【シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ】「Vトリップ」はどのようにして誕生したのか

三井住友カードとHTS※1は2025年3月31日より、三井住友カード会員・V会員向けの旅行予約サイト「Vトリップ」のサービスを開始しました。
両社協業のきっかけはSMBCグループの調査・事業開発拠点であるシリコンバレー・デジタルイノベーションラボ※2(以下、ラボ)の活動でした。
サービスがローンチした今、ラボとHTSの関係者に当時を振り返ってもらいながら話を伺います。
※1 Hopper Inc.の一部門であるHopper Technology Solutionsのこと。
※2 2017年に設立したシリコンバレー・デジタルイノベーションラボは、三井住友銀行、三井住友カード、日興システムソリューションズで構成されています。ラボでは、その地の利を活かし、世界の先端技術やビジネスモデルを有するスタートアップ企業やそのソリューションを調査しながら、SMBCグループ内で活用およびサービス提供ができるよう、導入検討から実用化までの取り組みを担っています。
HTSとの出会い
井谷SMBCグループは2023年に個人のお客さま向け総合金融サービス「Olive」をローンチしました。当時の私はOliveに加えられる新サービスのヒントを得るべく大手米銀のサービスを調べていました。その中で米国での実生活を通じて、大手米銀が自社の金融アプリに旅行・飲食店予約等の機能を組み込むことで、自社金融サービスの利用を促していることに気が付きました。個人的にカードと旅行は相性が良い印象を受けていたので、そこから「旅行サービス」に注目するようになりました。
ラボでは、普段から所属会社の垣根なく自由闊達な意見交換を行っていたので、ラボのメンバーに「日本で流行しそうな旅行サービスはないか、業界関係者に知り合いはいないか」と、よく話をしていました。厳さんが声をかけてくれたのはその頃でしたね。
厳そうですね。日常の中で築かれる人との繋がりや信頼関係は、時に想像を超える力を持ちます。当時のHTSさまのAPAC統括責任者とは、バスケットボール仲間で週に3回以上一緒にプレーするほど親しい関係にありました。最初は友人としての相談ベースで、2021年秋頃からHTSさまの日本進出に関する構想を聞いていました。その後も戦略パートナー候補について、バスケットボールコートや近くのカフェで何度も議論を重ねており、井谷さんから旅行サービスに関心があると聞いたのはそのようなタイミングでした。HTSさま本社内でも日本進出に向けた機運が高まり、2023年秋頃、HTSさま本社内で三井住友カードを戦略パートナーの最有力候補とする方針が固まったと聞きました。

厳 公泰氏
井谷厳さんからHTSさまを紹介してもらい、面談を進める中で、日本市場参入には日本で協業できるパートナーが必要だと考えていることを聞いた瞬間、「当社でできる!」と心が躍りました。
AniHTSは、各国の主要な金融機関と提携し、パートナーの独自ブランドのもとで旅行ロイヤリティポータルサイトを提供するというグローバル目標を持っています。米国では「Capital One」、オーストラリアでは「Commonwealth Bank」、ブラジルでは「Nubank」と協業しています。私も初めてこの話を井谷さんから聞いたとき、三井住友カードさまが求めているものがHTSのグローバル戦略とよく一致していると感じました。
井谷HTSさまに三井住友カードが最適なパートナーであることを理解してもらうために、当社がいかに最先端な金融機関であるか、あの手この手で必死にアピールしました。

井谷 綾氏
HTSの事業概要、強み
AniHTSは、価格据え置きプラン※3(12時間から21日間、航空券の価格を据え置くことができ、航空券の値上がりを心配せずに購入することができます。有料プラン)やキャンセル安心オプション※3(ホテルはチェックインまで、予約代金の100%、航空券は出発3時間前までなら予約代金の80%が、どんな理由で予約をキャンセルした場合でも返金されます。有料オプション)といったユニークなサービスを提供することで急速に人気を集めています。
※3 「Vトリップ」で提供されるサービス名称です。各サービスにはご利用条件があります。

Ani Malkani氏
井谷HTSさまは創業以来、旅行価格に関する情報、購入データ、フライトの遅延情報などの第三者データを含むあらゆる種類のデータを蓄積してきていると聞いています。価格据え置きプランやキャンセル安心オプション等のサービスは、機械学習やAIを使った独自のアルゴリズムを使っており、競合他社による模倣の難しさが、重要な差別化要因となっているのですよね。
Aniその通りです。HTSのサービスは非常に独自性が高いです。HTSは、年間7兆件以上の旅行価格に関する情報を10年以上にわたり収集しており、これにより独自の機械学習精度を向上させています。
井谷HTSさまは幅広い買い付けチャネルをお持ちなのですよね。
Aniはい。HTSは旅行商品をサービス提供者から直接買い付ける他、OTA※4事業者やグローバル流通システム(GDS※5)等から買い付けしているので、ユーザーは同じホテルであってもその時の最安値で予約ができます。
※4 Online Travel Agentの略で、インターネット上で旅行の予約や手配を行う旅行会社のこと。
※5 世界中の旅行会社や旅行代理店が、航空券、ホテル、レンタカーなどの予約や発券をリアルタイムで行うことができるコンピュータシステム。
HTSの強みはグローバルでも認められているので、各国の有力な金融機関とパートナーシップを結ぶことができています。

井谷三井住友カード視点でも、HTSさまとの協業の社内合意を得るために、他社との差別化要素であるサービスや、グローバルで顧客から評価されている実績を重点的に説明しました。
「Vトリップ」立ち上げを経て
井谷こうして3人で顔を合わせるのは久しぶりですね。振り返るとシリコンバレーの人的ネットワークが事業化に直結した好事例だったと思います。私がやりたいと思い描いていたことが、厳さんを通じAniさんと知り合えたことで、サービス化まで至ったことを誇りに思います。
厳本件はHTSさま及び三井住友カード両チームのたゆまぬ努力の結晶であり、多くの方々から多大なるご支援をいただきました。この場を借りて、全ての関係者に感謝の意をお伝えしたいです。
Ani私たちは、三井住友カードさまと協業して、日本のユーザーにとって「Vトリップ」を旅行予約の最適な場所にすることにワクワクしています。三井住友カードさまの革新的な取り組みと顧客価値の創造は、HTSの理念と非常に一致しています。「Vトリップ」が世界的に認知されるようになることを楽しみにしています!
(参考)「Vトリップ」とは
三井住友カード会員・V会員向け旅行予約サイト「Vトリップ」のサービス※6です。
※6 「Vトリップ」はHTSによって運営されています。

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三井住友カード株式会社 国際開発部
(シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ駐在)井谷 綾氏
2015年に三井住友カードに入社し、法人営業部に所属、大手エンターテイメント事業者等の提携カード業務に従事。2018年よりマーケティング部に所属、決済データの利活用、及びWebマーケティングやキャンペーンを通じた新規カード会員獲得に貢献。2021年より、シリコンバレー・デジタルイノベーションラボに所属し、海外企業との戦略的提携の企画・推進に取り組んでいる。
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株式会社三井住友銀行(現在Sozo Venturesに出向)
厳 公泰氏
2010年に三井住友銀行に入行し、法人営業部で不良債権回収や新規顧客開拓、VCとの協業案件に従事。2013年よりSMBC日興証券にて金融セクターカバレッジバンカーとして、東京スター銀行や日本GE等の買収、IPOなど30件超の案件を遂行。2019年からシリコンバレーに駐在、Fintechリサーチやスタートアップ投資、LP出資を担当。2022年にSMBC復職、GB部門にてLP投資戦略を推進し、Sequoia Capitalへの出資を実現。2023年から米Sozo Venturesに出向、投資ディールフロー、デューデリジェンスや事業開発を担う。
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Hopper Technology Solutions
Ani Malkani氏
HopperのB2Bプロダクトソリューショングループを管理、世界中の主要な金融機関や旅行ブランドとのパートナーシップを担当。プロダクトマネジメント、データサイエンス、デザイン、エンジニアを含む複数部署の統括を行い、パートナーへHopperのソリューションをホワイトラベルで提供。現役職前は、Hopperの地上交通事業を担当し、Hooperを北米で最大のレンタカー販売業者の1つにまで成長させることに貢献。Hopper入社前はVisaでプロダクトリーダーシップの役割を担い、Uberを含む戦略的パートナーのためのロイヤリティソリューションの開発を牽引。