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給与の即時受け取りで人材採用を支援。GMO-PGとSMBCグループが協業した「即給 byGMO」開発秘話

働いた分の給与を好きなタイミングで即時に受け取れるサービスとして、GMOペイメントゲートウェイ株式会社(以下、GMO-PG)とSMBCグループの提携により2021年にリリースされた「即給 byGMO」。多くの業界で人材不足が進む今、就業者のニーズに沿ったタイミングでの給与支払いは、企業が人材を確保するための施策のひとつとなっています。

三井住友銀行とさくら情報システムが2007年より展開してきた給与前払事務代行サービスの「即給」をベースに、GMO-PGの決済や送金サービスの知見をかけ合わせたことで生まれた即給 byGMO。関係者へのインタビューで、3社協働に至った経緯から開発秘話、今後のビジネスの展開について伺いました。

海外で先行していた給与の日払い、週払いを日本でも

昨今、人手不足が顕在化し、企業の課題となっていますが、SMBCグループではどのような取り組みをしていますか?

杉浦人材不足に課題を感じているお客さまは多くいらっしゃいます。それらの課題を解決するための一つのサービスとして、企業の福利厚生を充実させ、働きやすい環境を実現する即給 byGMOをリリースしました。

株式会社三井住友銀行 トランザクション・ビジネス本部 決済商品開発部 部長代理
杉浦 大輔氏

即給 byGMOの概要について教えてください。

肥沼大がかりなシステムの開発なしに、給与の日払いや週払いを実現するサービスです。現在、特にアルバイトやパートなど非正規雇用の人材募集においては、募集時に「日払い・週払い」の記載の有無で、求人の集まりやすさに差が生まれています。一方で、給与計算や勤怠管理のシステムはかなり複雑に構築されていることが多く、「日払い・週払い」を可能にするためには、システムを改修する必要があります。しかし、私たちが提供する即給 byGMOを導入いただくと、システムを大幅に改修せずとも、手軽に「日払い・週払い」が可能となります。

「即給 byGMO」の操作画面

私どもはもともと決済や金融関連サービスを提供しており、決済を基軸に社会の進歩発展に貢献することを目指し事業展開を進めています。そこから派生してフィンテックという形でより幅広いサポートを実現したいと考え、海外で先行していた給与の日払い、週払いを日本でも導入するべく模索していたところ、すでに同様のサービスが存在することを知りました。それが三井住友銀行さまと、さくら情報システムさまによる「即給」です。

GMOペイメントゲートウェイ株式会社 企業価値創造戦略統括本部
経営企画統括部 経営企画・新領域創造部 部長
肥沼 良治氏

そこからどのように提携の話が進んだのでしょうか?

肥沼そもそもSMBCグループの皆さまとは人的、資本的な交流があり、数多くのフィンテックサービスを一緒に立ち上げてきました。SMBCグループさまが持つ信頼と全国の顧客基盤、さくら情報システムさまが持つシステムの運用技術、GMO-PGが持つ最新のフィンテック領域の知見及び企画開発力という3社の強みを活かす形で提携に向けての話を進めました。

杉浦2020年頃から協議を始め、それぞれの役割分担などは1年ほどかけて固めていきました。SMBCグループでも給与振込のサービスは長く提供してきましたが、働き方の変化にともない給与を即時受け取れるサービスへのニーズも高まってきました。そういった時代背景のなか、決済代行会社大手のGMO-PGさんと組むことで、私たちの幅広い顧客のニーズにもお応えできるという判断から、業務提携に至りました。

セキュリティを確保した上で、使いやすさ・分かりやすさを追求

即給 byGMOのリリースまでには数多くの課題があったと伺いました。開発時に苦労した点を教えてください。

杉浦お客さまのニーズに迅速にお応えできるよう、使いやすさを追求したUI(ユーザーインターフェイス)・UX(ユーザーエクスペリエンス)の改善、即給の情報登録のAPI化などのレベルアップを短期間で実施しました。タイトなスケジュールで各種調整もあり、課題も多くほぼ毎日打ち合わせするような1年間を過ごしました。その分、リリースして、お客さまにご利用いただけた時には大きな達成感がありました。

落合GMO-PG社にシステムの運用を移管すると同時に機能強化を実施しました。そこではサーバの更改、UI・UXの改善などいろいろな取り組みを一気に行ったので、やはりスケジューリングに苦労しました。特にUI・UXの改善については、即給サービスとしては初めての取り組みでした。既存機能をより直感的にご利用いただけるよう、ユーザーインタビューなども重ねました。毎日のように打ち合わせを重ねる中で、3社それぞれの持つ強みがマッチして、顧客ニーズへの対応をスピーディーに実現できる体制になっていったと感じています。

さくら情報システム株式会社 金融事業本部 金融ソリューション第2部 金融サービス開発グループ
落合 智大氏

肥沼2021年7月のリリースから4ヶ月ほどの間で、複数の新機能を追加しています。当時は競合サービスと比べても機能的に後れを取っていたので、このままでは世の流れに取り残されるという危機感がありました。さくら情報システムさまが手がけてきたサービスを私どもに移管する際も、既存のお客様に迷惑をかけないようスムーズな移管が求められ大きなプレッシャーがありました。

なかでも私どもが一番こだわったのが、シンプルで使いやすい操作性です。事業開始当初から変更していなかった操作画面を、事業を引き継ぐタイミングで大きく刷新いたしました。世の中を見ると当たり前に使いやすいサービスやアプリが普及しているので、セキュリティを確保したうえで使いやすさ、分かりやすさを追求しましたが、その調整にはとても苦労しました。

杉浦銀行の視点だけだと設計思想は凝り固まってしまうので、GMO-PGさんの意見を反映させて誰にとっても使いやすいサービスを追求しました。既存システムをスピーディーに改良するために、皆で知恵を絞りながら取り組みました。

即給 byGMOの導入で採用成功率が50%向上した企業も

このサービスに対する企業の反応はどのようなものでしょうか?

肥沼採用促進のひとつの手段として即給 byGMOを導入いただくお客さまは年々増加しています。多くのお客さまはパートやアルバイトの採用に困っており、時給を上げても簡単に人が集まらないという現状があります。その背景のひとつには、バイトアプリの影響もありスポット・単発で働いて、すぐに給与を受け取るという労働スタイルが普及していることが挙げられるでしょう。

時給を上げても人が集まらず、スポットバイトに人が流れるのはなぜでしょうか?

肥沼やはり手軽さでしょうね。事前の面接もなく、シフトで時間を拘束されることもない。思い立ったその日に働けて、給与もすぐにもらえる点が、スポットバイトが急速に成長した理由です。ただ、企業側からすればいくらスポットで人材を集めても、ノウハウが蓄積されないというデメリットがあります。その点、即給 byGMOで即払いを実現することにより、「給与の即時受け取りをしたい」という層の採用に寄与することができ、企業側にとっては長期的に人材の育成ができるというメリットがあります。

実際、即給 byGMOを導入することで、どの程度採用率が改善されるのでしょうか?

肥沼大手の運送会社さまでは採用成功率が50%向上しました。やはり「日払い、週払い」という表記は魅力的に映るようで、採用促進には高い効果があるといえます。

競合サービスと比べた際の、即給 byGMOの優位性について教えてください。

杉浦GMO-PGさんの機動力、さくら情報システムの開発力、そしてSMBCグループの信用力が融合することで、お客さまのニーズに対して、スピーディーにサービスを提供できる点です。

落合即給 byGMOはどんな企業にも即座に導入できるよう、標準機能を充実させています。また、常に3社で協議を重ねながら、継続的なシステムのレベルアップに取り組んでいます。目先の視点だけでなく、長期的に将来を見据えて必要となる機能を追加していきます。

給与振込だけにとどまらず、周辺業務もDX化

即給 byGMOのサービスにおける、今後の展望を教えてください。

杉浦人材不足については、今後も課題として残り続けるでしょう。国内の給与市場にも大きな変化が起きているので、給与の日払い、週払いに対するニーズも高まってくるはずです。日本全体での年間の給与支払いは225兆円以上といわれています。今後も3社で連携して、給与の振込だけにとどまらず、周辺業務でも新たなサービスを生み出し、結果として口座利用の拡大ができればと考えています。

肥沼即給 byGMOは、海外で当たり前に行われていた給与の日払い、週払いを日本にも導入しようという狙いで生まれたサービスですが、お客さまとの日々の会話で感じるのは、人事・労務まわりのDXの遅れです。紙による勤怠管理や、給与の現金払いも日常的に行われています。現金による日払いのためには、銀行で現金を下ろして管理して、支払時に印鑑を押してもらうというさまざまなコストが発生します。この分野には改善の余地が多く残されていると感じます。

現在は勤怠管理を元に給与計算をして経理に回し、経理が承認した後に銀行から給与が振り込まれます。これはとても運用コストのかかるプロセスですが、例えば給与計算のSaaSとSMBCグループさまが持つインフラをつなぐことができれば、ワンクリックで給与計算から振込までできるようになるでしょう。

即給 byGMOを足掛かりにして、給与振込に関連する業務のDXも進め、BtoE事業(Business to Employee)として確立させたいと考えています。これは、所定日の給与送金やデジタル給与明細の発行などをはじめ、企業と従業員のフィンテック化を推進していく構想です。引き続き3社で連携しながらより良いサービスを提供してまいります。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • GMOペイメントゲートウェイ株式会社 企業価値創造戦略統括本部
    経営企画統括部 経営企画・新領域創造部 部長

    肥沼 良治氏

    2020年にGMOペイメントゲートウェイ株式会社に入社後、経営企画・新領域創造部にて給与関連事業を立ち上げる。新規事業ほか資本提携等にも従事。

  • さくら情報システム株式会社 金融事業本部
    金融ソリューション第2部 金融サービス開発グループ

    落合 智大氏

    2011年よりサーバサイドの設計業務、クライアントアプリ/WEBアプリの開発エンジニアとしての経験を経て、2016年さくら情報システムに入社。
    イントラネット業務のシステム開発、ホームページ、インターネットバンキングのシステム開発、プロジェクト推進を実施。
    その後2021年より、即給byGMO立上げ及び、以降継続レベルアップを開発のプロジェクトマネージャーとして推進。

  • 株式会社三井住友銀行 トランザクション・ビジネス本部
    決済商品開発部 部長代理

    杉浦 大輔氏

    2014年、大学院卒業後に入行。中小企業向け法人営業、リスク管理業務に従事した後、2017年より決済商品開発部にて、法人向け決済商品(インターネットバンキング、オープンAPI等)の企画・開発、アライアンス企画等を担当。2021年より即給byGMOを立ち上げから担当。

DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。

フィンテック
(FinTech)

類義語:

金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語。銀行や証券、保険などの金融分野に、IT技術を組み合わせることで生まれた新しいサービスや事業領域などを指す。

API
(Application Programming Interface)

類義語:

ソフトウェアやプログラム、Webサービスの間をつなぐインターフェース(異なる2つの事物の間をつなぐ)のことを指す。

SaaS
(Software as a Service)

類義語:

Software as a Serviceの略。読み方は「サーズ」。ソフトウェアを利用者側に導入するのではなく、提供者側で稼働しているものをネットワーク経由でサービスとして利用することを指す。納期短縮、設備投資削減などの効果がある。