米・ラスベガスに世界中の企業やスタートアップが集い、次に社会へ実装されていく技術の方向性を示す場として位置づけられている、世界最大級のテクノロジー展示会CES。

今年開催されたCES2026は、150を超える国・地域から、出展企業4,100社以上、参加者数14万8,000人超が集まった。会場規模は約23万平方メートル(東京ドーム約5個分)に及び、例年どおり圧倒的なスケールである。

参加者の国籍別では、開催地である米国企業が最大勢力である状況は変わらない一方で、ここ数年は、中国・韓国・欧州(ドイツ、フランス)に加え、日本企業もスタートアップから大企業まで存在感を増しているようだ。一方で今年は、大手メーカーによる出展というよりも、特定の領域や要素技術に特化した企業の比率が高まっている点が特徴的である。実際、今年はパナソニックやソニーといった大手メーカーが出展を見送っている。

従来のCESでは、家電やスマートフォン周辺機器、コンセプトカーといった完成品が注目を集める傾向があった。一方、今年は「技術そのもの」よりも、「その技術がどのように使われるのか」「どこまで社会実装に近づいているのか」を示す展示が多く見られた。

こうした傾向は、AI分野においても同様である。
昨年まで「AIを見せる展示会」であったCESは、今年、「AIを現場でどう使うかを示す展示会」へと移行しつつあるように見えた。その象徴として目に入ってきたのが、「フィジカルAI」「産業・業務用途ロボット」「自動運転・モビリティ」といった分野である。

CES2026で見えたものについて、SMBCグループが実際に会場で感じたトレンドを解説する。

フィジカルAIという「次の段階」

CES2026で特に象徴的だったのが、AIがロボットや機械を通じて物理世界で実際に動く「フィジカルAI」の進展である。

従来のロボティクス機器は、工場などの限定された環境下での稼働を前提としており、想定外の事象が発生するとエラー停止や作動不良を起こすケースが少なくなかった。フィジカルAIは、移動や動作の変更といった判断を、場面や状況に応じて行い、設定されたゴールまで着実に遂行する点に特徴がある。

会場で特に注目を集めていたのは、多くの来場者やブースが密集する中でも衝突を回避しながら歩行する四足歩行ロボットや、人間とダンスやボクシング、卓球をするヒューマノイドロボットであった。特に卓球ロボットは、飛来するボールの軌道を認識し、ラケットの角度や打ち返す強さを微調整しながらラリーを続けており、上半身の動きには人間さながらのしなやかさが感じられた。

一方、ボクシングロボットのパンチは、相手が0.5秒ほど前にいた位置に繰り出されており、ヒットには至っていなかった。ただし、人間の動きに合わせてステップを踏み、攻撃を回避する挙動は印象的であった。

これらの展示からは、AIとフィジカルの融合が従来のロボティクス産業におけるゲームチェンジャーになり得る可能性を感じる一方で、人間と同等の動作や判断に至るには、なお時間を要することも明確に見て取れた。

今後は、ハードウェアとソフトウェアの両面からこのギャップを埋める取り組みが進んでいくのだろう。

実用性が前面に出た産業・業務用途ロボット

より実用性が垣間見えたのが、産業・業務用途ロボットである。

衣類を畳む、掃除や洗濯を行うといった、より特定されたタスクをこなす家庭向けの生活支援ロボットが多く展示されていた。ハイセンス(Hisense)やエルジー(LG)といった中韓の大手家電メーカーが実演していた点も印象的で、人間の作業を置き換える、あるいは補完する役割でフィジカルAIが大きく台頭しており、デモ用というよりも、実運用を強く意識した完成度の高い製品が多かったように見受けられる。

産業向けでは、倉庫・物流ロボットの展示が目立った。人の腕を模したロボットが折り紙を折ったり、壊れやすい物を掴んで運んだりと、人間ならではの「繊細な動作」も、特定のタスクにおいては十分に代替可能であることが訴求されていた。

その中で印象に残ったのが、マテリアルハンドリング向けの素材を提供していた日本企業のミネベアミツミである。ロボットアームの動きを人間の筋肉や関節に近づけるために、同社のベアリングが無数に使用されており、フィジカルAIの実用性や「人間らしさ」、繊細さなど、その細部に宿る技術は同社のような技術力の高い企業に支えられていることを認識した。あわせて、日系企業の技術力の高さも改めて実感した。

完成品競争から、積み上げのフェーズへ

自動運転・モビリティ分野でも、同様の変化が見られた。

グーグルのウェイモ(Waymo)やアマゾン傘下のロボタクシー・ベンチャー、ズークス(Zoox)といった実証・実装済みの取り組みに加え、ソニー・ホンダモビリティの次世代EV、中国コメスラ(Kosmera)の1,900馬力を持つハイパーEVなどが展示されていたが、完成車の展示数や規模は従来より控えめであった印象である。

今年は、EVを構成する要素技術――車載カメラ、LiDAR、レーダーといったセンサー融合技術や、それらをリアルタイムで処理するAI技術、ADAS、限定条件下での自律走行など――に焦点を当てた展示が多く見られた。

今回の特徴として、1社・1ブランドが完成品を前面に押し出すというよりも、部分的であっても、すぐに社会実装できる領域や技術を訴求することに重きが置かれていたようである。世界各国で制作された、それぞれの強みを持つ技術を確実に集積していくフェーズに入っているようにも見える。この過程で生まれる競争こそが、技術革新やM&Aの端緒になっていくのではないかと、感じている。

補足的な事例として、広大なCES会場をつなぐインフラにも触れておきたい。
会場内の移動手段としては、バスやタクシーに加え、テスラ(Tesla)主導の地下輸送システム「ベガス・ループ(Vegas Loop)」も利用されていた。ラスベガスの地下トンネル内をテスラ車が走行し、会場間の移動を支えていた。

ベガス・ループは、イーロン・マスクが設立・運営に関わるボーリング・カンパニー(The Boring Company)によって構築された地下トンネル網であり、CES期間中も、実際に活用されていた。展示の外側でも、すでに社会実装されたテクノロジーを体感できる存在となっていた点は印象的である。

ウェアラブル(ARグラス)に見る“勝ち筋”の分化

ウェアラブルデバイス、特にARグラス分野でも、各社の狙いどころは明確に分かれていた。

たとえば、

  • TCLは大画面の仮想スクリーンと価格
  • ASUSは高リフレッシュレートによる没入感
  • Rokidはディスプレイ非搭載による軽量性とバッテリー持続力
  • Solosは物理交換可能なバッテリー

こうした違いが示すように、一見同じような「ARグラス」に見えたとしても、エンドユーザーが志向する使い方(大画面での映像視聴、ゲーム用途、長時間利用、マルチモーダルAIの活用など)に応じた設計・コンセプトのもと、異なる機能や特性を持つARグラスが複数展示されていたと言える。
バッテリーの性能や容量については、プレイヤー共通の課題である。機能を追加し、高機能化が進むほど消費電力は比例的に増加する中で、USBケーブル接続やバッテリー交換といった現実的な解が提示されていた。この点、たとえば領域は異なるものの、モビリティ分野で存在感を放っていた全固体電池のような技術が転用・応用されれば、ARグラスはさらに使いやすいデバイスとなり、今後も大きな成長余地を持つと考えられる。

アバターは、用途特化が鍵になるか

アバター分野では、中国企業を中心に多くのプレイヤーが出展していた。

具体的には、レイザー(Razer)は円筒状の装置にアニメ調のアバターを投影、ルッキング・グラス(Looking Glass)は小型モニター上にアバターを表示する展示を行っていた。ゲームのサポートや日常生活におけるコンシェルジュ的な使い方が想定されていた点が特徴である。また、ハイパーヴィズン(HYPERVSN)は、巨大なホログラフィック空間にアバターを投影する展示をしており、サイズ感やリアリティの観点で耳目を集めていた印象である。

一方で、技術面で群を抜いた優位性を示す企業は多くなく、差別化は容易ではない印象も受けた。その分、リアリティを訴求する、パーソナライズに特化するなど、特定のユースケースに深く刺さるサービスを提供できれば、一気にシェアを獲得する余地はありそうである。

スタートアップに見えた、実装フェーズへの移行

CES2026では、スタートアップの存在感も際立っていた。数が多いだけでなく、「フィジカルAI特化」「ロボティクス特化」「医療」「物流」といった用途特化型の企業が目立ち、「何でもAI」ではなく、「この現場、この課題をAIで解く」というメッセージが明確であった。

PoC済み、導入実績あり、ターゲット顧客が明確など、ビジネスフェーズが一段進んだ企業が多かった点も印象的である。CESが単なる技術見本市ではなく、商談や実装を前提とした場へと変化していることを、改めて実感した。

技術は、どこから社会に入っていくのか

CES2026を通じて見えてきたのは、世界各国で制作された製品や技術が、それぞれの強みや特徴を活かしながら、着実に積み上げられ、集積されていくフェーズに入っているという点である。
こうした積み上げの過程で生まれる競争こそが、技術革新の基礎となり、M&Aの端緒にもなっていく。その途上にある状況が、今年のCESでは各所で示されていたように見受けられた。

左から順に
株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部 部長代理 石綿 良裕氏
三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO 磯和 啓雄氏
株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部 部長代理 三科 朋大氏
株式会社 三井住友フィナンシャルグループ 兼 株式会社三井住友銀行 シリコンバレー・デジタルイノベーションラボ Vice President 緒方 雄二氏

PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。

  • 株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部 部長代理

    石綿 良裕氏

    2025年5月にキャリア採用で三井住友銀行に入行。入行前はSBIホールディングス株式会社の法務・コンプライアンス部や海外事業部を経て2018年より同社東南アジア拠点におけるPE/VCファンド運営を管掌。
    前職でのスタートアップ投資実務を通じて、国内外のテクノロジートレンドの把握と企業グループへの実装に向けたデジタル戦略部の投資チームに参画。

  • 株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部 部長代理

    三科 朋大氏

    2024年10月にキャリア採用で三井住友銀行に入行。以前は鉄鋼メーカーの生産技術職やコンサルティング企業で多様なDXプロジェクトを経験し、より大きな挑戦の場を求めてデジタル戦略部に参画。大学院では化学工学を専攻しており、テクノロジーの社会実装には一貫して関心を寄せている。

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