DXサービス
new
更新

脱炭素社会のリーディングカンパニーへ。企業の温室効果ガス排出量の可視化クラウドサービス「Sustana」、2022年5月正式ローンチ予定

三井住友銀行は、企業の温室効果ガス排出量(GHG)の可視化クラウドサービス「Sustana(サスタナ)」を開発し、2021年12月から各業界の大手企業および中堅中小企業のお客さまに対して試行的に提供を開始した。

サプライチェーンGHG排出量算定の重要性と課題

パリ協定の採択以降、世界的に気候変動問題への対策が加速しており、日本政府も2020年10月、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、脱炭素社会の実現を目指すことを公表。

先日開催されたCOP26でも1.5℃目標の達成が改めてハイライトされた。

これに呼応する形で様々な業界のトップランナーがカーボンニュートラルに向けた自社およびサプライチェーン全体のGHG削減目標を設定。

また機関投資家は、責任投資原則のもと、サステナビリティの取組が進まない企業への投資を回避する行動をとり始めており、「脱炭素の取組が進まない=企業価値が下がる」の構図が見え始めている。

対消費者、各製品の買い手という観点でのサプライチェーン全体の排出量を把握できることの影響は大きい。ユーザーに届くまでの各製造工程の排出量が見える化できるようになると、各商品を生産するまでに要した排出量が見える化できることになる。つまり、低カロリー食品を選ぶような感覚で、各消費者・ユーザーは低炭素製品を選択できるようになる。

排出量削減のためには、まずは自社およびサプライチェーン全体のGHG排出量を把握する必要があるが、一方で排出量算定には、社内に分散するデータの集約と専門的な知識が必要で、サプライチェーン全体の排出量を算定できている企業は上場企業に絞っても全体の10%未満に留まっている。

また排出量算定を行っている企業のうち90%以上が手作業でのデータ集約とEXCEL等を用いた排出量計算を行っており、多くの企業においてDX化ができていない領域となっている。

Sustanaが目指す「Green×Digital Transformation」とは

SMBCが開発したSustanaは脱炭素化の入り口となる排出量算定業務をDXするソリューション。

Sustanaが提供するサービスは以下の通り。

①ユーザー企業は自社で保有する様々な企業活動に関するデータをSustanaに取り込むことで、排出量が簡単に算定することができるようになる。これは、各企業がそれぞれ調べなければいけなかった排出量の計算方法や、計算に必要な排出原単位というデータを一律でSustanaが取り込んでいるため。Sustanaを使えば、誰でもグローバル基準に倣った排出量算定ができる。

また、②ここで算定した排出量は取引先への報告や対外開示にそのまま使用可能であり、③データを基にした削減施策を立案もSustana上でサポートしてゆく。

そして排出量算定業務をDXすることで、特に3つの大きな効果を得ることができる。

①業務効率化:排出量算定を継続的に行っていくと1社あたり月間100時間以上の業務負担となることがこれまでのインタビューから明らかになっているが、Sustanaを使用すると安価で業務効率化に繋がる。

②最適化:これまで漠然した脱炭素施策を打っていた場合は、データ分析により、削減に向けたボトルネック・課題を見つけ、最適な脱炭素施策を実行することができるようになる。

③連携:EXCELでデータ管理をしている限り、サプライチェーン全体の排出量をデータで繋げ管理・モニタリングしていくことは難しい。Sustanaを使用することで、グループ会社やサプライチェーン等の外部企業とのデータ連携を容易にし、サプライチェーン全体の排出量削減を行っていくことが出来るようになる。

プロダクト・マーケットフィット実現に向けた挑戦

プロダクト・マーケットフィット(Product/Market Fit)とは、顧客の課題を満足させる製品を提供し、それが適切な市場に受け入れられている状態のこと。「顧客の課題を満足させる製品」と「適切な市場の選択および受け入れられること」の両方が重要であり、どちらかが欠けていると成功しにくい、という考え方である。PMFに達していないまま販売を拡大させると、製品が顧客の満足を獲得できず、解約の増加に繋がる。

Sustanaは2021年12月に先行トライアルという形でプロダクトリリースを迎えたが、これもPMF実現のための取組である。約50社へSustanaを提供し、ユーザーからの改善要望やその他のフィードバックを踏まえてアジャイル開発形式で、短期間でプロダクトを改善してゆく。

従来ウォーターフォール型と呼ばれる完成形が見えているプラモデル作りのような開発手法ではなく、変化し続ける目の前の景色を見ながらキャンバスに絵を描くようなアジャイル型の開発方式はデジタル領域では主流となりつつある。

アジャイル型の開発方式は、昨今のサステナビリティや脱炭素領域のように社会環境や顧客ニーズの変化が早く、ニーズに合わせてサービスの形を変えていかなければいけないサービスの開発に向いている。つまり開発方式をとっても、変化市場環境のなかで生き残るための競争戦略のひとつと言える。

脱炭素社会の実現に向けた、SMBCグループの取り組み

SMBCグループでは、脱炭素社会実現に向けた様々な取組を推進してきた。2021年5月には気候変動に関するSMBCグループの姿勢を明確化のうえ、具体的な行動計画を策定し、気候変動対策・脱炭素化ビジネスの強化を公表。同年7月には「SMBC Group GREEN Innovator」のコンセプトを公表し、サステナビリティの実現に向けたサービス・商品のリリースを進めており、今回の「Sustana」は、こうした取組みに基づき開発を始めるに至った。

本サービスの提供は2021年11月施行の改正銀行法で可能となった自行開発ITシステム販売の全国第1号案件。安価に多くの企業に利用してもらうことを目的に、あえて世の中にある既存サービスとの協業ではなく、SMBC内での開発を選択した。

但し、SMBCは自前主義を貫くつもりは全くない。Sustanaの開発においては、脱炭素実現に必要不可欠なエネルギーマネジメントのノウハウを有する㈱東光高岳、アズビル㈱を協業し、今後はSustana内で脱炭素施策の提案、知見提供も行ってゆく。

またSMBCでは、2021/10月に排出量算定の類似サービスを提供するスタートアップ企業Persefoni(米)出資や、同12月には、気候変動リスク・機会の分析サービス提供を行う米The Climate Service, Inc.との覚書締結を発表。

SMBCグループ単独で提供できるソリューションは限定的なので、外部のグリーンテック企業や、脱炭素ソリューションを持つ企業との協業・共創プロジェクト立ち上げも進めてゆく。

Sustanaが実現を目指すサプライチェーン排出量の見える化はカーボンニュートラル実現に向けた入り口に過ぎず、SMBCでは各企業、サプライチェーンおよび社会全体のカーボンニュートラル実現に向けて、Green×DXソリューションを今後も提供してゆく。

この記事でご紹介したサービス
カーボンニュートラル
(Carbon Neutral)

類義語:

  • 脱炭素

温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。 「全体としてゼロに」とは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことで、現実には温室効果ガスの排出量をゼロに抑えることは難しいため、排出した分については同じ量を吸収または除去する。

DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。

アジャイル開発
(Agile development)

類義語:

短い開発期間単位を採用することで、リスクを最小化しようとする開発手法の一つ。

GHG
(Greenhouse Gas)

類義語:

  • 温室効果ガス

Greenhouse Gasの略称であり、地球の温暖化現象を引き起こす気体のこと。 大気中の温室効果ガス濃度が増加すると、地球表面の温度は上昇するため、地球温暖化の主な原因とされている。