
2025年5月30日、SMBCグループは経済産業省、東京証券取引所および独立行政法人情報処理推進機構(IPA)より「デジタルトランスフォーメーション銘柄(以下、DX銘柄)2025」に選定されました。昨年に続いての連続選出となります。これは、同グループが掲げる「Beyond & Connect」「Empower Innovation」というDX戦略と、失敗を恐れずに挑戦する企業文化のもと、金融の枠を超えた業務変革を推進したことが高く評価された結果です。
本記事では、「DX銘柄2025発表会」に出席したSMBCグループ 執行役専務 兼 CDIOの磯和 啓雄氏と、三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部長の松永 圭司氏のコメントをもとに、なぜ2年連続で評価されたのか、その理由を明らかにしていきます。
失敗を恐れず、金融の枠を超えたDX事業への挑戦が評価
「DX銘柄」とは、東京証券取引所に上場している企業の中から、企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を選定するものです。今年の応募総数は311社。その中から「DX銘柄」として31社が選定されました。
SMBCグループが2年連続で「DX銘柄」に選定されたことについて、デジタル戦略部長の松永氏は、「SMBCグループでは、DX戦略のキーワードとして『Beyond & Connect』を掲げ、失敗を恐れずにチャレンジする文化を醸成してきました。そして、金融の枠を超え、新たなDX事業に果敢に挑戦し続けている姿勢が評価されたと思っています。今年もAI活用を中心とした様々な取り組みを推進していく予定です。来年もまた選定されるようデジタル戦略部のみならず、グループ一丸となって頑張っていきたいと考えています。」と述べました。

松永 圭司氏
SMBCグループでは、DXの進展によるビジネスモデルの転換や業界地図の塗り替えを、機会である一方で脅威とも捉えています。そのうえで、銀行・金融業界の枠を超えたビジョンを描き、プロダクト・サービスの高度化や新たなビジネスモデルの創出に取り組んでいます。
DX戦略のキーワードとして掲げる「Beyond & Connect」とは、デジタルが持つ“超える力”と“つなぐ力”という意味が込められています。これに、イノベーションを加速する枠組みの強化「Empower Innovation」を組み合わせ、多様なパートナー企業との連携を通じて、業態や企業、地域の壁を超えたソリューションの提供を目指しています。さらに、グローバルベースでのインキュベーションハブ整備やCVC設立、生成AI活用に向けたケイパビリティの強化、機動的なガバナンス体制の構築、グループ内からデジタル関連の新事業とその社長を生み出し続ける社長製造業の取り組み、社内SNSなどを通じた失敗や試行錯誤を許容するカルチャーの醸成により、社内外から新規ビジネスの種が生まれる仕組み作りと金融ビジネスの変革を加速しています。
デジタルとリアルの双方のチャネルで顧客基盤を拡大「Olive」
グループCDIOの磯和氏は、24年度に注力したDXの取り組みを振り返り、「当社では、年々変化するお客さまのニーズを的確に捉え、それに応じてアップデートを重ねながら、常に新たなDXソリューションの創出に取り組んできました。2024年度からは、従来の取り組みをさらに進化させ、いわば“セカンドフェーズ”に入ったと認識しています。たとえば、モバイル総合金融サービス『Olive』は、金融のデジタル化にとどまらず、カフェを併設したリアル店舗の展開など、新たな価値を提供するフェーズに移行しています」と語ります。

磯和 啓雄氏
2023年3月にローンチした「Olive」は、銀行口座・カード決済・ファイナンス・オンライン証券・オンライン保険などの機能をアプリ上でシームレスに統合した全く新しいサービスです。サービス開始以降、SMBCグループの枠を超えた各業界のトッププレイヤーとの業務提携を推進し、お客さまの利便性を徹底的に追求しています。
具体的には、24年4月に従来SMBCグループで提供していたVポイントとカルチュア・コンビニエンス・クラブのグループ会社が展開していたTポイントを統合した「青と黄色のVポイント」をリリースし、ポイントの貯まりやすさ・使いやすさを大きく引き上げました。24年12月には「マネーフォワード ME」でのアクションに応じてVポイントが貯まる「ポイントが貯まる家計簿」の提供を開始。25年3月からは、Oliveの非金融サービスの第一弾として、カナダのオンライン専業旅行会社Hopper, Inc.と提携し、会員向け旅行予約サイト「Vトリップ」の提供を開始しています。
また、Oliveアカウントを保有しているお客さまが特典を体感できる空間として、24年5月には銀行・カフェ・オフィスが一体型となった新店舗「Olive LOUNGE」を渋谷にオープン。デジタルとリアルの双方のチャネルで顧客接点を広げ、基盤拡大を図っています。
SMBCグループでは、AI・データ活用による業態変革にも積極的に取り組んでおり、特に生成AIの活用を強力に推進しています。従業員専用のAIアシスタントツール「SMBC-GAI」は専用環境で稼働し、1日2万件以上の利用実績があります。また、2024年10月には、次期中期経営計画も含めて500億円規模の生成AI関連の投資を行う「AI-CEO枠」も整備しました。
DXによる業態変革・新規ビジネスモデルの創出が重要「DX銘柄2025発表会」
5月30日に開催された「DX銘柄2025発表会」では、「DX銘柄2025」および「DXグランプリ企業」、「DX注目企業」、「DXプラチナ企業2024-2026」の選定企業が発表されたほか、基調講演・パネルディスカッションが行われました。
「DX銘柄2025発表会」では、SMBCグループを含む以下の31社が「DX銘柄2025」に選定され、そのうちの2社が「DXグランプリ企業」に選ばれました。

基調講演では、DX銘柄2025評価委員会委員長であり一橋大学CFO教育研究センター センター長の伊藤 邦雄氏が登壇。長期的な成長の実現には、GX・DXへの積極投資に加え、人的資本や知的財産といった無形資産への継続的な投資が重要だとし、既存ビジネスモデルの進化にとどまらず、デジタルを活用した新たなビジネスモデル創出、もしくは業態変革の必要性を強調しました。
パネルディスカッションでは、伊藤氏のほか、アイ・ティ・アール 会長 エグゼクティブ・アナリストの内山 悟志氏、ファイブ・シーズ 取締役会長の越智 義和氏、デロイトトーマツリスクアドバイザリー パートナーの川津 篤子氏の3名が登壇し、「DX銘柄2025」の審査を終えた感想や、注目のDX銘柄企業、DX人材育成に向けた課題などについて意見が交わされました。
99.7%を占める中小企業にも、新たなファイナンス体験を
Oliveのアカウント数は、サービス開始から2年で500万を突破。Olive LOUNGEは、7店舗目まで展開されるなど、デジタルとリアルの接点はともに、着実に拡大しています。
さらにこのノウハウを活かし、2025年5月23日には法人向けデジタル金融サービス「Trunk(トランク)」を提供開始。法人ネット口座を起点に、お金周りの業務を効率化し、日本の99.7%を占める中小企業のお客さまに対しても新しいファイナンス体験を届けることを目指しています。

磯和氏は「すでに、多くのお客さまから好評の声を多くいただいており、今年度はこのサービスを一気に伸ばしていきたいと考えています」と、3年連続の「DX銘柄」選定に向けて意欲を語りました。
SMBCグループはこれからも、DXを通じて「金融のその先」を切り拓いてまいります。

PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。
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三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO
磯和 啓雄氏
1990年に入行後、法人業務・法務・経営企画・人事などに従事した後、リテールマーケティング部・IT戦略室(当時)を部長として立ち上げ。その後、トランザクション・ビジネス本部長として法人決済の商品・営業企画を指揮。2022年デジタルソリューション本部長、2023年より執行役専務 グループCDIOとしてSMBCグループのデジタル推進をけん引。
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株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部長
松永 圭司氏
1998年三井住友銀行入行。国内外のホールセールバンキングビジネス企画、経営企画等を経て、2021年よりAsia Innovation Centre室長に就任。銀行業務の変革とアジアでの成長をビジョンに掲げ、APAC地域でデジタルを活用したクライアントの事業創出や社内インフラの刷新に取り組む。2023年よりCVC運営を兼務。2024年よりデジタル戦略部長として金融及び非金融領域のデジタルの取り組みを推進。東京大学卒業、カーネギーメロン大学(MBA)修了。
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