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事業開発がSMBCの新たな強みに──スタートアップとの共創で生み出したこと

Forbes JAPAN RISING STAR Meet-up 2024で「スタートアップ支援が日本の再成長の鍵を握る」と主張したのは、SMBCグループのCDIOである磯和啓雄。日本のスタートアップ支援の現状と展望は?メガバンクが仕掛ける次なる一手に迫った。

連載:Forbes JAPAN転載記事

  1. 事業開発がSMBCの新たな強みに──スタートアップとの共創で生み出したこと
  2. 提案から半年で合弁会社を設立。SMBCグループとアトラエが生んだ「SMBC Wevox」

今年4月に東京・恵比寿で、創業3年以内のスタートアップ起業家・経営陣を対象とした「Forbes JAPAN RISINGSTAR Meet-up 2024」が開催された。SMBCグループは同イベントの協賛を行い、CDIO(チーフ・デジタル・イノベーション・オフィサー)である磯和啓雄(以下、磯和)も登壇。スタートアップ支援について語るなかで、キーワードとして挙げたのは“社会的価値の創造”だ。

「今の時代、売り上げを伸ばすことだけが企業の価値につながりません。では、何が必要なのか?それは社会的価値の創造です。あのテスラですら、数年前までは赤字だったのが、事業の社会的価値が認められることで、今では大きく飛躍しています。社会を良くすることこそが企業の使命でしょう。売り上げは後からついてきます。SMBCは、社会の幸せな成長に貢献できるよう、社会的価値を創造するための一歩を踏み出したところです」

5月には、大学の運動部・体育会を対象に総額1億円規模の支援やパートナー企業と提携し科学的なトレーニングなどを行う「大学スポーツ応援プログラム」を始動。スポーツ界の底上げだけでなく、学生時代の挑戦を通じて成長した人材が活躍することが日本の再成長につながると考え、このような取り組みも行っている。

成長ステージすべてで支援できるエコシステムを

SMBCのスタートアップ支援は、昨年からさらに強化。3年間で1,350億円を投入することが計画されている。昨年、108の企業を訪れたという磯和は、スタートアップに対してどのような印象をもったのか。

「正直、腰を抜かしましたよ。この10年で、スタートアップの性質が変化していたんです。つまり、日本を良くしたいという社会的価値を創造するマインドが非常に高くなっていた。

一方、日本では現在、機関投資家がスタートアップに投資することがあまりありません。そのことが影響し、質の高いスタートアップを支えるエコシステムが構築できていないのが現状です。我々としては、創業期からアーリー、ミドル、IPO支援、上場後の事業サポートまでスタートアップの成長ステージすべてで連続性をもった支援ができる仕組みを構築する必要があると考えています。今は足りないピースを一つひとつ埋めている状態です」

ユニコーン企業を生み出し、さらにはグロースファンドが参入できることが必要だと、磯和は語る。

社会の血流を良くするために銀行ができること

1989年の世界時価総額ランキングでは、日本企業が上位を独占。しかし、現在トップ50に入っている日本企業はトヨタ自動車の一社のみ(24年5月時点)。失われた30年……次世代へのバトンを渡せていない私たちは、どのように日本の再成長を進めていくべきなのだろうか。磯和は、鍵を握るのはスタートアップだと、あらためて主張する。

「ランキングに入っているのは、今でこそ大企業ですが、そのいずれも、かつてはスタートアップだった企業です。今の日本は、スタートアップが成長できる機会があまりに少ない。日本企業がなかなかランクインできないのは、このことが影響しているのでしょう。多くのスタートアップと対話して感じたのは、事業に対する考え方が大企業と大きく異なることですね。大企業は失敗できないから、“できること”から事業を考えてしまう。ですが、スタートアップは、実現したい世界観が先行するんですよ。事業をするうえでは、後者のほうが合理的です。我々もスタートアップマインドを取り戻していかなければなりません。1980年代以降、社会の新陳代謝を生み出せないまま経済活動を続けてしまったわけですから、社会の血流をどのようにうまく循環させていくかを考えなければなりません」

銀行が社会の血流を良くすると聞くと、どうしてもファイナンス面での解決がイメージされる。しかし、磯和は、スタートアップと共に事業開発することこそがSMBCの武器であると答える。

「銀行=ファイナンス業と思われていますが、江戸時代にさかのぼれば、両替商がメイン事業でした。つまり、ファイナンスは近年のイメージに過ぎません。また、SMBCの特徴として、東名阪エリアの年商30億〜1,000億円規模の中小企業に対する法人営業が強い点があげられます。各事業所を通して一気にリーチできるので、魅力ある商品やサービスであれば、すぐ契約が取れる自信があります。お取引している企業と一緒になって事業を生み出し、成長させていくことが本来の銀行業務だと考え、スタートアップ支援もその一環として積極的に取り組んでいます」

2021年には、企業の温室効果ガスを可視化するクラウドサービス「Sustana(サスタナ)」を内製で開発。すでに1,800契約(24年5月時点)を超えており、開発から実際の契約に至るまで、銀行単体でも新事業を生み出す体制が整っていることはすでに証明済みだ。

「面白いことに、契約のうち4割は、今まで取引実績がなかった会社なんです。銀行取引のない企業に対しても、事業があれば話すきっかけをもつことができる。さらには、契約を機に今度はファイナンス面の商談にもつながるということでかなり良いシナジーになっているんですよ」

スタートアップマインドは銀行にも広がり始めている

現在SMBCは、サスタナのほか、クラウドサインやSMBC Wevoxなどデジタル事業に力を入れている。次々と新事業を生み出す磯和は、意外にも銀行内の規律を保つ業務を15年以上も行っていたという。

「長年、銀行員にルールを守らせる業務を行ってきました。とことん向き合ってきたからこそ、世の中に合わないルールがあるなら柔軟に変えればいいという考えに自然とつながっていきました。それまでの反動もあったのかもしれませんが(笑)」

従業員のチャレンジを支援し、社内ベンチャーの社長に抜擢する「社長製造業」では、グループ初の30代社長が誕生するなど、スタートアップマインドが広がり始めているという。

「銀行が情報の非対称性で商売する時代は終わりました。また、他業種の企業が銀行業務を始めるなど、市場の変化も起こっています。しかし、そうした変化に適応しなければ生き残れないという危機感があるからこそ、スタートアップ支援に注力し、自らもスタートアップマインドをもつようになりました。銀行が変化し、社会の血流を循環させる準備はすでにできています」

出展元
Promoted by Forbes JAPAN / Text by Forbes JAPAN /
Photographs by Forbes JAPAN / Edit by Forbes JAPAN

Forbes JAPAN BrandVoice 2024年6月25日掲載記事より転載

Promoted by 三井住友フィナンシャルグループ│text by Chikako Tsuruta│photographs by Naoki Ohosh│edited by Daisuke Sugiyama(Note, Ltd.)

連載:Forbes JAPAN転載記事

  1. 事業開発がSMBCの新たな強みに──スタートアップとの共創で生み出したこと
  2. 提案から半年で合弁会社を設立。SMBCグループとアトラエが生んだ「SMBC Wevox」
PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO

    磯和 啓雄

    1990年に入行後、法人業務・法務・経営企画・人事などに従事した後リテールマーケティング部・IT戦略室(当時)を部長として立ち上げ、デビットカードの発行やインターネットバンキングアプリのUX向上などに従事。その後、トランザクション・ビジネス本部長としてBank Pay・ことらなどオンライン決済の商品・営業企画を指揮。2022年デジタルソリューション本部長、2023年より執行役専務 グループCDIOとしてSMBCグループのデジタル推進をけん引。