気候変動への対応(TCFD提言への取組)

パリ協定の採択以降、気候変動への取組が加速しています。日本政府も2020年10月、2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出を全体としてゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、脱炭素社会の実現を目指すことを公表しています。
こうしたなかSMBCグループは、2030 年までにSMBCグループ自身が排出するGHGをネットゼロとすることに加え、2050 年までに投融資ポートフォリオ全体でのGHG排出量をネットゼロとすることへコミットしています。

SMBCグループは前述の政府方針を支持するとともに、パリ協定の目標に沿って GHG排出量削減に真摯に取り組んでまいります。加えて、脱炭素社会への移行と実現に資するお客さまの取組を支援してまいります。


気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への取組

SMBCグループ(以下、当社グループ)はTCFD(※1)への賛同を2017年12月にパリで開催されたOne Planet Summitで表明しました。また、引き続きお客さまの事業を通じた環境に配慮した技術の導入など、GHG排出量の削減へ向けた取組を支援し、GHG排出量削減に向け、お客さま・社会の発展に貢献する事業展開を行い、今後一層気候変動への対応を強化していきます。
なお、詳細は「SMBCグループ TCFDレポート」をご覧ください。


  1. ※1  Task Force on Climate related Financial Disclosuresの略。2015年4月の金融安定理事会(FSB)によって設立された、気候関連財務情報開示タスクフォース。気候変動の影響を個々の企業が財務報告において公表することを求めるもの。

TCFD提言に沿った開示内容および開示場所

当社グループでは、TCFDが提言する4つの開示基礎項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」ごとに、気候変動に対する考え方を整理しています。


TCFD提言の概要 参照箇所(クリックすると該当ページに移動)
気候変動関連のリスクおよび機会に係る組織のガバナンスを開示する。
気候変動関連のリスク及び機会についての取締役会による監督体制を説明する。
気候変動関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割を説明する。
気候関連のリスク及び機会がもたらす組織のビジネス・戦略・財務計画への実際の及び潜在的な影響を、そのような情報が重要な場合は、開示する。
組織が識別した、短期・中期・長期の気候関連のリスク及び機会を説明する。
気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する。
2℃以下シナリオを含む、さまざまな気候関連シナリオに基づく検討を踏まえて、組織の戦略のレジリエンスについて説明する。
気候関連リスクについて、組織がどのように識別・評価・管理しているかについて開示する。
組織が気候関連リスクを識別・評価するプロセスを説明する。
組織が気候関連リスクを管理するプロセスを説明する。
組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の統合的リスク管理にどのように統合されているかについて説明する。
気候関連リスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を、そのような情報が重要な場合は、開示する。
組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開示する。
Scope1、Scope2及び当てはまる場合はScope3のGHG排出量と、その関連リスクについて開示する。
組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる指標、及び目標に対する実績について説明する。

気候変動に対するガバナンス

当社グループは、世界規模で環境・社会問題が深刻化する中、これまで以上に社会の健全な発展に貢献していく姿勢を明確なものとするため、2020年4月、経営理念に「社会課題の解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献する」を追加しています。
そして、持続可能な社会の実現を目指すうえでの当社グループの基本姿勢として「SMBCグループ サステナビリティ宣言」を策定しています。「SMBCグループ サステナビリティ宣言」では、SDGsの達成や社会課題の解決を目指し、お客さまをはじめとするステークホルダーと対話し共に行動することにより、社会をより良いものへ変革することに貢献していく旨を明示しています。そのうえで、気候変動をはじめとする環境課題の解決にはイノベーションが不可欠であるという認識のもと、パリ協定の精神を支持し、環境課題の解決に貢献する旨を明確化しています。
また、当社グループは、「持続可能な社会」の実現を重要課題のひとつであると認識し、地球環境保全および汚染の防止と企業活動との調和のため継続的な取り組みを行うために「グループ環境方針」を定めています。
気候変動に関する方針は取締役会の内部委員会である「サステナビリティ委員会」や執行サイドの委員会である「サステナビリティ推進委員会」での議論や経営会議での決定を踏まえ、当社の事業戦略に反映されるほか、取組内容については定期的に取締役会に報告がなされています。こうした体制のもと、気候変動下でのビジネスチャンスの捕捉、リスクコントロールを推進してまいります。

当社グループの詳細なサステナビリティに関する監督・進行体制については以下をご覧ください。

SMBCグループ TCFDレポート2021:サステナビリティに関する監督・執行体制 P9~P14(3,217KB)

気候関連のリスク・機会のビジネスへの影響

【物理的リスク】

気候変動に伴う異常気象の増加により、当社グループのお客さまのビジネスに影響が及ぶリスクが想定されます。当社グループは、近年わが国において気候変動に起因する自然災害が頻発していることを踏まえ、三井住友銀行において、物理的リスクを対象とした気候変動シナリオ分析を実施し、2050年までの影響を評価しています。

気候変動に起因する自然災害の大宗は、洪水、風水害といった水災によって占められているため、この分析ではリスクイベントを水災に特定しています。またシナリオについては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が研究の基盤としているRCP(※2)2.6シナリオ(2℃シナリオ)、及びRCP8.5シナリオ(4℃シナリオ)を使用しています。また、米国スタートアップ企業であるJupiter Intelligence社(※3)が有するAI技術を活用しつつ、MS&ADインターリスク総研株式会社との協業によりシナリオ分析を実施しています。AIによる機械学習を行いながら、様々な気候関連データや地形などの衛星画像データを分析することで、水災発生時のリスクを定量的に把握しています。
そのうえで、三井住友銀行のお取引先である事業法人を対象に、日本国内の水災発生時における当行の担保への影響及びお客さまの財務状況への影響を勘案の上、気候変動シナリオごとの洪水が発生する確率(※4)も考慮し、2050年までに水災発生に伴い想定される与信関係費用の増加額を試算しています。このとき想定される与信関係費用は、2050年までに累計550~600億円程度の試算結果となりました。これは単年度平均値でみると20億円程度の追加的な与信関係費用の発生となることから、気候変動に起因する水災が現在の三井住友銀行の単年度財務に与える影響は限定的であると考えられます。

なお、この試算結果は想定する自然災害や分析対象先の点で一定の前提を置いた暫定的なものであり、分析対象先の範囲を拡張しつつ、より精緻なリスク量の把握に努めてまいります。

  1. ※2   代表濃度経路シナリオ(Representative Concentration Pathways)
    例えば「RCP2.6」は、世紀末の放射強制力(地表に出入りするエネルギーが地球の気候に対して持つ放射の大きさ)が2.6w/m2であることを表す。
  1. ※3   通信衛星データを含む多様なデータを収集し、AI分析により自然災害発生を予測できる気候変動リスク分析の米国ベンチャー企業。社員にはノーベル受賞機構であるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の研究者や、70か国で使用されている世界的に有名な海洋循環モデル(“Princeton Ocean Model”)発案者などが在籍。
  1. ※4   以下論文に基づくデータを使用
    “Hirabayashi Y, Mahendran R, Koirala S, Konoshima L, Yamazaki D, Watanabe S, Kim H and Kanae S (2013) Global flood risk under climate change. Nat Clim Chang., 3(9), 816-821. doi:10.1038/nclimate1911.

【移行リスク】

脱炭素社会へと移行する過程で、影響を受ける資産の価値が将来的に下落するリスク(座礁資産化)が想定されます。三井住友銀行における2020年度炭素関連資産は貸出金の6.5%(※5)ですが、こうした現状を踏まえ、移行リスクを対象とした気候変動シナリオ分析を実施しています。

シナリオ分析で使用しているシナリオは、気候変動リスク等にかかる金融当局ネットワーク(NGFS)のCurrent Policiesシナリオ(3℃シナリオ)(※6)に加えて、2050年カーボンニュートラル達成を前提とした同機関のNet Zero 2050シナリオ(1.5℃シナリオ)(※7)や国際エネルギー機関(IEA)のNet-Zero Emissionsシナリオ(1.5℃シナリオ)(※7)です。

そのうえで、各々のシナリオの下で見込まれる原油や天然ガスといった資源価格および需要、発電コスト(※8)等の変化からセクター毎の信用リスクへの影響を考慮し、これをストレステストモデルに反映させることで、2050年までに想定される与信関係費用を試算しています。1.5℃シナリオにおいては、Current Policiesシナリオと比べ、2050年までの単年度で20~240億円程度の与信関係費用の増加が見込まれる試算結果となりました。

なお、シナリオ分析の前提には、気候変動の課題解決に向けて期待される技術革新や、各企業において今後想定されるESG戦略・ビジネスモデルの転換といった要素のほか、企業活動の変化に対する支援等は勘案されておらず、この試算結果は一定の仮定に基づくものです。今後も、シナリオ分析手法の高度化を進めるとともに、脱炭素社会への移行に向けたお客さまの取組支援を通じて、リスクの低減に努めてまいります。

  1. ※5   TCFDの定義(GICS(世界産業分類基準)における「エネルギー」「ユーティリティ」が対象。 但し水道、独立発電事業者、再生可能エネルギー事業者は除く)に基づく。三井住友銀行(含む連結子会社)の資産(バランスシート上の総資産+オフバランス資産等)に占める2020年度の炭素関連資産向け与信残高合計の比率は4.4%。
  1. ※6   各国政府が現在実施している気候変動政策は継続されるものの、対策の強化は行わないことを想定したシナリオ。
  1. ※7   厳しい気候変動政策と技術革新により、産業革命前から2100 年までの世界平均気温の上昇が1.5℃に抑えられるパリ協定とも整合的なシナリオ。
  1. ※8   日本においてはIEAのシナリオにしたがい原子力発電所の再稼働を前提としたケース。

【機会】

金融機関の役割は、脱炭素社会の実現に向けた技術革新や設備投資を金融面から支援していくことにあります。脱炭素社会への移行に伴い、資金需要の拡大や事業再編、新たな金融商品・サービス、脱炭素関連設備リース等のニーズが生じるなど、金融機関にとってはファイナンスにかかるサービスの提供機会が増大していくと認識しております。当社グループは、2020年に公表したサステナビリティ実現のための計画である「SMBC Group Green × Globe 2030」 において、「お客さまとともに、人と地球の未来を創る」というコンセプトのもと、グループとして取り組むべき施策を定めています。この計画の中では、2020年度から2029年度までの10年間での「グリーンファイナンス及びサステナビリティに資するファイナンス実行額30兆円」という目標を設定しており、その達成に向けてお客さまとともに気候変動対応に取り組んでまいります。

当社グループは、ホールセール事業部門ホールセール企画部内に「サステナブルビジネス推進室」を設置し、各事業部門とも連携し、お客さまの事業戦略に対して、グループ全体でソリューションを提供しています。サステナブルビジネス推進室は、サステナビリティに係る知見・ネットワークをグローバルベースで構築し、脱炭素社会への移行に向けたお客さまの経営課題に対して、グローバル・グループベースで提案を行うハブ機能を果たしています。脱炭素社会の実現を目指すにあたっては、再生可能エネルギーやグリーンビルディングなど気候変動の緩和に貢献する事業等へのファイナンス支援のみならず、コンサルティングなども含めた重層的なソリューション提供を通して、サステナビリティに関するお客さまの課題解決に努めてまいります。

脱炭素化ビジネスの推進・ファイナンス実行に係る詳細は以下をご覧ください。

気候関連リスクの管理

当社グループでは、リスク管理の定常的な枠組として、外部環境・リスク事象を収集・認識し、その影響を分析した上で必要な管理を行う体制を構築し、PDCA を実施しています。
異常気象に伴う大規模災害の発生や脱炭素社会への移行による炭素関連資産の座礁化等、気候変動に関する事象については、トップリスクとして選定し、上記体制の下でシナリオ分析の強化や対応策を経営レベルで検討しています。こうした取組については、経営会議やリスク委員会に報告し、取締役会においても社外取締役等からレビューを受ける体制としております。
今後も、当社グループでは気候変動影響の一層の顕在化を念頭に置き、外部環境、そして、それが当社グループに及ぼすリスクの把握に努めるとともに、それらを踏まえた適切なアクションを実行してまいります。

指標と目標

当社グループは、気候変動にかかるリスク並びに機会を測定・管理するため、またパリ協定への整合/ネットゼロ達成に向けた道筋を示すため、GHG排出量やエクスポージャーなどに関する様々な指標を用いています。これらの指標に関する進捗状況は定期的にグループ経営会議・サステナビリティ推進委員会、並びに取締役会へ報告され、戦略への反映・監督が行われております。

戦略 指標(KPI) 2019年度実績 2020年度実績 目標
自社GHG排出量
削減
SMBCグループにおけるGHG排出量*1 14万トン 14万トン 2030年
ネットゼロ
リスク管理
高度化
炭素関連資産比率*2 6.9% 6.5% -
石炭火力発電向け貸出金残高*3
(プロジェクトファイナンス)
- 3,000億円 2030年度
▲50%
2040年度
残高ゼロ
投融資ポートフォリオ
GHG排出削減
セクター別
GHG排出量*4
- (電力セクター)
382
g-CO2/kWh
2050年
ネットゼロ
(中間目標は検討中)
脱炭素化
ビジネス推進
グリーンファイナンス並びにサステナビリティに資するファイナンス実行額*5 - 2.7兆円 2030年
累積:30兆円
(内、グリーンファイナンス20兆円)

*1 指標を「三井住友銀行」から「SMBCグループ」へ、目標を「’18年比30%削減」から「ネットゼロ」へと見直し。

*2 より正確に移行リスクに晒されているエクスポージャーを捕捉する観点から、再生可能エネルギー向け貸出等は除外。

*3 中間目標として、2030年50%削減を2021年より追加。脱炭素社会への移行に向けた取組に資する案件は除外。

*4 絶対量又は炭素強度(排出量原単位)での算定を想定、対象セクターについては今後拡大予定2020年度実績は三井住友銀行(含む連結子会社)における貸出金で算定した場合の現状での試算結果(与信額で算定した場合は369g-CO2/kWh)。

*5 指標を「グリーンファイナンス」から「グリーンファイナンス並びにサステナビリティに資するファイナンス」、目標を「累積10兆円」から「累積30兆円(内、グリーンファイナンス20兆円)」へと変更、2020年度実績はグリーンファイナンス実行額のみ集計。

今後に向けて

当社グループは、TCFD提言への対応として、気候変動に関する事象をトップリスクとして選定の上、シナリオ分析により将来的に想定されるリスクを定量的に評価し、対策を経営レベルで議論することにより、気候変動リスクの管理を強化してまいりました。

今後、段階的にシナリオ分析の精緻化を実施し、潜在的リスクの把握に努めながら、フォワードルッキングに業務戦略を策定・遂行してまいります。併せて、投融資ポートフォリオにおけるGHG排出量についても把握した上で、お客さまとのエンゲージメントをより一層深化させると共に、国内外でグリーンファイナンスを積極的に推進し、グローバルレベルでの課題解決をリードしてまいります。

加えて当社グループは、当社グループ自身がどのような考えに基づいて気候変動対策に取り組んでいるか、またお客さまがいかにパリ協定の達成に貢献し、自社のGHG排出量を低減させようとしているかについて、お客さまにおよびその他のステークホルダーとも建設的なエンゲージメントを実施し、相互理解に努めてまいります。

こうしたエンゲージメントを踏まえ、脱炭素社会への移行に向けたお客さまの取組への支援を通じ、気候変動対策におけるリーダーシップを発揮してまいります。そして、今後も、ステークホルダーの皆様に対し、TCFD提言に沿った透明性ある開示を行ってまいります。