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【日本総合研究所が描く未来 vol.1】パーパス「次世代起点でありたい未来をつくる。」に込めた思いと、具体的な取り組み

SMBCグループの一員で、シンクタンク・コンサルティング・ITソリューションの3つの機能を有する総合情報サービス企業である日本総合研究所(JRI)。シンクタンク・コンサルティング部門は、「次世代起点でありたい未来をつくる。傾聴と対話で、多様な個をつなぎ、共にあらたな価値をつむいでいく。」というパーパスを掲げ、「自律協生社会」の実現に向け、さまざまな取り組みをおこなっており、そこではDXが重要な役割を果たしています。

日本総研が目指す、ありたい未来とは。その実現に向けて具体的にどのような取り組みを行うのか。日本総合研究所 取締役 専務執行役員の木下 輝彦氏に聞きました。

連載:JRI(日本総研)

  1. 【日本総合研究所が描く未来 vol.1】パーパス「次世代起点でありたい未来をつくる。」に込めた思いと、具体的な取り組み
  2. 【日本総合研究所が描く未来 vol.2】web3技術を活用し、障がい者の仕事づくりを支援

次の世代の人たちが胸を張り、元気に活躍できる社会を目指して

パーパス「次世代起点でありたい未来をつくる。」に込められた思いを教えてください。

なぜ今、日本社会や日本企業に元気がないのでしょうか。それは「成功パターンが変わった」からだと考察しています。

バブルに至るまでの日本は、人口ボーナス※のおかげで組み立て型の製造業を中心に、労働時間の投入で売上拡大を続けました。現在は、人口動態も注力すべき産業も違うため、同じやり方は通用しません。にもかかわらず、「どうやって昔の成功パターンを再現するか」という発想による取り組みが多いのです。

このまま同じやり方を続けていては、子どもや孫の代に幸せな日本社会が訪れることはありません。私たちが考えるべきは、今をどう幸せに生きるかではなく、次の世代の人たちが胸を張り、元気に活躍できる社会をどうつくるか、ではないだろうか。そのような思いを込めて「次世代起点でありたい未来をつくる。」という言葉を掲げています。

我々の提供するサービスも、半年から1年単位で企業や自治体の課題解決を目指すだけでは、日本の社会や企業全体を元気にすることはできません。より長期的な視点をもち、日本全体に視野を広げ、戦略設計から実行までをおこなう必要があると強く感じています。

※技術進歩などによる生産性上昇に伴って成長率が上昇するのに加えて、人口増によって労働力人口が増加して成長率が高まること。

自治体、国、民間、市民が互いにサービスを提供し合う「自律協生社会」

ありたい未来のひとつのかたちとして、「自律協生社会」を謳っています。あらためて、どのような社会なのかを教えてください。

自律協生社会とは、自律した個(市民/民間/自治体/国/研究機関/金融等)が、主体性をもった担い手となり、ともに協力し、相乗効果を高めあうことで生きる喜びを実感し、人間的な豊かさを実現できる社会のことです。

これまでは、企業や自治体が経済拡大を追求するなかで生み出す商品やサービスを、市民や消費者が受け取る、という構図でした。我々が目指すのは、自治体、国、民間、市民が互いにサービスを提供・享受し合い、誰もが社会のために主体的に貢献できる社会のあり方です。

ベースになっているのは、ウィーン生まれの思想家イヴァン・イリイチ氏による「コンヴィヴィアリティ(自立共生)」という概念です。簡単にいうと、人間に本来的に備わった個性や能力を、他者や自然との関係性のなかで最大限に発揮させる、という考え方で、日本総合研究所ではこの考え方をさらに発展させた「自律協生」という言葉を掲げています。

現代社会では、人間が自分たちで手段として生み出した技術や制度を、いつのまにか目的化してしまう傾向があります。たとえば学校はもともと、多様な人との議論や、専門家からの知見共有を通して、生きるために必要な知識や考え方を学習する場所でした。しかし、いつの間にかよりよい高校や大学に行くこと自体がゴールになってしまっています。

本来は「なんのためにこの手段を使うのか」から、各人が自分で考えて最善の選択がおこなわれるべきであり、それこそイヴァン・イリイチ氏の考える「自立」のあり方です。そのうえで我々が「自律」と言い変えているのは、「次世代=子どもたち」のことを強く意識したからです。自ら選択肢を持つことができ、あらゆるものに依存せず生きていく能力を見つけて欲しいと考え、「自律」という言葉を選びました。

また、「共生」を「協生」に言い換えたことにも意味があります。「共生」の場合、お互いの生物が補いながら生きるという意味ですが、「協生」は、お互いが刺激し合って成長していくという意味があります。我々は、社会の構成員それぞれが互いを刺激し合いながら、ともによりよく生きることを理想としており、「協生」という言葉を採用しました。

株式会社日本総合研究所 取締役 専務執行役員
木下 輝彦氏

理想の実現を目指し、デジタルを活用したさまざまなプロジェクトに取り組む

自律協生社会の実現に向けた、具体的な取り組みを教えてください。

大きく6つの注力テーマを設定し、テーマごとに複数のプロジェクトに取り組んでいます。テーマはそれぞれ「環境・エネルギー」「交通」「教育」「健康・医療・介護」「食農、食糧安全保障」「共育ち」です。

たとえば「環境・エネルギー」としては、石狩市でつくった再生可能エネルギーを、石狩市で消費・活用する「エネルギーの地産地消」の仕組みを構築することに取り組んでいます。消費しきれない余剰エネルギーは大型蓄電池や水素製造により周辺地域で活用する仕組みも実装予定です。

「健康・医療・介護」としては、高齢化の進行に伴い、多疾患を抱える患者が増加しており、また、要介護・要支援認定者の数も増えていますが、多職種の連携によって、より早期に疾患や認知機能低下などの兆候をつかみ、効果的に対処できるような医療提供体制の実現に取り組んでいます。具体的には「かかりつけ医」の制度化を推進しており、生活者からすると体の不調を病気になる前に相談しやすくなります。医療提供者側からすると、一次医療をかかりつけ医、二次以降の医療を専門医や病院が担う、と役割分担を明確化させることで、医療資源の効率的活用も可能になるのです。

いずれの取り組みにもデジタル活用は不可欠ですが、とくに新しい技術が活用されているプロジェクトに、発達障がいのある人々の活躍推進があります。

発達障がいは、グレーゾーンの方も含めると人口の10%程度に存在するとされています。その特性はさまざまで、コミュニケーションや環境への適応に困難を抱えやすい場合が多くあります。一方で、特定の分野での高い集中力や豊かな想像力といった強みがある場合も多くあるのです。

しかし、そうした強みが発揮される就労環境が整っている状況とは決していえません。決められた時間や場所、そして対面中心での業務などの定型発達を前提とした就労条件は、発達障がいのある人々にとっても働きやすいとは限らないからです。また、能力評価が総合的な観点からおこなわれることも多く、発達障がいのある人の個性や能力が活かされにくいという問題も存在します。障がい者雇用における発達障がいのある人の就職率は、障がい者全体の就職率46.2%に比べ13.1ポイントも低い33.1%にとどまるのが現実です。

そこで、日本総研では2023年ごろから、社会福祉法人である北海道済生会とともに、新しい就労環境の実現手段としてweb3の活用を始めました。具体的には、発達障がいのある児童・生徒に対してweb3ゲームのアバター・アイテム制作の環境整備を行いました。現役のクリエイターからの指導を受けられる講座も提供し、高い集中力・創造性・造形力の発揮を確認しました。制作した作品は世界中で販売が可能となります。こうした環境整備がさらに進むことで、発達障がいがある人が時間や場所に縛られることなく自分の作業に集中でき、強みを活かして多くの作品を生み出していけるようになるでしょう。

企業と生活者、両面から意識変革のためのアプローチ

今直面している課題と、その解決のための取り組みについて、お教えください。

今は大きく2つの課題に取り組んでいます。

まず1つ目は、社会的価値と経済的価値を一体的に生み出すスキームの確立です。

我々が取り組んでいるような社会的価値を追求したプロジェクトは、まだ先行事例が少ない領域です。投資したお金がいつ回収でき、どれほどの収益が上がるのかは誰にもわかりません。しかし企業は、3年以内の黒字化、5〜7年での累積赤字の一掃など投資対効果に関する一定の基準をもとに、プロジェクトへの参画を判断する傾向があります。長期的な視点をもち、本気で社会課題解決を考えるプレイヤーは、日本にはまだ少ないと感じています。

そこで日本総研では、「B Corp認証」の取得に向けた取り組みを始めました。「B Corp」とは、「B Corporation」の略で、「B」は“Benefit for all(全ての人々の利益)”を意味しています。米国の非営利組織が、社会的・環境的に価値の高い活動に取り組む企業を認証する制度です。世界中で8500以上の企業が認証されているなか、日本にはまだ40ほど(2024年4月現在)の認証企業しかありません。しかし、2024年3月にB Market Bulider Japanという国内のB Corpムーブメントを促進させるための組織が設立され、今後認証企業も増加していくことでしょう。日本総研もBMBJのパートナーとしてB Corp関連人材の育成に励んでいます。

認証されるには自社のサプライチェーンの見直しにはじまり、従業員やコミュニティ、取引先への配慮など社会への価値提供と収益の安定化を両立させなければなりません。ハードルが高く、多くの企業にとって後回しになっている状況だと思います。我々が認証取得に向け、挑戦する姿を示すことで追随する企業が生まれるのではないかと期待しています。

2つ目は、社会全体への啓発です。

社会課題解決に向けて主体的になれていないのは、企業だけでなく生活者の方々も同じです。いくら次世代にとって必要な活動であっても「私は知らない」と見向きもしない人は多い傾向があります。

日本総研では、2022年より武蔵野美術大学と「自律協生スタジオ」を開設し、学生の方々や先生方と一緒にコミュニティ・デザインに取り組んでいます。我々が口で説明するだけでは伝わらない難しい話もデザインの考え方を取り入れることで、よりわかりやすく伝えられるようになりました。また、実際に地域に住み込んで現地の方々と対話を重ねるなかで、明らかに町の方々も変わり始めています。

引き続き同プロジェクトに取り組みを続けるとともに、今回確立したスキームを全国へと広げ、生活者側からの意識変革も進めていければと思っています。

連載:JRI(日本総研)

  1. 【日本総合研究所が描く未来 vol.1】パーパス「次世代起点でありたい未来をつくる。」に込めた思いと、具体的な取り組み
  2. 【日本総合研究所が描く未来 vol.2】web3技術を活用し、障がい者の仕事づくりを支援
PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 株式会社日本総合研究所 取締役 専務執行役員

    木下 輝彦氏

    愛媛県出身。神戸大学大学院研究科博士課程前期課程修了(商学修士)。三井住友銀行を経て日本総合研究所へ。マーケティング分野を専門とし、アカデミアの世界を経て日本総合研究所に復帰。主にヘルスケア業界の戦略に関するコンサルティングに従事。現在はシンクタンク・コンサルティング部門を担当。グロービス経営大学院客員教授、小樽商科大学非常勤講師。

DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。