サステナビリティ

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「SMBC環境配慮評価融資/私募債」外部評価委員会4 参加者

T. SMBCが取り組む環境ビジネスの方向性について
  〜ESG取組・情報開示(統合報告)の動向を踏まえ〜

あいさつ

小野
本日の外部評価委員会の議題になっておりますSMBC環境配慮評価融資は5年前に開発した商品です。外部委員会は年1回の開催ですが、この環境配慮評価融資の海外展開や、新たなESG評価の導入など、毎年さまざまなアイデアを頂戴し、実際の取り組みに反映してきました。本日もぜひ忌憚ないご意見をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

これまでの取り扱い状況

司会
最初に「SMBC環境配慮評価融資/私募債」の2012年度の状況について、説明をお願いします。
加藤
2008年10月に「SMBC環境配慮評価融資」の取り扱いを開始いたしまして、その後、中小企業のお客さまにも利用しやすいよう改定した「SMBC環境配慮評価融資 ecoバリューup」、建物の環境性能や耐震性能を評価する「SMBCサステイナブル ビルディング評価融資」、そして今年4月より「SMBCサステイナビリティ評価融資」を追加し、商品ラインナップを拡充してきました。さらに、食の安全への取り組みを評価する「SMBC食・農評価融資」、天災など有事における企業の事業継続への対応を評価する「SMBC事業継続評価融資」、環境省による「利子補給制度」など、環境分野以外も加えると、評価型資金調達のスキームを使ったものは現在7商品あります。2008年10月から2013年3月までの取り扱い件数は累計で298件、7,644億円。このうち環境配慮評価融資の取り扱いは145件、4,742億円にのぼります。最近では、各種環境配慮評価融資をご利用いただいていたお客さまが、自社の取り組みの進捗を客観的に確認するため、再度ご利用されるというケースも増加しています。昨年度は、81件中15件がリピーターによるものでした。

2013年度からの新たな取り組み

加藤
「SMBCサステイナビリティ評価融資」は、過去の外部委員会で頂いた意見を受け、開発したものです。これまで取り組んできた環境配慮評価融資のスキームを活用しながら、評価項目として、環境、社会、ガバナンスというESGの視点を追加しました。さらに、取り組みそのものだけでなく、情報開示の状況も評価させていただくというのが大きな特徴になっています。

非財務情報の開示に関する動向

司会
昨今、企業情報開示の新しい流れとして統合報告が注目を集めていますね。
市村氏
かつての企業報告は、財務諸表などの情報だけで完結していました。しかし、それだけで企業価値や投資価値を判断するのは難しくなり、財務以外の情報、いわゆる非財務情報が提供されるようになってきました。たとえば、ヨーロッパでは2003年の会計法現代化指令で非財務情報の開示が要請され、加盟27カ国すべてにおいてその国内法化が完了しました。また、アメリカでは、2009年にニューヨーク証券取引所がESGを中心とする企業情報を投資家に提供することを発表したほか、ナスダック(NASDAQ)もESG情報の開示を積極的に進める方向で動いています。こうした動きは先進国だけでなく、中国やブラジルなどでも国策として進んでいます。一方、日本では、1,000社以上の会社がCSR報告書や環境報告書を作成していますが、その数は5年間ほとんど変わっていません。しかし、海外の投資家の動向を無視できないことは明らかです。
今、企業報告は、さらに新しいステップに移っていこうとしています。ESGの重要性が高まると同時に、インターネットなどメディアが発展したことで、財務情報、非財務情報に限らずさまざまな企業情報が世の中にあふれるようになりました。必要な情報を見つけ出すことが難しくなった結果、統合報告が求められるようになりました。統合報告とは、財務情報と非財務情報のそれぞれ重要な部分を用いて、企業の戦略に結びつけ、持続的に短期・中期・長期の企業価値を高めていくための報告です。このように企業が長期的な方向性を示す背景には、リーマンショック以降、投資が短期指向に流れているのをけん制する意味合いもあります。

投資や融資に広がるESG評価

荒井氏
財務情報と非財務情報の開示は、責任投資にも関わるものです。「社会的責任投資」に始まり、「持続可能な投資」「ESG投資」と、名称は時代とともに変化してきましたが、責任投資の概念は1920年代から存在します。この長い歴史を考慮しても、責任投資が特殊なものではないことがわかるでしょう。企業は社会の中にあり、消費者や銀行、投資家などとともに存在します。言い換えれば、彼らに信頼してもらわないと、企業は成り立ちません。
それは、常に社会の目にさらされていることを意味します。社会が企業を見る目こそ、責任投資の視点なのです。今、世界のコンセンサスとして、非財務情報、ESG情報が注目されており、こうした観点から投資が行われるようになっています。私の所属するSIFと同様の組織が各国にあり、今年1月に責任投資に関する各国の統計データを共同で取りまとめた報告書を発表しました。これによると、去年、世界で実施された責任投資は1,356兆円に達しました。責任投資が運用会社などによって運用される全金融資産に占めるシェアは、ヨーロッパでは49%、アメリカ12%、南アフリカ35%。これに対して日本は0.2%という残念な状況です。さらに、責任投資を手法別に分析すると、ESG情報と財務情報を総合して投資判断を行う「インテグレーション」に分類されるものは全体の46%でした。この数字が何を意味しているのか、日本でも十分に考えていく必要があると思います。
冨田氏
今年5月、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)の国際会議において、ESG情報をいかに開示すべきかを示す「サステナビリティ・レポーティング・ガイドライン」の第四版が発表されました。国際会議が開かれたアムステルダムには、中国やブラジルから多くの出席者が訪れ、非財務情報の開示に対する注目度の高さがうかがいしれました。世界で非財務情報の開示が進む背景には、国際的な枠組み、各国政府の規制、証券取引所による要請など、さまざまな要因があります。しかし、今の日本にはどのドライブもないような状況で、各企業の自主性に委ねられている気がします。このような国内の状況にあって、環境金融がドライビングフォースになるのではないかと期待しています。
足達
現在、大規模なプロジェクト関連融資で一定の環境・社会配慮を条件とする「エクエーター原則」には78もの金融機関が署名しており、融資においても環境配慮を求める動きは世界的に進んでいます。また、深刻な環境汚染を引き起こす企業に対して銀行が融資できないよう規制する中国のような国もあります。こうした規制に加え、銀行には、リスク管理の視点から環境への配慮が求められることもあります。わかりやすい例が土壌汚染です。土壌汚染によって土地の担保価値が毀損されれば銀行にとっても大問題であり、銀行は早くから対策に取り組んできました。銀行が関心を示したことで土壌汚染対策が進んだという経緯もあり、環境リスクへの配慮を銀行に求める世の中からのプレッシャーもあります。
司会
金融機関ではESG評価を進めるインセンティブが働いているようですが、企業側ではいかがでしょう。
冨田氏
多くの企業では、ESGなどに取り組むCSR部門と融資部門がまだしっかり統合されていないのが実状です。ESGへの取り組みは、融資を得るためというより、総合的なパフォーマンスの改善、企業のブランド価値の向上を目的として進められています。責任投資やCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)を通じて、ESGと融資をいかに結び付けていくか、これが重要なポイントになると思います。
荒井氏
投資でも融資でも、過去の財務情報だけでは適切な判断ができません。投資家も融資をされる方もはっきり意識しないまま、企業のポリシーや体制を知るため、非財務情報を見ているのだと思います。企業が将来的にどのような商品に取り組んでいくのか。どのように海外戦略を進めていくのか。そして、どのように企業価値を高めていくのか。こうした問題に非財務情報が大きく関わるのです。非財務情報は、将来の企業価値を測るものさしといえるでしょう。

U.新商品「SMBCサステイナビリティ評価融資」について

環境評価融資を魅力ある商品にするために

司会
新たにリリースされた「SMBCサステイナビリティ評価融資」が融資先企業にとって役立つ商品となるには、どのような評価項目・方法が必要になると思われますか。
荒井氏
時代の流れとともに評価の視点はどんどん変化していくので、必要に応じて評価項目などを改定していくことが必要です。今、IIRC(国際統合報告評議会)の議論でも、GRIのガイドラインでも注目されているのは、「マテリアリティ」です。マテリアリティとは、将来、財務などに重要な影響を及ぼす要因のことを指します。網羅的に取り組むのではなく、企業にとって何が重要かをまず考えなければなりません。各企業のマテリアリティを明確にした評価が求められているのではないでしょうか。
市村氏
統合報告におけるマテリアリティは、投資家や金融機関が企業の長期的な価値創造能力を評価するにあたって重要な情報の視点に立ったものです。これを前提にマネジメントが判断します。
冨田氏
包括的な評価はある程度必要だと思うのですが、端から端まで開示するより事業特性に合わせて重要な要素を絞り、その分野を深めていくことが、大事なのではないかと思います。また、ESGで優れているだけでなく、それがいかにビジネスパフォーマンスに貢献しているかという視点も必要でしょう。取り組みがいくら環境のためになっていても企業のためになっていなければ、投資家や金融機関には疑問の余地が残ります。ESGとビジネスをいかに連動しているか、言うなればCSV(Creating Shared Value)を評価するべきです。ビジネスとのインテグレーションは、企業の側も見て欲しいところだと思います。
足達
マテリアリティなどのお話をうかがって、銀行の新たな役割が頭に浮かんできたように思います。それは融資先に対し銀行がESGの観点からエンゲージメント(働きかけ)を行うことです。たとえば、「御社のマテリアリティはこの点にあります」と、銀行から提案していく。お客さまの中には、「自社で十分な分析をしているから指摘は必要ない」とおっしゃる企業もあるかと思いますが、こうした取り組みが新しい気づきを生むことになるかもしれません。
冨田氏
環境配慮評価融資を2度3度と利用している企業の中には、総合的な評価だけでなく、自社にとってのマテリアリティを掘り下げたいというニーズもあるかもしれませんね。金融機関が外部のステークホルダーの声を代弁するような形でフィードバックを行えば、企業が取り組みを継続していくインセンティブにもなるし、レベルアップに結び付けられると思います。こうしたポジティブスパイラルが実現すれば、お互いの信頼性も高いものになるはずです。

中小企業を効果的に支援するために

司会
環境評価融資を普及させるために必要なことは何でしょうか。
荒井氏
小さな企業でも、優れた取り組みを行っているところがあるので、これをどのように評価していくかが課題になると思います。中小企業向けの環境マネジメントシステムとしては、環境省によるエコアクション21や民間主導のエコステージなどがありますが、こうした既存の枠組みを活用したり、あるいは地方銀行と連携したり、取り組みを広げていただきたいですね。
冨田氏
CDPをはじめ、企業価値を測る指標はすでに多数存在します。さらに、それぞれの指標は定期的に内容が見直され、こうした変更に対応していくことが求められます。CSRの担当者であれば一通り理解できると思いますが、果たして経営層、財務部門はどうかというと、指標が多く複雑すぎる印象は否めません。多くの企業に環境配慮評価融資に取り組んでもらうには、なるべく既存の国際基準などに適合させ、エントリーレベルを下げることが必要でしょう。
市村氏
中小企業に対しては、総花的なESGの評価をしても、あまり意味がないと感じています。ESGの指標を使って、どうやって企業価値の向上、あるいはリスク回避を実現していくか、自由な作文をしてもらうのかが1つの方法ではないでしょうか。そうすれば、実現に向けた障壁も見えてくるし、経営戦略を立てることもできるはずです。

おわりに

有識者からのコメント

荒井氏
最近、インパクトインベストメントの債券が日本で大きな伸びを見せています。関心を集める背景として、外貨建てであることや、発行体の格付けがAAAであることなど、さまざまな要因が考えられますが、資金の使途が明確なことも重要な理由の1つです。たとえば、世界中のワクチンを受けられない人たちのために使う。あるいは、アフリカの教育のために使う。投資家は自分たちのお金がどのように使われるのかを意識しているのです。評価型の資金調達には、自分たちのお金がどのように使われているか、銀行がどのような企業を応援しているのか、預金者にもわかるというメリットがあります。一般の消費者にもアピールする活動をされるとよいのではないでしょうか。
市村氏
サステイナビリティに関する融資は、企業が持続して安定的に成長していくために不可欠なものであり、市場経済メカニズムを長期化しようと取り組む安倍政権の政策にも合致します。政府も含め、ステークホルダーすべてを巻き込み、日本の経済をよくする方向へ進めていただきたいと思います。さらに、その成功スキームを海外へも展開すれば、世界中がみんなハッピーになりますね。これを実現するリード役として、SMBCの評価型資金調達をさらに広めていただきたいと思います。
冨田氏
御行の環境配慮評価融資の取り扱い件数は着実に増加しているものの、融資全体からみると、まだ本質的な影響力があるといえる段階ではありません。ぜひともヨーロッパの49%を越える水準を目指して欲しいですね。粗製濫造にならないよう気をつけることも必要ですが、具体的な数値目標を設定して比率をもっと高めていただきたいと思います。荒井さんから一般の消費者へのアピールという提案がありましたが、たとえば環境配慮評価融資の比率が50%になれば目に見える成果になると思います。こうした認識が広まれば、御行のコーポレートカラーのように、“緑の銀行”になれるのではないでしょうか。

今回の外部評価委員会を受けて

中村
金融機関としての機能を最大限に発揮しながら、本業を通じて社会的責任を果たしていく。これがCSRというものの本来あるべき姿だと思います。こうした考えのもと、弊行は環境配慮評価融資に注力してきました。本日の外部評価委員会では、非財務的な取り組みがお客さまの本業に密接に関係してきていること、それらのステークホルダーへの適切な情報開示が求められる時代になってきていることを非常に強く再認識いたしました。また、マテリアリティについても、どのステークホルダーに対して、何に対してマテリアルなのかということをしっかり考えなければならないと感じた次第です。
本日頂いた貴重なご意見をもとに、商品の見直し、新商品の開発に取り組んでいきたいと思います。先進的な取り組みあるいは情報開示が企業価値として適切に反映されるよう、世の中は変わっていかなければなりません。弊行はその実現をお手伝いできるよう精一杯尽力してまいります。本日は、長時間にわたり、ありがとうございました。



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