サステナビリティ

前半に有識者の皆さまから問題提起を頂き、後半はその問題提起を受けて、SMFGが大企業として、また、金融機関としてどのように関わっていけばいいのか対応策を議論していきたいと思います。最初にSMFGがこれまで取り組んできた内容をご紹介ください。
一方で企業外に対しては、昨年の夏ごろから実施した「SMBCプロボノプロジェクト」において、育児支援を行う3つの団体に対して特定NPO法人としての認定取得に向けた事務運営や、寄付金の管理などのアドバイスを行いました。これは結果的に育児支援を行っている組織や団体を支援するという関わり方につながっています。寄付を通じて、社内の約1万2千名が参加するボランティア基金で資金的な支援も行っています。このような活動の実績はありながらも、現状は活動が十分に体系だっておらず、今後の課題だと感じています。
少子化問題と少子社会における子育ての問題は非常に密接に関連しています。少子化とは合計特殊出生率でいうと2.1を下回る状態が持続することを指しますが、その中でも1.5未満を超少子化と呼んでいます。日本の出生率は2005年に最低の1.26を記録し、ここ数年は1.39程度で推移しています。このままの状況が続くと、今後1.2〜1.3で推移するだろうと言われています。1年間に生まれる子供の数は第一次ベビーブームの頃(1947〜49)に比べて40%程度にすぎません。
乳幼児と学童に分けて情報を整理したいと思います。乳幼児期は虐待の増加が非常に深刻で、その背景に母子の孤立があります。母子が孤立する原因の一つに日本の労働状況の問題があり、日本では長時間(週50時間以上)働いている人の割合の少なさでOECD36カ国中35位、余暇時間の長さも36カ国中35位です。男性の家事・育児時間は1日59分で、これはOECD平均131分の半分にも満たない水準です。男性の育児への関与がとても低い状況があります。もう一つは地域コミュニティの希薄化があります。これは隣に誰が住んでいるか分からないとか、日々の困ったことはすぐコンビニで解決するなど、社会の変化もあって人と出会う機会が減ってしまい、社会からの孤立感が子育ての大変さにつながっていると考えられます。学童に関しても子供がストレスを抱え学校内の暴力が増えていて、いじめ、不登校も問題となっています。子供のストレスの原因は2つあると考えています。一つは、遊びとか自然体験など、子供が本来育つべき環境が社会の変化とともに無くなってきていて、政策的にも児童館という子供が遊ぶ施設が財源不足のために閉鎖されています。雪が積もっても、ぐちゃぐちゃになるからという理由で校庭で遊んではいけないという学校もあります。近年必要性が高まっている学童保育も数が不足し、かつ活動のあり方の議論も深まっていません。
子育てに関しては第一子出産時の母親の年齢が平均で30歳を超え、川崎市では33歳の地区もあります。自治体など制度上のフォーマルな支援と地域やコミュニティのインフォーマルな支援の両面で、晩婚化など時代背景に対応した新しい結婚、子育てのモデルを示す必要があるのではないでしょうか。
これまでの議論で出た問題はスウェーデンも経験してきた問題です。スウェーデンの出生率は経済と政策の安定で2011年以降は1.9で推移するだろうという公の見解になっています。スウェーデンでも今に至るまで長い時間がかかりましたが、問題を克服した例として日本も希望が持てると思います。EUでも出生率が低い国は保育施設の不足と、女性の労働率の低さが関係しています。EUでは女性の労働率を70%にすることを目標にしており、出生率の高い北欧諸国は概ねその目標を達成しています。また、保育園の入園率もスウェーデンでは、3歳未満が63%、3歳以上が94%と高い状況です。
貴重なご意見とショッキングな事実をご教示頂き大変感謝しています。少子化問題に関しては政府レベルでもいろいろな議論がされていますが、日本では緊急度合いや深刻度合いが施策に反映されていないと感じています。女性の労働力の問題、少子化の問題は日本が長期的に発展していくための解決すべき一丁目一番地の問題ではないでしょうか。私自身、イギリスで子供を7年間育てた経験がありますが、イギリスは子供に大変フレンドリーです。ニューヨークですら子供に優しい社会になっています。日本、とくに東京では子供に非常に冷たい。なぜ日本はこのようになってしまったのか考えさせられます。
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