DXサービス
new
更新

紙・データなど複数フォーマットでの請求業務を一括代行。BPORTUSとNECの新たな協業

請求業務は定例的に発生する重要な業務にも関わらず、アナログ・属人的な対応が依然として続き、効率化の妨げとなっています。部分的に請求書のデジタル化が進む一方、紙による請求書を希望する企業も多いため、請求書を発行する企業は、取引先のニーズに合わせた形態で請求書を発行する必要があり、販売データ等の加工・成型業務をはじめとする新たな業務負担が生じています。

このようなデジタル化の過渡期であるからこそ抱える課題を解消するのが、SMBCグループとNECの合弁会社であるBPORTUSとNECが共同開発し、2023年12月よりサービスの提供を開始した「BPORTUS 帳票マルチ発行サービス」です。

現在は主に請求業務の効率化を支援する目的で提供している同サービスですが、将来的にはあらゆるデータを加工して連携させることを見据えています。勘定系システム刷新を機にしたSMBCグループとNECグループの深い関係性はすでに30年を超える歴史を持つ中、この新しい協業はどのようなきっかけで始まったのか。
BPORTUSの代表取締役 田中 一基氏とNEC 第一金融ソリューション統括部長 宮川 修氏に伺います。

複数のフォーマットでの請求書発行業務を一括代行

SMBCグループとNECグループの協業関係について教えてください。

田中もともとNECグループとSMBCグループは、様々なシーンで協業を続けています。私たちBPORTUSもブリースコーポレーションとNCoreという、NECグループとSMBCグループの共同出資会社がさらなる成長を目指し、2023年に合併して誕生した会社です。

宮川両社の関係は、1994年にSMBCグループの勘定系システム刷新をNECが手がけたことでより深まりました。さらに、この30年間での急激な世の中の変化に対応するため、主にSMBCグループが持つ顧客基盤に対し、NECがITサービスを提供する形で様々な協業を進めてきています。例えば、SMBCグループが提供するビジネスマッチングサイト「Biz-Create」は、NECがシステムの企画や開発、運用を手がけています。

日本電気株式会社(NEC) 第一金融ソリューション統括部長
宮川 修氏

今回提供を開始したBPORTUS 帳票マルチ発行サービスは、どのような経緯で誕生したのでしょうか?

田中BPORTUSは前身の時代から請求書発行業務のデジタル化、もしくは外部パートナーと連携しての業務効率化というビジネスを手がけてきました。当時はいわゆるフルオーダーメイド型だったので、クライアントである大企業に対し、コンサルティングとシステムの複雑なカスタマイズを行っていました。そうなると当然、総コストも提供までにかかる期間も長期化してしまうため、その打開策としてサービスの基盤となる部分を予め標準サービスとして作り上げておくことで、より多くのお客さまに提供ができると考えました。NECの中でも同様の構想を持っていた部署があることを知り、ともに協力することでサービス化に至っています。

基本的なサービスの概要について教えてください。

田中BPORTUS 帳票マルチ発行サービスは、紙、PDFを始めとした様々なフォーマットの請求書の発行を一括で代行するサービスです。お客さまが持っている請求データをいただければ、すべて希望のフォーマットで発行いたします。世の中には様々な事情から紙の請求書を使っていたり、複数のフォーマットで請求書を出したりしている企業が数多く存在します。そんな方々の困りごとを解消するのがBPORTUS 帳票マルチ発行サービスです。

BPORTUS 帳票マルチ発行サービスの業務フロー

SMBCグループの顧客基盤とNECグループの開発力を融合

現状、請求書のデジタル化はどの程度進んでいるのでしょうか?

田中これは肌感覚ですが、それなりの規模の企業でもまだまだデジタル化は進んでいません。3割、もしくはそれ以下かもしれません。「Peppol(ペポル)」という請求書などの文書をデジタル化してやり取りする際のグローバルな規格がありますが、日本ではなかなか導入が進んでいません。請求書をデジタル化するということは、例えばNECと企業Aの取引でどれくらいの金額が動いているのかというデリケートな情報を、他の会社に渡す必要があるということです。そういったセキュリティ上の問題から、導入の遅れが見られます。

すべての企業がPeppolに移行するにはそれなりの時間を要すると見ていますので、移行期間としてのBPORTUS 帳票マルチ発行サービスには需要があると考えています。

株式会社BPORTUS(ビーポータス) 代表取締役
田中 一基氏

今回の共同開発でBPORTUSとNECの強みはどのように活かされていますか?

田中私たちの強みは単なるサービス提供者ではない点にあります。固有のサービスだけを提供するのではなく、お客さまのご要望に合わせてセミオーダー、フルオーダーと柔軟に対応が可能です。そういった非常に手間のかかるサービスですが、歴史のあるNECグループの基盤を活用することで高品質なサービスをお届けできると自信を持っております。

宮川NECの強みはITベンダーとしてこれまで積み上げてきた技術やノウハウです。NECの社内にもBPORTUS 帳票マルチ発行サービスと同様の構想を持っていたメンバーがいましたが、果たしてNEC単体でサービス提供までこぎ着けられたのか。困っている企業の声を取り入れて、具体的な解決法まで提示するのは難しかったと考えています。

私たちにはない強い顧客基盤と強い営業力を持つSMBCグループと組んだからこそ、実現できたのが今回のサービスです。我々が思い描いていたサービスをBPORTUSの視点でカスタマイズして、より多くの人たちに使っていただけるようなサービスになりました。お互いを補完する関係が私たちの強みです。

「データを加工してつなぐ」ビジネスは、請求書以外にも応用可能

田中BPORTUS 帳票マルチ発行サービスは、お客さまの持っているデータをいろいろなシステムにつなぐために組み替えて加工をしています。実はこの作業がそれなりに大変で、請求のためのデータをいただいたらA社用、B社用、C社用とそれぞれに合った並び替えをしますが、この作業は他の業務に応用できると考えています。

BPORTUS 帳票マルチ発行サービスは決して請求書だけにとどまるものではありません。私たちが見据えているのは、お客さまの様々な「データを加工してつなぐ」ビジネスです。これはまさに基幹系のシステムに精通しているNECの強みを活かせるサービスと考えています。

請求書以外ではどのような分野に活かせるのでしょうか?

田中考えているのは人事領域です。現在、人的資本やエンゲージメントなどを可視化するSaaSは数多く存在しており、企業はそれらを駆使するためにデータ同士を連携させる必要が出てくるでしょう。お客さまから従業員のデータをいただいて、最適な形に加工して連携させる。そこにチャンスがあると見込んでいます。

BPORTUS 帳票マルチ発行サービスはNECの「WebSAM eDocサービス※」を利用しています。これにより、既存の帳票システムに対して簡単に連携可能な仕組みと環境を提供できます。もちろん電子帳簿保存にも対応していますし、NECのサーバー上で暗号化されるので高い安全性を誇ります。

(※)WebSAM eDocサービス:ドキュメントのデジタル化から電子保管までに必要な一連の処理の自動化、また、既存システムへの影響を最小限に抑え、要件を満たした電子取引データ保存を可能にするサービス。

一度、請求書のデジタル化に失敗した企業にこそ使ってほしい

今回のサービスは主にどのような企業に使ってほしいですか?

田中今は法的な要請もあり、請求書をデジタル化する機運が高まっている状況です。そんな中、一度はデジタル化に取り組んだものの上手く行かずに諦めてしまった企業もいらっしゃるかと思います。そういったお客さまとは、ぜひ一度お話しできればと考えています。断念した理由をお聞かせいただければ、我々が具体的な解決策を提示できるはずです。

BPORTUS 帳票マルチ発行サービスは比較的業歴の長いお客さまから評価をいただいています。歴史のある企業は長らく紙の請求書を発行してきたので、一朝一夕でデジタル化に踏み切るのは難しいからです。そういったお客さまにもぜひ使っていただきたいですね。

今回のサービスだけではなく、今後両社としてどのように協業していく予定なのか。これからの展望について教えてください。

宮川BPORTUSはブリースコーポレーションとNCoreの二社が合併してできた会社なので、それぞれのサービスは引き続き提供して経営の基盤をしっかりと固めていきます。今後も金融や請求といった概念に囚われず、世の中にある企業と生活者が抱える悩みを改善、効率化するサービスを提供したいと考えています。SMBCグループとNECグループの持つ強みを活かして、社会にどのように貢献するか。そんな目的で新しいサービスの開発に取り組んでいきます。

田中お客さまの問題を解決するソリューションの提供、サービスの開発能力において日本で圧倒的な技術力を持つのがNECグループです。NECは金融というジャンルにとらわれない幅広いアイデアを所持されているので、その力をお借りして協業を続けていきます。SMBCグループの強みは、お客さまが抱える経営上の課題についていち早く察知できる点です。訪問営業だけではなく、常にお客さまに寄り添って成長、発展することを私たちは考えています。世の中の変化やお客さまの課題についてもディスカッションを重ねているので、早い段階で経営上の問題を発見することができます。

NECグループとSMBCグループ、両社の強みをうまく掛け合わせ、まずは日本の企業が再成長するために必要なソリューションを提供していきます。そして、金融に限らず日本の企業が抱えている課題を少しでも解決していきたいです。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 株式会社BPORTUS(ビーポータス) 代表取締役

    田中 一基氏

    2006年株式会社三井住友銀行入行。法人営業や融資先経営支援を中心にキャリアを積み、2020年からは株式会社SMBCキャピタル・パートナーズに出向し企画部長、投資第一部部長を経験。2023年7月より株式会社BPORTUSの代表取締役社長に就任。

  • 日本電気株式会社(NEC) 第一金融ソリューション統括部長

    宮川 修氏

    2001年NEC入社以来、金融機関の基幹である勘定系システムに関連する営業を手掛ける。
    2021年4月にNEC第一金融ソリューション事業部 第一ソリューション部長に就任、2023年4月より現職。

この記事でご紹介したサービス
SaaS
(Software as a Service)

類義語:

Software as a Serviceの略。読み方は「サーズ」。ソフトウェアを利用者側に導入するのではなく、提供者側で稼働しているものをネットワーク経由でサービスとして利用することを指す。納期短縮、設備投資削減などの効果がある。