freeeとプラリタウンが設立した新会社インクループ。全国の中堅・中小企業のDXと業務効率化を推進し、日本を元気に

SMBCグループの子会社であり、顧客の課題解決や企業価値向上に資する数々のデジタルサービスを提供するプラリタウンと、会計や人事のSaaSプロダクトを提供するフリー株式会社(以下、freee)が、2024年8月に設立したインクループ。同社は、中堅・中小企業を対象にSaaSプロダクトの導入から定着化の支援、業務課題の整理などをサポートすることで、日本のDXを推進することを目的としています。
freeeとプラリタウンの両社はどのような思いでインクループを設立し、中堅・中小企業をどのように支援していくのか?プラリタウン出身にして現在はインクループの代表取締役を務める髙田 謙一氏と、freee出身にしてインクループ取締役を務める岩崎 泰拓氏に伺います。
SaaSプロダクトの導入だけで終わらせず、活用・定着までを伴走支援
freeeとプラリタウンはこれまでどのように協業してきたのでしょうか?
髙田freeeとプラリタウンは2022年8月に企業のDX推進を目的に業務提携を行い、freeeの各種プロダクトを活用して、SMBCグループの全国のお客さまの業務効率化やDXを推進しています。プラリタウンを通じてもっとも多くのお客さまにご導入いただいているサービスがfreee会計をはじめとするfreeeが提供するプロダクトであり、freeeは大切なパートナーです。お客さまのご紹介だけでなく、インボイスや電子帳簿保存法対応などの法改正に関する情報発信や、地域金融機関を経由した地方のお客さまへのアプローチなども協力して進めてきました。

髙田 謙一氏
岩崎freeeのプロダクトは直接販売と、代理店・パートナー経由で販売する間接販売という二つのチャネルがあります。以前より、プラリタウン経由で多くのお客さまのご紹介をいただいており、私たちにとって欠かせないパートナーです。
インクループの設立背景について教えてください。なぜ今回、freeeとの会社設立に至ったのでしょうか?
髙田まず、freeeがターゲットにしている中堅・中小企業が、プラリタウンの顧客層と一致しているということ。もう一つは、freeeは会計と人事という幅広い業務領域をカバーしているので、より多くのお客さまの課題を解決できるということです。freeeの皆さまは「マジ価値(※1)」という行動指針を掲げており、本当にお客さまが幸せになることを大事にされていると以前より感じていました。そのような思想が一致した側面も大きいですね。
(※1)「ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする」というfreeeの原則。
岩崎SaaSプロダクトを提供して企業のDXを推進するプラリタウンは、多くのお客さまに「マジ価値」をお届けできるパートナーだと認識しています。そういった思いから今回の会社設立に至りました。

岩崎 泰拓氏
髙田プラリタウンは、全国の法人のお客さまから年間2,000件を超えるご相談をいただいています。そのなかで、デジタル化やDXを検討しているけれど「それを実現するための人材が社内にいない」「何から手をつけていいか分からない」といった課題をお持ちのお客さまが多くいらっしゃることが分かりました。せっかくDXにつながるサービスを提供しても、社内に定着しなければ本当の効率化にはつながりません。
私たちSMBCグループは、「お客さまと共に成長する」ことに価値を置いていますので、サービスを売って終わりでは、私たちの思想と反します。お客さまが成功し、ともに発展することを目指していく。そのためにサービスを活用するところまでともに伴走することが私たちの役割です。
何から始めればいいのか分からない企業には、課題整理から
インクループはどのような事業を推進していくのでしょうか?SMBCグループのお客さまとfreeeのお客さま、双方にどのようなメリットがあるのか教えてください。
髙田まずはfreeeの各種プロダクトの導入支援サービスから事業を開始しSMBCグループのお客さまに加え、freeeのお客さまに向けても同サービスをご提供していきます。
岩崎例えばfreee会計を導入したものの、既存のサービスから乗り換えるための初期設定からテスト検証、データ移行を経て本格運用までに、約8カ月~10カ月ほどかかるケースが多くあります。これが私たちの導入支援により、約3〜4カ月ほどで本格運用ができるようになります。また、導入支援のポイントは本格運用の早期化だけではなく、業務プロセスをすべて洗い出すことで、業務改善の提案ができる点です。そのうえで、freeeのプロダクトを使っていただき、バックオフィスの効率化やDXを伴走支援します。「SaaSプロダクトを導入しても従業員が使いこなせない」「思っていた効果が得られない」などの課題が発生してしまうケースがありますが、導入支援によって定着化まで伴走支援することでそれらを防ぐことができます。
また、業歴の長い中堅・中小企業さまでも、情報システム担当の方がおらず、経理も人事も一人の方が担っていることが多くあります。そのような場合、freeeのプロダクトを導入したくても、通常業務で手いっぱいで、導入までたどり着けないというお声が多くあります。今回の会社設立により、そのようなお客さまを含めた、より多くの中堅・中小企業をご支援できるようになりました。

髙田さらにDXのために何をすればいいのか分からないお客さまに対しては、BPR(※2)コンサルにより「業務プロセスの可視化」「課題の優先度付け」を支援します。その後、プロダクトの導入・定着支援を行い、運用拡大のためのBPOのような追加支援も考えています。
(※2)Business Process Re-engineering。業務の目的を達成するために、既存の業務体系や制度などを根本から見直し、再構築すること。
地域金融機関との共創で、全国の中堅・中小企業を支援
インクループで蓄積した導入支援のノウハウは他分野にも流用できそうですが、そういった展開は予定していますか?
髙田他のSaaSプロダクトでも導入支援が必要なサービスはあるかと思いますので、多分野への拡大も視野に入れています。SaaSプロダクトの導入支援は、全国の中堅・中小企業の皆さまが求めています。全国の地域金融機関と協力し、その先にいる全国の中堅・中小企業のお客さまの支援もしていきます。
8月にインクループ設立の発表をしましたが、周囲からの反応について教えてください。
岩崎プロダクトの導入支援に加えて、BPR的な業務整理も提案してくれるサービス内容に魅力を感じているというお客さまからのお声を頂戴しています。SMBCグループの皆さまからも大きな期待を寄せていただき、とても可能性を感じています。
髙田プレスリリースを見たお客さまから共感の声や、地域金融機関から「ぜひ当行とご一緒しましょう」といった反応をいただいています。この分野の関心度と期待値が非常に高いことを改めて実感しました。

インクループの構想は以前からお持ちだったそうですが、どのようなきっかけで設立に至ったのでしょうか?
髙田freeeが私たちのパートナーになっていただいたときから、SMBCグループだけでなく、地域金融機関と、その先にいる全国の中堅・中小企業のお客さまをご支援していこうという話は上がっていました。当時からお互いのビジョンが一致していたということですね。SMBCグループでは月1回のペースで、デジタルを活用した新規事業のプレゼンを行う「CDIOミーティング」という会議が行われていますが、今年の6月に私はそこでインクループの設立を付議しました。
そこで、全国の中堅・中小企業に対し、SaaSプロダクトの導入支援やBPRコンサルを行うことは、SMBCグループだけでなく、日本の将来のためにも必要な社会的価値であることを説明し、結果多くの同意をいただき、CDIOミーティングの2カ月後の8月にインクループが設立されました。
インクループという名前にはどのような意味が込められているのでしょうか。
髙田「インクループ(Incloop)」は、「Inclusive(包摂)」「Clue(指し示す)」「Crew(仲間)」「Loop(輪)」を掛け合わせた造語です。多様な個性や経験を持った人材が互いに尊重されそれぞれの能力を生かしてエコシステムの輪を拡大し、お客さまや事業パートナーと同じ船に乗り、事業を通じて企業の成長の手がかりを指し示す意味を持っています。
岩崎この分野は競争ではなく共創し、お客さまと一緒に連帯していくことが重要です。SMBCグループとfreeeが一体となり、お客さまや地域金融機関とともに、日本全体を元気にできればと思っています。
日本全国の中堅・中小企業に役立つサービスを提供し、日本を元気に
9月下旬から実際の業務を開始していますが、当面はどのような展望を描いていますか?
髙田短期的にはニーズの高いfreeeのプロダクトの導入支援と、地域金融機関との提携を進めていきます。全国の地域金融機関でも専門のコンサルタントを用意して、地域企業のデジタル化支援に取り組んでいますが、ご苦労もされているので、そこのサポートを行います。
岩崎freeeでも得意とするデジタルマーケティングだけでは日本全国のお客さまへプロダクトを届け切ることは難しいと感じていたので、地域金融機関の持つ信頼と顧客基盤は非常に魅力的です。中堅・中小企業のDX、業務効率化という大きな流れがある今、私たちと全国の地域金融機関の強みを組み合わせることで、新しい価値を提供できると考えています。

髙田さまにとって仲間とは、具体的にどういった人たちでしょうか?また長期的な展望を教えてください。
髙田新規事業を始めた当初は孤独かと思っていましたが、助けてくれる人が本当にたくさんいました。freeeはもちろん、他のパートナー企業も地域金融機関も、SMBCグループ内でも役員から同僚含めて、多くの人が私たちの大義に共感し協力してくれました。日本に必要なサービスを生み出すことで、仲間になってくれる人は今後もどんどん増えていくという確信もつかめました。そういった仲間をこれからも見つけていきたいですね。
岩崎スモールビジネスを世界の主役にする、ひいては日本を元気にするためにやるべきことはたくさんあります。今後もパートナー企業の皆さまと一緒になって歩みを進めていきます。
髙田5年後、10年後の姿は描いていますが、新たな仲間との出会いとそこから生まれるアイデアの掛け算で、現時点では予想もつかない地点まで成長していたいですし、それを目指していきます。

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株式会社インクループ 代表取締役
髙田 謙一氏
2008年三井住友銀行に入行。法人営業を経験後、本店各部にて大企業の人事部向けソリューションの企画や、店舗改革のBPRプロジェクトに従事。2021年よりプラリタウンに参画。2024年8月にインクループを設立し代表取締役に就任。
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株式会社インクループ 取締役
岩崎 泰拓氏
2013年に大手都市銀行に入行。法人営業、調査、従業員組合出向、事務部門の企画業務を経て、2023年freeeに入社。SMBCグループとのアライアンスや新規事業開発を担当。2024年8月にインクループ取締役に就任。