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デジタル化が拓く日本企業の未来とは。DX時代の本質を考える

デジタライゼーションの進展が、社会・経済を大きく変容させつつあります。デジタライゼーションの取組をスピーディーかつ効果的に進めていくためには、自社内の知見だけでなく、先駆的にデジタライゼーションに取り組む企業や、先進的なデジタルサービスを提供している企業が持つ、ノウハウや経験を吸収し、適切に組み合わせて経営に活かしていくことが不可欠です。

2021年11月18日に開かれた「SMBC Group Digital Summit 2021」。基調対談では「デジタル化が拓く企業の未来-DX時代の本質を考える-」をテーマに、SMBCグループの様々な取り組みを紹介しながら、デジタル化・DXによる新たな未来を切り拓いていくためのパネルディスカッションが展開されました。

語り手:三井住友フィナンシャルグループ執行役専務グループCDIO・谷崎勝教
シンクタンク・ソフィアバンク代表・藤沢久美
聞き手:BSテレ東 日経ニュースプラス9キャスター・榎戸教子

日本はいまこそDXを進めるチャンス

榎戸2021年9月にデジタル庁が発足するなど、日本社会でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が大きく話題になっています。足元の経営環境の変化やDXの重要性について、2人の考えをお聞かせください。

谷崎デジタル庁発足の背景には、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きかったと思います。

コロナ前から様々な企業・個人がデジタル化に向けて相当な準備をしていたと思います。弊社もいろいろな形でデジタル化の準備をしていましたが、コロナ禍になって一気に大きく進んだ感じです。

マスコミは「日本はデジタル化が遅れている」「デジタル敗戦」などと報じていますが、僕は逆に今回がいいチャンスだと捉えています。日本はデジタルの成長余地がとても大きいと思っていますし、企業は自らデジタル化・DXを進めないといけない時代になっていると思います。

藤沢これからはデジタルが前提となる新しい仕事やビジネスの進め方がたくさん生まれます。そうなると、自社だけでなく取引先の仕事のやり方も変わるので、みんなで変化をしないといけない局面になります。なので、いまはある意味、産業革命的な状況にある。だからこそ「チャンスだ」と捉えるべきだと思います。

シンクタンク・ソフィアバンク代表・藤沢久美氏

榎戸金融機関はフィンテックなど、DXとは密接関係にあります。SMBCグループのDXはどのように進めているのでしょうか?

谷崎ここ5年ほどは、お客さま目線に立ったテクノロジーの使い方に目を向けています。使いやすいUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を追求することで、お客さまにとってより新しくて気持ちの良い、役立つサービスやプロダクトを提供しなければいけないと考えています。

三井住友フィナンシャルグループ執行役専務グループCDIO・谷崎勝教

金融グループがCO2算出ツールを開発

谷崎例えば、私たちが新たに開発しているのはCO2(二酸化炭素)を簡単に算出できるツールです。「持続可能な社会」の実現に向け、様々な企業が2030年および2050年に向けてのカーボンニュートラルに対応しないといけない。

でも、どの程度CO2を輩出しているか把握していない企業も多いので、私たちのツールでCO2の数値量を出すことで企業活動に反映してもらう。これはとてもデジタルになじむ領域だと思っています。これからのデジタルソリューションは、お客さまの困りごとに事前に対応する形で提供できればと考えています。

藤沢これは地域の、特に製造業には重要な話ですよね。いままでサプライチェーンで取引をしていた企業が「もう全部脱炭素で行くぞ」と宣言したとしても、CO2の量を計測をしたり、脱炭素のためのデザインをしたりする人は社内にいないと思うんです。

とはいえ、外部のコンサルティング会社に頼むにしても全く知見がない。例えコンサルをお願いしても「工場を建て直さないといけません」と言われたら、金銭面の負担も大きい上にノウハウもない。

そんなとき、企業にとって最も身近な存在である金融機関がCO2を計測して、これを削減するための新しい工場の在り方を提案してくれる。さらに金銭面の相談に乗ってくれるのであれば、企業側はすごく助かると思うんです。

榎戸いわゆる非金融分野において銀行のビジネスが広がっています。ほかに事例などあるのでしょうか?

谷崎このイベントを企画・運営している「プラリタウン」も良い事例ですね。(※プラリタウンは三井住友フィナンシャルグループ 100%出資の子会社)あとは(三井住友フィナンシャルグループが出資して)生体認証サービスを展開している「ポラリファイ」、あとはベンチャー企業の弁護士ドットコムと合同で出資した「SMBCクラウドサイン」ですね。

プラリタウンでは新しいテレワークの仕組みやオンラインの営業ツールの提供など、主に中小企業向けのDX推進をサポートしています。中小企業の経営者の中には、世間に溢れる情報の中から何を選んだら悩んでいる人も結構いるんですよ。

ポラリファイも累計ユーザーが1000万人を超えていますし、SMBCクラウドサインも2020年3月期の決算で黒字化を達成しました。

金融グループが開発するCO2算出ツール

榎戸金融業界は、他業界に比べて古風なビジネス展開をしていると思うんです。DXという新しい取り組みを展開する中で大変なことはなかったんですか?

谷崎SMBCグループ全体がこの数年間で、これまでの形に固執することなく新たな形を模索していくんだという雰囲気になっていますね。

例えば2021年7月に電通との合弁で「SMBCデジタルマーケティング」という会社を作り、広告業にも進出しました。従来の法律の縛りでは広告業には進出できないのですが、監督官庁である金融庁と話し合いを重ねた上で設立を認めてもらいました。

榎戸「デジタル技術は手段であって目的ではない」と言われていて、デジタル化の究極の目的は「社会で生きる人・働く人が幸せになる」だと思うんです。例えばSMBCグループはのどのような働き方改革を進めていますか?

谷崎SMBCグループとしては、若手の社長をどんどん育成しています。社長自らが「社長製造業」というキーワードを掲げているんです。グループ会社が競い合いながら、「よりイノベーティブな雰囲気の中で仕事をしよう」という雰囲気になっていますね。

カスタマーセントリックでDXを進めたい

榎戸最後に日本のデジタル化・DXにおける今後の展望をお聞かせください。

谷崎日本は「デジタル敗戦」「周回遅れ」などいろいろ言われていますけど、中国が10~15年をかけてデジタル化を進めたのを見ると、デジタル化・DXはものすごく世の中を変えていけるんだと思ったんです。

日本もここまでデジタル化が出来たのだから、ジャンプアップできるチャンスだと思っています。そのために出来ることはどんどんやっていくべきだと思いますね。

僕はあくまでもカスタマーセントリック(顧客中心主義)の考え方でDXを進めたい。これはSMBCのCDIOとしてこだわりです。テクノロジー優先のサービスを作ると、お客さまのニーズと全く違ったものになってしまう。

お客さまが本当に必要なサービスは何か、将来お客さまが困ることは何なのか、ここを徹底して掘り下げていくと、受け入れられるサービスになると思うし、失敗も少なくなると思うんです。

藤沢デジタルを使うことでお客さまの困り事を解決したり、これまで以上にお客さまの声を聞いたりできるのは話が聞けるのは、とても大切なポイントだと感じます。

デジタル化・DXが進んでサービスを享受できる人も増えたことで、結果的により多くの人が幸せになるチャンスが生まれたと思うんです。みんながハッピーになる時代の一歩を踏み出した感じがしますね。

【開催概要】
イベント名:SMBC Group Digital Summit 2021
開催日程:2021年11月18日(木)
共催:株式会社三井住友銀行、株式会社プラリタウン
協賛:株式会社三井住友フィナンシャルグループ、株式会社セールスフォース・ドットコム、 株式会社ビズリーチ、株式会社テラスカイ、Sansan株式会社

カーボンニュートラル
(Carbon Neutral)

類義語:

  • 脱炭素

温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。 「全体としてゼロに」とは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことで、現実には温室効果ガスの排出量をゼロに抑えることは難しいため、排出した分については同じ量を吸収または除去する。

フィンテック
(FinTech)

類義語:

金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語。銀行や証券、保険などの金融分野に、IT技術を組み合わせることで生まれた新しいサービスや事業領域などを指す。

生体認証
(Biometrics Authentication)

類義語:

  • バイオメトリクス認証

人間の身体的特徴(生体器官)や行動的特徴(癖)の情報を用いて行う個人認証の技術やプロセス。

DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。