デザインの力で「最も選ばれる金融グループ」を創る。デザインチームが受け継ぐチャレンジスピリット

デザインの力で「最も選ばれる金融グループ」を創る──このミッションに挑んでいるのは、三井住友銀行 リテールIT戦略部 戦略企画グループに所属するインハウスデザイナーたち。さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが、銀行員の枠にとらわれない「デザイン思考」でSMBCグループの新たな価値を生み出しています。
スマートフォンアプリやWebサイトのUI/UXデザインにとどまらず、デザインシステムの構築やサービスデザインなどにも関わるデザインチームが大切にする「デザイン思考」とは。そして、デザイナーの存在価値をアップデートする取り組みの根底にあるチャレンジスピリットに迫ります。
大切にしているのは、お客さまに寄り添った思考
2016年12月にリテールIT戦略部内で発足したインハウスデザインチーム。発足の背景は、デジタル化によりお客さまとのタッチポイントが急速に変化したことでした。実店舗ではなくデジタルでのタッチポイントが主流になる中で、どうしたらお客さまにもっと価値を提供できるか──その課題解決を期待された組織のひとつが、デザインチームでした。

松下 耕太郎氏
松下事業やサービスの方向性が固まった要件定義以降の開発フェーズからデザイナーが参画することはよくありますが、それでは後戻りが難しい。そこで、私たちはより初期の企画フェーズから参画することで、どのように提供するかという「How」だけではなく、そもそも何を提供しようとしているのかという「What」をデザインする姿勢を大切にしています。
価値提供にあたり心がけていることは、お客さまに寄り添った思考だと言います。
岡﨑デザイナーに求められているのは、お客さまが求めているものを形にすること。そのため、サービス提供者としてのフィルターを外して「お客さまにとって良いものは何か」を考える。そこに、銀行としての価値観を融合させることで良いものが作れると感じます。
大安この機能やサービスを使うのは誰か、使ったことによってどんな行動変容があり、ユーザーにどのような情緒的な変化が起こるのか。そこまでイメージすることが大事だと考えています。
チームに所属するデザイナーは現在13名。さまざまなキャリアを持つメンバーをマネジメントする松下は、その多様性を活かしたチームづくりを目指しています。
松下デザインチームのメンバーは、粒ぞろいではなく「粒違い」。個々人の領域を固定させず、誰もが柔軟に活動できる体制を心がけています。もちろん、会社の方針として「やるべきこと(Must)」はありますが、皆が「やりたいこと(Will)」と「できること(Can)」を軸においた案件アサインを心掛けています。
デザイナーへのキャリアチェンジ。そして、変革の渦中にあるメガバンクへ
松下は、前職では主に工業デザインの領域でキャリアを歩んできました。新卒で総合電機メーカーに就職し、研究開発部門のデザイン組織において、ハードウェアプロダクトのデザインを担当。その後、事業開発やイノベーション方法論の研究と、デザイン領域の中でも全く異なる仕事を経験してきました。
松下メーカーで約20年、さまざまな対象をデザインする中で、研究開発部門ではなく事業部門において、事業方針や企画、開発や営業に直接関わることがしたいと常々思っていました。
デザインのケイパビリティを活かしつつ、プロフィットセンターで直接ビジネスに関わりたい──その想いをかなえるために選んだのが三井住友銀行でした。
松下大学院でも社会システムのデザインを専攻していたこと、前職の部内でも金融機関とサービス開発を協創していたことなど、生活とビジネスのインフラである「金融」にはもともと興味がありました。さらに、急速にデジタル化する時代において日本のメガバンクがどう事業変革を成していくのか、その変化の渦中に入ってみたい。そう思って入行を決めました。
現在デザイナーとして活躍する岡﨑と大安。そのキャリアの始まりは、異なる職種でした。
岡﨑は、広告会社に営業職として入社。「作り手として自分の想いを形にしたい」という気持ちが、キャリアの転機だったと振り返ります。

岡﨑 隼也氏
岡﨑独学でグラフィックデザインを学び、フリーランスのデザイナーとして実績を積み上げていきました。そして、シンガポールの広告会社にデザイナーとして入社するも、すぐに挫折して帰国しました。この悔しさが、その後のキャリアに大きな影響を与えていると感じています。
その後は、当時デザイナーがいなかったITベンチャー企業にデザインができることをアピールして飛び込んだり、アメリカに渡って化粧品メーカーのプロダクトデザインやUI/UXデザインの領域にチャレンジしたり、背水の陣の覚悟で経験を積んでいったという岡﨑。帰国することになり、日本でおもしろい取り組みをしている会社を探していたときに見つけたのが、三井住友銀行のデザインチームでした。
岡﨑調べてみたら、私と同じように営業職からデザイナーになったメンバーもいる。自分が目指すキャリアを歩んでいる人がいることが、入行の後押しになりました。
大安のキャリアのスタートは、Webディレクターでした。その後、「自分自身と社会の多くの人が使いたいと思うサービスを創出したい」と、UXデザイナーにキャリアチェンジ。さらに、ものづくりの全体に関わりたいと考えたことで、事業会社への転職を決意します。
三井住友銀行を選んだ理由は、「メガバンクという異文化の環境でさまざまなプロフェッショナルと協働し、顧客目線でものづくりできることは、当時の自分にとって大きな魅力があったから」だと言います。
大安お金は多くの人にとって大事なものだからこそ、社会や生活に対する影響力がある。また、大きな組織でありながらデザイン文化が浸透し、デザイナーがプロジェクトに積極的に参画できる環境での活動は、良い経験になると考えました。
未来の社会を想像しながら提案することで、デザインの力を証明していく
デジタル化する時代において、メガバンクがどう事業変革を成していくのか──松下はその変化に影響力を与えられることが、デジタルプロダクト開発の醍醐味だと話します。
松下小さなチームでも、ノウハウを横展開することで巨大なグループ全体のレベルを底上げできる。その波及効果が魅力です。
実際にノウハウが横展開された一例が、デザインシステムのブラッシュアップ。デザインシステムはSMBCグループ内に公開されており、そのルールに則ることで一貫性のある利用体験を支援します。
このプロジェクトに携わった岡﨑は、社会インフラの一つである金融領域でデザインに関わることの難しさとやりがいと感じたと言います。
岡﨑より多くの人に不自由なくSMBCのサービスを使っていただくためには、目が見えにくい方や耳が聞こえにくい方などへの配慮も不可欠なため、デジタルサービスにおけるWebアクセシビリティが重要です。UIなどのルールを再定義するために多くの議論を重ね時間をかけて設計していきました。現在も、デザインシステムにWebアクセシビリティのルールを取り込むなど模索を続けています。

デザインシステムをはじめ、大きな組織でありながらデザイン思考が浸透している──大安は入行後、その文化を実感することが多いと話します。

大安 慧斗氏
大安一つのプロジェクトを企画や開発の担当者と一緒に作り上げている実感があります。企画の初期段階でデザイナーに相談が来るし、こちらから提案することもある。それが当たり前の環境にデザイナーへの期待を感じます。デザイン提案にはそれによって生まれるユーザーと事業にとっての価値を具体にすることが求められますが、とくにデザイナーは、そのために未来の社会変化を想定することが大切だと感じています。
松下は、こういった新たな試みを受け入れ、挑戦や変化を躊躇しない姿勢こそがSMBCグループの強みだと話します。
松下伝統的な大企業でありながら、ベンチャーマインドやチャレンジスピリットにあふれていると感じます。それは、銅精錬の技術で発展したテクノロジーベンチャーである住友の歴史、呉服を現金掛け値なしで販売したビジネスイノベーターである三井の歴史の両方が脈々と受け継がれているからではないか、と勝手に考えていたりします。
SMBCグループのファンを増やし、イノベーションを牽引する存在へと導きたい

チャレンジスピリットあふれる環境で、これまでと違うデザインのあり方やデザインの魅力を感じている岡﨑と大安。SMBCグループの存在感を高めることに挑戦したいと話します。
大安たくさんの競合がいる中で、「SMBCグループのサービスだから」という理由で選んでもらえる存在になるため、SMBCグループのファンを作っていく仕組みを考えていきたいと思います。
岡﨑銀行や金融という枠も超えて、SMBCグループがイノベーションを引っ張っていく存在になることを支援したいと思っています。
ふたりの想いを受けた松下は、デザインチームのポジションを確固たるものにしていくこと、そのために内外にデザインチームの価値を広めていくことが自分の役割だと語ります。
松下表層的なデザインを超えた領域にデザイナーが関与する機会探索やそのためのスキルアップを継続的に行っています。そこで、SMBCグループのファンをつくることや、デザインの力で社会を変えることに挑戦したい多様なスキルを持った方に、私たちのデザイン組織の仲間になってもらいたいと考えています。
その先に描くのは、デザインの力を存分に発揮しながら「最も選ばれる金融グループ」を創るという未来です。
松下私たちは日々、何かしらの価値交換をしながら生活しています。価値交換のインフラの一端を担う仕事はとても責任が大きいですが、その分自分たちの工夫が社会に与える影響も大きく、それが金融機関のデザインに携わる醍醐味だと思っています。先人の事業企画者やデザイナーが作ってくれた土台を活かしながら、さらに存在感のある組織を目指していきます。
※ 記載内容は2025年4月時点のものです
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株式会社三井住友銀行 リテールIT戦略部 戦略企画グループ
デザインマネージャー 上席推進役松下 耕太郎氏
2004年総合電機メーカーに入社。ハードウェアププロダクトやサービスのデザイン開発、イノベーション創生手法の研究に従事。2023年三井住友銀行に入行。SMBCグループにおけるデザイン拡大戦略の検討と金融デジタルサービスの企画を推進。
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株式会社三井住友銀行 リテールIT戦略部 戦略企画グループ
UI/UXデザイナー岡﨑 隼也氏
2009年総合広告会社に営業職として入社。シンガポールにある広告会社でグラフィックデザイナーとして勤務。ITベンチャー企業やWebマーケティング会社、米国の化粧品メーカーでのプロダクトデザインなどを経て、2022年三井住友銀行に入行。
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株式会社三井住友銀行 リテールIT戦略部 戦略企画グループ
サービスデザイナー
HCD-Net認定 人間中心設計専門家大安 慧斗氏
2017年通信会社のグループ企業でWebディレクターとしてキャリアをスタート。その後、UXデザイナーにキャリアチェンジし、2024年三井住友銀行に入行。
シリーズ:キャリアStory