SMBCクラウドサインの第二の事業の柱である「AI契約書管理Pro」がリリース。AI時代の新しい契約管理と未来構想
2019年10月の設立以来、SMBCグループが培ってきた社会的信用力と全国に広がるお客さまとのネットワークを背景に、日本における電子契約の普及に大きく寄与してきたSMBCクラウドサイン社。2024年8月、書類情報を自動で登録する機能「AI契約書管理」をさらにバージョンアップさせた「AI契約書管理Pro」をリリースしました。
新たにリリースされた機能は、これまでの機能と何が違うのか。SMBCクラウドサイン社は今後何を目指すのか。SMBCクラウドサイン 代表取締役の三嶋英城氏、事業企画部の重永佑樹氏に聞きました。
「AI契約書管理」が実現する、情報登録の効率化と検索性の確保
SMBCクラウドサインの提供開始から4年半が経ちました。事業がどのように成長しているか、教えてください。
三嶋ありがたいことに、導入企業数は順調に増え続け、それに伴って事業規模も拡大を続けています。
世の中で電子契約が当たり前になりつつあるなか、我々が提供するSMBCクラウドサインは弁護士ドットコムが提供するクラウドサインと合わせて、4年半で国内トップクラスのシェアとなっています。
特に、我々はSMBCグループの法人顧客に向けた営業活動が展開できます。その結果、ITにそれほど詳しくないお客さまにも電子契約について知ってもらうことができ、同サービスの普及につながったと感じています。
また、SMBCグループは全国の地域金融機関と多くの取引があり、その接点を活用した営業活動も行っています。その結果、現在は多くの地域金融機関にSMBCクラウドサインを導入いただいています。さらに、いくつかの地域金融機関と提携し、そのお客さまに対してもSMBCクラウドサインをご紹介いただいた結果、かなり幅広い地域・業種の企業さまにもご利用いただいています。
改めて、「AI契約書管理」の概要について教えてください。
重永「AI契約書管理」は、締結した契約書データをAIが自動で読み取り、契約日や契約金額などをSMBCクラウドサインの管理画面上に自動で登録する機能です。これまで多くの企業では、契約書締結後に帳簿をはじめとした管理システムに担当者が手動で情報を入力しておりました。AI契約書管理を使うことで、契約情報が自動的に入力されるため、入力工数の削減や検索性の向上、効率的な電子帳簿保存法対応が可能になりました。
自動で読み取れるのは契約書だけではなく、申込書、発注書、検収書、請求書など、合計12類型の書類でご活用いただけます。
2022年7月から提供開始したAI契約書管理、現在の利用状況とお客さまの反応についてお教えください。
重永2024年3月末時点で、10,000社以上のお客さまにご利用いただいており、国内の契約書管理機能サービスとして国内トップクラスのユーザー数となっております。
お客さまからは、「帳簿作成の工数削減」について、特にご評価をいただいています。契約件数が月次で数十件、数百件の企業様には、業務負荷削減に繋がるサービスとなっております。業界としては、金融、不動産、IT業界をはじめ、様々な業種の企業様にご利用いただいております。
2024年の1月からは改正後の電子帳簿保存法への対応が必要になり、電帳法対応のために当サービスをご利用いただく企業様も増えております。電帳法の検索要件となっている「取引年月日」「取引金額」「取引先」の項目が抽出可能です。
現在のところ、AI契約書管理はSMBCクラウドサインのオプションサービスとして無料でご利用いただくことが可能です。
自動読み取りの精度を飛躍的に高めた、「AI契約書管理Pro」
新サービス「AI契約書管理Pro」の概要や、AI契約書管理との違いを教えてください。
三嶋「AI契約書管理Pro」は、お客さまから事前に自社で活用している契約書のフォーマットをご提出いただき、その内容をベースにAI契約書管理よりもさらに高度な解析を提供する有料サービスです。
これまでのAI契約書管理では、多くの契約書類に対応していた一方で、お客さまの契約書の形式によってはご要望の値が抽出できていないこともございました。契約書のなかに初期費用や月額費用など複数の取引金額が存在する場合、お客さまによって抽出したい金額が異なります。AI契約書管理Proでは、事前に契約書フォーマットと抽出対象項目を指定いただき、お客さま独自の抽出ロジックを設定いただくことが可能となります。
抽出精度の向上にも繋がりますので、検証・修正作業が省けるというメリットがあります。これまで、AI契約書管理を導入する企業の多くは、大量の書類を自動読み取りさせた上で、定期的に入力内容に間違いがないか、確認作業を行っていました。AI契約書管理Proを導入いただくことで、入力だけでなく検証作業の手間も大幅に削減できるようになります。
SMBCグループの強みを活かし、現場の声をサービスに反映させる
SMBCクラウドサインは短期間でアップデートを繰り返し、様々な機能やサービスを実装しています。現段階で、AI契約書管理Proの次に考えているアップデートはありますか?
三嶋はい。近々、SMBCクラウドサイン全体のUI改善を行う予定で、2024年度内にはリリースできるよう準備を進めています。またUI改善にともなって、いくつかの機能を追加で実装する予定です。
例えば、登録された書類情報をオンラインで確認できる「契約書一覧の高度化」や、担当者の手間を極限まで減らす事ができる「過去の契約書との紐づけ機能の実装」、フォルダ・階層管理による「契約書管理の効率化の実現」などです。
SMBCクラウドサインではこれまでも多くのお客さまのニーズや課題をヒアリングされているかと思います。新機能や新サービスをどのように着想しているのでしょうか。
三嶋ユーザーニーズを正しくとらえることは常に意識しています。
SMBCクラウドサイン社では、カスタマーサクセス部署を設け、お客さまがビジネスで我々のサービスを活用し、価値を感じてもらえるためのサポートを行っています。同部署を通じて、常にお客さまと対話をし、現場のニーズを見続けているからこそ、本当に求められているサービスを把握できているのです。
特に我々の場合、同じSMBCグループの企業にSMBCクラウドサインを使ってもらっており、日々フィードバックをもらっていることも、現場のニーズを正確に捉える事ができている大きな要因になっていると感じています。
さらに、銀行は他の業界と比べて、セキュリティーの基準が高いため、私たちのサービスもその基準を満たすように仕様や使いやすさを磨き上げてきました。だからこそ、他企業さまにとっても安心して利用でき、使いやすいサービスになっていると考えています。
引き続き、SMBCグループの一員であることを活かしながら、世の中から求められるサービスの開発を行いたいです。
契約締結を越えて、あらゆる関連業務も効率化できるサービスへ
最後に、今後の展望についてお教えください。
三嶋現在、契約締結業務に関しては事業として軌道に乗っている状況です。その後の契約書の管理業務においても、今回リリースをするAI契約書管理Proによって機能が充実してきたと感じています。引き続き、さらなる精度向上を目指す一方で、電子契約の「締結」に関する課題解決だけでなく、その周辺業務の課題解決のために、新しい機能やサービスを揃えていく予定です。
具体的に考えている機能の一つは、生成AIを活用した契約書作成機能です。現場からのニーズの大きさを鑑みて、諸条件を入力することで契約書のドラフトを自動的に作成してくれるサービスの開発を進めています。
また、契約書の情報を分析する契約書アナリティクスの開発も考えています。これまで契約書は紙で締結した後、キャビネットに保管され、その後使われる事は殆ど無い、というのが実情でした。しかし、契約とは企業活動の根幹となる情報の集積であり、この情報が全く活用されていない事は、本当に勿体ない話だと思います。これが、契約の締結や保管がデジタル化された事で、徐々に契約書のデジタルデータ化が進んできており、情報活用できる土台ができてきました。
契約情報の活用の一例としては、業務委託契約の可視化などが考えられると思います。特に大企業では同じような委託でもグループ会社や各部門がバラバラに発注し、ある部門では割高な費用を支払っている場合もあります。これがグループ横断で業務委託契約の内容・価格を全て可視化できれば、委託内容に対する適正価格を算出する事もできますし、あるいはボリュームディスカウントを導き出せるかもしれない。このような契約情報の可視化にも大いなる価値があると思いますし、その先にはビッグデータとしてあらゆる企業の不動産売買契約を解析する事で地価の変動予測ができるかもしれません。情報活用においては様々な論点がありますが、新しいサービスや事業が生まれる可能性も大いにあると思っています。
これからも、様々な企業ニーズとSMBCグループの技術力を掛け合わせ、これまで全く活用できていなかった、経済活動の根幹となる重要なデータの可視化・分析を行い、それを活かした、新しいサービスを作っていければと考えています。
そして最終的に我々が目指すのは、コントラクト・ライフサイクル・マネジメント(CLM)(※1)にもとづいた、幅広い領域の課題解決です。「契約書締結といえばSMBCクラウドサイン」という状態は達成しつつあります。今後は「契約にまつわる、あらゆる業務はSMBCクラウドサインに任せられる」と頼られる存在を目指してまいります。
(※1)Contract Lifecycle Management : CLM。契約の締結と前後のオペレーション全体の最適化を目的とした手法。
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SMBCクラウドサイン株式会社 代表取締役
三嶋 英城氏
2018年三井住友銀行にキャリア入行。2019年SMBCクラウドサイン(株)設立、代表取締役社長に就任。2023年経済同友会へ入会、オープンイノベーション委員会副委員長に就任。日本のレガシーな風習・業務プロセスの変革、国内でのオープンイノベーションの普及に邁進。
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SMBCクラウドサイン株式会社 事業企画部
重永 佑樹氏
2017年大学卒業後に三井住友銀行へ入行。
法人営業部にて中小中堅企業向けの法人取引に従事した後、2020年よりデジタル戦略部付でSMBCクラウドサインの事業企画部へ着任。現在はAI契約書管理のプロジェクトマネージャーとして企画開発を進めている。