事業開発の陰にある無数の試行錯誤と、挑戦者たちの胸の内。SMBCグループは今春、それらを深く掘り下げるPodcast番組『共創前線 ~イノベーション・カタリストたちの作戦会議~』を開始しました。
東京・丸の内にある共創施設「HOOPSLINK」を拠点とし、Podcast Studio Chronicleと共同で番組を制作。複数の音声プラットフォームとYouTubeで、毎週木曜日に配信しています。
なぜ今、Podcastという音声メディアを選んだのか。共同制作者であり、ビジネス・経済分野を中心に多数の番組を制作してきたPodcastプロデューサーのChronicle代表・野村 高文氏と番組パーソナリティの片桐 千晶氏、施策を立ち上げた三井住友銀行 デジタル戦略部の本間 悠暉氏の3人に、番組の設計思想から「人」を介してつながる事業共創の未来像までを伺いました。
長く聴かれ、深くつながる。SMBCグループがPodcastを選んだ理由
金融機関による音声メディアへの参入は珍しい取り組みですが、始められた理由を教えてください。
本間SMBCグループは2025年7月、事業共創施設「HOOPSLINK」を丸の内に開設し、主体的に共創パートナーを探しながら新規事業創出を推進しています。新たなパートナーとつながるには、まずは当行が事業開発・事業共創に積極的であることを知っていただく必要があります。そこで新たな情報発信の施策としてPodcastに注目しました。
本間 悠暉氏
野村Podcastの最大の特徴は滞在時間の長さです。20~30分程度のコンテンツであれば、最後まで聴いてくれるリスナーは、少なくとも半数以上、多いときは7割に達します。同じ内容をYouTubeで配信すると、最初の数分間で一気に半分以下、3割程度まで落ちて、最終的には1~2割程度しか残りません。
さらにPodcastはどの回も再生数がそれほど変わらず、一度流入したリスナーがリピート視聴する確率が高いという特長もあり、配信者とリスナーの間で継続的な接点をつくりやすいメディアと言えます。
本間このリスナーと長く深い関係を構築しやすいメディア特性を上手く活用できれば、Podcastを通してより「濃い」SMBCグループのファンの創出、そしてその先の共創パートナーをつくることができるのではないかと考え、Podcastを活用したコンテンツの企画化にむけて動き始めました。
Podcastのリスナー層にはどのような特徴がありますか?
野村日本では2つのクラスターが存在します。1つはお笑いコンテンツを好む層で、Spotifyでの聴取が多い。もう1つは情報感度の高いビジネスパーソンで、Apple Podcastで聴く方が多い。Apple Podcastの人気ランキング上位は、ニュースコンテンツが占めています。ビジネス系コンテンツは、通勤通学、ランニングやトレーニング中、家事をしながらといった隙間時間に聴く方が多いですね。
野村 高文氏
共感から共創へ。番組づくりに込めた設計思想
企画にあたり、どのような議論から始められたでしょうか。
本間私が所属するデジタル戦略部は新規事業開発を1つのミッションとしており、一般的な銀行業務とは異なる役割を担っています。そこでまずは、制作にご協力いただいているChronicleさんと我々の業務や役割について目線を合わせるところから始めました。
また、社内のキーパーソンには野村さんから直接説明していただくことで、Podcastの優位性や費用対効果への理解を得るようにしました。今の時代、目を引くサムネイルの動画や感情をあおるSNS投稿などアテンションの奪い合いで疲弊している人も多いですが、音声はじっくり聴けるメディアとして「企業が伝えたいことをしっかり届けられる」と社内でも理解を得ることができました。
コンテンツ作りにおける工夫は?
本間共創パートナーとつながりたいという思いと、リスナーにとって興味深いコンテンツのバランスを取ることが、企画段階からの課題でした。当初はSMBCグループが主体となって発信する建て付けでしたが、それでは独りよがりな発信となりリスナーに響かない可能性があります。
そこで我々がやりたいこと、リスナーが求めるもの、関係者が必要なものを分析してコンセプトを設計し、番組としての見せ方や語り口を検討しながら進めていきました。
野村最終的な目標は、事業共創パートナーとの接点づくりです。情報としてSMBCグループの取り組み内容を入れる必要がある一方で、取り組み紹介のウエイトが重すぎると宣伝的に見られてしまいます。SMBCグループについて全く知らないリスナーにも、「働いている人が面白い」と思ってもらえるようなバランス調整が腕の見せ所でした。
初回収録では本間さんにホストをお願いし、専門家からのノウハウ提示に対し実感のこもったコメントを返すことで、グループ内の雰囲気や新規事業開発への思いが伝わる構成としました。
さらに、番組には進行役としてフリーアナウンサーの片桐さんも参加されています。
野村ホストやゲストの中にプロが入ることで、全体の安心感が増し、聴きごたえのあるものに仕上がります。片桐さんは10年来の仕事仲間で、プロフェッショナル中のプロフェッショナル。進行の安定感はもちろん、専門家が熱量を込めて話す“芯の部分”をしっかり汲み取っていただけます。一般的な目線でわからないことを素直に聞いていただけるので、内容の難易度も、リスナーにとってちょうどよいバランスになるんです。
片桐さんは進行役として、どのようなことを意識していますか?
片桐ラジオ番組のアシスタント時代、「スタジオの中がわかっている人だけになるとリスナーが置いてきぼりになる」と教わりました。下調べをしすぎると、専門家側の目線に寄りすぎてしまうことがあります。だからこそ、あえて調べすぎず、その場の話の流れの中で疑問に思ったことを素直に聞くようにしています。
片桐 千晶氏
成功も失敗も丁寧に拾い上げ、挑戦者の「人となり」を伝える
番組の中で、SMBCグループらしさはどのように表現しているのでしょうか。
本間専門家の話を、SMBCグループ内のいちビジネスパーソンとしてどう受け止めているかを意識しながら話しています。例えば、初回でお迎えした新規事業のプロとして知られる守屋実さんは「新規事業でもっとも重要なのは意志」だと話されました。私自身も、意志を持ってこの番組を立ち上げ、試行錯誤してきた実体験があるため、その経験も踏まえて話すようにしています。
野村SMBCグループは金融機関の中でも特に「人」が立っている組織だと感じています。一人ひとりの仕事ぶりや個性、事業に向き合う熱量がリスナーにも伝わることで、「この人たちと一緒に取り組んでみたい」という気持ちにつながるのではないかと考えています。ですから、番組の構成も本間さんの仕事ぶりや人柄が伝わるよう工夫しています。
また、Podcastは「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤しながら結論に至るプロセス自体がコンテンツとなり、脱線した話が味になったりするので、できるだけ自然な会話の流れを残すことを意識し、カットは言い間違え程度に抑えています。
これまでの収録で、印象的だったゲストの発言は?
片桐初回収録でお迎えした守屋実さんの「新規事業は十中八九失敗する」というコメントです。成功続きのイメージを持っていましたが、実は「どんどん挑戦して山ほど失敗しているから、みんなに見えているのは一部の成功だけ」だそう。十中八九は失敗するが、それは裏を返すと1~2割は必ず成功するということ。そこまで熱意を持ってやり切れるかが大切だとおっしゃっていました。
そのお話を聞いて、失敗からどのように成功にたどり着いたのか、その挫折の部分も含めて伺っていく番組にしたいと思いました。
「この人と取り組みたい」を生む番組へ
最後に、このPodcastへの思いを聞かせてください。
野村Podcastの裏テーマは「人間そのものを見せられるメディア」。本間さんは非常に実直な方ですが、一方でこのPodcast立ち上げに見られるように「やり抜く力」もお持ちです。そんな実直さや信頼感は、音声越しに必ず伝わるはず。
「やりたい」と「やる」の間は相当溝があると思いますが、最終的に「この人と取り組もう」と思わせる決め手は“人”です。Podcastを通じて生身の人間が事業を推進している様子がリアルに伝わり、「ぜひパートナーになりたい」と感じる方を増やしていきたいですね。
本間起業家、社内起業家、事業開発担当者など、さまざまな業界や立場の人をゲストに招き、成功も失敗も含めた意思決定の舞台裏を届けることで、誰もが行動を起こすきっかけになるコンテンツを目指したいです。
起業家や事業開発担当者だけでなく、「社会を変えたい」「会社を変えたい」「自分を変えたい」という熱意を持つ方々にも幅広く聴いていただき、日本中で挑戦者が増えるような未来を作っていきたい。我々自身も番組を通して学び、変革を先導する存在を目指していきます。
そのうえで、行員も番組に出演することで、SMBCグループの「事業共創」の姿勢に共感いただき、一緒に取り組みたいと思っていただける人が増えれば、この番組の本来の目的を果たせたと言えると思います。
PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。
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株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部
本間 悠暉氏
2018年、株式会社三井住友銀行に入行。中堅・中小企業を中心に法人営業を担当した後、2023年よりデジタル戦略部にて、新規事業の開発や自社開発プロダクトのマーケティングおよび事務企画を経験。現在は同部にて、Podcast「共創前線」やオウンドメディア「DX-link」等の情報発信の企画運営に従事。
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Podcast Studio Chronicle 代表
野村 高文氏
Podcastプロデューサー・編集者。東京大学文学部卒。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、ニューズピックスを経て、2022年にChronicleを設立。制作番組「a scope」「経営中毒」で、JAPAN PODCAST AWARDS ベストナレッジ賞を2年連続受賞。その他の制作番組に「News Connect」「みんなのメンタールーム」など。TBS Podcast「東京ビジネスハブ」メインMC。著書に『プロ目線のPodcastのつくり方』、共著に『視点という教養』(深井龍之介氏との共著)、『地域が動く経営戦略』(土屋有氏、藏本龍介氏、矢田明子氏との共著)がある。
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フリーアナウンサー
片桐 千晶氏
山形県寒河江市出身。2005年、秋田テレビ入社。2011年フリーに転身。2013年1月からTBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ!」のアシスタントを6年間務め、ラジオを中心に出演番組多数。
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