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企業の組織力、企業価値向上を支援。SMBCグループ×アトラエ 新会社誕生秘話 vol.1

2023年10月、SMBCグループとアトラエは、企業の組織力や企業価値向上を支援する合弁会社を設立し、組織力向上のデジタルソリューション「SMBC Wevox」の提供を開始しました。

なぜSMBCグループは、企業の組織力や企業価値向上の支援に着目し、新会社設立に至ったのでしょうか。そして「日本を世界で誇れる国にする」という新会社のビジョンにはどのような想いが込められているのか。

合弁会社設立の発起人である、三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部 部長代理の杉本秀和氏とアトラエWevox営業責任者の川本周氏にお話を伺い、新会社の全貌を明らかにしていく本連載。vol.1では主に、新会社設立のきっかけとなった両者の出会いから、組織力向上にかける強い想いを紐解きます。

出会いのきっかけは「組織づくり」への共通する想い

合弁会社設立までの経緯を教えてください。

杉本きっかけは2019年にさかのぼります。当時私はSMBCグループをさらに良くしたいと思い、メンバーのエンゲージメントや働きがいを高める方法を模索していました。純粋に、グループのために、仲間のためにという思いもありましたが、30代前半の私は「何かを変えたい」「何者かになりたい」という、なんとも言えない焦りもありました。

ヒントを求めて社外のイベントに参加するうちに、アトラエの川本さんと出会ったのです。川本さんは登壇者として、組織力向上について話をしていて、「自分よりも若い方で、こんなにも活き活きと、組織に向き合っている人がいるのだ」と感動したのを覚えています。その後の懇親会でさらに意気投合しました。

川本さんは、杉本さんに対してどんな印象を抱いたのでしょうか?

川本「こういう人にもっと、我々のサービスを届けたい」と強く思ったのを覚えています。アトラエが提供する組織力向上プラットフォーム「Wevox」は、現場の皆さんが活き活きと働ける職場をつくるためのプロダクトです。杉本さんのように、組織のことを本気で思い行動を続ける人に、もっと届けたいと改めて思いました。

「事業」と「組織」の両輪で、お客さまを支えたい

その出会いをきっかけに、新会社設立の動きが始まるのでしょうか?

杉本いえ、お互いに「何かしよう」と話しましたが、合弁会社の構想はまだありませんでした。

大きく状況が変わるのは、出会いから3年後の2022年末です。当時私は外部企業への出向中でしたが、2023年初めには三井住友銀行に戻ることが決まっていました。戻って何をやるべきか、本気で考えたとき浮かんだのは、就職活動期から一貫して抱いていた「組織をよりよくできる人間になりたい」という思いでした。

三井住友フィナンシャルグループ 杉本 秀和氏

これまで、一人の銀行員としてファイナンスを通じたお客さまのサポートに従事してきました。お客さまの事業成長に貢献できていた自信はあります。ただ、どれほど素晴らしいビジネスモデルでも、事業の成長に直結するのは結局のところ人です。ビジネスパーソンのエンゲージメントや働きがいは、組織としてのパフォーマンスに直結し、事業の業績にも大きな影響を与えることは、自身の経験からも何度も実感していました。事業面での支援だけでなく、合わせて組織面での支援もできれば、お客さまの成長をさらに後押しできると思ったのです。

そこでふと浮かんだのが川本さんの顔でした。すぐに「話を聞いてもらえませんか」と連絡して、想いの丈を詰め込んだ30枚にわたる資料を持って会いにいきました。そこで初めて合弁会社の構想も含め、具体的に一緒に日本の組織をよりよくしませんか、と提案をしたのです。その時、川本さんが「鳥肌が立ちました」と言ってくれたことをよく覚えています。2023年1月中旬ごろだったと思います。

川本話を聞いて、その場で「絶対やりましょう」と答えました。

2022年の『グローバル就業環境調査』によると、日本で「仕事への熱意や職場への愛着(エンゲージメント)を示す社員』の割合はわずか5%で、これは調査対象国の中で最下位の数字です。世界平均は上がっているなかで日本は逆に下がっています。仕事に対する捉え方の違いもあるとは思いますが、ビジネスパーソンにとって良い職場環境とは言えない、というのがマクロで見たときの状況でしょう。

株式会社アトラエ 川本 周氏

原因は、人生の大部分を占めるこの“仕事”を、多くのビジネスパーソンが単なる“業務”として捉えており、最小の時間で最大の給料をもらうことだけが目標になってしまっているからではないでしょうか。アトラエではそんな状況を変えるべく、たくさんのチーム・組織の方々と向き合ってきました。ビジネスパーソン一人ひとりのエンゲージメントを高めることに加え、人と人との関係性を円滑にし、チームとしてのパフォーマンスを高めるプロダクトづくりやサービス提供を続けて参りました。

組織・ヒトへのアプローチに特化している我々の場合はSMBCグループとは逆で、既存の取り組みの延長で事業支援までを実現することには一定のハードルがあり、本来は表裏一体である組織と事業の両輪を大きく回せる方法を模索していました。そんなとき、杉本さんからお話をいただいて、これは面白いと率直に思いました。壮大なチャレンジになると感じましたが、挑戦しない理由はありませんでした。

構想から約半年、猛スピードで合弁会社設立へ

合弁会社設立の構想を現実にするために、どのような過程を経たのでしょうか。

杉本川本さんに想いの丈を話した時、私はまだ、三井住友銀行内のどこの部署に戻るのかも、何の業務に携わるのかも決まっていませんでした。でも絶対これをやりたいという想いは強かったので、現在グループCDIO(Chief Digital Innovation Officer)を務める磯和に連絡をし、構想を話したのです。そこで「面白いから、もう少し考えてみろ」と言ってもらい、2月上旬に三井住友銀行内で新規事業を推進するデジタル戦略部に戻っています。

帰任後は、1〜2ヶ月後に新規デジタル事業の投資決定を行う場であるCDIOミーティングに企画を提出すると決め、猛スピードで準備を進めました。予定通り、4月にCDIOミーティングでプレゼンテーションをし、グループCEOの太田含め、「やらない理由はないから、早く進めなさい」と言ってもらい、7月に基本合意のプレスリリースを出すに至っています。

初回の相談から約半年で合弁会社設立となりました。スピーディーに進められたのはなぜでしょうか?

杉本とにかく、マーケットが我々の生み出すサービスを待っていると確信していたからです。

今まさに組織をよくしたいと思って挑戦をしているお客さまや仲間が目の前にいましたし、やる気はあるのに上手くパフォーマンスが発揮できていない、と悩んでいるビジネスパーソンもたくさんいました。現場がもう待っている。とにかく早く始めなければと思っていたのです。

その想いは川本さんとも共通でした。だからこそ両社の損得も含め、言いにくいことも全てテーブルに出し合って、最短で必要なすり合わせを進めました。

SMBCグループは現在、「社長製造業」を掲げており、デジタル子会社も多く輩出しています。このような環境が合弁会社設立に影響した部分はありますか?

杉本SMBCグループからデジタル子会社であるSMBCクラウドサイン社長の三嶋とは、「なぜ銀行内で社内起業をしようと思ったのか」という話をよくしていました。銀行には各部門のプロフェッショナルが揃っていて、優れたソリューションを多くの経営者に提案することも、事業を作り出す土台もあります。だからこそ2019年頃から、SMBCグループというフィールドを基盤として、なんらかの新しい価値を世の中に提供していきたいと思っていました。若い人材を積極的に社長に抜擢している環境も、その想いを強くさせたと思います。

「事業」と「組織」の両輪を高め、新しい企業価値評価の常識を生み出す

合弁会社設立の場合、2社間のビジョンのすり合わせが難しいポイントかと思います。その点は問題なかったのでしょうか?

杉本とくに問題はなかったです。

新会社のビジョンは川本さんへの最初の相談で話した「日本を世界で誇れる国にする」をそのまま採用していますが、この言葉は「最初から擦りあっていた」に近いです。もっと良いビジョンはないか、2人で考えたこともありますが「どう考えても最初の言葉が一番良かった」とそのまま採用しています。

SMBCグループとアトラエとでは、事業内容も違いますし、それに伴ったカルチャーの違いももちろんあります。ただ、お互い「日本で生まれたことを誇りに想い、日本をもっといい国にしていきたい」という気持ちは共通でした。だからこそビジョンもスムーズに決まったのだと思います。

川本根底の考え方が一致していたので、SMBCグループとアトラエではなく、同じ組織の人間のように会話ができたと思います。もちろん全く違う会社同士が一つの事業をつくるので、細かいところで議論が必要だったポイントはあります。それでも、ぶつかるたびに「AかBか」ではなく「ウルトラCをつくる」と新たな選択肢を発明し続けられました。その結果が、ここまでのスピード感につながったと感じています。

新会社で実現していきたいこととは、どのようなことですか。

杉本私自身も含め、「お客さまや世の中をよりよくしたい」、「自社をよりよくしたい」等の想いを持っている人たちが多くいます。そう決意して頑張っている人たちや新たに何かを始めようと思っている人たちの熱量を可視化し、全力で肯定していきたいと思っています。規模の大小は関係なく、自発的に何かにチャレンジしようとしている人、組織の全てが対象です。

組織には、ピラミッド型やアメーバ型などさまざまな形があります。でも、組織の形態はどれでもよくて、いい組織とは「組織の中にいるメンバーが、誰かに誇れる組織」だと思います。まずは「誰かに誇れる組織」をたくさん創り、それをチーム、グループ、企業、そして業界へと広げ、最終的には「いい組織」が溢れる日本、世界を創っていきたいと思います。

企業とは「事業」と「組織」で成り立っています。だからこそ組織づくりを銀行がやる意義があります。さらに、人の想いや熱量など、企業のエンゲージメントを可視化することで、その数字が売上に影響することがわかれば、新しい資本主義のルールを作っていけるかもしれません。「事業」と「組織」の両輪を高めつつ、それらを統合させて、私たちが新しい企業価値創出の常識を作っていきたいと思っていますし、それは金融業を営むSMBCグループとアトラエの掛け算だからこそできると思っています。両社の熱量とリソースを掛け合わせ、全てのヒトが活き活きと働き、企業価値向上にも繋がるような世界観を実現していきます。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 株式会社アトラエ Wevox営業責任者

    川本 周氏

    大阪大学を卒業後、当時未上場の株式会社アトラエに新卒入社。IT業界に強い求人メディア「Green」のコンサルティング営業を担当後、組織力向上プラットフォーム「Wevox」へ異動。現在は、年間1,000名を超える経営者や人事担当者とお会いしながら、日系大手企業様を中心にエンゲージメントを軸にした全社的な組織改善を支援。通常業務とは別に社内のバリュー刷新や全社コミュニケーション設計などのプロジェクトも担当。
    2023年10月SMBC Wevox株式会社取締役副社長に就任。

  • 三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部 部長代理

    杉本 秀和氏

    神戸大学を卒業後、2010年に三井住友銀行へ入行。中堅企業への法人営業、小売流通業界の業界担当、本店営業部での大手企業向け営業を経て、2021年からファーストリテイリング社長室へ出向。2023年2月に同行デジタル戦略部に帰任し、SMBC Wevoxプロジェクトを立ち上げ、設立までリード。同年10月SMBC Wevox株式会社代表取締役社長に就任。
    また、2019年に社内の若手・中堅有志団体「SMBB~Beyond Banker~」を立ち上げ、経営陣とのオフサイトミーティングや社内SNS導入などを企画推進。これまで企画した有志イベントには、社内外の計1000人以上のビジネスパーソンが参加。

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類義語:

サービスやシステム、ソフトウェアを提供・カスタマイズ・運営するために必要な「共通の土台(基盤)となる標準環境」を指す。