Vol.1 貧困・格差 SMBCグループ、新中期経営計画で「貧困・格差」を重点課題の一つにVol.1 貧困・格差 SMBCグループ、新中期経営計画で「貧困・格差」を重点課題の一つに

SMBCグループ 中期経営計画 〜幸せな成長へ〜
提供:SMBCグループ

新たな中期経営計画「Plan for Fulfilled Growth」を策定し「質の伴った成長」を目指すSMBCグループは、経済の成長とともに社会課題を解決することで、人々が幸福を感じられる「幸せな成長」への貢献を目指している。その重点課題の一つに挙げられているのが「貧困・格差」だ。「貧困・格差」という社会課題の解消に金融グループであるSMBCグループが取り組む背景と具体的な取り組みについてフリーアナウンサーの宇賀なつみ氏が話を聞いた。

※本記事は2023年8月30日に日経電子版広告特集で公開されたものです。掲載内容は公開当初のものであり、最新情報と異なる場合があります。

日本でも増えつつある
相対的貧困の連鎖が問題に

宇賀なつみ氏
フリーアナウンサー
宇賀なつみ氏

宇賀 新中期経営計画では社会的価値の創造を柱の一つに掲げ、主体的に取り組むべき重点課題として、「環境」「DE&I・人権」「貧困・格差」「少子高齢化」「日本の再成長」の5つを挙げています。金融グループとしてこれらの課題解決に取り組もうと決めた背景を教えてください。

髙梨 社会は我々が事業を営む上での礎であり、社会の成長なくしてSMBCグループの成長はありません。そのために社会課題の解決を通して持続可能な社会の実現に貢献することを目指してきました。原点にあるのは三井・住友の約400年に及ぶ歴史を通じ脈々と受け継がれてきた社会への貢献に対する使命感であり、そのためのイノベーションの創出です。

髙梨雅之氏
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
執行役員 グループCSuO(Chief Sustainability Officer)
髙梨雅之氏

三井の基盤をつくった三井高利が江戸時代に創業した越後屋三井呉服店は、当時は当たり前だった客によって販売価格が異なる掛け売り・反物単位での販売に対し、現金での定価販売・顧客の需要に応じた呉服の切り売りという画期的な商習慣を採用しました。これにより、呉服は多くの市民にとって手が届くものになり、越後屋三井呉服店は人気を博しました。また、住友は「自利利他公私一如」という経営理念のもと、別子銅山(愛媛県)を技術革新によって近代化するとともに、劣化した森林を復活させるために植林事業を手がけました。

社会課題がグローバルで複雑化し深刻度を増している今、こうした伝統を持つ企業グループとして、これまで以上に社会課題の解決に貢献して「幸せな成長」を目指していくことを掲げ、新たに5つの重点課題を定めました。

宇賀 なぜ「貧困・格差」を重点課題の一つとしたのでしょうか。

髙梨 日本では「食料や衣類など生活に必要最低限のものが満たされていない」といった”絶対的貧困”ではなく、国や社会、特定の地域の周囲と比べて貧しいという“相対的貧困”が昨今問題になっています。日本では、約7人に1人の子どもが相対的貧困状態にあると言われています。経済的に恵まれない世帯の子どもは教育や体験の機会が限定され、それが周囲との格差につながり、結果として将来も貧困から抜け出せず、その子どもの世代でもまた十分な教育機会を受けられないという負の連鎖が起きているのです。また、この問題は個人だけのものではなく、社会全体で見た場合に、例えばその子どもが得られるはずであった生涯所得への影響や社会福祉にかかる費用の増加などの社会的損失につながるなどの問題にもつながります。

大萱 社会全体での「幸せな成長」のためにはこの世代を超えた負の連鎖を断ち切ることが必要です。私が所属する社会貢献グループでは特に、短期的に見れば経済的価値につながらなくても、社会として解決しなければならない課題への取り組みや社会的価値の創造につながる活動を実施しています。

大萱亮子氏
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
サステナビリティ企画部 社会貢献グループ長
大萱亮子氏

貧困の予防という点から
教育機会の提供に注力

宇賀 貧困や格差といった課題を解消するのは容易ではありません。一時的な支援では根本的な解決につながらないと思います。具体的にどのような支援を行っているのでしょうか。

宇賀なつみ氏

大萱 貧困や格差を解消するアプローチはいろいろ考えられます。寄付といった金銭的な支援もありますが、当社がその対象となる方々に対し、未来永劫続けられるものではありませんし、根本的な解決にはならないでしょう。当社では、貧困や格差が生まれる前に、その連鎖を断ち切りたいという思いから教育機会の提供こそが重要だと考えています。

その一つの取り組みとして、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(以下、CFC)との連携です。CFCでは生活困窮世帯の子どもたちに、学習塾や習い事など、幅広い学校外教育の場で利用できる“スタディクーポン”を発行し、学びの機会を提供しています。SMBCグループとしてこの活動に共鳴し、CFCのクーポンの仕組みを生かした“SMBCグループ・スタディクーポン”事業への支援として、3年にわたり3億円を提供することにしました。加えて同団体への人材派遣を通じた本事業の企画・運営、金融経済教育プログラムの提供、社員のプロボノを通じた課題解決などを通じ、共に将来を担う子どもたちの進学に向けた教育支援や将来の可能性を広げる支援を行っていきます。

大萱亮子氏
「貧困や格差が生まれる前に、その連鎖を断ち切りたいという思いから教育機会の提供こそが重要だと考えています」(大萱氏)

物価高騰などで家計が逼迫する中、保護者に対する金銭的な支援では支援したお金が必ずしも子どもの教育費に充てられない可能性もある一方、使途を教育に限定した学習クーポンであれば確実に子どもたちに届けることができます。同じ子どもを持つ親として、経済的な理由で進学を諦めたり、習い事に通えなかったりするお子さんがたくさんいるという現実を知り、とても切ない気持ちになります。少しでもそのような思いをする子どもたちが減っていくことを願っています。

もう一つが、公文教育研究会との連携です。今回の連携では、特に児童養護施設やNPO(非営利組織)が支援する様々な境遇の子どもたちに対し、学習機会の提供に加え、将来、施設から離れて自立する際に役立つ金融経済教育のプログラムの提供を行います。併せて当グループ会社を通じ学習に必要なタブレットの提供や大学進学を希望する子どもに対する受験費用の一部の支援などを行います。国内での取り組みを重ねながら、将来的には海外への展開も目指してまいります。

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日本でも周囲と比べて貧しいという“相対的貧困”が増えている(写真はイメージです)

宇賀 ボランティアやプロボノとして社員の方たちが直接関わることも奨励しているのでしょうか。

髙梨 通常の業務ではなかなか触れることのない社会課題の解決に取り組むことで、また自身の経験や専門知識を提供することで社員自身のモチベーションやリーダーシップが高まるという効果も期待できます。社員自身のみではなく、会社としてもメリットは大きいと考えているので、2023年度からは就業時間の一部を使って参加することも奨励しています。

アジアの貧困層に向けて
マイクロファイナンスを

宇賀 「貧困・格差」は海外でも大きな社会課題になっています。グローバルでの取り組みも行っているのでしょうか。

髙梨 SMBCグループでは「マルチフランチャイズ戦略」を掲げ、アジアの新興国を第2、第3のマザーマーケットとし、グループ全体の成長につなげていきたいと考えています。その一環として、子会社であるインドネシアのBank BTPN (以下、BTPN)やインドのSMFG India Credit Companyでは金融包摂に関する取り組みを積極的に推進しています。

BTPNで注力しているのが、貧困層の社会的自立を支援するためのマイクロファイナンス(※)です。例えば食堂を経営するための運転資金や中古ミシンの購買費などの事業資金を提供することで貧困層からの脱却を支援しています。マイクロファイナンスの提供者数をさらに80万人増やすことを目標にしています。

宇賀 海外の方たちも支援の対象として取り組みを強化していくということですね。

髙梨 SMBCグループのサステナビリティ宣言では、サステナビリティ(持続可能性)を「現在の世代の誰もが経済的繁栄と幸福を享受できる社会を創り、将来の世代にその社会を受け渡すこと」と定義しています。“誰もが”には、もちろん日本以外の海外の方々も含まれています。

(※)貧困層や低所得層向けの「小口金融」の総称。

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インドネシアでマイクロファイナンスの提供などにより貧困層からの脱却を支援(写真はイメージです)

協力の輪を広げることで
インパクトが大きくなる

宇賀 最終的にはどのような社会が形成されることを目標としているのでしょうか。

髙梨 誰もが幸せを実感でき、着実に成長も伴っている社会です。そのために社会課題を解決していきます。課題を解決して持続可能な社会の実現を促し、次の世代に受け継いでいくことが目標です。

社会に価値を提供して社会の成長に貢献することは、いずれ私たちの価値にも循環していくものです。企業市民の立場から見ると、社会全体の幸せな成長が企業の持続的な成長につながり、さらには社員一人ひとりの成長につながると捉えています。

大萱 今回、就業時間の一部を活用し、自身が保有する経験や専門知識を無償で社会課題の解決に取り組む団体に対し提供するプロボノに派遣する社員を募集したのですが、想定を上回る人数の応募があり、社員の関心の高さを改めて実感しました。

応募する理由も様々で、例えば自身のセカンドキャリアを見据え、経験を社会に還元しつつ新しいネットワークを構築したいという意欲がある人や、DE&Iなどの社会課題に特に関心があり、理解すると同時に自身のスキルを提供したいという若い世代もいます。プロボノ活動自体はグループ会社からの社員のチーム構成で行うため、普段接点のないグループ社員同士の交流や刺激も生まれます。様々な団体が取り組む社会課題の解決に少しでも貢献することはもちろんのこと、社員一人ひとりの成長や自己実現の機会にもつなげてもらいたいですね。

大萱亮子氏

宇賀 読者の方々にどんなことを伝えたいでしょうか。

髙梨雅之氏
「誰もが幸せを感じながら成長できる社会をつくるために、ステークホルダーの皆さんと一緒に取り組んでいきたいと考えています」(髙梨氏)

髙梨 誰もが幸せを感じながら成長できる社会をつくるために、ステークホルダーの皆さんと一緒に取り組んでいきたいと考えています。多くの人とつながることで、単独での取り組みよりも多くのことが成し遂げられるのではと期待感を持っています。広い視野を持って一緒に取り組めることを楽しみにしています。

大萱 今般「貧困・格差」についての取り組みをリリースしたところ、各方面から多くの反響や協働のお声がけをいただきました。我々だけでなく、様々な企業や団体が協力してこの社会課題の解決に向け取り組むことで、社会に対してのインパクトもより大きくなります。多くの賛同者と一緒に、より良い社会を創っていくことに取り組んでまいります。

Profile

左より大萱亮子氏、髙梨雅之氏、宇賀なつみ氏

宇賀なつみ氏

2009年立教大学社会学部を卒業し、テレビ朝日入社。入社当日に「報道ステーション」気象キャスターとしてデビューする。「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」等、情報・バラエティ番組を幅広く担当。2019年に同局を退社しフリーランスとなる。現在はテレビ朝日系「池上彰のニュースそうだったのか!!」、カンテレ・フジテレビ系「土曜はナニする!?」のメインMCを担当。TBSラジオ「テンカイズ」やTOKYOFM「SUNDAY'S POST」等のラジオパーソナリティにも挑戦している。

髙梨雅之氏

1993年に住友銀行(現三井住友銀行)入行。不動産・航空機ファイナンス業務、企業再生・不良債権処理業務、IR(投資家向け広報)業務等に従事した後、2017年から5年間ロンドンで勤務。2022年4月にサステナビリティ企画部長として帰任し、2023年4月より現職。2003年ニューヨーク大学にてMBA取得。

大萱亮子氏

1999年に住友銀行(現三井住友銀行)入行。大企業法人営業、国際部門での金融機関取引やトレードファイナンス業務に従事した後、2010年から7年間リスク管理部門で非日系ポートフォリオや証券化商品などのリスク管理を経験。2017年に経営企画部CSR室、2023年4月より現職。2010年ワシントン大学にてMBA取得。

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