DX用語辞典
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BPR

Business Process Re-engineering

類義語:

  • BPO

「ビジネスプロセス・リエンジニアリング(Business Process Re-engineering)」の略称。業務プロセスを抜本的に見直して、組織や制度、システムなどを再構築することを指す。近年、少子高齢化を背景に再び注目を集めている。

BPRとは?DXとの違いや進め方、メリット・デメリットなどを解説

BPRとは、「ビジネスプロセス・リエンジニアリング(Business Process Re-engineering)」の略称です。業務プロセスを抜本的に見直して、組織や制度、システムなどを再構築することを指します。

部門ごとの分業化や専門化が進むと、全体の業務プロセスの観点からはかえって非効率になる場合があります。BPRを推進することで、業務プロセスの最適化や効率化が可能になり、顧客満足度や従業員満足度の向上も期待できます。本記事では、DXとの違いやBPRの具体的な進め方、メリット・デメリットなどを解説します。

BPRとは?業務改善やDXとの違い

BPRとは、業務のプロセス全体を抜本的に見直して、再構築することを指します。わが国では1993年出版の『リエンジニアリング革命』(日本経済新聞社)により注目を集めましたが、当時は人員削減の観点が強調され、抜本的な改革には至りませんでした。しかし、近年このBPRが再び注目を集めています。背景には、少子高齢化の進行があります。

業務プロセスを抜本的に見直し、組織や制度、システムなどを再構築
少子高齢化により、わが国の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少、2050年には5,275万人(2021年から29.2%減)になると見込まれています。生産年齢人口の減少によって、労働力不足や国内需要の減少による経済規模の縮小など、さまざまな社会的・経済的課題の深刻化が懸念されています。
参考:令和4年 情報通信に関する現状報告の概要|総務省

生産年齢人口が減れば、人材不足が今まで以上に進むことは明白です。また、今までと同じ業務プロセスでビジネスを展開し続けていけば、業績の低下は避けられないでしょう。

そこで、既存の業務プロセスを抜本的に見直し、組織や制度、情報システムなどを再構築すること(BPR)が求められるようになりました。この動きは企業だけにとどまらず、官公庁や自治体においても幅広く進められています。

業務改善やDXとの違い
BPRにおける「業務のプロセス」とは、ある業務の開始から終了までの流れ全体を指します。たとえば、商品製造であれば、原料の仕入れから製造、包装、発送といった業務に、研究開発や営業などの業務も関わります。このように、部署をまたいで業務や組織のあり方を抜本的に見直して、再構築を行うのがBPRです。

似た言葉に「業務改善」がありますが、業務改善は全体のプロセスには手を加えず、個々の業務の細部を見直して効率化を図ることを指します。

また、DX(デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation)は、デジタル技術を活用してサービスや組織、ビジネスモデルなどを変革することを指します。一方、BPRは業務プロセスの再構築を目指しているため、目的が異なります。ただし、DXの一環として業務プロセスの再構築が行われることもあるため、BPRはDX推進に必要なひとつの要素だといえるでしょう。

BPRの5つのステップ

BPRを円滑に進めるための5つのステップをご紹介します。

1.検討
BPRを実施する目的を定め、目的にのっとった目標を設定します。従業員と経営層の双方から改善点を聞き出し、問題を明確にして対象となる業務範囲を定めましょう。抜本的な見直しの実行には負担がつきものですから、目的や目標を社内で共有することは大切です。

2.分析
対象業務のプロセスの課題を分析して、改善方法を検討します。分析にはさまざまなフレームワークを用いることがあります。フレームワークの例としては次のようなものが挙げられます。

  • ABC(Activity Based Costing) 活動基準原価計算のこと。どの製品やサービスのために発生したか分かりにくい、光熱費や消耗品などの間接費を適切に原価計算する手法
  • BSC(Balanced Scored Card) 財務面だけでなく、顧客満足度やリピート率、従業員満足度や定着率といった多面的な視点からバランスよく業績を評価するツール
  • シックスシグマ 統計学の観点から、品質改善や業務プロセス改善を行う手法

3.設計
分析により課題が判明したら、改善のための戦略・方針を策定します。業務フローを標準化したり、業務をシステム化したりするとともに、直接の利益を生まない業務に関してはアウトソーシングも検討します。

4.実施
経営のトップと従業員がBPRの目的や必要性を共有した上で、実施します。ステップ1で定めた目的や目標からずれていないか、随時確認しながら進めていきます。

5.モニタリング・評価
改革を実行した後は、業務のプロセスに問題が生じていないかモニタリングします。改革の効果についてもモニタリングし、問題があれば修正します。修正の際は「1.検討」の段階へ戻り、再度実施します。

BPRを進めるために有効な手法

BPRを推進するために有効な手法は複数あります。ここでは、主な4つの手法について解説します。

ERP(Enterprise Resources Planning)
企業の経営資源である、ヒト・モノ・カネ・情報を集約して適切に分配、活用する考え方や、それを実現するシステムのこと。ERPシステムとも呼び、「統合基幹情報システム」を意味します。各部署でバラバラだったシステムやデータを一元管理して業務を効率化、コストを削減するとともに意思決定のスピードをアップします。

シェアードサービス
グループ企業の間で経理、財務や人事、物流などの間接部門を集約して、効率の向上やコストの削減を図る手法のこと。集約した部署を本社内に置く方法と、子会社として独立させる方法があります。

BPO(Business Process Outsourcing)
自社業務の一部を、その業務が得意な外部の企業に委託すること。経理や財務などのバックオフィス業務だけでなく、広報や人材育成などの業務を委託するケースもあります。

SCM(Supply Chain Management)
製品の部材調達から設計、製造、物流、販売など、生産から消費に至る商品供給の流れを効率的に管理し、最適化する手法のこと。納期の短縮や在庫の縮小、設備の稼働率向上、コストの削減、顧客満足度の向上につながります。

BPRのメリットとデメリット

BPRを推進した場合、企業にはどのような影響があるのでしょうか。ここでは主なメリットとデメリットを解説します。

BPRのメリット

属人化を回避できる
業務の属人化は、異動や退職時の引継を複雑・困難にします。BPRで業務プロセスを見直し、再構成・標準化することで、属人化を回避できます。

生産性が向上する
全社を挙げて業務プロセスを改善し、無駄やムラを減らすことで業務効率が上がり、生産性が向上します。

意思決定のスピードが向上する
業務効率が上がることで、意思決定のスピードも向上。さらなる業績アップにつながることが期待できます。

顧客満足度や従業員満足度が向上する
業務の無駄を減らすことで、サービスの質や生産性が高まり、結果的に顧客満足度や従業員満足度の向上につながるでしょう。

BPRのデメリット

労力や時間がかかる
業務プロセスの抜本的な見直しには、労力や時間がかかります。その結果得られるメリットは大きいものの、そこに至るまでは負担感の方が大きく感じられるかもしれません。

従業員との摩擦が起こる可能性がある
経営側の方針に従業員が反発することも考えられます。ステップの初期から、従業員と話し合いながらBPRを進めることが大切です。

短期的にはコストが増加する場合もある
システムの導入やアウトソーシングなどで、費用負担が増えることがあります。長い目で見ればコストを回収できるようになりますが、短期的にはコスト増になる可能性を考慮しておきましょう。

事例紹介

ここで、BPRの事例をひとつご紹介しましょう。

三井住友コンシューマーファイナンスでは2020年度、顧客満足度の向上と競争優位性を実現するため、新たに「BPR推進部」を設立しました。BPR推進部により、グループ全社の横断的な業務改革を進めています。

三井住友コンシューマーファイナンスでは、BPRの最終目標を“BPRの推進により創出した余力を「EX向上」「CX向上」「成長領域への進出」に振り向けることで、企業の成長へと繋げる”としています。BPR推進部や本社部署のメンバーと、各部署のBPR推進リーダーが緊密な連携体制をとり、BPR案件の発掘と具体化による改善を進めています。

まとめ

BPRは、既存の業務プロセスや組織、システムなどを抜本的に見直して、再構築する取り組みです。少子高齢化に伴う労働力不足などの事情を背景に、多くの企業や官公庁、自治体ではBPRによる根本的な改革を進めています。

BPRの実施には大きな改革が必要なため、現場に混乱が起きたりコストに見合った効果が得られなかったりすることもあります。経営側と労働者側がBPRの目的や目標を共有し、実行可能な計画を立てて着実に実施することが、成果を上げる鍵だといえるでしょう。

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新着用語

DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。

カスタマーエクスペリエンス
(Customer Experience)

類義語:

  • CX

ある商品やサービスの利用における顧客視点での体験のことで、「顧客体験」もしくは「顧客体験価値」と訳される。