日本人の国内消費、インバウンド消費の傾向・変化が一目瞭然。キャッシュレス決済のトレンドを伝えるマンスリーレポート「Custella Trend」

三井住友カードが保有する膨大かつ詳細なクレジットカードの決済データを活用したデータ分析支援サービス「Custella(カステラ)」。決済データを活用した現状分析から施策の実行まで、顧客の課題に応じてさまざまなサービスを提供しています。
なかでも、キャッシュレスデータで世の中の消費トレンドを分析し、約90ページに渡る詳細な情報を毎月Webで無料配信しているのが「Custella Trend(カステラトレンド)」です。人々の消費動向を業種別、性別・年代別、エリア別などで分析し可視化したレポートは、多くの民間企業および自治体で活用されています。2024年の4月にはレポートのアップデートを行い、インバウンドの消費分析コンテンツなどを追加しています。
コロナ禍後にインバウンド消費が活況を呈する今、消費トレンドはどのように変化しているのか。Custella Trendを提供する三井住友カード株式会社 マーケティング本部 データ戦略ユニットの中里見 慎一氏と村上 慶祐氏に伺います。
マクロの消費動向を把握するレポートを無料配信
「Custella Trend(カステラトレンド)」とはどのようなサービスなのか、概要を教えてください。
村上Custellaは、決済データを活用したデータ分析支援サービスであり、顧客の課題に応じて現状分析から施策の実行まで、さまざまな形でマーケティングのご支援を行えるラインアップを取り揃えています。その中でCustella Trendは、マクロの市場動向の把握支援を目的としたレポートを毎月無料でお届けしています。
Custella Trend以外にも完全オーダーメイドのレポーティングサービスの「Custella Analytics」や、高精度にターゲットを抽出してダイレクトメールを配信する「Custella Promotion」などの有償サービスがあります。Custella Trendはそれらの入り口となるサービスで、市場の動向把握に限定した無料レポートを配信しています。Custella Trendでマクロの市場動向のトレンドを把握していただき、その先のステップである顧客のペルソナの可視化などは、有償サービスでご提供しています。

村上 慶祐氏
無料サービスのCustella Trendはどのように活用されていますか?
村上私たちは三井住友カードのキャッシュレスデータを活用して市場動向を把握しており、Custella Trendでは市場全体の消費動向だけではなく、デモグラフィック(人口統計学的属性)を特定の切り口ごとに比較したり、業種別の消費動向などを分析したりしています。
顧客は大別すると民間企業と自治体に分けられます。民間企業の読者さまは自社の業態や周辺の業態の市場動向を把握する目的で、一方で自治体の読者さまはエリアごとの消費動向を把握する目的でご活用いただいています。
企業だけでなく、自治体にも利用されているのですね。
村上インバウンド需要が伸びているので、各地の自治体からも多くのお申し込みをいただいています。データドリブンで地域の現状を把握して、どのような施策を行うかを決める風潮は自治体でも強まっているので、お引き合いが増えつつある状況です。
Custella Trendによって明らかになった、近年顕著に見られる消費動向があれば教えてください。
中里見コロナ禍の影響で外食や旅行といった業界が大きな打撃を受けましたが、最近は回復傾向にあり今年の6月のデータを見てもかなり好調に推移しています。Custella Trendはインバウンド消費についてのデータも取れるのですが、コロナ禍以前は中国人観光客による決済金額の構成比が高かった一方、コロナ禍以降、アメリカ、香港、韓国など多くの国で消費が伸びています。訪日消費がコロナ禍前の水準を超えている要因としては、円安の影響が大きいと考えられます。

Custella Trendは今年の4月にアップデートを行い、インバウンドの消費動向も把握できるようになりました。細かい業種単位の傾向、関東地方や東北地方といった地域別の傾向なども三井住友カードの決済データから把握ができます。

中里見 慎一氏
インバウンドが求めるのは、日本文化を体験できる「コト消費」
2024年4月に行われたアップデートの具体的な内容を教えてください。
村上「インバウンドコンテンツの追加」「バイアス補正」「業種区分の見直し」の3点が主なアップデートの内容です。まずインバウンドコンテンツについては、インバウンド消費全体の推移に加え、消費エリア別、国籍別、消費業種別の観点で集計した内容を実装しています。二つめのバイアス補正では、より市場の実態に即したアウトプットを実現しています。SMBCグループではナンバーレスの三井住友カード(NL)や、Oliveのマルチナンバーレスカードなどの新しいカードをリリースしています。会員数が順調に増加するにつれて、カード決済の総額も増えてはいるものの、それは実際の市場推移を反映しているとはいえません。そういった弊社特有のバイアスを補正しました。
なお、この「バイアス補正」は、導入の当初検討段階で、SMBCグループの日本総合研究所 先端技術ラボのデータ分析の専門家とも連携して評価し、その後のサービス開発に至りました。

三つめの業種区分の見直しについては、市場の消費スタイルの変化に着目して、消費の動向が把握しやすい区分に変更しています。例えばふるさと納税の扱いについては、これまでは「その他」に分類していましたが、今回独立した一つの業種として切り出し、従来の43区分から53区分に細分化して市場実態をより細かく表せるようにしました。
ふるさと納税の需要についても変化が生じるものなのでしょうか?
村上例えば、2023年10月にふるさと納税のルールが改正されましたが、データを見ると9月に駆け込み需要が発生しています。例年は年末にかけてのみヤマが形成されることに照らすと、やはり多くの方がルール改正に対してビビットに反応していたことが分かりました。

近年のインバウンド消費における傾向があれば教えてください。
中里見コロナ禍以前のインバウンド消費は、中国人観光客による爆買いのイメージが強くありましたが、今はどちらかというと「モノ消費」から、日本文化を体験するような「コト消費」にシフトしています。お寺に泊まれる宿坊体験をはじめとする、日本ならではの「コト消費」は観光客に好評です。

今後の動向としては、コト消費がより伸びると予想されますか?
中里見そうですね、ある程度は伸びてくると予想します。中国人観光客によるインバウンド消費は、未だコロナ禍前の水準に戻っていませんが、今後回復していく可能性があると思っています。また、コロナ禍前と比較して欧米系の来訪者も増加しており、これもコト消費が伸びる要因となると見ています。
インバウンド消費のデータは、どのように取得しているのでしょうか?
中里見インバウンド消費については、海外で発行されたVISA、マスターカード、銀聯(ユニオンペイ)のカードを持っている方が、三井住友カードの加盟店で決済したデータを集計しています。
より多くの人に、さらに一歩踏み込んだレポートを届ける
今後のCustella Trendもアップデートを行う予定でしょうか?今後実装したい機能などがあれば教えてください。
中里見現状のCustella Trendのレポートは各業界やインバウンド消費の動向をお伝えしていますが、そこから一歩踏み込んで外食産業や観光産業など、特定の業界の実状を簡易的なレポートにまとめて配信したいです。より読者の方にとって示唆に富んだ内容をお届けしたいと考えています。インバウンド消費についても、国籍別をさらに地域別まで細分化したり、国ごとの季節性に焦点を当てて深掘りしたり、より充実した内容にしていきたいです。
例えば、中国の国慶節や春節の時期は、インバウンドも大きく増加しますか?
中里見その傾向は強くあり、国慶節や春節の時期には中国人観光客数が増加します。また、付け加えると、中国に限らず多くの国で来訪者数や消費額の増減のシーズナリティや、どの地方によく訪れているかという特徴が見られます。
Custella Trendの今後の展望を教えてください。
村上現在はCustella Trendにお申し込みいただいた方を対象にレポートを配信していますが、この提供方法の見直しを考えています。Custella Trendはインバウンド消費の情報を提供していることもあり、メディア掲載のお引き合いも多数いただいている状況です。社会的な意義を考慮すると、私たちのキャッシュレスデータに興味関心を持っていただいた方が広く閲覧できるようなコンテンツにしていくべきだと考えています。Custellaのサービスサイトで閲覧できるようにしたり、消費動向を知りたくて検索した方がすぐに辿り着けるような導線にしたりするなど、より良いコンテンツをより多くの人に届けられるような情報発信を検討しています。

中里見さらに特定の業種や季節のイベントなどにフォーカスして、一歩深掘りしたレポートを考えています。読者にとって深みのある情報を提供することはもちろん、読み物として面白く、マーケティング施策を考えるうえで、参考になる切り口のデータを提供することが理想ですね。
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三井住友カード株式会社 マーケティング本部
データ戦略ユニット アナリティクスSQ 部長代理中里見 慎一氏
2022年三井住友カードに入社。アナリストとして、キャッシュレスデータを活用した完全オーダーメイドのレポーティングサービスであるCustella Analytics(カステラ アナリティクス)の提供に従事。前職ではマーケティングリサーチ企業にて、POSデータを用いた家電など耐久消費財の市場規模推計や予測の作成、市場分析レポートの作成を実施。
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三井住友カード株式会社 マーケティング本部
データ戦略ユニット アナリティクスSQ 部長代理村上 慶祐氏
2017年三井住友銀行入行。富裕層個人向け、中小企業向けの営業を経て2022年に三井住友カードに出向、データ戦略部(現 データ戦略ユニット)に着任。データビジネスプランナーとして「Custella」の推進企画業務に従事の後、2023年より各種データビジネス商材の商品企画を担当。