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脆弱性評価が「適応」への第一歩に

 2009年9月22日、鳩山首相は国連総会の一環として開かれた気候変動首脳会合で「温暖化を止めるために科学が要請する水準に基づくものとして、1990年比で言えば2020年までに25%削減を目指す」と表明した。同時に「途上国も、持続可能な発展と貧困の撲滅を目指す過程で、共通だが差異のある責任の下、温室効果ガスの削減に努める必要がある」と述べ、日本は「これまでと同等以上の資金的、技術的な支援を行う用意がある」と表明した。日本の温暖化対策は、新たなフェーズに一歩を踏み出したことは間違いない。

 一方、本稿でもすでに何度か触れているが、温暖化対策には、これからの温暖化の進行を食い止めようとする「緩和」とともに、温暖化で生じる悪影響と折り合いをつけていく「適応」がある。今後、後者の重要性が増していくことが予想されるが、日本企業の認識や理解は必ずしもまだ進んでいない。

 2009年8月末に、環境省から『温暖化から日本を守る 適応への挑戦』と題するパンフレットが公表された。このパンフレットは、温暖化による日本への影響が、現在と将来にわたってどのようなものか、「適応」とは何か、分野別の具体的な適応の取り組みなどを、これまでの科学的知見から論じており有効だ。

 たとえば、現時点で、日本でも、高温によるさまざまな農作物への影響が報告されていること、海洋生物では北方系の種が減り、南方系の種が増大していること、渇水や洪水のリスクが大きくなっていること、大雨が増加していること、2007年に熱中症の患者数が過去最大になったことが報告され、将来は感染症を媒介する生物の分布が変わることが紹介されている。

 自らの事業の脆弱性評価を行うことが「適応」への第一歩である。向こう数年、「適応」への感度の高さが、環境配慮先進企業と呼ばれるための試金石になる。

(株式会社日本総合研究所 足達 英一郎)