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日本発の南部鉄器を海外に。SMBCグループの支援で実現した1902年創業の老舗「岩鋳」×「AnyMind」の協業

今や国内のみならず、その高い品質で海外でも受け入れられている岩手県の南部鉄器。フランスから世界へ広がり始め、欧州では「IWACHU」の呼び名でも知られている1902年創業の南部鉄器製造業者「岩鋳」は、今やヨーロッパ、アジア、アメリカなど諸外国で人気を博しています。今後、さらなる海外展開を見据える同社は、SMBCグループ子会社であり、中堅・中小企業のデジタル化を支援するプラリタウンによる紹介を経て、ECやマーケティング領域で強みを持つAnyMindとの協業を実現。初回面談からわずか1ヶ月で契約に至った背景と具体的な取り組み内容について、関係者に話を伺います。

ECの仕組みだけでなく、ビジネスプロセス全体を支援

岩鋳さまが以前から抱えていた課題について教えてください。

岩清水私たち岩鋳はものづくりの会社であり、単に商品を売って終わりではなく、商品をお客さまに長く使っていただくことが目標です。そのために南部鉄器の魅力や使い方、手入れの仕方などをWebサイト上で発信する必要があると感じていました。なかでも、私は職人たちの想いをお客さまにお伝えしたかったのですが、そのための場もなければ伝えるためのノウハウもない。それが課題でした。

株式会社岩鋳 代表取締役社長
岩清水 弥生氏

それらの課題を聞いて、プラリタウンはどのような提案をしたのでしょうか?

新村三井住友銀行の東北法人エリアを通して設定した初回ディスカッションの場で、社長の岩清水さんからマーケティングの強化とECサイトの効率化、さらにアジアをはじめとする海外販路を拡大したい、といった詳細なニーズを伺いました。岩鋳さまは伝統に裏打ちされた確かな技術と、現代の感覚にも合った高いデザイン性を備えています。そして、日々の生活を豊かにする南部鉄器の魅力を知ってもらうためには、海外へのタッチポイントを広く太くしていく必要があると考え、AnyMindさまをご紹介いたしました。

AnyMind社が岩鋳さまの課題解決において、最適だと感じた理由を教えてください。

新村ECの海外販路を拡大するといっても、単に仕組みだけを提供するシステムベンダーでは、岩鋳さまの目指す姿を実現することは難しいと思います。AnyMindさまは、ビジネスプロセスはもちろん、上流のブランディングからマーケティング、物流まで網羅的に一気通貫で伴走支援できるのが強みです。さらにアジア各国でのローカルスタッフによる強いオペレーション力を持っており、現地の文化や商慣習に精通したスタッフがローカライズをして「勝てる海外展開」を提案されています。海外拠点も数多くあるので、岩鋳さまとの親和性も非常に高いと考えました。

そのようなソリューションを活用し、自社でアパレルブランドを立ち上げ、EC展開するなど、ユーザー目線に立ったサービスの企画立案も得意とされています。まさにこれ以上ない岩鋳さまのパートナーといえるでしょう。

株式会社プラリタウン マーケティング・セールス部
新村 恵吾氏

わずか1ヶ月でAnyMind社と契約に至ったそうですが、その決め手を教えてください。

岩清水AnyMindの作増さんと佐古さんの第一印象が大きいですね。実は去年の10月にオンラインで初顔合わせをしまして、対面でお会いするのは今日が初めてです。お2人が初回に用意してくれた提案の内容も非常に素晴らしく、AnyMindさまなら私のニーズに応えてくれるだろうと直感で決めました。

作増通常であればお客さまに複数回のご提案を重ねて、プロジェクトがスタートするまでには数ヶ月を要します。けれども今回の岩鋳さまとの取り組みにおいては、私たちも驚くほどのスピードで展開しています。

AnyMind Japan株式会社 Head of DX & AI business
作増 志郎氏

世界15カ国22拠点から海外マーケットを狙う

AnyMind社は具体的にどのような支援を行っているのでしょうか?

佐古岩鋳さまのWebサイト、ECサイトのリニューアルから、サイト全体のブランディングを手がけました。

上流設計から、お客さまのリピートを増やすためにLINEやメルマガを活用したCRM、ブランドの想いを伝えるブログの運用まで、幅広く支援させていただいています。
ローンチ後には販促戦略や、将来の海外進出に向けた戦略の立案にも携わっています。弊社はアジアを中心に世界15カ国22拠点を展開していますので、このネットワークを活かして海外進出の支援をしていきます。

AnyMind Japan株式会社 Account Exective
佐古 祐介氏

現時点でも岩鋳ブランドの南部鉄器はヨーロッパで好評だそうですね。海外と国内の売上の比率はどのくらいでしょうか?

岩清水海外と国内の売上はおおよそ4:6の割合です。基本、海外には代理店を通じて輸出しているので、どんな地域に岩鋳の商品が届いているのか私たちも把握しきれていないケースがあります。先代である私の父が輸出には力を入れていたので、欧州を中心に岩鋳の海外展開は進んでいます。

数ある南部鉄器の中で、岩鋳の商品が他と比べて優れている点を教えてください。

岩清水分業体制ではなく、すべて自社で一貫生産しているので高い品質の維持が可能ですし、何かクレームが入った場合も迅速な対応ができます。伝統工芸の世界では職人の高齢化が進んでいますが、弊社には20代から50代まで幅広い世代の職人が在籍しています。本社、工場ともに社員の平均年齢はそこまで高齢化が進んでいません。

南部鉄瓶の製造工程である「鋳込み」の様子

AnyMind社との取り組みを実施しての感想を教えてください。

岩清水このくらいの規模でWebサイトをリニューアルするとなると、何度か対面での打ち合わせを重ねるのが通常ですが、オンラインでの打ち合わせのみで完成までこぎ着けたことが驚きでした。

佐古本日は実際の商品と製造過程を拝見しましたが、やはり実物を目の当たりにすると印象が非常に変わってきますね。鉄器を手で持ってみると実際に使用するイメージがさらに湧いてきたので、これからのマーケティング戦略に活かしていきたいです。

作増私も商品や工房の様子を実際に目にすることで、いろいろなアイデアが浮かんできました。商品のストーリーや生まれるまでの背景を知ることで、お客さまにどのような情報をお届けすればいいかが見えてきます。一つアイデアとして思い浮かんだのが、商品の製造過程や商品のラインナップをYouTubeショートやTikTokなどに上げてみたら面白そうだなということです。

今日、岩鋳さまの本社を訪れて実際の製造現場を見ることで新しいアイデアが湧いてきたので、今後とも商品の良さをお届けできればと思います。

越境ECで南部鉄器の魅力を海外に発信

今回の取り組みを経て、今後の展開をどのように考えているか教えてください。

新村私たちプラリタウンはお客さまの経営におけるあらゆる課題、お悩みを解決するためのソリューションを取り揃えたプラットフォームです。岩鋳さまには顧客管理や営業支援などの面でも、多くのパートナー企業をお繋ぎしています。幅広い領域でプラリタウンがハブとなり、経営戦略のベストパートナーとしてソリューションを提供できるよう努めてまいります。

小菅金融機関として、岩鋳さまのニーズに応じて最適なサービスを届けられるよう、これからも岩清水社長に寄り添っていくつもりです。今、日本各地の伝統工芸の世界ではどこも後継者不足の問題を抱えています。先日の能登半島地震でも輪島の漆器産業が大きなダメージを受けました。岩鋳さまの商品は世界各国で愛されていますので、越境ECを実現できれば大きなニーズが生まれるでしょう。これからも日本発の南部鉄器の魅力を海外に発信していきます。

株式会社三井住友銀行 東北法人エリア 主任推進役
小菅 和彦氏

小菅さんは先代の時代から岩鋳さまとお付き合いがあると伺いました。

小菅私と岩鋳さまのお付き合いはもう40年ほどになります。小さい頃から南部鉄器を生活の中で使ってきたので、その良さは知っているつもりです。岩鋳さまの南部鉄器は斬新なピンクや赤、青といったカラー展開もしていて、まさに時代の流れに柔軟に対応して、進化し続けている点が魅力だと感じています。

かつて、岩鋳さまの本社には20台ほどの観光バスで多くの観光客が見学に訪れていました。時代の変遷により低迷した時期もありますが、現在は国内外で岩鋳さまのファンが増えつつあります。先代からは「後継者も支援してほしい」との言葉をいただいているので、今後も継続的なサポートを続けてまいります。

作増私たちAnyMindは「Make Every Business Borderless(あらゆるビジネスをボーダレスにしていく)」というミッションを掲げています。ビジネスにおける障壁を取り除くことを意味しているのですが、グローバルにモノを販売するにはこれまで大きなハードルがありました。弊社はブランドの設計・企画から、生産管理、ECサイトの構築・運用、マーケティング、物流管理までをワンストップかつグローバルに支援します。これからもマーケティング面で伴走できる岩鋳さまのパートナーとして、新しいアイデアで道を切り拓いていきます。

佐古SNSの普及により一人ひとりの消費者が得られる情報量が、かつてと比べて非常に多くなってきています。そんな時代の中で、いかに消費者に岩鋳さまの魅力と商品を知ってもらい、末永く愛用してもらうか。表面的な戦略ではなく、上流設計から実装までを緻密に行えるのがAnyMindの強みです。岩鋳さまのプロダクトには間違いなく商品力があるので、国内外のマーケットに向けて情報発信を続けていきます。

岩清水小菅さんのお話にもありましたが、昔は1日に何台ものバスで多くのお客さまに足を運んでいただいていました。転機となったのは2011年の東日本大震災です。それまでは団体のお客さまがメインでしたが、震災以降はご家族やお友達同士など、少数のお客さまに変わってきました。

東京や大阪をはじめ、各地のお客さまから「岩鋳の取扱店はどこにありますか?」といったご質問をよくいただきます。各地に取扱店はありますが、数に限りがあるので、商品を詳しく知っていただくためにもWebサイトの拡充は必須だと考えています。AnyMindさまのお2人と、SMBCグループの皆さまの力も借りながら、これまでの歴史にあぐらをかくことなくお客さまに選んでいただける商品づくりを目指していきます。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 株式会社岩鋳 代表取締役社長

    岩清水 弥生氏

    1993年入社。2020年代表取締役就任。
    お客様に喜んでお使いいただける商品開発を日々模索しております。

  • AnyMind Japan株式会社 Head of DX & AI business

    作増 志郎氏

    グリー株式会社に新卒で入社し、メディアの収益化支援及びアドプロダクトの事業開発に従事。GREE NEWSの事業責任者を務めた後、2020年4月にAnyMind Japan株式会社にジョイン。子会社である株式会社フォーエムの取締役に就任。新規事業の事業部長として、モバイルアプリの収益化支援のほか、メタバース広告システムの開発、ゲーム開発運営などを立ち上げる。その後、AnyMind GroupのRegional Head of Marketingとして、B2BマーケティングやCRMに注力。ECマネジメントプラットフォーム「AnyX」のプロダクト責任者を経て、現職。

  • AnyMind Japan株式会社 Account Exective

    佐古 祐介氏

    新卒でAnyMind Japanへ入社。Product Sales & Marketing事業部に配属され、ECマネジメントプラットフォーム「AnyX」の営業を担当。その後、DX・AI事業部に異動し、国内大手メーカーのDX支援プロジェクトのマネジメントに従事。

  • 株式会社プラリタウン マーケティング・セールス部

    新村 恵吾氏

    2013年三井住友銀行入行。約10年法人営業に従事した後、2022年10月よりプラリタウン/マーケティング・セールス部に所属。全国の法人のお客さまを対象としたDX・業務課題についてのコンサルティング業務に従事。

  • 株式会社三井住友銀行 東北法人エリア 主任推進役

    小菅 和彦氏

    2005年9月三井住友銀行入行、岩手県を中心に東北地域の中小企業向け法人営業に従事。
    通算40年以上の銀行員生活を経験。多くの人との出会い、別れは大切な思い出になっている。

この記事でご紹介したサービス
プラットフォーム
(Platform)

類義語:

サービスやシステム、ソフトウェアを提供・カスタマイズ・運営するために必要な「共通の土台(基盤)となる標準環境」を指す。