリをつくったことがあります。しかし、あまりうまく行きませんでした。難しかったポイントはユーザーのペルソナ設定と、継続的に使ってもらうための仕組みづくりです。みなさんの発表を聞いていると、どのアプリも我々とは発想の仕方が違い、新しい発見をさせていただきました。

私がイベント開催お助けアプリを一番評価させていただいた背景には、このアプリが一番ビジネスにしやすそうだと感じたからです。実は以前、似たような発想でマンション管理組合の課題を解決するツールの提供をおこなったことがあります。そのなかで、実現はしませんでしたが、PTA活動や町内会活動の管理ツールがあると、すごく需要がありそうだと感じていました。

イベント開催お助けアプリがリリースされれば、企画会社や銀行など、イベント開催の周辺サービスを提供する会社が参入し、新しい市場が生まれる可能性を感じました。SMBCグループが中期経営計画で掲げている「社会的価値の創造」の実現にも一番近いアプリなのではないかと思います。本当に面白いアイデアです。どうもありがとうございました。

新しい技術を生み出すため、人材開発のための投資を続けたい

最後に、SMBCグループが今回の東大ガールズハッカソンに協賛をしている理由と、今後の展望についても白石氏へお話しをお伺いしました。

SMBCグループが東大ガールズハッカソンにゴールドスポンサーとして協賛した理由をお教えください。

白石SMBCグループが目指す方向と合致する取り組みだと考えたからです。

私の所属するデジタル戦略部はミッションの一つとして「新しいビジネスをつくる」を掲げています。達成には、既存の銀行の枠組みにとらわれず、銀行の外側の考え方を取り入れなければなりません。そのため、オープンイノベーションが生まれる施設をつくったり、違う業界の方を中途採用で雇用したり、さまざまなことに取り組んでいます。

東大ガールズハッカソンはエンジニア職の女性比率を増やすことを目的にしています。このイベントを応援することは、エンジニアの現場にもっと女性の声を取り入れることにつながると思い、協賛を決めました。

今後、女性も含めたイノベーション創出について、どのように支援していきたいと考えていますか?

白石引き続き力を入れていきたいと考えています。

現在、世の中全体でデジタル人材不足が課題になっています。SMBCグループ全体としても、企業のDXを推進できる、ビジネス、テクノロジー、さらには経営について精通した人材を求めています。さまざまな人材獲得のための取り組みをおこなっていて、とくにデジタル戦略部ではその半分以上が他社からの中途採用やトレーニー制度の利用者です。

そんななか、とくに力を入れているものの一つが女性の採用です。

銀行は業界全体を含め、まだまだ男性の割合が多いです。新しい技術を生み出すには意図的に女性の割合を増やさなければなりません。その意味で、東京ガールズハッカソンは非常に意義深いと思っています。引き続き、スポンサーとして応援を続けつつ、女性の目線を取り入れるための取り組みを続けていきます。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 公益財団法人 東京大学新聞社 編集部

    板橋 一真氏

    2021年、公益財団法人東京大学新聞社・編集部に入部。ニュース面で記事執筆を経験し、ビジネスチームに移籍。その後、「東大ガールズハッカソン2023」を担当。

  • 株式会社日本総合研究所 DXシステム本部 ITアーキテクト エキスパート

    小西 信次氏

    2007年に株式会社日本総合研究所に入社し、三井住友カード株式会社のシステム開発担当としてアプリケーション開発および基盤開発業務に従事。その後、社内の開発標準の整備や、アジャイル開発の試行等の経験を経て、2019年よりDXシステム本部のソリューションリード兼ソフトウェアエンジニアとして、数々のアジャイル開発案件を推進。

  • 三井住友フィナンシャルグループ 執行役員 デジタル戦略部長

    白石 直樹氏

    1993年にさくら銀行(現 三井住友銀行)に入行。ホールセール事業部門の企画や営業部署等を経て、2020年より法人デジタルソリューション部長。2021年より現任の三井住友フィナンシャルグループ 執行役員 デジタル戦略部長。SMBCグループのDX(デジタルトランスフォーメーション)や新規デジタル関連事業開発を推進する。

DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。

オープンイノベーション
(Open Innovation)

類義語:

製品開発や技術改革、研究開発や組織改革などにおいて、自社以外の組織や機関などが持つ知識や技術を柔軟に取り込んで自前主義からの脱却し、市場機会の増加を図ること。