2025年、SMBCグループは「日本の再成長」を目指して、東京と大阪に2つの施設をオープンしました。
東京・丸の内の「HOOPSLINK」は、渋谷で運営してきたオープンイノベーション拠点「hoops link tokyo」をリニューアルし、SMBCグループが主体となって事業創出を目指す共創スペースです。一方、大阪の「HOOPSLINK KANSAI」は、大阪・関西万博を契機に注目が高まった大阪を中心に、関西企業と全国の企業・研究機関をつなぐビジネス創出のハブを目指しています。
SMBCグループとしても新たな取り組みとなる2つの「HOOPSLINK」。それぞれの設立背景や取り組み、目指すビジョンについて、各施設の担当者に伺いました。
HOOPSLINK(東京)の取り組み
東京・丸の内に拠点を置く「HOOPSLINK」について、デジタル戦略部の上席推進役である志村氏と、同部で部長代理を務める古川氏に話を聞きました。
渋谷から丸の内へ、新たな「HOOPSLINK」はSMBCグループが主体の共創スペース
SMBCグループの事業共創施設「HOOPSLINK」の設立背景について教えてください。
志村SMBCグループでは、2017年から、渋谷で「hoops link tokyo」を運営してきました。「新しい出会い・アイディア・挑戦」が生まれる場として、ネットワークイベントやコワーキングスペースを展開し、スタートアップの皆さまとの多くの出会いを通じて、ネットワークを広げてきました。
一方で、偶然の出会いを事業へとつなげることの難しさもまた感じていました。そこでこのたび、渋谷で培われたネットワークを生かし、コンセプトを新たにしたHOOPSLINKを2025年7月に丸の内に開設しました。
志村 佑輝氏
丸の内では、コンセプトをどのように変えたのでしょうか。
志村丸の内のHOOPSLINKには、従来のコワーキングスペースとしての機能は持たせずに、「SMBCグループのアイディアやビジョンに共感してくれる方と事業共創を行う場」としてリニューアルしました。つまり、主語が明確に「スタートアップ企業」から「SMBCグループ」になったと言えますね。
SMBCグループが主体となっている点が、ほかの共創スペースやオープンイノベーション施設と異なるのですね。
古川共創施設の中には、ビジネスマッチングを中心に新規事業・サービスを創出しているところもありますが、HOOPSLINKは「SMBCグループが主体となって、自ら生み出す」ことを目的としています。
この方向転換をしたのは、我々が自らの事業を創出していくためには、これまで以上に、主体性を持って共創パートナーを見つける必要があると考えたからです。非常に挑戦的な試みですが、渋谷での経験があったからこそ、次のステップにつながっています。
その方向転換には、SMBCグループとしての経営方針との関連性もあるのでしょうか。
志村現在の中長期経営計画でSMBCグループのビジョンとして掲げている「最高の信頼を通じて、お客さま・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」と明確に関連しています。
丸の内のHOOPSLINKでは、そのビジョンの下、スタートアップから大企業までのさまざまな企業や最先端のテクノロジーが集積する場として、新しい事業を生み出していきたいと考えています。
特定の企業規模や業種に限定せず、先端技術の検証と事業開発を推進
具体的にどのような取り組みを進めていくのでしょうか。
古川現在は、イベントやワークショップを中心に運営しています。最近だと、ステーブルコインに関するイベントやWeb3関連の「WebX2026」のサイドイベントなどを開催したほか、量子コンピューターのPoCも実施しました。
銀行がWeb3や量子コンピューターといった最先端のテクノロジーに取り組むことを意外に思う人もいるかもしれませんね。
志村金融機関においても、テクノロジーの重要性は高まっています。たとえば、今回の量子コンピュータのPoCでは、SMBCグループと電通の合弁会社であるSMBCデジタルマーケティングと連携のうえ、特徴量(※)を量子コンピュータで計算して最適な組み合わせを導き出し、クリック率向上につなげる検証を行いました。
この取り組みがすぐ事業になるわけではありませんが、金融と親和性がある領域を始めとした、あらゆるテクノロジーの可能性を探っていきたいと考えています。
※特徴量:データ分析や機械学習において、予測や最適化を行うために用いられる要素や指標のこと。
古川企業規模は大手から中小、スタートアップまで問いません。我々は金融機関なので、単独でできることには限りがあります。
新しい事業を作るために不足している部分を補ってくれるパートナーであれば、企業に限らず、自治体や教育機関とも連携していきたいですね。
古川 千里氏
最終的なゴールは「日本の再成長」に貢献する事業開発エコシステムの確立
運営していく上での指標などはありますか。
志村今はイベント開催を中心に運営していますが、HOOPSLINKの目的は、あくまで事業開発や新しいサービスを作り出すことです。本来の目的を達成するためにいろいろと検証している段階なので、まずは来年度に一つでも事業化した事例を作りたいですね。
最後に、今後の展望について教えてください。
志村イベントやワークショップの開催、事業化に向けた取り組みを引き続き進めていきながら、それと合わせてこの施設を起点にした「発信」も重要だと考えています。
DX-linkのようなオウンドメディアなどを活用しながら、我々がやりたいこと、取り組みたいことをしっかりと発信していくことが第一ステップだと考えています。
古川最終的に目指すのは、このHOOPSLINKを中心としたエコシステムを作り、「日本の再成長」に貢献することです。情報を発信して、企業や自治体、教育・研究機関に集っていただき、事業を生み出していく。そして、それをまた次の事業開発につなげていく――。
SMBCグループやパートナー企業を巻き込みながら、“ガソリン”のようにコンテンツを投入してエンジンをかけながら、良いサイクルを作れたらと思っています。
志村いずれは「HOOPSLINKの事業開発」を教科書のようにパッケージングできればと考えています。現在は、その第一歩を踏み出した段階です。
HOOPSLINK KANSAI(関西)の取り組み
続いて、大阪駅と梅田駅の近くに拠点を置く「HOOPSLINK KANSAI」の取り組みについて、成長事業開発部の部長である松本氏と公共・金融法人部の部長である金子氏に話を聞きました。
万博の盛り上がりをその後につなげ、関西全体のGDP拡大に貢献したい
まず、「HOOPSLINK KANSAI」について教えてください。
松本HOOPSLINK KANSAIは、大学発スタートアップの創業支援、そしてスタートアップや大学の研究室と大手・中小企業の共創の促進を目的に設立した施設です。さまざまなイベントを開催しているほか、ユーザー企業の方にご利用いただけるスペースとしても運営しています。
もともと、HOOPSLINK KANSAIは文部科学省管轄のJST(科学技術振興機構)から補助金を受けて、全国の大学発スタートアップの創業支援業務を受託したことがきっかけで始まった取り組みです。
せっかくなら、広いスペースでスタートアップや大学、SMBCグループのお客さまである企業を引き合わせて共創を生み出そうということになり、このグラングリーン大阪にオープンしました。
松本 光史氏
グラングリーン大阪自体が新しい施設ですよね。
金子そうなんです。グラングリーン大阪は2024年9月にできたビルで、私たちが入居したのは2025年7月です。大阪駅や梅田駅の近くにありますが、「HOOPSLINK OSAKA」ではなく「KANSAI」と付けたのは、大阪を中心に京都や神戸なども含めた関西全体を盛り上げたいという想いからです。
特に万博後の大阪の成長戦略は、行政も非常に重要視していますし、SMBCグループとしても、住友銀行発祥の地である大阪の成長を支援したいという想いを強く持っています。
金子 真大氏
万博を機に、大阪の成長への機運も高まったでしょうね。
金子そうですね。万博のおかげで全国から多くの人が大阪を訪れ、この10年で大きく変わった梅田駅周辺の街並みを見てもらえました。「大阪は活気がある」と感じてもらえたのは非常に大きかったです。
せっかく感じてもらったこの大阪の熱をこれからも高めていくためには、スタートアップ企業を支援して、大企業・中堅企業との連携を促進することが肝心です。それによって、企業の再成長や新規事業創出に貢献し、関西全体のGDPを拡大できれば、私たち銀行にも回り回って好影響があると考えています。
企業同士の出会いと新規事業創出が目的
関西のスタートアップの現状について、教えてください。
金子そもそも、関西のスタートアップ企業数は東京よりも少ないことが大きな課題だと感じています。さらに、せっかく関西で生まれたスタートアップが、成長過程で東京に移ってしまうケースも多くあります。
そうなると、関西の大企業・中堅企業がスタートアップとつながるためには、東京に行かないといけないことになりますよね。そうではなく、関西のスタートアップと関西の企業、関西のスタートアップと東京の企業、東京のスタートアップと関西の企業といった形で、関西を盛り上げるマッチングをしたいんです。地域を越えたさまざまな出会いをHOOPSLINK KANSAIで創出したいと考えています。
松本この点は、丸の内のHOOPSLINKとの大きな違いです。あちらは、SMBCグループが主体となって、スタートアップや大手・中小と事業開発を目指す場です。東京には、すでにスタートアップと企業の出会いを創出する共創スペース自体はたくさんあるので、次のステップとして新たなコンセプトを掲げたわけです。
ですが、関西ではまだまだ企業同士が出会う場そのものが少ないのです。そこで、まずはHOOPSLINK KANSAIがその役割を担いたいと思っています。
銀行だと、企業同士をマッチングする機会自体は、もともと多そうだというイメージがありました。
松本はい。それ自体は銀行として以前から行っています。ただ、従来のやり方だと意外とマッチングしても、ご担当者さま同士で会ってご挨拶するだけで終わってしまうことも多かったんです。
その点、HOOPSLINK KANSAIでは、企業の上層部や経営者さま同士をつないだり、その間に大学などの研究・教育機関の方々を入れたりと、お話がより具体的に進みやすい状況を生み出すことを想定しています。
金子従来のビジネスマッチングだと、どうしても「商談」になってしまいがちでした。それはそれで必要ですが、HOOPSLINK KANSAIでは、もう少し先を見据えた取り組みをしたいと考えています。
たとえば、大企業が自社のアセットを活用しながら今までとは違う領域に進出したり、既存製品やサービスの販路拡大ではなく、新規事業開発に関してのパートナー探しをしたりといった活動への支援をしたいと思っています。
松本東京のスタートアップはSaaS系の事業が多く、初期段階ですでに製品やサービスができあがっていることが多いのですが、関西はディープテック系(※)のスタートアップが多いため、「これから一緒に取り組んでいきましょう」というところから始まるケースが多く見受けられます。
ディープテックで事業を生み出すには、単に「うちの商品やサービスで組みませんか」という形ではなく、「この領域を一緒にやりませんか」「この技術はこんな使い方ができるのでは」といった構想部分からの共創が必要になることが多いのです。
※ディープテック:大学や研究機関等で生まれた高度な科学技術を基盤に、社会課題の解決や産業の変革を目指す領域
関西と全国の企業、研究・教育機関の連携で、大阪の再成長を目指す
HOOPSLINK KANSAIは、どんなユーザーが多いのでしょうか。
松本企業はもちろん、大学も多いですね。
金子大阪の特性として製造業をリードする企業が多く、工場の業務効率化や新商品開発のための技術を持った会社とのマッチングがニーズとして大きいです。そういった要望に応えられるスタートアップや大学を紹介し、面談の場を設定するといった取り組みを始めています。
SMBCグループの強みは全国の法人ネットワークなので、これを活かして関西の企業にとってベストマッチのパートナーを見つけていきたいと思います。
具体的な取り組みについても教えてください。
金子現在はイベント開催が中心です。7月にオープンしてから、10月までに30件ほどのイベントを開催しました。11月も15件ほど予定しています。
松本具体的には、最近だと各大学の注目の技術や研究シーズを紹介する「UniverSeeds SPROUT」や、補助金団体を集めてスタートアップ向けの補助金について情報提供を行うイベントを開催しました。また、米国ベンチャー投資やCVCに関心のある関西企業を対象に、パナソニックCVCのファンドマネージャーの方をお招きしてお話しいただくイベントなどにも取り組んでいます。
スペース自体は、SMBCグループとお取引のある企業さまであればご利用いただけます。イベントに参加したい場合は、公式サイトからご連絡ください。さまざまな“事業共創”に興味のある皆さまにお集まりいただきたいと考えています。
最後に、今後の展望について教えてください。
金子HOOPSLINK KANSAIの大きな目標は「日本の再成長」です。そのために、大阪の人間としては、現在の東京一極集中の中でもっと関西が頑張れるようにしたいという想いがあります。
実は、1970年の大阪万博をピークに、大阪の全国GDP比率は長期的に低下傾向にあります。大阪の産業をより強くして盛り上げていくためにも、HOOPSLINK KANSAIとして貢献していきたいですね。
PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。
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株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部 上席推進役
志村 佑輝氏
2008年に三井住友銀行に入行後、法人営業部での中小企業向け融資・為替業務を経て、SMBC日興証券、コーポレートアドバイザリー本部第三部、企業情報部にてM&Aアドバイザリー業務に従事。2020年7月から法人デジタルソリューション部で新規デジタルサービスの企画開発に従事した後、2025年4月からデジタル戦略部に着任し、企画・情報発信・投資業務を担当。
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株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部 部長代理
古川 千里氏
2024年9月にキャリア採用で三井住友銀行に入行。それ以前は約10年間、デジタルマーケティングやネットメディア業界で経験を積む。金融業界は未経験ながら、SMBCグループのデジタル発信に関心を持ち、デジタル戦略部に参画。現在は「HOOPSLINK」の事務局も担当している。
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株式会社三井住友銀行 成長事業開発部 部長 HOOPSLINK KANSAI運営担当
松本 光史氏
1995年に入行後、2006年から子会社のベンチャーキャピタルに出向し、関西のスタートアップ投資に長く携わる。2024年4月に銀行に戻り、現職に就任。スタートアップに精通しており、ベンチャー出資の経験を活かして、現在はスタートアップのエコシステム構築に取り組んでいる。
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株式会社三井住友銀行 法人戦略部 上席推進役/公共・金融法人部 部長
金子 真大氏
1998年入行後は、一貫して大企業法人取引に従事。M&A部門に計8年在籍し、企業の事業戦略に関するディスカッションや買収提案の経験を持つ。現在は自治体向けの提案と、大企業とスタートアップの連携促進を担当している。
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