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元サッカー日本代表鈴木啓太氏、30代で社内起業したSMBCグループのバンカーに聞く「私たちが起業した理由」

SMBCグループから、非金融領域のサービスで社内起業をした杉本秀和氏と横川花野氏。プロサッカー選手を引退後、アスリートの腸内細菌を研究するバイオベンチャー企業、AuB(オーブ)を立ち上げた鈴木啓太氏。

3人には、これまでのキャリアとは異なる領域で起業したという共通点がある。

なぜ、枠を超えたチャレンジを行っているのか。その原動力や、異業種に挑戦したことで得られた気づきなどを語り合った。

バンカーから社長へ。起業の理由とは?

SMBC Wevox 代表取締役社長の杉本秀和氏。神戸大学を卒業後、2010年に三井住友銀行へ入行。中堅企業への法人営業、小売流通業界の業界担当、本店営業第三部での大手企業向け営業を経て、2021年からファーストリテイリング社長室へ出向。2023年2月に同行デジタル戦略部に帰任し、SMBC Wevoxプロジェクトを立ち上げ、設立までリード。同年10月SMBC Wevox 代表取締役社長に就任。

杉本さんは2023年10月に合弁会社『SMBC Wevox(ウィボックス)』を、横川さんは2022年4月に『SMBCファミリーワークス』を立ち上げています。起業の経緯を教えてください。

杉本秀和氏(以下、杉本)新卒で三井住友銀行に入行し、ドラマ『半沢直樹』に出てくるような本店営業部で法人営業に従事。主にお客様の事業拡大やビジネスをつなぐ仕事を担当し、バンカーとしてのキャリアを歩んできました。

その後ファーストリテイリングの社長室へ出向。これらのキャリアを通して常々感じていたのは、“組織づくりの大切さ”でした。

どんなに素晴らしい事業やプロダクトがあっても、働いている方々の組織や風土に課題があるとうまくいかない……。組織と事業の両輪がまわるようサポートをしたいと考え、出向を終えてSMBCグループに戻った2023年に、アトラエ社との合弁会社として組織力向上のデジタルプラットフォームを展開するSMBC Wevoxを設立しました。

『Wevox』は、エンゲージメントを軸にしたサーベイで組織力の向上を支援するプラットフォームだ。ただ「はかる」だけではなく、組織に「きづき」を起こすことを重要視し、組織をサポート。導入組織・団体数は3140以上で、ビジネス領域だけでなく、スポーツや教育現場でも導入が進んでいる。

横川花野氏(以下、横川)私は新卒入社後、支店で個人のお客様のお悩みに寄り添ってきました。

資産運用や相続、教育資金など家族にまつわるさまざまな相談を受ける中で、「遠方の家族が健康に暮らしているか不安」「特殊詐欺などに遭っていないか心配」といった、家族の健康やお金などに関する不安の声に触れる機会が多くありました。

その後、商品開発の部署に異動し、SMBCグループとして人生100年時代における社会課題に対応すべく、金融の枠を超えたテーマで商品を検討する「人生100年時代プロジェクト」に参加しました。

SMBCファミリーワークス 代表取締役社長の横川花野氏。2009年に三井住友銀行に入行。支店で個人向け相談業務を経験した後、個人向けの資産運用や相続などの商品開発の部署に異動。管理職として再度支店で個人の相談業務に携わった後、2021年10月よりライフシフト・ソリューション部に配属。2022年4月から、SMBCファミリーワークスの社長に子会社で初の女性社長として抜擢。

議論を進めていく中で「今の日本は、親と子世帯が離れて暮らすケースが多く、将来の備えをしたい一方で、どのように対応していいか分からない人が多い」といった課題感がより顕著になったのです。

そのような社会課題を解決すべく、幅広い分野で家族の豊かな生活をサポートしたいと思い、SMBCファミリーワークスを立ち上げました。

SMBCファミリーワークスが手掛けるアプリ『ファミリーネットワークサービス』。「おかね」「健康」「生活」に関するテーマを扱い、家族と共有して利用できる機能を備えている。

業界内で閉じていたら、もったいない

鈴木さんはプロサッカー選手からヘルスケア業界に飛び込み、実業家に転身されました。

鈴木啓太氏(以下、鈴木)僕は、これまで健康でいられたからこそ、アスリート生活を長く続けることができました。中でも特に気を配り続けてきた腸内環境の知見は、世の中に還元できると思ったんです。

もともと引退後、経営者になるつもりはありませんでした。サッカーに直接関係することで、できることがあるとも考えましたが、「業界内だけで閉じてしまってはもったいない、もっと地域やコミュニティづくりに貢献できる活動をしてみたい」と思ったんです。

アスリートの健康データの活用が広がって、みんなの生活をより豊かにできれば、結果的にサッカー界にも還元できるんじゃないか。そんな思いで事業を展開しています。

AuB 代表取締役の鈴木啓太氏。元プロサッカー選手。高校卒業と同時に、Jリーグ浦和レッズに加入。2015シーズンに引退するまで浦和レッズで活躍。2006年に日本代表に選出され、以後オシムジャパンとしては、唯一全試合先発出場を果たす。自身の経験から腸内細菌の可能性に着目し、AuBを設立。腸内細菌の研究を通じて、アスリートから一般の人向けまで良好なコンディションの維持、パフォーマンスの向上を目標としたビジネスを行う。

横川人生がより豊かになるためのサポートという部分は、私たちがそれぞれ取り組んでいる事業とも共通していますね。

鈴木健やかな暮らしは、日々の生活の土台です。通常時はそこまで意識することはなくても、体調を崩して生活を見直すなど、維持できなくなって初めてその大切さに気づくこともある。

そういった意味でも、組織力を測って改善する杉本さんの事業や、生活上のリスクを見える化して提案する横川さんの事業は、とても興味深いです。

銀行業は「古くて、硬くて、変わらない」は本当?

みなさん、これまでの領域を超えた挑戦をされているところが興味深いです。

杉本日本には、事業づくりのプロフェッショナルがたくさんいます。けれど、組織づくりのプロはまだ少ないのが現状です。

プロのバンカーが事業づくりに加えて、組織づくりの面も提案できるようになれば、お客様の事業をさらにのばしていくことに貢献できると思ったんです。

これまで多くの企業は、組織面を社内の人事部に任せていた部分が大きかったと思います。

今の日本、そしてこれからの日本に絶対に必要な事業だと確信して、社内起案から半年後に事業化しました。東証プライム上場企業同士の合弁会社としては最速に近いスピードだと自負しています。

起案から半年後の2023年10月にSMBC Wevoxを設立。

鈴木すごいスピード感ですね!銀行は社内決裁に時間がかかりそうで、もっとカタいイメージがあったので驚きました。

杉本よく言われます(笑)。非金融事業への挑戦も、「カラを、破ろう。」というメッセージを前CEOの太田が大々的に掲げたからこそ。

金融業界というと、“古くて、硬くて、変わらない”イメージがあるとよく言われます。でも、SMBCグループには若手でも「どんどんアイデアを持って来い」というボトムアップカルチャーが生まれつつあって、我々のような社内起業事例が増加しています。

「社長製造業」と銘打ち、新たなビジネスの柱になるような面白いアイデアがあれば即時に経営トップがGOを出すんです。実際に、すでに10社ほどが社内ベンチャーとして立ち上がっています。

SMBCグループでは、デジタル領域のトップであるCDIO(Chief Digital Innovation Officer)が主宰する新規事業の決裁会議を毎月開催。若手が新しいビジネスを直接上司に提案できる“殻破り道場”のような場で、杉本氏はそこで構想をプレゼン。「上層部から、やらない理由はないから、早く進めなさいとその場でゴーサインをもらいました」(杉本氏)

鈴木SMBCグループ内でイントレプレナー(社内起業家)を醸成しようという機運が高まっているんですね。

杉本そもそも、100年以上前に銀行を立ち上げた三井家・住友家はイントレプレナー集団だと思っているんです。そういう意味ではイノベーター精神のルーツが確実にあるグループだと思います。

横川同感です。「何事にもまずチャレンジしてみよう」「他社に先駆けてスピーディーに実践していこう」という企業文化を感じることもよくあります。

非金融領域のビジネスを次々と立ち上げているのも、従来の銀行という概念にしがみつかない企業風土があるからこそ。

CEOをはじめとする経営陣から直々に背中を押されたことも、心強かったですね。

鈴木そうはいっても、新領域に挑戦することに対する反感の声はなかったんですか?

杉本いろいろな意見はいただきますが、大切なのは会社の歴史をリスペクトすることだと思っています。これまでSMBCグループを作り上げてきたヒト・モノ・コトに最大限の敬意を払いながらもカラを破り挑戦する。そしてそれは絶対に顧客のためになるという軸さえぶれなければ、いくらでもチャンスをくれる会社だと思っています。

グループ内には、日々さまざまなアイデアや情報を誰でも投稿できるSNS『みどりの広場(通称:ミドりば)』がある。5万人以上の社員が参加し、闊達な意見交換や交流が行われている。

“失われた30年”は終わらせる

起業後は、どんな変化がありましたか?

横川責任ある立場として、課題と常に向き合いどう改善するかを考え続けています。難しいことだらけですが、自分が率先してやらねばという思いが一層強くなりました。

杉本自分に正直に振る舞えるようになりました。SMBC Wevoxは、日本経済の発展に貢献して「日本を世界に誇れる国にする」というビジョンを掲げています。

この“誇れる国にする”という部分がポイントで、ミレニアル世代でもある自分が「失われた30年を終わらせるんだ」と本気で思いながら取り組んでいます。

鈴木大きな企業にいると見失いがちなことでもありますね。その思いは、出向して一度会社の外に出たから気づけたのですか?

杉本それもあるかもしれません。一度外に出たことで、自分の会社の芝生の青さに気がつきました。コーポレートカラーは緑ですが(笑)。

銀行員はみんな、志を持って入行しています。熱意を心に秘めた優秀な人が本当に多いんです。

今回、日本を良くするために社内起業すると一念発起して上層部から許可をもらった翌日には、法律に強い社員やシステム開発の優秀な社員などをすぐに社内で口説いてチーム編成をしました。想いに共感してくれる、熱量と能力のある良いメンバーに恵まれているなと感じます。

鈴木それは羨ましい!今、自社の組織を再構築している中でつくづく実感するのは、組織はトップの器以上にはならないということ。でも組織は、一人が引っ張れば良いというものでもないですよね。

サッカーで、スーパースターが入ったからといって試合に勝てるわけではないことと似ています。そのスターが輝ける土壌づくりや戦術はもちろんのこと、良いパスを送れる仲間がいるかどうかも重要。まさに“組織力”が問われます。何よりも、根本部分で一番大事なのは「想い(ビジョン)に共感できているか」。バンカーはドライなイメージを勝手に抱いていたので、熱量の高さはちょっと意外でした。

今後はどんなことに取り組んでいきますか?

杉本2022年の米ギャラップ社による「グローバル職場環境調査」によると、日本で仕事への「熱意ある社員」の割合はわずか5%ほどという結果だったそうです。でもこれは逆に、まだ95%伸ばすチャンスがあるということでもあります。

モノづくり大国として成長した日本は、次は組織づくり大国として発展できる可能性が多いにあると思っています。

オペレーションが得意という強みを生かし、組織力を強めて生まれた斬新なアイデアを形にしていけば、さらに日本は成長できる。サービスを通じて、そのサポートをしていきたいですね。

横川引き続き、日々変化するお客様のニーズを捉え、社会課題解決に向けて、金融の強みを活かしながら非金融事業も含めた幅広い分野でのサービスの提供に挑戦していきます。

また、自身の経験なども踏まえ、親子二世代だけでなく、孫世代も一緒に楽しくつながり、お客様により豊かで、幸せな生活を過ごしていただける、そんなサービスにしていきたいと考えています。

鈴木AuBは事業として9期目に突入しましたが、まだまだ腸の大切さを伝えきれていません。発酵文化など日本の良い伝統をもっとグローバルに発信していきたいと思っています。

杉本さん、横川さんと同じ思いでもありますが、課題先進国と言われている日本から率先して事業を行う意義も感じています。今日お話していて、お二人の事業とは何か一緒にできることがありそうですね。お互いにがんばっていきたいと思いましたし、今後の展開も期待しています。

出展元

「2024/2/29公開 BUSINESS INSIDERタイアップ広告より」

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • SMBC Wevox 代表取締役社長

    杉本 秀和氏

    神戸大学を卒業後、2010年に三井住友銀行へ入行。中堅企業への法人営業、小売流通業界の業界担当、本店営業第三部での大手企業向け営業を経て、2021年からファーストリテイリング社長室へ出向。2023年2月に同行デジタル戦略部に帰任し、SMBC Wevoxプロジェクトを立ち上げ、設立までリード。同年10月SMBC Wevox 代表取締役社長に就任。

  • SMBCファミリーワークス 代表取締役社長

    横川 花野氏

    2009年に三井住友銀行に入行。支店で個人向け相談業務を経験した後、個人向けの資産運用や相続などの商品開発の部署に異動。管理職として再度支店で個人の相談業務に携わった後、2021年10月よりライフシフト・ソリューション部に配属。2022年4月から、SMBCファミリーワークスの社長に子会社で初の女性社長として抜擢。

  • AuB 代表取締役

    鈴木 啓太氏

    元プロサッカー選手。高校卒業と同時に、Jリーグ浦和レッズに加入。2015シーズンに引退するまで浦和レッズで活躍。2006年に日本代表に選出され、以後オシムジャパンとしては、唯一全試合先発出場を果たす。自身の経験から腸内細菌の可能性に着目し、AuBを設立。腸内細菌の研究を通じて、アスリートから一般の人向けまで良好なコンディションの維持、パフォーマンスの向上を目標としたビジネスを行う。

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