デジタル戦略


デジタルを活用した新たなソリューションの提供
近年、コロナ禍も相まって、デジタライゼーションの進展が社会・経済を大きく変容させてきました。SMBCグループは、中長期的に目指す姿であるビジョンとして「最高の信頼を通じて、お客さま・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」を掲げ、お客さまのニーズ起点でさまざまなサービスの開発や改善のための取組を行ってきました。
SMBCグループは、あらゆる事業領域で、お客さまの利便性向上を目的とし、時には他のパートナーとも結び付きながら、テクノロジーを取り込み、新規サービスの創造や既存サービスの進化による付加価値の創出を行っています。その結果、デジタル領域においては金融の枠にとどまることなく、非金融にもビジネス領域を拡大し、さまざまなデジタル子会社の設立や新たなデジタルサービスの創造によって、総合的なソリューションプロバイダーに変容しつつあります。
今後も、社内のマインドセットの変革とイノベーションが起こりやすい仕組づくりを進めながら、デジタルの浸透による社会の構造変化や規制の緩和をチャンスとして、SMBCグループの持つ信頼やお客さま基盤を強みに、新たなビジネス領域を開拓していきます。

SMBCグループのデジタルビジネスの成長と今後の展望
SMBCグループのデジタルビジネスは、コロナ禍を契機とした急速な社会のデジタル化が追い風となって大幅に成長し、一部のサービスは社会的プラットフォームとなりつつあります。
2019年に弁護士ドットコムと共同で設立した電子契約サービスを展開する「SMBCクラウドサイン」は、2022年3月の月間契約送信件数を2年前の同月から約120倍に伸ばしました。高いセキュリティ基準を有する金融機関のSMBCグループで実際に利用されている点が、お客さまの信頼につながり、一般企業をはじめ、地域金融機関や地方公共団体等でも幅広く採用されています。
2017年設立のeKYC(オンライン本人確認)や生体認証サービスを展開する「ポラリファイ」は、スマートフォンの普及等を背景として、オンラインを通じた顧客獲得を進める法人のお客さま等のニーズを捉え、設立来右肩上がりで利用件数を増やしてきました。同社のeKYCは、今や年間1,000万件以上利用されるサービスにまで成長しています。
また、法人向けSaaSプラットフォーム「PlariTown」の会員数は2020年8月のサービス開始から2年足らずで約9,000社まで増加し、法人のお客さまの多岐にわたる経営課題の解決をサポートしています。このほか、三井住友カードが展開する次世代決済プラットフォーム「stera」の導入台数は2020年7月のリリースから約1年半で10万台を突破しました。さらなる展開として、2022年5月、「stera」と三井住友ファイナンス&リースが提供するスマートフォンを使った資産管理サービス「assetforce」を組み合わせて、商品の入出庫や在庫管理等の店舗マネジメントをDX化してサポートする「assetforce for stera」をリリースしました。このように、グループ各社の連携を通じた新たなサービスの創出により、SMBCグループの提供するデジタルサービスは広がり続けています。

金融データを活用した新たな価値の提供
データを活用した非金融事業にも積極的に取り組んでいます。2021年7月には電通グループとの合弁で「SMBCデジタルマーケティング」を設立、SMBCグループの持つ金融データを利用した広告・マーケティング事業を開始しています。
同社の広告・マーケティング事業は、三井住友銀行の持つ2,800万IDにのぼるデータから、個人のお客さまの属性、消費意欲、ライフイベント等を推定し、これらのデータ分析を通じて、お客さまのニーズに合わせて広告を配信することができます。これは、法人のお客さまには売上成長に対するサポート、個人のお客さまには価値ある商品との出会いといった、これまでの金融機関のサービスにはない新たな価値を提供するものです。
まずは三井住友銀行アプリへのバナー広告の配信から事業を開始しており、これまでに化粧品会社や出版社、小売企業、セキュリティ会社等のお客さまから広告を受注しましたが、広告が画面に表示されて顧客の目にとまった回数、クリックされた割合ともに、良好な結果が得られました。今後もさらなる実績を積み重ねながら、サービスのレベルアップに取り組んでいきます。
なお、本事業では、金融機関の提供する広告・マーケティングサービスとして、お客さまの安心・安全を最も重視しています。そのため、個人情報の取扱については、弁護士等外部有識者も交えて定期的にモニタリングを実施する等、厳格に運営しています。

デジタルを活用した社会課題の解決
デジタルを通じた非金融事業進出のもうひとつの例として、企業の脱炭素経営実現に向けたソリューション提供が挙げられます。近年、気候変動に対する社会全体の意識が高まり、法人のお客さまにおいては、脱炭素社会の実現に向けた取組が不可欠になっています。その際、温室効果ガス排出量の見える化や削減策の立案等を進めていくためには、多くのデータ収集と分析が必要となります。
こうしたお客さまの活動に対し、SMBCグループでは、必要なデータ収集・可視化から、情報開示・削減策の技術を持つ企業とのマッチングまで、一連のプロセスをデジタルで支援していく方針です。具体的には、2022年5月に、デジタル技術を活用した温室効果ガスの排出量算定ツール「Sustana」を自社で開発・リリースしました。また、日本IBMやThe Climate Serviceとの協働により、気候変動によって発生する自然災害等の財務影響を定量化し、TCFD提言等の開示対応を支援するクラウドサービス「Climanomics® platform」の提供も開始しています。
これらのビジネスは、大量のデータ収集・分析から施策の立案まで求められる脱炭素への取組とデジタルとの親和性に着目して生み出された新事業であり、今後も新たな関連サービスを提供予定です。デジタルテクノロジーを活用することで、気候変動等の社会課題の解決に貢献していきます。

企業間取引で進むデジタルシフトへの対応
近年、特に海外で、サプライヤーとバイヤーの間の取引をデジタル化させるプラットフォーマーの存在感が急速に大きくなりつつあります。金融機関でも、デジタルサービスを提供するプラットフォーマーと連携することで、商流上に存在する幅広い企業に対して柔軟な決済やファイナンスを提供する、いわゆるエンベデッドファイナンス(組込型金融)の動きが活発化しています。
SMBCグループとしても、有力なプラットフォーマーと積極的に協働し、企業間取引におけるシームレスな金融ソリューションの提供に向けて各サービスの発展、開発を進めています。たとえば、2022年3月には、APAC地域において、サプライヤーの早期資金化ニーズに対応するサプライチェーンファイナンスのデジタルスキームをリリースしました。従来は、多くの紙ベースのやり取りが必要となることから、サプライヤーによる依頼からファイナンスの実行まで数営業日を要していましたが、デジタルを活用することで、大量のトランザクションを数十分で完了することができるようになりました。これを皮切りに、今後さまざまなプラットフォーマーとの接続を進めていくほか、受発注プロセスや日々の債権債務管理のデジタル化サービスも検討していきます。銀行取引にとどまらず、お客さまのサプライチェーン全体のDX化をサポートし、モノ・カネ・情報の流れをリアルタイムでつなげることで、お客さまのサプライチェーンマネジメントの高度化に貢献していきます。
なお、海外と比べると、国内では、企業間取引におけるデジタルプラットフォーマーの台頭は限定的ですが、電子帳簿保存法改正、手形廃止等を契機として企業間取引のデジタル化が進展しつつあります。こうした国内における変化に対しても、機動的に対応していく方針です。

デジタルを活用したより豊かな生活への取組
デジタルを活用して生活をより豊かにするため、ライフイベントにかかわるデジタルサービスの提供も始めています。
パーソナルデータを安心・安全にお預かりして、利活用を促し、個人の豊かな生活の実現を目指すため、2019年の大阪大学医学部附属病院との実証実験、2020年のプラスメディの連結子会社化等を通じて医療データを扱う情報銀行化への取組を進めてきました。
お客さまの資産や医療、介護、葬儀に関する情報、ご希望等をデジタル上で登録・お預かりし、あらかじめ登録した方にお伝えする「SMBCデジタルセーフティボックス」をリリースしました。
また、Well-Beingと持続可能な社会の実現に向け、社会全体のDX化であるスマートシティへの取組を加速させるため、2022年5月、日本電気とSMBCグループは「スマートシティ社会実装コンソーシアム」を設立しました。本コンソーシアムでは、スマートシティ普及への課題である「サービス企画・開発・実装のハードルが高いこと」と「持続的な運営を可能とする仕組の不足」を乗り越え、“実証実験”ではなく“社会実装”の実現を目指しています。ライフソリューション・サービスの取組もスマートシティに展開し、住民の皆さまの豊かな生活の実現に取り組みます。

新たなイノベーションを生む仕組づくり
新たなデジタルビジネスの創出にとどまらず、社内のマインドセットの変革やイノベーションが起こりやすくするための仕組づくりも手掛けています。米国シリコンバレーや東京・渋谷に設置した各拠点で、スタートアップやベンチャーキャピタルをはじめとする外部との交流を深め、新たなイノベーション創出に取り組んでいます。
また、社内では新規デジタル事業の投資決定を行うCDIOミーティング等を活用し、積極的にアイデアを実現するための支援体制を構築しています。同時に、社内SNS「ミドりば」、SMBCグループの理念やデジタル関連の取組に関する情報発信のためのオウンドメディア「D X-link」、デジタル研修プログラム「デジタルユニバーシティ」等を通じて、従業員からアイデアが出やすい環境を整え、その具体化・事業化に取り組んでいます。
「社長製造業」の下で設立されたデジタル子会社には、若手従業員を社長に抜擢し、積極的な人材登用を行っています。2022年4月に新設した、デジタルを活用した家族サポートサービスを行うSMBCファミリーワークスの社長にも、女性の若手従業員が就任しています。急速に変化する社会に合わせて金融機関も変わっていく必要がありますが、SMBCグループはこのような仕組やカルチャーを浸透させることによって、今後も絶え間なくイノベーションを起こし、お客さま・社会とともに発展する存在であり続けます。
