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課題の可視化で、企業のDX推進を支援。三井住友銀行が提供する「デジタル診断」

企業におけるDXの取り組みが進んでいます。業務の効率化や生産性向上のみならず、ビジネスの変容につながるトランスフォーメーションに対する取り組みも増えてきました。DXに対する認知が進む一方で、企業各社の理解や取り組みは千差万別であり、企業規模や業種によっても異なります。さらに自社のDXに対する定義や課題、取り組みの状況について、第三者の視点から診断する方法については限られていたのではないでしょうか。

三井住友銀行はチェンジホールディングスと協業し、「デジタル診断」の初期版を開発。2022年にPoC(実証実験)を行い、顧客ニーズを把握したのち、2023年10月からは、法人顧客に対し、Web上ですぐにDXの取り組み状況を可視化できるよう「デジタル診断」をアップデートしています。

今回の取り組みの経緯と今後の展望について、開発に携わったチェンジホールディングス 取締役 兼 執行役員副社長の伊藤 彰氏と、三井住友銀行 法人戦略部 グループソリューション推進室 デジタルソリューショングループ グループ長の黒田 恭平氏、同 室長代理 神作 麻美氏、法人デジタルソリューション部 室家 涼香氏にお話を伺いました。

DXの取り組み状況を可視化、「デジタル診断」開発の背景

デジタル診断の開発を始めたきっかけについて教えてください。

黒田法人のお客さまのDXをサポートすることをミッションに、2021年4月にデジタルソリューショングループが発足しました。お客さまの中にはDX推進部を立ち上げたり、デジタル人材を配置したりする会社がある一方で、「何から始めたら良いのか」とか「進め方がわからない」といった状況に直面している会社も多くありました。そうした中、チェンジホールディングスの伊藤さまから、「DXの取り組み状況を可視化するサービスを一緒にやらないか」と提案を受けたことが、デジタル診断を開発・提供するきっかけとなりました。

最新版 デジタル診断の回答画面イメージ
最新版 デジタル診断の診断結果の画面イメージ

伊藤2020年に経済産業省がDX認定制度を始めましたが、DXに対する世間の認知はまだまだ低い状況でした。弊社はデジタルと人材育成サービスをミッションにしており、DXの領域にはノウハウの蓄積がありました。メガバンクの中でも、デジタル子会社を立ち上げるなどデジタル領域で先行していた三井住友銀行さまとご一緒することで、銀行が財務領域のみならず、デジタル領域も支援する際のきっかけを提供できるのではないかと考え、協業に至りました。

2020年当時、DXに対して取り組みを始めていたのは一部の大企業だけでした。一方、多くの中小企業では、DXをペーパーレスやリモートワークと同義と理解しているケースも多く、またそもそも何から取り組んで良いのかわからないといった課題に直面していました。そのため、お客さまとの目線合わせをして、経営者とDXについて話す機会を設け、SMBCグループが提供するDXソリューションを提案して価値を届けていくために、まずは各企業のDXへの取り組み状況を可視化することからはじめました。

2021年10月から2022年3月までの半年間にわたって、25社のお客さまにDX可視化レポートを作成する実証実験を行い、2022年4月から本格的にデジタル診断初期版のサービス提供を開始しています。

株式会社チェンジホールディングス 取締役 兼 執行役員副社長
伊藤 彰氏

「何から始めたらいいか」が、すぐにわかる設計に

サービス開発にあたり、苦労した点はありますか。

神作まずはお客さまごとに、DXに対する認識を再確認する必要がありました。例えば、経理業務の合理化をDXと理解しているお客さまもいらっしゃれば、新規事業の立ち上げをDXと呼んでいるお客さまもいらっしゃいました。DXとは、極めて広範な領域なのだと感じました。

法人戦略部 グループソリューション推進室 デジタルソリューショングループ 室長代理
神作 麻美氏

黒田お客さまが実現したいことは何なのか、それを聞き出すことに苦労しましたね。三井住友銀行の考えるDXの定義やデジタイゼーションやデジタライゼーションの具体的な取り組みを例にあげながら、お客さまの考えるDXのイメージの解像度をあげ、目線合わせをしていきました。

その上で、DXの取り組みにおいて「何を始めるのか」まで到達したいと考えました。初期のサービスでは43の質問に加えて経営者の方へのインタビューを実施したこともあります。当時は対面で行っていたこともあり、経営者の方から「それこそDXすべきでは?」と逆に言われてしまったこともありました(笑)

法人戦略部 グループソリューション推進室 デジタルソリューショングループ グループ長
黒田 恭平氏

開発において工夫した点について教えてください。

伊藤「人・組織」「テクノロジーの活用」「仕事の環境」「業務プロセス」など、さまざまな観点から偏りなくDX戦略の浸透度を診断できるようにしたことです。診断結果を踏まえて、どこからDXの取り組みを始めたらいいのかがわかるように、そして診断結果が特定のソリューションに偏らないように、かなり議論し、工夫を凝らして設計をしています。

web版「デジタル診断」の開発で、より多くのお客さまにサービスを届ける

2023年10月からは、三井住友銀行の法人顧客に対し、Web上でDXの可視化診断ができる「デジタル診断」の提供を開始していますね。

伊藤はい、初期版のサービス提供を経て、お客さまと目線合わせを行うためのスキルやノウハウとデータが蓄積されてきました。そこで、企業のDX推進をサポートしている、SMBCグループのプラリタウンさまと協働し、Webのみで診断できるよう、「デジタル診断」を開発しました。

デジタル診断は現在、どのような形で利用されていますか。

室家三井住友銀行の営業担当者が、お客さまにURLを伝えることから始まります。約15分で回答ができ、回答結果はリアルタイムにレーダーチャート上に表示されます。緑色のところが自社のスコアで、紫色のところが同業種、同従業員規模の企業の平均です。他社平均とのギャップが最も大きい点が、自社の課題としてわかりやすく表示されます。さらに優先課題が3つ提示されるようになっています。診断結果を見るだけで、これまで可視化に苦労していたDXへの取り組みの状況や、対応すべきことがわかるようになっています。

一方、営業担当者の画面には診断結果と課題だけでなく、その課題に対してSMBCグループが提供できるDXソリューションにはどのようなものがあるのか、ソリューション名や行内の資料の格納場所が表示され、次のご提案に進めるようになっています。

これまで営業担当者がお客さまのデジタルに対する課題を聞いた際には、まず本部に相談するという流れが多くありましたが、Webでのデジタル診断によって、営業担当者が「自走」できる仕組みを作ることができたと思います。
診断ツールの画面も容易に利用できるデザインとし、お客さまと営業担当者の間でデジタルの会話が成立する機能を実装しました。このツールを糸口にして、普段は対面でお会いできないお客さまに対しても、メール1通でコンタクトができる点もメリットですね。

法人デジタルソリューション部
室家 涼香氏

財務のみならず、DXの切り口からもお客さまの経営課題を支援

診断を受けられたお客さまのユーザー数と、診断を受けられたお客さまの変化について教えてください。

室家Web版がリリースされてから4カ月で約1,200社のお客さまにご利用いただきました。デジタル診断の初期版を開始した当時は約200社だったので、ご利用いただく件数が拡大しました。母数が増えたことで、診断結果の精度も向上しています。

また、デジタル診断は他社と比較した自社の立ち位置とDXの課題を明確に可視化してくれます。同業種・同程度の従業員数の他社との比較は非常にインパクトがあります。リアルタイムで他社平均との比較が表示されるように設計しているので、経営層に対するボトムアップの提案材料としても、使っていただきやすいのではないでしょうか。

伊藤圧倒的な変化は、お客さまが「三井住友銀行にデジタルのことを相談できるんだ」といった認知形成ができた点ではないでしょうか。世の中の流れがデジタルへシフトしていく中、銀行にデジタルのことを相談できるという気づきは新たな価値だと思います。

三井住友銀行側の変化についてはいかがでしょうか。

黒田DXの認識や危機意識はありつつも、具現化できていなかったお客さまの初めの一歩をサポートできるようになっています。企業によってDXに対する取り組みの状況は千差万別です。可視化と言語化に苦労していた領域を数値化し、お客さまと共通言語で話せるようになった点は大きな価値だと思います。

室家これまで、法人の営業担当は財務面からお客さまの経営課題にアプローチをしていました。しかし、デジタル診断によって、金融以外の切り口でお客さまに価値提供をできるようになった点は、画期的だと思います。
これまでお客さまの財務データの蓄積はありましたが、DX関連データの蓄積はありませんでした。今後、DX関連データの蓄積によって、新たな顧客アプローチも期待できると思います。

今後の展望を教えてください。

室家デジタル診断をより多くのお客さまにご利用いただき、お客さまの課題にあったソリューションの開発につなげていくことも三井住友銀行のミッションです。Webの診断ツールの概念はデジタルのみならず、今後は財務診断や人的資本経営の診断といった領域でも展開できると思います。

黒田これからもデジタル診断を活用してお客さまが抱える課題を可視化した上で、短期的な業務課題の解決はもちろん、顧客自身も認識していない事業課題の設定から解決まで、お客さまの変革に向けた支援をしていきたいですね。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 株式会社チェンジホールディングス 取締役 兼 執行役員副社長

    伊藤 彰氏

    1998年にアクセンチュア株式会社に入社。金融・製造業向けの人材・業務プロセス変革プロジェクトを担当。2003年、独立し株式会社チェンジホールディングスの取締役に就任。2015年より現任。

  • 株式会社三井住友銀行
    法人戦略部 グループソリューション推進室 デジタルソリューショングループ グループ長

    黒田 恭平氏

    2004年株式会社三井住友銀行入行。法人営業、WS統括部を経てSMCCにてWSビジネスの企画を経験し、2021年法人戦略部に着任。

  • 株式会社三井住友銀行
    法人戦略部 グループソリューション推進室 デジタルソリューショングループ 室長代理

    神作 麻美氏

    2011年株式会社三井住友銀行入行。法人営業、トランザクションビジネス営業部での推進企画を経て、2021年法人戦略部に着任。

  • 株式会社三井住友銀行
    法人デジタルソリューション部

    室家 涼香氏

    2019年株式会社三井住友銀行入行。法人営業部を経て、2023年法人デジタルソリューション部に着任。

この記事でご紹介したサービス
DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。

PoC
(Proof of Concept)

類義語:

  • 概念実証

新しいアイデアや技術の実現可能性を検証すること。日本語では「概念実証」と訳される。新しいサービスを立ち上げる際や新しい技術が実現可能かを確認するため、本格開発・導入の前段階で実施される。