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目指すはQOL(生活の質)の向上。ゆたかさを繋ぐ患者支援アプリ「wellcne(ウェルコネ)」の提供と今後の展望

2023年10月11日〜13日、幕張メッセにて開催された専門展『第6回病院EXPO東京』に出展した、SMBCグループのプラスメディ。同社は2023年1月、ゆたかさを繋ぐ患者支援スマホアプリ「wellcne(ウェルコネ)」を開発し、2023年3月下旬から複数の病院でサービスの提供を開始しています。サービス提供から約半年たった今、改めてwellcneやプラスメディ全体の状況について、代表取締役社長兼CEOの永田幹広氏にお話を伺いました。

通院時の困りごとから生まれたアプリ「wellcne」

wellcneとはどのようなアプリなのでしょうか?

コンセプトは“ゆたかさを繋ぐ患者支援スマホアプリ”です。診察待順案内、処方箋情報連携、病院からのお知らせの受け取りなど、患者さんの通院をサポートする複数の機能を実装しています。今は通院支援がメインですが、今後は蓄積される医療データを活用した新機能を追加していく予定です。

株式会社プラスメディ 代表取締役社長 兼 CEO
永田 幹広氏

アプリ開発に至ったきっかけを教えてください。

私自身が通院するなかで、不便なことがたくさんあると思ったからです。

私は指定難病を患っており、定期的に大学病院を受診しています。毎回予約をしているにも関わらず、予約時間に行っても2〜3時間待たされますし、医師からの話が自分の実感とかみ合わず、自分の状態を正しく把握できないこともあります。他にもさまざまな課題を感じ、自分と同じような思いをしている人の力になりたいとアプリの開発をはじめました。

最初に開発したのが「MyHospital(マイホスピタル)」というアプリでした。ただ、MyHospitalは通院に絞った機能がメインで、薬を処方してもらうところまでしかサポートできませんでした。wellcneはそれに加えて、患者さんが自分で薬や検査、診察の内容を把握できる“医療情報”機能(SMBCグループが提供する医療情報銀行サービス「decile(デシル)」を利用)まで実装されていることが特徴です。

患者さんと病院、双方の負を解消

導入病院の声を教えてください。

うれしいお声をたくさんいただいていますが、なかでも混雑緩和に対する反響が大きいです。混雑を解消するためだけの余計な人件費がカットできたり、患者さんのクレーム防止に繋がったりしていることが評価いただいているポイントです。

また、業務の標準化につながるところもご評価いただいています。これまでは患者さんが来院されてから、必要な業務を全てその場でこなす必要がありました。しかし、アプリを通して事前予約から、患者さんの情報を把握できていると、手が空いているときにあらかじめ準備を進められます。業務の標準化ができることで、繁忙期に合わせた人員を常時配置する必要がなくなり、人件費削減や人手不足解消につながります。

他にも、医療情報を電子化することで他の病院への連携がスムーズになったことも評判の良い機能の一つです。

患者さんの声を教えてください。

やはり待ち時間短縮に対する声が大きいです。調査によるとアプリ利用者のうち約90%が、一度の来院で30分以上の時間短縮を体感したという結果も出ています。患者さんは、病気になって体力的にきついなか、1分1秒でも早く帰りたいでしょう。そんなニーズに応えられているのかなと思います。

また、自分の診察内容が蓄積され、変化が分かりやすいところも喜んでもらえているポイントです。これまで紙でもらっていた診断結果では、異常があるかないかしか分かりませんでした。情報が蓄積されると数値の良し悪しと、体調の変化が紐づいて把握できるようになります。何をすれば、どんな効果があるのかが理解しやすく、主治医とのコミュニケーションもスムーズに進むようになったそうです。

病院外のサポートへサービスを拡大し、QOL向上を実現させる

wellcneがリリースされて約半年ですが、サービスの状況はいかがでしょうか。

現在、済生会小樽病院(北海道小樽市)と碧南市民病院(愛知県碧南市)に導入済みで、今年度中には40〜70カ所で導入予定です。さらに、来年度中には220カ所の導入を実現させたいと考えています。短期間で200カ所以上の導入が決まれば、その後の導入は自然と増えると考えています。

同時に、新しいアプリの本格リリースに向けた準備も進めています。新しいアプリの名前は「FAROme(ファロミー)」で、今度は病院外でも患者さんを見守れる機能を搭載する予定です。

今は、病院に行けば医師、看護師、薬剤師などあらゆるスペシャリストから助けてもらえますが、日常生活では自分の健康は自分で管理するしかありません。多くの患者さんは、最初は病院で受けたアドバイスをもとに生活をしていても、症状が改善すると元の生活に戻ってしまうことが多いです。

FAROmeでは利用者一人ひとりが体調や症状の記録を残せます。その情報は提携している医療機関に送られ、異常がある場合はアラートが届きます。それによって病院の外でも健康を支えられる仕組みです。また、自分の体調についての記録を残すことは通院時も役立ちます。私は3カ月おきに通院していますが、記憶にない3カ月前の健康状態もアプリを返して振り返ることができ、医師に細かく伝えることも可能です。

我々がFAROmeを通じて実現したいのは、QOL(※)の向上です。

日本では、良くも悪くも保険制度がしっかりしているため、病気になっても少ない負担で治療を受けられます。その結果、海外と比べて健康への投資が遅れていると感じています。FAROmeを通して、何気ない生活の中で健康への気づきを得てもらうことで、多くの人の健康意識を高められると考えています。病気になってからはじめて生活を改めるのではなく、健康なうちからの予防が当たり前の世界を実現させたいです。

(※)QOL:クオリティ・オブ・ライフの略語で、「生活の質」と訳されることが多く、ある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念のこと。

SMBCグループのアセットを活用して、ヘルスケアの枠を越えた挑戦を

病院EXPO東京への出展を通して、病院関係者に伝えたいことはありますか?

患者さんを満足させることがいかに病院にとってメリットが大きいかということを、まずは知ってほしいと思っています。

普段病院に勤めている方からすると、患者さんとのコミュニケーションは病状関連がメインです。「診察が終わってから40分以上待たされた」なんて話を聞くことは少ないでしょう。また、自分たちが出している医療情報がどこでどれほど役に立っているのか、実感のない方も多いのではないでしょうか。そんな人たちに患者さんのリアルな声を届け、満足度の向上がいかに他病院との差別化になるのか、お伝えできればと思っています。

今後の展望をお聞かせください。

wellcneについては、目標としている200カ所の導入、50万人ユーザーの獲得に向けて動き、まずはビジネスとして成立させていきます。目標達成後は、ユーザーの利便性向上へ大きく舵を切って機能拡充を進める予定です。

さらに、SMBCグループ全体のアセットを活用したサービスづくりもできるといいなと思っています。

たとえば、クレジットカードとの連携です。医療情報の入力、健康に良い食材の購入、運動、など健康増進についてなんらかのアクションをするごとにVポイントが貯まる世界になるとおもしろいのではないでしょうか。いきなり健康意識を高めましょうと言われてもハードルが高いですが、ポイントがつくならと軽い気持ちで始める人は多いはずです。

また、クレジットカードや口座と我々が提供するアプリが連携することで、ユーザー一人ひとりの金融から健康に関する情報が全て集約されることになります。そうなると、各人の健康情報と連動したオーダーメイドの保険サービスといった、新しいビジネスチャンスにもつながると思っています。SMBCグループとの連携を強め、金融やヘルスケアの枠を超えた挑戦をしたいです。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 株式会社プラスメディ 代表取締役社長 兼 CEO

    永田 幹広氏

    1976年生まれ。
    通信会社数社を経験後、ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)に入社。
    主にY!BB立ち上げに参画。その後、関連企業の事業立上げ等を経験。
    NHNJapan(現LINE)経営企画室にて新規事業立上げ、子会社(メディエーター代表、データホテル取締役)役員を歴任。動画配信、飲食事業O2O事業等立上げ、その後親会社と合併。主に新規事業の立上げを経験。その後、2016年にプラスメディを起業。自らが潰瘍性大腸炎という難病を抱えて病院通いをする中で様々な課題を感じたことから、個人の弱者の立場に立って問題解決をするために新しいサービスを創出している。

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