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新会社立ち上げを支えた「ラストマン」たち。SMBCグループ×アトラエ 新会社誕生秘話 vol.3

2023年10月、SMBCグループとアトラエは、企業の組織力や企業価値向上を支援する合弁会社を設立し、組織力向上のデジタルソリューション「SMBC Wevox」の提供を開始しました。

たった一人の構想からスタートした新会社には、どのようにして仲間が集まったのか。構想からたった半年で会社設立を実現させた組織力の源泉には何があるのか。

新会社の全貌を明らかにしていく本連載。vol.3では、新会社設立を支えたSMBCグループのメンバーに話を聞き、新しい挑戦の舞台裏を紐解きます。

各分野のプロフェッショナルが集結し、新会社立ち上げに奔走

皆さんは新会社立ち上げで中心的役割を担っていると伺っています。今までの経歴と現在の役割を教えてください。

沼田私はもともと仙台市に本店を構える地方銀行である七十七銀行に勤めていて、10年ほど銀行システムの構築に携わってきました。2023年2月から1年間の任期付きで三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部に出向をしています。

今回のプロジェクトでは最初のチームメンバーとして事業構想から携わり、杉本と2人で議論を重ねながらサービスの骨子をつくっていきました。他のチームメンバーも参画しはじめた2023年4月以降は、専門であるシステム構築周りを主に担当しています。

三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部
沼田 孝人氏

井上私は2010年に三井住友フィナンシャルグループに入社し、法人営業を経て約10年間、総務部・コンプライアンス部に在籍しておりました。その後、2022年より現職であるデジタル戦略部に異動しています。新会社設立のメンバーに加わったのは2023年の4月からです。新規デジタル事業の投資決定を行う場であるCDIO(Chief Digital Innovation Officer)ミーティングにて新会社設立が正式に決まったことを受け、本格的にチームが組まれるタイミングで声をかけてもらったという経緯です。

三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部
井上 貞央氏

現在は、コンプライアンスやリスク管理に関する業務をメインで担当しています。新会社立ち上げにあたって、銀行グループとして遵守すべきルールにのっとって、適切な運営ができるように支えることが私の役割です。他のチームメンバーと比べて社歴が長いので、関係部署との調整役も務めています。

三浦私は、2023年の1月に三井住友銀行に入行し、三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部に配属されました。前職で証券会社系シンクタンクのシステム部門に16年勤め、システム開発から営業、事業企画、法務など幅広い経験を積みました。現在は、沼田と井上が担当している領域以外のコーポレート業務全般を担当しています。

三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部
三浦 良太氏

メンバーはどのように集められたのでしょうか?

沼田新会社の代表を務める杉本の声がけで、集まったメンバーです。最初に私に声がかかったのは、新会社の理念への共感度が高かったからで、その後は会社設立に足りないピースを埋めていくように、各分野のプロフェッショナルが集まりました。

SMBCグループのなかでも珍しい組織のつくり方ではありますが、そもそも我々が所属するデジタル戦略部自体がグループ横断型で、従来の組織のあり方に縛られない部署であり、比較的柔軟に組織づくりがしやすかったのかなと思います。

「日本を良くする」事業構想とビジョンに共感し、参画を決意

なぜメンバーに加わったのかについて教えてください。

沼田純粋に面白いと思ったからです。私が三井住友フィナンシャルグループに出向してきた3日後に、杉本が私と同じ部署に配属されました。杉本は当初から新会社の構想を持っていて、着任したその日に構想を発信していました。彼はその時から「日本を良くする」という構想を持っていましたが、もともと地方銀行にいた私としては、その言葉が衝撃的でした。地方のことは考えたことがあっても、日本全体を良くするという発想はなかった。でも「日本企業の社員の熱量を10〜20パーセント引き上げることができれば、日本は変わると思う」という言葉を聞いて、確かにそうだなと思いました。銀行員として、さまざまな企業や個人のお客さまと向き合う中で、組織をよりよくすることを支援できれば、少しずつ世の中は変わっていくだろうと。その後、杉本に「めちゃくちゃ面白いですね!」と声をかけると、「じゃあ一緒にやりましょう!」と誘われました。そこからはバディのように、2人で新会社設立準備を進めていきました。

井上私の場合、杉本とは同期入社で元々面識があり、それもあってか会社立ち上げのサポートをしてほしいと直接頼まれました。正直最初に事業構想を聞いた時には、「組織力向上」といったエモーショナルな部分が関連する分野は、銀行は得意ではないのではと思いました。一方で、杉本の推進力の凄さは知っていましたし、彼らしい事業構想で、彼ならできるかもと思いました。そして、銀行が得意とする分野でないからこそ、まず自社を変革し、そこからビジネスを生み出していくという戦略を聞いて、期待感はさらに膨らみましたね。

それまで、私は「国を良くする」「世の中を変える」という目線で物事を考えたことがあまりありませんでした。同期でありながら、目線の高さに刺激を受け、今現在は自分自身のモチベーションも上がっていると感じています。まさにエンゲージメントの重要性を実感しているところです。

三浦私に声がかかったのも、井上と同じく2023年の4月でした。幅広い領域に携わってきた経歴を見込んでか、杉本から直接打診がありました。

そもそも私が三井住友銀行に転職をしたのも、グループが掲げている「社長製造業」というカルチャーに惹かれた点が大きな理由です。理想を掲げて挑戦する経営者に寄り添い、足回りを整える仕事に携わりたいと考えていた背景もあり、杉本の話を聞いて、やりたい・挑戦したいと思っていたことに携わることができると感じ、参加しました。

また、SMBCグループが掲げる中期経営計画では、「幸せな成長」への貢献を掲げています。経済の成長とともに社会課題が解決に向かい、そこに生きる人たちが幸福を感じられるためにも、企業活動に携わる人たちの企業に対するエンゲージメントは重要な要素であると感じ、このビジネスに将来性と面白さを感じたことも、参画の理由です。

全てのメンバーが「ラストマン」だから実現した、高いエンゲージメントと圧倒的なスピード

今回のプロジェクトを進めるうえで、苦労したこととそれをどう乗り越えたのかを教えてください。

沼田会社をつくること自体が初めてだったので、初期の「何をすればいいのかがわからない時期」は苦労しました。杉本と2人でタスクを洗い出し、整理をすることでだんだんとやるべきことの全体像が見え、そのおかげでなんとか乗り越えられたと思います。タスクがいくら多くてもゴールさえ見えていれば、山登りと同じで、疲れはしますが心が折れることはなかったですね。

井上私はジョイントベンチャー立ち上げに携わったのが2回目でしたが、1回目と同じで両社の理念・カルチャーに基づく意見の違いをまとめることに苦労しました。銀行や金融機関は一般的に厳しいリスク管理を行なっており、今回のパートナーであるアトラエとSMBCグループにも、リスク管理における考え方の違いがありました。そんな両社の考え方の違いを乗り越えるには、結局のところ、相手へのリスペクトを持ちつつ、落としどころを探すことしかありません。一見すると調整不可能なことでも、お互いの譲れる部分とそうでない部分を明確にし、一つひとつ丁寧に協議を重ねながら乗り越えていきました。

三浦私としては、当初今回のプロジェクトで一番難しい部分はアトラエから提供いただくシステムを、SMBCグループよりサービス提供できるように整えていくところだと感じていました。自社で開発したシステムを提供するのとは違い、パートナー企業の思想のもと構築されたシステムを共同で、お客様へ提供していくため、企業カルチャーやシステム思想の擦り合わせ、妥結のための契約条件交渉など調整事項は多岐に渡ります。場合によっては、パートナー企業であるアトラエにも大きな負担をかけることをお願いしなければならず、それゆえ相当苦労するものと考えておりました。

しかし、アトラエとの企業カルチャーの擦り合わせは井上が丁寧に進めてくれましたし、システム面の課題解決は沼田が一つ一つ整理し進めてくれました。こういった自分自身が1人では解決が難しいと感じていた部分をそれぞれのメンバーが補い合い、それぞれ意志をもって課題解決に動くことで、困難だと感じていた部分もいつの間にかチームで乗り越えていたという感覚でした。そのため、当初思っていたような苦労をしたと感じることはなかったように思います。

新会社では組織力向上のためのサービスを提供していますが、自分たち自身が組織力向上のために取り組んでいることがあれば教えてください。

沼田いくつもありますが、私がとくに大きいと感じていたのはルールベースではなく、プリンシプル(原理原則)ベースで業務を進めることです。

とくに銀行の場合は決められた手続きを正確に進めるルールベースで仕事を進めることが多いと思います。ただ、ルールベースでは新会社の設立を含め、外部環境の変化を大きく受ける業務には弱いところもあります。

今回我々は新会社設立というゴールだけを共有し、そのやり方を一人ひとりが任されるプリンシプルベースで行動できたと思います。それぞれが自主的にやるべきことを探し、困っている仲間がいたら助ける、というやり方で仕事を進められたことで、困難に直面しても高いモチベーションを保ち続けられたのだと思います。結果的に、約6ヶ月での新会社設立というスピード感にもつながったのではないでしょうか。

三浦同感です。今回結成された組織は、決してトップダウン的に生み出されたわけではありません。杉本を中心に集まったメンバーで、上司部下のような上下関係はありませんでした。そんななかで、杉本からよく言われていたのは「ラストマン」を任せるということでした。各メンバーに業務遂行に必要な判断を任せるという意味で、リーダーである杉本はリスクを引き受けながら、進む方向性のジャッジをおこなうという構造でした。その結果、各自が主体的に業務に向き合い、互いの足りない部分を自然に補い合いながら仕事を進められたのかなと思います。

新会社の成長とともに、日本に「強い組織」を増やしていく

最後に、今後の展望を教えてください。

井上誰もやったことがないこと、挑戦しても成し遂げられなかったことを一つでも多く実現させたいです。その一環として引き続き、新会社が安定したサービスを提供できるための環境整備を進めたいです。

沼田私は2024年の2月で出向任期が終わります。それまでは新会社を成長させることに貢献していきたいですが、元の銀行に戻ってからは、今回のプロジェクトのような日本を良くする挑戦を始めたいと思っています。その一環としてまずは、地域のための取り組みを始めたいです。

三浦私もまずは新会社の成長にしっかりと貢献したいと考えています。今はまだ走り出した段階で、これからどんどん想定外の事態が生まれると思っています。そのタイミングに備えて、戦略的に法務整備やコーポレートガバナンス構築をおこない、今よりもっと強い組織づくりに貢献したいです。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部

    沼田 孝人氏

    2006年に七十七銀行へ入行。銀行勘定系システムの開発やシステム共同化プロジェクトを担当後、デジタル戦略部での営業店向けDXやデジタル人材の育成等を担当。2023年2月に三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部に出向し、SMBC Wevoxプロジェクトに参画。

  • 三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部

    井上 貞央氏

    2010年に三井住友銀行へ入行。中堅企業への法人営業後、約10年間に渡り、主に、危機管理・規律維持・業法・情報管理等の総務・コンプライアンス関連業務を担当。2022年4月にデジタル戦略部に着任し、同部で所管するデジタル子会社のコンプライアンスやリスク管理業務の横串管理を行い、SMBC Wevoxプロジェクトに参画。

  • 三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部

    三浦 良太氏

    2007年に大和総研のシステム部門へ入社。証券バックシステムの開発や保守、企業内法務、エンタープライズ系システム営業、事業企画などを担当。2023年1月に三井住友銀行へ入行。デジタル戦略部に配属後、デジタル子会社の経営所管業務を担当し、SMBC Wevoxプロジェクトに参画。

この記事でご紹介したサービス
コンプライアンス
(compliance)

類義語:

  • 法令遵守

「法令遵守」のことを指す。企業や個人が法令や社会的ルールを守ることに加え、企業倫理や社会規範などに従い、公正・公平に業務を行うこと。