Vol.6 GGP Edge Program 社会的価値の創造を目指す企業や組織を支援する「GGP Edge Program」Vol.6 GGP Edge Program 社会的価値の創造を目指す企業や組織を支援する「GGP Edge Program」

SMBCグループ 中期経営計画 〜幸せな成長へ〜
提供:SMBCグループ

ドラマ『北の国から』をはじめ、数々の人気ドラマの脚本を手がけてきた倉本聰氏は、50年ほど前から北海道の富良野に住み、長く富良野自然塾を運営してきた。ゴルフ場として使われていた土地を「森に還す」という取り組みは人々の関心を集め、「社会的価値の創造」を経営戦略に掲げるSMBCグループもその活動に協賛している。なぜ自然は大切なのか、デジタル社会で人材をどう育てるべきか、そこで金融機関はどのような役割を果たすべきか。フリーアナウンサーの宇賀なつみ氏の司会で、倉本氏とSMBCグループCEOの中島達氏が語り合った。

※本記事は2024年11月19日に日経電子版広告特集で公開されたものです。掲載内容は公開当初のものであり、最新情報と異なる場合があります。

人にとって大切な酸素や水は
森林がもたらしてくれている

宇賀なつみ氏
フリーアナウンサー
宇賀なつみ氏

宇賀 なぜゴルフ場を森に還すという取り組みを始めたのでしょうか。

倉本 ここに来たのは50年近く前です。ちょうどそのときに森の木を伐採しゴルフ場の建設が始まっていました。いい木がバンバン切られていくのを見ていたんです。私は本来の森の姿を知っているので、なんて無残なことをするのかと思いましたね。その後、そのゴルフ場が閉鎖するときにオーナーに「森に還しなさい」と話したら、そのまま引き受けることになっちゃったんです。

なぜ森が大事なのかみんなわかっていない気がします。私は子どもたちにその大切さを教えるときに、鼻をつまんで息を止めることから始めます。人間は1分間に17、18回息を吸っていますが、私たちはそれを本能的にやっているので当たり前すぎて忘れてしまっているんです。人間にとって一番肝心な酸素をつくって水を蓄えてくれているのが森なんです。

倉本聰氏
脚本家
倉本聰氏
中島達氏
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
執行役社長 グループCEO
中島達氏

中島 5年前にここに訪れて「ヤチダモ」という木を植樹しました。当時30センチくらいの小さな木でしたが、5年で私の背ぐらいになっているのではないかと思っていました。しかし、実際に見てみるとまだ1メートルくらいで、私の胸にもまだ届いていませんでした。やはり木を育てるのは大変です。改めてゴルフ場を森に還すということがどれほど難しく、時間がかかることなのかを痛感しました。

倉本先生の作品は昔から大ファンでいつも拝見しておりました。その中でも、『北の国から』では吹雪で遭難など自然の怖さが時々描かれていますが、一方で風車で発電するといった自然の恵みというものも描かれています。その両方がうまく描かれていると感心して観ていました。

倉本 怖さは覚えているんですが、恵みは忘れがちです。我々は自然から食べるものを与えてもらって生かされているのですが、そのありがたみというのを忘れてしまうんですよね。

子孫から借りている
地球だから
きれいにして渡すのは
当然のこと

宇賀 石碑に刻まれた「地球は子孫から借りているもの」というメッセージにはどんな思いが込められているのでしょうか。

倉本 あれはカナダのネーティブ(原住民)が使っている言葉です。ネイティブは文明人と違って自然、つまり不動産を所有するという考え方がないんですね。土地は誰も所有できないもので、自分たちが手を入れてもっと豊かにし、子孫に継承していくものと考えているんです。

中島 私たちはその素晴らしい理念に賛同し、SMBCグループとして富良野自然塾に協賛しています。

環境保護や二酸化炭素(CO2)削減は世界的な潮流ですが、金融機関ではどうしても損得勘定で語られがちです。例えば、温暖化による災害の頻発化や甚大化によって貸出金が回収できなくなるといったリスクや、低炭素経済への移行に伴い、貸出先のビジネスが成り立たなくなるといったリスクが挙げられます。

左より中島達氏、宇賀なつみ氏、倉本聰氏

個人的にはそういう考え方が正しいのかなと疑問に思うところがあります。それよりも富良野自然塾の「地球は子孫からの借り物なのだから、きれいなままで還すのは人間として当たり前」という発想のほうがスムーズに理解できます。

現在、私たちは中期経営計画において、経済的価値の追求とともに社会的価値の創造を経営の柱に掲げて、グループ一丸となって取り組んでいます。その一環として神奈川県伊勢原市に森林を購入し、自然保全活動を手がけることにしました。

その目玉として、富良野自然塾の「46億年・地球の道」と同様のものをつくる計画です。460メートルで地球の歴史をたどり、最後の2センチだけで人間が登場する展示物を首都圏の小学生に見せようと思っています。

倉本 ゴルフ場のミドルホールが460メートルぐらいあったので、46億年に置き換えてみたんです。

中島 人間の歴史がたった2センチというのは大きなインパクトがありますね。

デジタル社会になっても
人の本質は変わっていない

宇賀 今の人たちの絆や付き合い方はどうあるべきだと思いますか。やはり変わってきているとお感じですか。

宇賀なつみ氏

倉本 あまり変わらないと思うんですよ。以前、近隣6キロ四方くらいの湧き水が全部枯れちゃったことがありました。そこで6キロ先のところからポリタンクで飲むための水を運んで使っていたんです。ところが若い連中が作業を終えて帰ってきてその水をシャワーにして体を洗っちゃうんですよ。

怒鳴りましたね。だって近くに沢が流れているので、体を洗うのはそれで十分です。「上水と下水というのがあるんだ」と言ってもキョトンとしちゃって。

中島 単純にわかっていないということなんでしょうか。人間として変わった、とかではなく。

倉本 そこを教えてやれば「ああ、そうか」という話になるんです。ただ、本質のところをつかめるかどうかはその人次第ですが。

「創作」という字はどちらも「つくる」という字ですが、ちょっと違うと思うんです。「作」は金と知識を使って前例に基づいてつくるもので、「創」は知恵で前例のないものを生み出すことです。だから塾生には「作」をやるな、「創」をやれ、と言っているんです。

倉本聰氏
「『作』は金と知識を使って前例に前例に基づいてつくるもので、『創』は知恵で前例のないものを生み出すことです」(倉本氏)

中島 ビジネスの世界も「作」だけじゃだめなんです。それは競争相手もできることなので強みになりません。新しいものをどう創っていくかが大事です。私も従業員に対していつもチャレンジしよう、突き抜けたことをやろうと言っています。

宇賀 次世代の人材を育成するうえで大切なことは何でしょうか。

倉本 意欲とか望みは10年前と変わっていない。だけど続かなくなっているというか、理想と現実の間の大きさに気づいてもたなくなるんですね。社会での目標が定まらないうちに就職してしまっているんじゃないかという気がします。

中島 やはり人との絆が大切だと思います。顔を合わせずに仕事が進むこともありますが、直接会って話し合い、難しい仕事に一緒に取り組んで達成することは重要です。

支店長会議では、若い人に仕事を任せるように、とよく話します。大変かもしれませんが、任せなければ成長しないので、信頼して仕事を任せてほしいと常にお願いしています。

左より中島達氏、宇賀なつみ氏、倉本聰氏

ドラマのシーンから伝わる
ストレートなメッセージ

宇賀 『北の国から』では純がトラックに乗せてもらって東京にいくときに、父親の五郎さんが運転手に渡した泥のついた1万円札を受け取り、それを使わずに大切にするシーンがあります。これはどういう思いで書かれたのでしょうか。

倉本 私の実体験です。おやじが死んでお袋が一人で苦労していたのですが、正月か何かでどこにあったのか五百円札をお袋からもらっちゃったんです。どこで無理したんだろうと思ったら使えなかったですね。2年か3年、持っていました。何か特別なものでしたね。

宇賀 同じ金額でも人によって価値や思いが変わってくるものですね。

中島 まったくその通りだと思います。金融機関で働く人は、この点を真剣に受け止める必要があります。お金にはためた苦労や大切な人からの贈り物といったストーリーがあります。ただお金の運用をアドバイスするだけでは不十分です。

もう一つ重要なのは、そのお金を将来どのように使うかというお客さまの想いです。子どものためか、自分のためか、社会のためか。こうした背景を理解したうえで、最適なアドバイスや提案をすることが本当に大切です。

中島達氏
「背景を理解したうえで、最適なアドバイスや提案をすることが本当に大切です」(中島氏)

私は『北の国から』の中で、おばさんに古くなって捨てられた靴を、夜になって純がゴミ袋を開けて探すシーンが好きです。私の両親は戦争で苦労した世代だったので、子どもの頃にものを大事にすることの大切さを教えられてきましたが、そういったものが薄れてきている気がします。そこにはとても重要な部分があると思います。

倉本 あのようなシーンはどこの家庭にもあった話だと思います。どこにでもある話というのは人の心を打つものです。

宇賀 純が元々東京の子どもで、新しいものが欲しいタイプの子だったのが、富良野に来て1年ですごく変わったんだなというのが伝わってきますよね。

中島 資源リサイクルの重要性を理屈で説明するのではなく、「ものは大事にし、使える間は使うのが当たり前」というストレートなメッセージが素晴らしいと思いました。

富良野自然塾と協力し、自然の重要性を直接伝える活動に参加できることは、私たちにとって大きな財産です。今後も引き続きサポートしてまいります。

Profile

左より中島達氏、宇賀なつみ氏、倉本聰氏

倉本聰氏

東京大学文学部美学科を卒業後、ニッポン放送を経てフリーに。主にテレビドラマの脚本家として活躍。東京から北海道へと居を移し、『前略おふくろ様』『北の国から』など多くのヒット作を生み出した。主宰した「富良野塾」にて26年間にわたり後進を指導。65歳で紫綬褒章、75歳で旭日小綬章を受章した。1977年(昭和52年)から富良野市に在住。

中島達氏

1986年東京大学工学部卒業 、住友銀行(現三井住友銀行)入行。 米ダートマス大学経営学修士号(MBA)取得。 2019年三井住友フィナンシャルグループ取締役執行役専務、副社長を経て2023年12月から現職。

宇賀なつみ氏

2009年立教大学社会学部を卒業し、テレビ朝日入社。入社当日に「報道ステーション」気象キャスターとしてデビューする。「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」など、情報・バラエティー番組を幅広く担当。2019年に同局を退社しフリーランスとなる。現在はテレビ朝日系「池上彰のニュースそうだったのか!!」、カンテレ・フジテレビ系「土曜はナニする!?」のメインMCを担当。TOKYOFM「SUNDAY'SPOST」等のラジオパーソナリティーにも挑戦している。

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