DXサービス
new
更新

国内大手銀行初となる住宅ローン電子契約を実現。利用率9割超の「SMBCクラウドサイン」活用による住宅ローン

2019年10月に、三井住友フィナンシャルグループと弁護士ドットコムとの合弁会社として誕生した「SMBCクラウドサイン」。コロナ禍を契機とした「脱ハンコ」の流れを受けて、事業は急速に成長しており、2021年9月からは三井住友銀行の住宅ローンの新規契約にも導入されています。

SMBCクラウドサインによる住宅ローンの金銭消費貸借契約(以下、住宅ローン契約)は、オンライン上で完結できる上に手数料・印紙代がゼロで、署名・捺印も不要。これまでの住宅ローン契約を一気に効率化し、現時点での利用率は9割を超えています。

また、この住宅ローン契約に、利用者の負担を大幅に軽減した「立会人署名型電子契約」を採用したのは大手銀行初の取り組みでもあります。SMBCクラウドサインによる住宅ローン電子契約は、どのような経緯で生まれ、どのような課題を解決したのか? SMBCクラウドサイン社の設立を行い、立ち上げ当初より事業に携わり、現在同社の事業企画部長を務める柳澤隆大氏に、同サービスの革新性について聞きました。

“脱ハンコ”のリーディングカンパニーとして、SMBCグループ内での導入が加速

まず始めに、SMBCクラウドサイン社はどのようにして生まれたのでしょうか。

SMBCクラウドサイン社は電子契約サービスのSMBCクラウドサインを提供する企業で、2019年10月に三井住友フィナンシャルグループと弁護士ドットコムとの合弁会社として設立されました。設立して3年ほど経ちましたが、図らずもコロナ禍で対面契約が制限されたことも影響して、事業は急成長しています。

SMBCクラウドサイン 事業企画部長 柳澤隆大氏

足許で、SMBCグループにおけるクラウドサインの導入状況はどうなっているのでしょうか?

SMBCグループ全体では現状23社が導入しています。SMBCグループは「"脱ハンコ"のリーディングカンパニー」を表明しており、すでに導入されているグループ会社でも利用の幅を更に広げている状況です。当初の目標を大幅に超え、私たちが思った以上の広がりを見せています。ハンコのために出社するという行為が憚られる世の中になってきていますので、そういった追い風の影響もありますね。

これまで紙ベースでの契約の課題は一般的にどのようなものがありましたか?

紙ベースの契約ではまず契約書を作成して、内容を確認して、押印をした後に相手に送付する。その後、相手から返送してもらった書類を保存するという一連の過程があり、一般的にはだいたい2~3週間を要するケースが多いと言われています。SMBCクラウドサインを使うことで、この2~3週間を要する契約締結がわずか2~3分で終わります。契約書もすべて電子データで保管できるので、紛失などのリスクも大幅に減少します。加えて、紙の契約書では印紙の貼付が必要ですが、電子契約は法律上印紙が不要と定められているので、この印紙代も削減することが可能です。

法人での契約実務の例で言うと、契約書のハンコを押すためだけに出社をすることで、テレワークや在宅勤務を進める上でのハードルになっているという話も良く聞きます。今の社会的な潮流には合わない事務フローと言えます。その時間と手間を省くだけで事業スピードと業務効率は大幅に上がると考えております。

大手銀行初。住宅ローンへの「SMBCクラウドサイン」導入でお客さまの手間を大幅軽減

今までSMBCグループ内での利用が進んで来たというお話でしたが、2021年9月よりお客さま向けのサービスとして三井住友銀行の住宅ローンの新規契約にもSMBCクラウドサインが導入されましたが、これによるローンを借りるお客さまのメリットを教えてください。

三井住友銀行では、2021年9月より住宅ローンの借入にかかる契約書、すなわち金銭消費貸借契約書をSMBCクラウドサインを活用して電子化しております(※)。SMBCクラウドサインを活用することで、住宅ローン契約におけるお客さまの負担を大幅に軽減することができると考えております。具体的には印紙代に関する経済的な負担に加え、締結に係る手間の軽減です。 

印紙代に関しては、紙ベースでの契約では、住宅ローン契約時に借入金額に応じて決められた印紙代を払う必要があります。こちらは数万円となるケースが多いのですが、今までは借入をしていただくお客さまにご負担をいただいていました。電子契約によってこの印紙代の負担をなくすことが出来たことは、お客さまにとって大きなメリットであると考えております。 

締結に関する手間に関しては、従来紙とハンコで行っていた住宅ローン契約をオンラインで完結させることが可能であり、今まで必要だった来店・郵送でのお手続きや印鑑証明書・収入印紙代の準備等が不要になります。ご自宅のPCやスマートフォンでご契約内容を確認して契約のための操作を行うため、お客さまは時間や場所に制限されることなく契約締結が可能となります。
とあるSNSで「三井住友銀行の住宅ローンがすごい。」「同じ金融機関でもこんなに違うのか。」というようなお客さまからの書き込みを偶然見かけたことがありました。商品企画を行っているとお客さまの生の声は非常に気になるところでしたのでとても嬉しく思っています。

(※) 住宅ローン業務における『 SMBC クラウドサイン 』 の導入について

SMBCクラウドサインのような、立会人署名型電子契約による住宅ローンの取り扱いは大手銀行初とのことですが、この「立会人署名型」と、旧来型の電子契約との違いについて詳しく教えてください。

電子契約には大きく分けて当事者署名型電子契約(以下、当事者型)と立会人署名型電子契約(以下、立会人型)の2種類があります。当事者型とは、20年ほど前にできた仕組みで、契約時の署名鍵、要は電子的な印鑑に相当するものをご自身で持つものです。その準備としてICカードや何かしらのソフトのダウンロードのどちらかが必要となるケースが一般的です。立会人型は、当事者型よりも新しい仕組みですが、この署名鍵をクラウド事業者が用意するというもので、SMBCクラウドサインはこの立会人型に該当します。それぞれ特徴がありますが、契約の特徴や用途などによって選ぶ必要があると考えています。

当事者型での住宅ローンの契約締結では、まず利用申し込み後に専用サイトで登録をして、電子署名の発行依頼をして、場合によってはICカードとカードリーダーが必要になるのでそれを本人限定受取郵便で受け取って……。というようなフローがあります。多くの方が一生に何度もある訳ではない住宅ローンという契約の特徴を踏まえると、かなりの事前準備が必要になります。こうしたことから、当事者型の住宅ローン電子契約の浸透は苦戦しているという話も聞いたこともあります。当事者型の場合は銀行側も大変で、お客さまが不在だったときのカードリーダーなどの再送手続きや、IDとパスワードを紛失した方がいれば再発行や照会対応もしなければなりません。

立会人型の住宅ローン電子契約では、作成したPDFの契約書をお客さまに送信して、その内容をお客さまが確認して承認いただくことで、契約が完了します。完了した契約書は、お客さまと銀行の双方にメールでPDFファイルが送付されます。一連の業務フローの中で、銀行側からお客さまへICカードやカードリーダーの送付などは不要です。また、契約締結後のPDFファイルは銀行の関係各所にも一斉に連絡が届き、情報の共有も瞬時になされます。お客さまからすれば事前の準備が簡便となることに加え、契約締結後の契約書をメール上でいつでも確認できるため、IDとパスワードの管理も不要で、なにより原本を保管する手間も紛失のリスクもありません。

契約時にタブレットで手書きの署名をするとか、PDFの契約書をプリントアウトする必要もないわけですね。

手書きの署名やPDFの契約書を印刷するという必要も一切ありません。SMBCクラウドサインでの電子契約を含め、住宅ローンの申込が一連でオンライン化されており、ローンの金額や金利を決める条件交渉においてもオンラインでのご面談が可能な仕組みを導入しているので、住宅ローンの相談から申込までを非対面で完結することも可能です。今、三井住友銀行では住宅ローン契約についてはSMBCクラウドサインをご利用いただける商品を提供しているため、SMBCクラウドサインによる電子契約のご利用は9割程度となっています。我々はサービスの改善を通じてお客さまに受け入れられやすい電子契約サービスとなるべくUI/UXの向上を目指して参りましたが、9割という数字はそれが支持された結果のひとつでもあると考えています。ただこれに留まることなく、より一層お客さまにご満足いただけるように更なるレベルアップにも努めて参りたいと思っております。

住宅ローン契約における、SMBCクラウドサインの利用率9割という数字は、当初から目標としてあったのでしょうか?

いえ、そのようなことはなく、あくまでもお客さまと日頃接している三井住友銀行の行員から丁寧にご案内を行い、一連のご契約手続きをしっかりご理解いただいた結果の数値だと思っています。お客さまの立場から見ても、経済的な負担や締結に係る手間が煩雑になりやすい紙契約や当事者型での電子契約に対して、立会人型のSMBCクラウドサインでの契約であればコストもかからず手間も抑えられている。このコストの低さと手軽さという事実は、お客さまにも広く喜んでいただけるものと思っています。

旧来型の課題を解決。進む地銀での導入検討

住宅ローンにおけるSMBCクラウドサインの導入は地方銀行でも進んでいますね。

三井住友銀行は2021年9月に、住宅ローンの新規契約においてSMBCクラウドサインを導入するというプレスリリースを出しましたが、それ以降各地の地方銀行様から大きな反響をいただいております。実際に三井住友銀行のプレスリリースの1カ月後の10月には三十三銀行様から導入のプレスリリースを出していただいています。一般的にDXを進める手順としては要件定義があって、システム開発があり、その後にテスト環境での検証があって、初めて本番検証に進みます。このプロセスはどう考えても1カ月では終わりませんが、SMBCクラウドサインはSaaS型のサービスであるため早ければ次の日にでも環境をお渡しできます。

三十三銀行様には、お申し込みの意向があってすぐに環境をお渡しして、実際にサービスをご利用いただきながら社内のルール、事務手続き、業務フローの検討をその後に行っていただきました。このように住宅ローン契約の電子化を検討されている企業様の迅速な経営判断を損なうことなくサービス提供が出来るというのもSMBCクラウドサインの強みのひとつだと思っています。

翌日に使えるというスピードは大きな強みですね。

クラウドサインは日本でトップクラスの電子契約サービスです。ありとあらゆる企業のニーズを踏まえた形で、広く即応できる作りになっています。反面個別のカスタマイズは難しいのですが、それだけ間口の広いサービスですので、様々な機能が実装されており、それらを組み合わせて使うことで幅広い活用が可能です。

SMBCクラウドサインは2019年の10月に設立しましたが、クラウドサインの仕組み自体はそれ以前より弁護士ドットコムが所有していたものです。当時からお客さまの声を分析してサービスの品質向上につなげてきた実績がありますし、使い勝手についてはこれからも改善を続けていきます。

綿密な検討と話し合いを経て、SMBCグループ内での「SMBCクラウドサイン」活用を推進

住宅ローンの電子化を始め、SMBCグループとしてDXを上手く推進できた理由はどこにあるとお考えですか?

銀行全体が今電子化の流れにあり、デジタライゼーションを積極的に推進しています。今回のテーマである住宅ローン契約の電子化に関しても、今まで紙ベースでの申込がメインだったプロセスのうち、いくつかの工程を電子化してきた後、アナログで残っていたのが契約締結の部分でした。そこも電子化しようと考えたとき、以前からある当事者型の電子契約にするのか、新しい立会人型の電子契約にするのかを検討し、お客さまのコストや利便性も考えて後者を選択しています。

SMBCクラウドサインの設立当時はSMBCグループ内でも、立会人型という仕組みが新しいものであることも踏まえ、クラウドサインの安全性を疑問視する声もありましたが、そこは法務やリスクの専門部署と話し合いを続けて理解してもらいました。今回の住宅ローン契約への導入に関しても、大手銀行が立会人型の住宅ローン電子契約を導入するのは初のケースになるので、ローンチまでには綿密な検討とジャッジを重ねています。

SMBCグループとしてDX推進という観点では、トップのコミットも大きいと考えております。DXについては現場の担当者だけが声を大にして訴えるだけではなかなか進まない部分が確かにあります。"脱ハンコ"のリーディングカンパニーを標榜するSMBCグループにおいては社長の太田と、デジタル領域を担当する専務の谷崎からの後押しも大きいです。

グループ内での利活用を進めることで、将来的には日本全体のDXを加速させる

コロナ禍で世の中全体のDXはどのくらい早まったと感じますか?

2~3年は間違いなく早まったと感じますね。どんなに企業のDXが進んだとしても、最後のハンコを押すために出社せざるを得ないというのがずっと続いていましたが、コロナ禍で一気に変わりました。社会的な機運の高まりだけでなく法律も変わり、2020年の7月から9月にかけて総務省・法務省・経済産業省は、立会人型の電子契約を認める表明も出しています。それまでは旧来の当事者型の電子契約しか認められていませんでしたが、コロナ禍で出社できない状況ではDXを推進していかないと立ち行かなくなってしまいます。そこから指数関数的に裾野が広がったという感じでしょうか。

では今後のSMBCクラウドサインの展望を教えてください。

まずSMBCグループでの利活用を進め、そこで蓄積したノウハウをどんどん地方銀行様や他の企業様にもご提供させていただきたいと思います。私たちが蓄積したナレッジを地方や他業界へ伝播させていくことは我々のみならず、日本全体のDX、デジタライゼーションにも必ずや資するものだと考えています。まずは私たち自身が先達となることで、多くの企業様にもDXの波を広げていきます。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • SMBCクラウドサイン 事業企画部長
    (三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部兼務)

    柳澤 隆大氏

    2015年 大学院卒業後に三井住友銀行へ入行。入行後は一貫して新規事業開発・戦略立案に携わる。これまでにグループ子会社を2社設立し、設立後の事業の立ち上げも含め推進。また、オープンイノベーション拠点「hoops link tokyo」の企画・運営、米国テック企業との協業による銀行新サービスの開発の実績有。2021年5月より三井住友フィナンシャルグループと兼務しSMBCクラウドサインの事業企画部長を務める。

この記事でご紹介したサービス
UI/UX
(User Interface/User Experience)

類義語:

UIとはユーザーインターフェイスのことで、Webサービスやアプリケーションなどにおいてユーザーの目にふれるすべてのものを指し、UXとはユーザーエクスペリエンスのことで、ユーザーが商品やサービスを通じて得られる体験のこと。

SaaS
(Software as a Service)

類義語:

Software as a Serviceの略。読み方は「サーズ」。ソフトウェアを利用者側に導入するのではなく、提供者側で稼働しているものをネットワーク経由でサービスとして利用することを指す。納期短縮、設備投資削減などの効果がある。

DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。