価値創造のための事業戦略

市場事業部門 執行役専務 市場事業部門長 小池 正道 市場事業部門 執行役専務 市場事業部門長 小池 正道

外国為替・デリバティブ・債券・株式等の市場性商品を通じたソリューション提供をはじめ、
バランスシートの流動性リスクや金利リスクを総合的に管理するALM業務を行っています。

 市場事業部門は、マーケットリスクのプロフェッショナルとして、自らのリスクテイクを深化させるとともに、お客さまに対して高い付加価値を持続的に提供していくことを目指しています。
これを実現するために我々が最も重視していることは、世界中で起こるさまざまな事象を「3つのI」-Insight(洞察力)、Imagination(想像力)、Intelligence(情報力)によって深く分析し、これから起こる相場を読み解くこと、すなわち、世の中の本質を見抜くことです。

 2021年度は、コロナ禍から脱した国で需要が回復した一方、供給が追い付かず、世界中で想定以上のインフレ高進に見舞われました。多くの先進国では中央銀行がインフレ抑制へ方針転換し、金利急上昇とともに金融市場の不安定化を招きました。

 このような中、我々のポートフォリオ運営では、株式・債券ともにリスク量を抑制しつつも、機動的なリバランスによって収益を確保しました。また、安定した外貨調達により、お客さまを資金繰り面で支えるとともに、セールス&トレーディングでは、お客さまのニーズを把握し最適なソリューションを提供してきました。

 足元のマーケット環境は、地政学リスクをはじめとしたさまざまなリスク要因が顕在化しつつあり、先行きに対する不確実性が高まっている状況です。また、デジタル化の進展や社会的課題への関心の高まり等、お客さまのニーズ多様化も一層進んでいます。

 2022年度は、中期経営計画の総仕上げの1年となります。世の中の潮流を見定め、お客さまに選ばれるソリューションを生み出し続けるために、これからもマーケットへ真摯に向き合い、お客さまとSMBCグループの成長に貢献することにこだわっていきます。

連結業務純益に占める割合(2021年度)

連結業務純益に占める割合(2021年度)

重点戦略 1

市場環境の変化に応じた機動的なポートフォリオ運営

 我々の強みは、マーケットの変動をプロアクティブに察知し相場のトレンドを捉えることで、ダイナミックにポートフォリオを入れ替えて収益を極大化する力です。

 事業部門の一人ひとりが日々起こるさまざまな事象を「3つのI」で情報収集・分析し、徹底的に議論を重ねる。そうして描いたシナリオをポジションとして表現し、その効果を検証する。こうした不断のサイクルによってのみ相場を読み解く力は養われます。

 市場環境が大きく転換する局面ではリスクコントロールに軸足を置くとともに、来るべき投資機会に備え、データを活用した投資手法の拡充や分析機能の強化等、ポートフォリオ運営高度化に向けたチャレンジを続けています。

ポートフォリオ・リバランスのイメージ

ポートフォリオ・リバランスのイメージ

重点戦略 2

市場性商品を通じたソリューション提供力の強化

 お客さまのビジネスやバランスシートに起因するリスクヘッジニーズ、お客さまが運用や投資を行う際のリスクテイクニーズにお応えすべく、必要な機能整備を加速しています。

 具体的には、複雑化・高度化するお客さまのニーズへ対応するため、それぞれの状況に合わせたオーダーメイドな提案力の強化に加え、商品ラインアップの拡充やセールスのグローバル連携等を進めています。また、その一環としてシステムインフラ面やリスク管理面での整備も推進しています。

 さらに、お客さまに利便性の高い為替取引サービスを提供するため、電子プラットフォームをグローバルに展開するとともに、リスクコントロール機能を強化しています。

市場性商品を通じたソリューション提供力の強化

重点戦略 3

頑健な外貨調達基盤の構築

 貸出等を通じてお客さまのビジネスを持続的に支えるべく、外貨調達においては、引き続き安定性確保とコスト抑制の両立を追求しています。

 具体的には、定期的な外貨建債券の発行に加え、カバードボンドの発行やクロスカレンシーレポ*の取組等、調達手段の多様化や投資家層の拡大を図りながら、SMBCグループのバランスシート構造やマーケット環境に応じて戦略的に調達を行っています。

 米国をはじめとして金融政策の正常化が進み、これまでの潤沢な流動性を前提とした調達環境が変化しつつありますが、グローバルALM運営の下でプロアクティブに対応し、長期的な視点に立ったバランスシートコントロールを進めています。

  • *国債等を担保とした外貨調達
頑健な外貨調達基盤の構築

サステナビリティへの取組

サステナビリティへの取組

 調達した資金の使途を再生可能エネルギー等の環境に配慮したプロジェクトに限定した債券、いわゆるグリーンボンドを定期的に発行しています。

 2015年10月に、本邦民間金融機関として初の米ドル建グリーンボンドを発行してから、2018年12月には本邦民間企業初の個人のお客さま向け、2021年1月には米国における公募形式での発行を通じて、投資家層の拡大に努めています。これまで国内外で6回、計約30億米ドルの資金を調達しており、発行に際しては、投資家に対して我々のサステナビリティへの取組を丁寧に説明し、相互理解に努めています。

 SMBCグループは、国内外における太陽光発電・風力発電等の再生可能エネルギー事業等に対するプロジェクトファイナンスについて、確かな実績を有しています。今後も日本を代表するグリーンボンドの発行体として、市場のさらなる発展と、地球環境の維持・改善に、より一層貢献していきます。