人材の流出を防ぎ、人と組織を強くする。ものづくり企業・フセラシのSMBC Wevox活用術
ものづくりの街として知られる東大阪市。そこから自動車パーツのリーディングカンパニーとして、グローバルに展開するのがフセラシです。
国内外に7工場を有する同社は、複数の人材課題を抱える中で「今いる人材を大切にし、離職率を下げる」ことを目的に、SMBC Wevoxを導入しました。導入を後押ししたのは、同じくツールを活用していた三井住友銀行 大阪東法人営業部。日ごろから密にコミュニケーションを取っていた関係に加え、ユーザーとしての実体験を交えて提案できたことが、導入の決め手になりました。
本稿では、SMBC Wevox導入の経緯や成果、今後の展望について、フセラシ、三井住友銀行、そしてSMBC Wevoxの各担当者に伺いました。
金融だけでなく、DXや組織力の強化まで日常的に相談
まず、フセラシさまの事業についてお聞かせください。
フセラシ 岩原当社は1933年に「嶋田製作所」として創業し、当初はナットを中心としたネジ専門メーカーでした。社名の「フセラシ」のフセは、東大阪市の前身である布施市に由来しています。1960年頃にはモータリゼーションの波に乗り、量産機械の導入により大量生産体制を確立。これが最初の転機となり、大手自動車メーカーとの取引が始まりました。1976年には社名をカタカナの「フセラシ」に改め、ネジメーカーからパーツメーカーへと転換しました。1996年にアメリカへ初の海外拠点を設立し、現在は国内4工場、海外3工場を展開。近年ではEVをはじめとする電動化部品に対応した製品群へのシフトを進めています。
岩原 伸樹氏
SMBCグループとのお付き合いはいつから始まったのでしょうか。
SMBC 橋本1951年よりお取引を頂いています。創業以来、グローバル展開をはじめ成長を続ける中で、SMBCグループ全体としてお力になれるよう日常的にコミュニケーションを取っています。銀行からのご案内やイベント情報はもちろん、トランプ関税や法改正など、業務に影響する情報も提供しています。
橋本 翼氏
SMBC 鰐部経営者層だけでなく、各部門の方々ともやり取りさせていただいており、資金面だけでなく、業務全般に関するご相談を受ける機会も多くあります。
鰐部 知哉氏
フセラシ 岩原当初は、給与明細や年末調整のウェブ化、労務管理など業務効率化についてご相談をしていました。DXが進んだ後は、健康経営の一環として、従業員のモチベーション向上や組織力強化、メンタル不調の未然防止を目的に相談したところ、SMBC Wevoxをご紹介いただきました。
銀行との会話で気付いた、エンゲージメントの重要性
SMBC Wevoxを提案された理由を教えてください。
SMBC 橋本管理職に登用された方々が期待したようなパフォーマンスを発揮できないケースが見受けられるといったお話を伺うことがあり、従業員の人材育成・確保や福利厚生にSMBC Wevoxが役立つのではないかと感じたからです。また、フセラシさまの三重工場では、隣の愛知県に自動車メーカーが集中していることから、高卒採用が難しいという課題も見受けられました。となると、既存の従業員の離職率を下げることも不可欠であり、SMBC Wevoxによるエンゲージメント向上がひとつのきっかけになるのではないかと考えました。
私たち自身も社内でエンゲージメントサーベイを活用しており、例えばエンゲージメントが下がったときには従業員と対話してその要因把握に努め、職場改善に活かすといった経験があったので、リアルな体験談をお伝えしました。
フセラシ 岩原これまで法改正に伴うストレスチェックは実施していましたが、エンゲージメント調査は行っていませんでした。SMBCグループの経験談を聞く中でその重要性を認識し、2024年11月からSMBC Wevoxを導入しました。
他社サービスとの比較もされましたか?
フセラシ 岩原いくつか検討しましたが、自社オリジナル設問を作成でき、自己面談と組み合わせられる点が魅力でした。また、製造現場の従業員全員がパソコンを持っているわけではないため、スマートフォンでも回答できる点も重要でした。
新人の離職を未然に防ぐ。SMBC Wevoxの効果
具体的にどのようにSMBC Wevoxを活用されていますか?
フセラシ 藤澤年2回のサーベイと年1回の面談を実施し、SMBC Wevoxのオリジナル設問機能を活用して質問項目を作成しています。以前は手書きで行っていた自己面談の記入をデジタル化したことで、所属長は部下のスコアを事前に確認できますし、部署単位での比較も可能になりました。その人の、その時の状況を把握しながら面談できるようになり、やりやすくなったという声もあがっています。
SMBC Wevox 針生昨年度のご利用でかなり手応えを感じてくださったことは、当社としても大変喜ばしいです。実は「新卒研修中の状態が見えづらい」と伺い、面談実施前だった新人社員にもWevoxを活用してみてはとご提案しました。
針生 康二氏
フセラシ 岩原アドバイスを受け、新卒者に対してエンゲージメントを図ることも試みています。新卒向けのオリジナル設問を作り、研修中の新人の状態を探ってみた結果、人間関係のストレスを抱えている新人を発見し、別の総務担当者が第三者として双方をフォローすることでメンタル不調や退職につながるリスクを回避できたケースがありました。従来ならわからなかった問題に気付け、SMBC Wevoxを導入して良かったと感じました。
オリジナルの設問にはどのようなものを入れていますか?
フセラシ 藤澤「仕事の中で、自身で取り組んでいることがあれば記入してください」、「反省点」、「仕事や職場に対しての意見、悩み事、健康面や家族面での相談事があれば記入してください」といった基本的に3つの質問を設定し、それをもとに面談を行っています。
運用後、藤澤さまの業務はどのように変わりましたか?
フセラシ 藤澤実務面においても以前は紙で面談表を配布・回収していましたが、現在はメールでURLを送信するだけで済むので、印刷や配布の手間がなくなりました。また、エンゲージメント調査と自己面談のデータをひとつにまとめることができるので、資料作成も容易になりました。
※下記は実際にフセラシが行う、Wevoxのエンゲージメント調査の回答画面
フセラシ 岩原今までは記入した面接票を上司に提出しなければならなかったため、書きたいことも書きづらいですよね。デジタルであれば総務に回答が来るので、書きやすくなったとも思います。
フセラシ 岩原橋本さんや針生さんからは、オリジナル設問に対するアドバイスもいただきました。そして、調査後、管理職がしっかりフォローできる体制づくりが大切だと認識しています。
「人が企業を選ぶ時代」。人を大切に、離職率を下げるための施策
東大阪市はものづくりの街として知られる一方、廃業する企業も少なくないと聞きます。
SMBC 鰐部一昔前に比べ半減しているのが現状です。日々地域を回っていても、企業の跡地が住宅地に変わった例も少なくありません。
フセラシ 岩原東大阪は日本のものづくりの集積地と言われた30年前は1万2,000社の製造業がありましたが、現在は6,000社を切っています。そんな中、当社はこの地で事業を続け、SMBCグループには融資などのご提案だけでなく海外展開や福利厚生など多方面でサポートいただいています。
SMBC 鰐部東大阪地域では70代80代でも現役で働く経営者が多いのですが、根本にはDX人材の不足があり、とくに総務・管理系の人材が不足しています。そのため、DX人材を増やすよりも、システム化による自動化・省人化を図り、少ない人数でも成長できる方法を模索しているケースがほとんどです。
フセラシ 岩原少子化や労働人口減少の中で、企業が人を選ぶ時代から「人が企業を選ぶ時代」に変わってきています。その中で、当社は経営トップが「選んで入ってきてもらった人材を大切に育てよう」と号令をかけています。みんなでベクトルを合わせ、目標を持って仕事に取り組み、チーム力や組織力を強化することで当社の技術力を結集して世の中に貢献していきたい。そのためにも根底は人である、というのが弊社の考え方です。だからこそエンゲージメントを高めて離職率を下げることは重要な課題です。
SMBC 橋本大阪東法人営業部のお客さまの中で、最も効果的にSMBC Wevoxを活用されているのがフセラシさまだと感じています。自社に適した質問を追加し、それをどう活用していくかまで踏まえ、非常に効果的に使われていらっしゃいます。
SMBC Wevox 針生フセラシさまの特徴はお取り組みの目的が非常にシンプルで明確であること。エンゲージメントを測定するだけでなく、オリジナル設問を活用して上司と部下の面談につなげたり、新入社員の状況を把握するために活用されたりと、明確な目的に対して適切に運用を設計して利用されています。人を大切にする姿勢が明確で、そこに投資をされている点も素晴らしいと思います。
ネクストステップは制度改革。伴走しながら、ともに成長を目指す
最後に、今後取り組みたい事柄について教えてください。
フセラシ 岩原面談での活用に加え、今後は組織単位でも見ていきたいと考えています。組織によってエンゲージメントにばらつきがあり、低い部署は上司の問題かもしれません。そういった場合は教育機会の提供に加えて人事異動なども含めて検討し、組織の活性化を図る必要がありますし、経営層からは人事戦略にも活用できそうだという期待が高まっています。離職率の課題解決はもちろんですが、今後は質問項目も徐々に変えていき、「良かった制度は何か」などを聞いて制度改革につなげていくことも検討しています。
SMBC 橋本フセラシさまの成長にお力添えできるよう、人材面以外にもグループとして何ができるかを日々考えています。世界情勢や日本の政権交代など、めまぐるしい変化がある中で、いち早く情報提供ができる銀行でありたいと思っています。
SMBC Wevox 針生SMBC Wevoxはアンケートにとどまらず、お客さまの組織づくりのプロセス全般を支援するサービスです。①新入社員のケアも含め、採用面でのアピールポイントとなるよう支援すること、②エンゲージメント調査の結果から部署のばらつきなどを分析し、職場環境改善のノウハウを広げていくこと、③良い事例を社内で共有し、制度化やルール化を進めていくことの3点を軸に、長いスパンで組織づくりをお手伝いしていきたいと考えています。
PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。
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株式会社フセラシ 執行役員 業務本部長
岩原 伸樹氏
1995年フセラシへ入社、情報処理部門で約15年間に渡りシステムエンジニア(生産管理や販売管理)やインフラエンジニア(サーバー、ネットワーク)等を担当。
2011年1月総務部に異動。同部門においては総務・経理システムを統合、その他新人事報酬制度の立ち上げやワークフロー立ち上げに従事。
2020年より現職となり。現在は社内におけるDX化領域において新たな価値創造を目指している。 -
株式会社三井住友銀行 大阪東法人営業部 次長
鰐部 知哉氏
2007年、三井住友銀行へ入行。成長企業支援、法人営業業務に従事し、2023年より現職。
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株式会社三井住友銀行 大阪東法人営業部 部長代理
橋本 翼氏
2017年、三井住友銀行へ入行。個人部門にて富裕層ビジネスに従事した後、2024年より現職。夫婦共働きにつきライフワークバランスを意識。
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SMBC Wevox株式会社 営業推進部
針生 康二氏
シンクタンク、事業会社での各種企画業務に従事。慶應義塾大学大学院 経営管理研究科を修了後、フリーランスとして人材開発・組織開発プロジェクトに従事。2022年7月に株式会社アトラエに入社。お客様のエンゲージメント向上を支援。2024年10月よりSMBC Wevox株式会社に参画。引き続き、お客様のエンゲージメント向上〜組織づくりを支援。また、Gallup認定ストレングスコーチとしてコーチングにも従事。ISO 30414リードコンサルタント/アセッサー。
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