SMBCグループでは、独自のAIアシスタントツール「SMBC-GAI」の開発をはじめ、新規事業だけではなく、既存事業や日常業務においてもAI活用を進めています。
活用が広がる今だからこそ、改めて立ち止まって考えたい問いがあります。――AIとは何なのでしょうか。
今回は、NEC AIテクノロジーサービス事業部門/シニアエバンジェリスト(元NEC Future Creation Hubセンター長)の野口圭氏を迎え、その問いを、約70年にわたるAIの歴史をたどりながら考えます。進行役は、三井住友フィナンシャルグループ/三井住友銀行 システム統括部の山田恵梨子氏と、デジタル戦略部の鳥巣悠太氏が務めます。
生成AIを理解するために、AI史をひも解く
まずは生成AIとはどんなものなのか、ご説明いただいてもよいでしょうか。
野口簡単に説明できないのが生成AIなんです。まず、AIが誕生してからどれくらい経っていると思いますか?
実は、学会で「人工知能」という言葉が初めて謳われたのは1956年のダートマス会議だと言われています。今はAIが当たり前のように言われていますが、AIそのものは70年ほどしか歴史がなく、中でも、生成AIはさらに歴史が浅いニューカマーなんです。
生成AIを理解するためには、まず「AIとは何か」を理解する必要があります。AIを定義するならば、人間の認知の仕組みをコンピューターが模倣し、できるようにするものを人工知能だと私は定義しています。ここで重要となる「人間の認知の仕組み」ですが、皆さんはどうやって物事を認知しているか、分かりますか?
シニアエバンジェリスト 野口 圭氏
コグニティブAIと生成AIの違いとは
言語化をすると難しいですが、例えば、目で見て「これは白いテーブルだ」と認知しています。
野口まさに。まず物事を「見て」、「考えて」、「行動する」ーーこれが認知の仕組みです。
これをテクノロジーに置き換えるとどうなるかというと、
「見る」というのは現実世界をデータ化すること。
「考える」というのは集めたデータから予測したり分類したりして、インテリジェンスをつけていくこと。
「行動する」というのは、ソフトウェアであれば画面上に数値を出したり、ロボットであれば配膳したりすること。
大きくはこの3つのプロセスがあります。黎明期に1番進化したのは、コグニティブAI(認知AI)と呼ばれる、世の中を認識するAIです。
生成AIというのは、データをしっかり学習し、考えるだけではなくて、この世の中の様々な人たちに言葉を使って働きかけられる。つまり、見解を述べられるようになっていった。それが、生成AIと従来のコグニティブAIとの大きな違いです。
ディープラーニングという言葉が流行りましたが、この世の中を認識することは相当なレベルにまで来ました。けれど、所詮は専門的な知識がないと扱えなかった。しかし、ついにそれを現実世界の我々に対して、言葉として見解を渡せるようになったので、一気にいろいろな人たちがAIを簡単に使えるようになってきました。
バイスプレジデント 山田 恵梨子氏
(右)株式会社三井住友フィナンシャルグループ/株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部
ダイレクター 鳥巣 悠太氏
現実世界を理解するコグニティブAI。そこからさらに1歩進み、自らの分析結果を“言葉”で世の中に伝えられるようになった。それが、生成AIの本質なのかなと思います。
機能的な話をすると、生成AIというぐらいなので、データをたくさん学習して、人がいろいろ言わなくても、例えば言葉や画像、映像などを自分で生成できます。
そして、大事なのは、いろいろな言葉が乱立しているんですね。例えば、生成AIや大規模言語モデル、GPT、ChatGPT……一体どれがどんなことを指しているのか、分からなくなるかもしれませんが、この違いが分かると、整理しやすくなります。
生成AIというのは1番大きな概念レベルの話です。あるデータを学習して自律的にアウトプットできる。アウトプットの種類には映像もあれば画像もあればテキストもある。テキストというのは言葉ですよね。データを学習してテキストを生成できることを実現しているのが大規模言語モデル、ランゲージモデルと呼ばれるLLMになります。
生成AIは概念です。それを支えているAIモデルがLLM(大規模言語モデル)。特に言葉を紡ぐことを支えています。そのLLMというのは一般的名称なので、これをOpenAIが開発した具体名で言うとGPTとなるんですね。一方で、皆さんが初めて知ったものはGPTではなく、ChatGPTです。GPTはそのままでは使えないので、皆さんが対話できるようにアプリケーションを作ったんですよ。チャットでやり取りできるGPTをベースにしたシステムがChatGPTとなるわけです。
このように、アプリケーションレイヤーの話をしているのか、モデルの話をしているのか、概念の話をしているのかをちゃんと理解する必要があります。理解できると、見え方が変わってきますので、この辺の基本的な知識を身に付けるのは大事かなと思います。
「誰もが理解できる、恩恵を受けられるというすごさ」
改めて生成AIの何がすごいのか、これから先注目すべきポイントについてお話いただいてもよろしいでしょうか?
野口これまでお話ししたように、AIは以前からあったけれど、多くの人が使ってこなかった。一方で、生成AIは明らかにブレイクスルーしている。このすごさは何なのかという問いかけに、少し変な回答をしますと、「すごくないことがすごい」んです。
従来のコグニティブAIもすごかったんです。でも、難しいし、アプリケーションも重厚で、よく分からないすごさだった。一方で、生成AIは、誰もが簡単に使えてしまう、さりげないすごさなんですよ。裏で何をやっているかよく分からないけれども、簡単に使える。従来のコグニティブAIは重厚で専門的でした。一方で、生成AIは誰しもが理解でき、恩恵を受けられる、“さりげないすごさ”がある。
すごさのポイントは3つあります。
一つは使いやすさで、次が学習のしやすさです。AIのプロジェクトが何で頓挫するかというと「学習するデータが用意できない」とか「データを用意し続けなくてはいけないから、コストがかかってしまう」とかで、プロジェクトが途中で終わってしまうんですね。しかし、生成AIは自律的に学習をしていくので、そこが大変ではない。使いやすいだけではなく、運用面を考えたときに、データ学習が効率的という点が、革新的ですごかった。
そして最後は、言葉が通じること。
まさに「システムの民主化」が起こり得る特徴を持っています。これによって、何が起こっているかと言うと、AIは一部の業界でしか使われてなかったんです。従来のコグニティブAIがマッチするところは全部ではないんですよね。もしかしたらIoT的な工場には貢献するかもしれないんですけど、扱いづらいし、かつ適用する先がマニアックだった。
だけど、生成AIは簡単で、データも用意しなくていいし、言葉が通じる。そうしたら何でも使えてしまうんですよね。つまり、適用先が多様化する。バックオフィスの単純作業にもAIを当たり前に使うなんて、当時は考えられなかったですから。
そうなると、マーケットの規模がすごいことになるんですよ。2024年の生成AIの市場規模って、どのぐらいか知っていますか?
想像もつかないぐらいですが、100億円とか200億円とか......?
野口実は日本で1,000億円なんですね。でも「産業革命を起こす」と言う割には小さく感じるかもしれません。これが2030年には1兆円を超えると言われています。
何がすごいかというと、IDCが2023年から2028年にかけての年平均成長率(CAGR)を84.4%と試算しているんです。今まで見たこともない、異常な成長スピードで生成AIサービス市場が伸びているんですよ。さっきも言ったように、さりげないすごさというものを価値としているので、誰しもが使えるようになって、それが市場の成長率にも現れているのかなという感覚を持っています。
生成AIのBtoC、BtoBそれぞれのユースケース、および金融業界・社会課題への応用については、動画でさらに詳しく語られています。ぜひあわせて動画をご覧ください。
PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。
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NEC AIテクノロジーサービス事業部門
シニアエバンジェリスト野口 圭氏
のべ1万人のお客様との対話を通し、NECで共創をリードしつづけるDXイノベータ。入社後、12年間はシステムエンジニアとして従事。2019年に顧客との共創による社会価値創造を目的とした「NEC Future Creation Hub」センター長に就任。デジタル時代に必要となるDX人材のスペシャリスト「NEC DX innovators 100」に2022年より選出され、顧客との共創セッションは、累計1,077回を超える。2023年より、生成事業の立ち上げを目的としたNEC Generative AI HUB(現AIテクノロジーサービス事業部門)のシニアエバンジェリストに就任、各方面で活躍中。
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株式会社三井住友フィナンシャルグループ/株式会社三井住友銀行 デジタル戦略部
ダイレクター鳥巣 悠太氏
2024年株式会社三井住友銀行入行。「デジタル x ビジネス」の観点で業界の未来の在り方を提示するThought Leadershipを推進。また大企業やスタートアップを巻き込み、デジタルイノベーション促進に向けたエコシステム構築をリード。入行以前は、外資系コンサルティングファームや外資系シンクタンクにて、ITアナリストとして十数年間活動。講演・執筆の実績多数。
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株式会社三井住友フィナンシャルグループ/株式会社三井住友銀行 システム統括部
バイスプレジデント山田 恵梨子氏
2013年株式会社三井住友銀行入行。リテール部門の営業業務に従事。その後、事務統括部およびリテール部門の管理職業務を経て、公募制度を活用してシステム統括部に異動。現在は2025年4月より新設されたIT人材企画グループに所属し、IT・デジタル人材の採用や育成、タレントマネジメントなどの企画業務を担当している。
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