経済的価値の追求と同時に社会的価値の創造を目標に掲げるSMBCグループでは、富裕層を中心としたお客さまと、社会課題の解決に取り組む非営利団体や公益法人等との橋渡しをするサービスを展開している。社会的価値の創造につながるこのサービスを2025年度に拡充する予定だ。この「フィランソロピーアドバイザリーサービス」によってSMBCグループはどのような価値を社会に提供し、何を実現しようとしているのか。同サービスの責任者である三井住友銀行のシェーファー・平ダーヴィッド氏とSMBC日興証券の竹下恵美氏に、フリーアナウンサーの宇賀なつみ氏が話を聞いた。
※本記事は2025年2月14日に日経電子版広告特集で公開されたものです。掲載内容は公開当初のものであり、最新情報と異なる場合があります。
宇賀 フィランソロピーとはどのような活動でしょうか。耳慣れない言葉ですが、欧米ではすでに広がっているのでしょうか。
シェーファー 元はギリシャ語の「人類への博愛」を意味する言葉で、社会へ貢献し、その先にある社会課題の解決につながる活動のことです。中世ヨーロッパではキリスト教にルーツを持ち社会に広まり、1601年には英国で、エリザベス救貧法として法律にもなっています。こうした活動が最近、日本でも注目されるようになってきました。
活動の主体は企業オーナーなどの富裕層ですが、富裕層の方々に限らず、資産継承時の相続税対策などの目的に加えて、社会貢献を通して社会にインパクトをもたらしたいという取り組みが増えています。
竹下 お客さまから子どもの未来のために資産を使いたいというご相談を受け、どう社会貢献するかを一緒に考えて、個人でNPO法人を立ち上げたことがありました。こうした想いに応えるために、金融機関として何ができるかを考えて立ち上げたのが「フィランソロピーアドバイザリーサービス」です。
今までは担当者が個々に対応していましたが、今回、専門の組織ができたことは大きな一歩です。社会貢献の一翼を担えるように取り組むことができるようになりました。
シェーファー 海外ではすでにフィランソロピーアドバイザーが職業として確立されています。財力・権力・社会的地位の保持には責任が伴うという「ノブレス・オブリージュ」の精神をもとに活動する方を支援する専門家ですが、新しい組織ではその役割を担います。
もう一つの背景としては、日本は社会課題先進国であり、少子高齢化だけでなく貧困なども大きな課題になっていることが挙げられます。実は日本人の9人に1人が相対的貧困状態にあるといわれていますが、懸命に当事者の支援を行っている個々の非営利団体は財務基盤が弱い組織が多いです。本サービスでは富裕層とそうした組織をつなぐことも目指していきます。
宇賀 具体的にどのようなプロセスでフィランソロピーを実現していくのでしょうか。正解というものがない難しい世界のように思います。
シェーファー まず大切なのは、お客さまがどのような想いを抱いているか、何を実現したいかです。それを明確にするところから始まります。ニーズを理解した上で実現するための情報を提供し、取り組む方法を一緒に考えていきます。さらに資金がどのように使われているかなど、その結果をきちんとお客さまに報告するようにしていきます。戦略策定から実行支援、運営管理までをSMBCグループ一体で支援します。
竹下 社会貢献はしたいと思っていても、「本当にやりたいことは何か」のお考えが定まっていなかったり変わったりすることがあるので、それをディスカッションしながら固めていきます。また実現に向けて複数の選択肢を示すことも大切であると考えています。実際に月に1回から2回、ご本人だけでなくご家族も交えてディスカッションします。最終的な結論が出るのに1年近くかかることもあります。
シェーファー 途上国の教育を支援したいというお客さまをカンボジアにお連れした時には、「人生最良の日」と感動されました。現在建設中の学校を皮切りに、これからも継続して支援されるそうです。お客さまに、このような感動体験をお届け出来ることは、まさにフィランソロピーアドバイザー冥利に尽きると言えるでしょう。
竹下 お客さまが効率的に実現したいと考えていても、信頼できる相手なのかどうかという問題があり、またご自身で財団法人を設立したり、運営したりするのも大変です。SMBCグループが専門家として寄り添うことで、価値をご提供できると考えています。
シェーファー 社会貢献セクターは小さい団体が多く、多くの組織は十分な人材を採用することができず、ボランティアの活動に頼っています。そこに富裕層の資金を提供することで活動を後押しすることが必要です。SMBCグループの「フィランソロピーアドバイザリーサービス」がきっかけの一つになって、NPOで働いて社会貢献をしたいと考える人たちを増やすことができれば、社会課題解決を加速し、より多くの人が幸せになれる社会を実現できます。
宇賀 こうしたサービスを提供することは、SMBCグループにとってどのような意味があるのでしょうか。
シェーファー 中期経営計画で「社会的価値の創造」を掲げていますが、フィランソロピーはその戦略を実行する上で重要な役割を果たしています。社会的価値は、貧困率を下げるなどマイナスをゼロにする活動と、文化活動の支援や研究助成といったプラスを増やす活動によって高まりますが、その両方に貢献できるフィランソロピーは社会的価値の創造につながります。
竹下 世の中のために何かをしたいと考える富裕層のお客さまは増えていますが、これまではそれに応える手段があまりありませんでした。このサービスを提供することは顧客満足度を向上させることにもつながります。
宇賀 私自身も世の中全体の価値観が変わってきていると実感しています。SMBCグループとして、その変化に応えるサービスでもあるわけですね。現在はどこまで進んでいるのでしょうか。
シェーファー これまではお客さまのニーズ把握や情報提供、寄付先の紹介などを行ってきましたが、今後はサービスを拡充していきます。すでに2024年10月に一般財団法人SMBCグループ財団を設立しました。お客さまの寄付でお客さま専用の基金を運営する財団です。現在は公益財団法人の認可を申請中ですが、了承されればお客さまの基金を設立できるようになります。
今後は、特定の社会課題について学べるイベント、お客さま同士のフィランソロピー活動の情報交換、海外のフィランソロピストとの交流など、社会的な認知を向上させる活動にも取り組んでいきます。
宇賀 現時点でのお客さまの反応や手応えはいかがでしょうか。
竹下 非常に良い評価をいただいています。先日、地域のための資金を役立てたいというお客さまとディスカッションした際にSMBCグループ財団のお話をしたところ、大変関心を示されて「金融機関にそういうイメージがなかったので心強い」と言われました。「何かしたいけれど具体的な方法が分からない」というお客さまのお悩みを解決できると感じています。
シェーファー 例えば、DVや育児放棄などの理由で生みの親の元で育つことができない子どもが日本には4万人ほどいるのですが、そのうち約2万人が児童養護施設で育っています。この子どもたちの多くは大学に進学せず就職していますが、その際の支援が不十分なこともあり、半分程度が数年以内に辞めてしまいます。最初の就職で失敗すると多くの場合、非正規雇用の道しかなく貧困の連鎖が生まれています。
今、この課題解決に関心を持っているお客さまの活動を支援していて、施設退所前から就職後の支援強化に取り組んでいます。最初の就職で失敗しないようにサポートし、その子どもたちが社会で自立できれば、子どもたちにとっても幸せですし、稼ぎ手が増えることで納税者が増え、生活保護など社会保障給付費の削減にもつながり、国の財政も改善します。
こうした活動に民間のフィランソロピー資金を活用することは、社会的価値の創造につながるだけでなく、SMBCグループに対する社会からの評価の向上にもなります。今後も認知度向上に向けた取り組みを強化していきます。
竹下 フロントを担う立場としてはお客さまのニーズに応えることが使命であり、それが社会課題の解決につながることはやりがいにもなります。金融以外の有効なツールを持つことはSMBCグループにとって大きな意味があります。フィランソロピーアドバイザリーサービスの活用に積極的に取り組み、社会的価値の創造に努めたいと考えています。
Arthur Andersen(ロンドン)、PwC(東京)、GE Capital(東京・アジア)、UBS Wealth Management(シンガポール・東京)を経て2016年にSMBC日興証券へ入社。顧客のフィランソロピー活動のサポートに従事。2024年4月より現職。
2013年SMBC日興証券 入社。営業店での個人営業、京都支店プライベート・バンキング室を経て、2024年4月より現職。上場企業のオーナーを中心とした富裕層への幅広いソリューションによる支援に従事。
2009年立教大学社会学部を卒業し、テレビ朝日入社。入社当日に「報道ステーション」気象キャスターとしてデビューする。「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」等、情報・バラエティ番組を幅広く担当。2019年に同局を退社しフリーランスとなる。現在はテレビ朝日系「池上彰のニュースそうだったのか!!」、カンテレ・フジテレビ系「土曜はナニする!?」のメインMCを担当。TOKYOFM「SUNDAY'S POST」等のラジオパーソナリティーにも挑戦している。