取り組み
2026.03.12更新

高卒採用に新風を。SMBCグループ×ジンジブが取り組む、高校生キャリア支援

高卒就職を取り巻く環境は、何十年もの間、制度も慣行も止まったままです。高校生は十分な情報や選択肢を持てないまま進路を決める一方、企業側は深刻な人材不足に直面しています。

こうした社会課題に対し、SMBCグループでは、社会的価値創造を目的としたグループ内の提案制度を起点に、高校生のキャリア支援をテーマとした取り組みを進めています。検討を進める中で、グループ子会社であるプラリタウンと、高卒採用支援の知見を持つ企業であるジンジブが連携。3社連携で、高卒採用のあり方そのものに向き合っています。

本記事では、その背景と現在進行形で広がりつつある取り組みの全体像について、関係者に話を伺いました。

「変わらない高卒就活の現実」と、届かない企業の人材ニーズ

高校生の就職を巡る社会課題とは何でしょうか。また、なぜその社会課題に取り組もうと考えたのですか。

ジンジブ 佐々木私はジンジブを立ち上げる以前、広告代理店を経営していました。新卒採用では毎年多くの応募がある一方で、自身も高卒から社会に出た経験があり「高卒も採用したい」と考えていました。ところが、人事担当者に相談すると、「高卒は高校教諭からの紹介がなければ難しい」と言われたのです。私が高校生だった40年以上前と同じ「1人1社制度」が、ほとんど変わらない形で残っていると知り、非常に驚きました。

それが今から10年ほど前のことです。当時、民間で高校生のキャリア支援に本格的に取り組む企業はほぼありませんでした。制度を変える議論も必要ですが、まずは民間から動かなければ何も変わらない。そう考え、ジンジブで高校生のキャリア支援を行う事業を立ち上げました。

高校生が「先生に勧められたから」という理由だけで就職先を決めてしまう状況や、大学生であれば当たり前のように行っているインターネットでの情報収集が、ほとんど行われていない実態は、本人にとっても社会にとっても大きな機会損失です。数多くあるベンチャー企業に就職したくても、高校生にはそもそも出会う機会がない。憲法で保障されている「職業選択の自由」が、実質的に機能していないのです。

株式会社ジンジブ 代表取締役
佐々木 満秀氏

SMBC 小川私も法人営業をしていたころ、「若い世代が育たない、早々に離職していく」というお客様の課題意識を何度も目の当たりにしてきました。毎年およそ14万人の高校生が卒業と同時に就職していますが、高卒就活特有のルールが残っていることで、入社後のミスマッチが起きているケースも少なくありません。

実は私自身、高校時代に起業を経験しています。当時は実力不足に加え、挑戦を後押ししてくれる社会的な環境も十分に整っておらず、結果的に挫折しました。その経験から、高校生のキャリア形成に何か貢献できないかと、ずっと模索していました。
そうした問題意識のもと、SMBCグループ内にある「社会的価値創造ミーティング(通称:シャカカチMTG)」という仕組みの中で、高校生のキャリア形成と企業の人材課題を掛け合わせ、何か新しい取り組みができないか検討を始めました。グループが掲げるマテリアリティ「日本の再成長」を考えても、次世代を担う人材への投資は欠かせないテーマだと感じています。

株式会社三井住友銀行 法人審査部 兼 社会的価値創造推進部
小川 敦大氏

企業と高校生をつなぐ、3社の取り組みと役割

3社はどのような形で連携しているのでしょうか。

SMBC 小川三井住友銀行の法人取引先に対し、高卒採用支援のノウハウを有するジンジブさまをご紹介しています。さらに、より多くの企業が高卒採用に取り組みやすい環境を整えるため、グループ会社であるプラリタウンとジンジブさまとの間で業務提携を結びました。

プラリタウン 並木私たちは日頃から中小企業のお客さまを支援していますが、多くの企業が最終的に人材不足という課題にいきつきます。その根本的な解決策の一つが「人の選択肢を広げる」ことだと考えていました。小川から高卒採用の現状を聞き、この取り組みは自社のミッションとも重なると感じ、ネットワークを活かして支援しています。

株式会社プラリタウン 代表取締役 CEO
並木 亮氏

具体的には、どのようなキャリア支援を行っていますか。

ジンジブ 佐々木弊社では以前から、高校生向けのキャリア教育プログラム「ジョブドラフトCareer」を提供し、自己肯定感とキャリア観の醸成を図っています。企業と直接出会える就活イベント「ジョブドラフトFes」や、就職応援コンテンツ「ジョブドラフトNavi」なども展開し、高校生自らが仕事を選べる環境作りに取り組んでいます。

最近はアルバイト経験のない生徒も増え、社会に出た後の働き方や職種そのものを知らないケースも少なくありません。建設業や製造業に限らず、IT業界や営業職など、さまざまな職種への可能性や、学歴に関係なく活躍できる職種があることを伝え、高校生の選択肢を広げることを目的としています。地域・情報・学校などさまざまな格差を解決することが最大の目的です。

プラリタウン 並木ジンジブさまの「ジョブドラフト Career」を、弊社のネットワークを活かして提供支援しています。

SMBC 小川加えて、別会社とともに高校4校に“就職した生の大人の声”を知ってもらうプログラムも昨夏から実験的に展開しています。卒業と同時に起業した人、NPO団体の方などあらゆる経歴の方にセッションいただく内容です。多くの高校・生徒の生の声を受ける中で、キャリアのロールモデルを見つけてもらうことが大切だと感じました。

私自身、学生時代に最も影響を受けたのは、著名な起業家の方に直接お会いし、お話を伺えた経験でした。地方の一高校生でも、さまざまな生き方があると知れたことは大きかった。単発ではなく伴走し続ける仕組みは、高校生にとって非常に心強いと感じています。

今後はジンジブさまのネットワークを活用し、本プログラムを「ジョブドラフトCareer」利用校にも試験提供していく予定です。

実際の「ジョブドラフトCareer」の様子

企業側に広がり始めた、高卒採用という選択肢

企業側には、どのような変化が生まれていますか。

プラリタウン 並木プログラム開始から3カ月で、すでに120件ほどの引き合いをいただいています。

ジンジブ 佐々木背景には、採用体制そのものの課題があります。国内の96%の会社は人事専属担当者がおらず、中小企業の多くは兼任者ばかり。採用活動のノウハウが不足し、ハローワークに求人を出すだけという状態になっている企業は少なくありません。とはいえ、高卒採用には学校訪問が必須なため、なかなかリソースが割けない。そんな状況を打破できる“出会い”を創出していると自負しています。

SMBC 小川創業以来、ずっと中途採用しかしていなかった企業も、高卒者に注目しはじめていますし、実際に高卒採用した会社からは非常に高い評価を得ています。

ジンジブ 佐々木事業承継が社会問題となっていますが、中途採用だけではイズム、マインドの継承が難しい傾向にあります。最初の就職先というのは、人生でとてつもなく大きな影響を与えます。入社先の理念や価値観、社風といったあらゆる影響が、真っ白なキャンバスに染みこみますから。そういう意味で、高卒採用は事業承継にも有効でしょう。

対面では届かない生徒に、DXとAIで選択肢を届ける

DXやAIも活用していると聞きました。

SMBC 小川キャリア支援と並行し、DXも欠かせません。高校生の約11人に1人が通う通信制高校においては、進路未決定のまま卒業する生徒が全体の約4割といわれています。先生方からは「しっかり進路指導したいが、コミュニケーションをとることすら難しい」、「精神的な問題で外出も難しい生徒もいる」と伺っています。対面だけでは支えきれない生徒がいるからこそ、テクノロジーの力が必要だと感じています。

ジンジブさまが提供しているメタバース上での合同企業説明会「ジョブドラフト ~メタバースFes~」は、リアルな説明会には行けないけれども、オンラインで参加してみる行動の第一歩を支援できていると思います。

ジンジブ 佐々木メタバース上では積極的に参加し、長所などをしっかり発揮できる学生が多い印象です。授業のように連続性があると離脱してしまう子でも、説明会をメタバース上で開催するとちゃんと参加してくれます。

SMBCグループとの連携によって、より多くの企業が求人情報を電子化し、求人サイトへ掲載していくことで、高校生が企業を知る機会も増やせます。「ジョブドラフトNavi」はすでに2,400社以上の企業掲載をするなど大きな社会的インパクトを与えています。

SMBC 小川高校生が自分のやりたいことに気づき、その道筋を大人が教える環境・インフラづくりは銀行としても使命です。その一環として、「AIを活用した求人情報と生徒のマッチング、面接練習システム」を導入し、対面が苦手な生徒でも、安心して対人スキルを段階的に向上できる環境を提供していきたいと考えています。また、半導体や蓄電池業界など、工業系の生徒を除いて活躍のフィールドをイメージしにくい業界に特化した、合同企業説明会を先生向けに実施し、専攻の垣根なしに、高校生のキャリアの幅を広げるお手伝いをしていきたいと思っています。

次世代の希望を育て、「日本の再成長」へ

プラリタウン 並木次世代への価値継承は「日本の再成長」に欠かせません。DX支援と人的リソース支援による社会課題解決を一気に実現できる、この取り組みの意義は大きいと思います。少子高齢化や根幹的な社会構造課題に対し、企業側の選択肢を広げることも解決策のひとつと期待しています。

ジンジブ 佐々木つまるところ、生きるエネルギー、活力とは希望から生まれます。住まいや学歴などの垣根を取り払い、選択肢を増やして「やれる」という自信を持たせることで、活力ある人生を送れる人が増えると確信しています。

SMBC 小川高校生が自分のやりたいことに気づき、その道筋を大人が教える環境とインフラづくりは、銀行としての使命と考えています。SMBCグループとして社会的価値の創造を掲げている中で、本業のビジネスにも寄与する成功事例をどんどんつくり、発信していきたいと考えています。


PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。

  • 株式会社ジンジブ 代表取締役

    佐々木 満秀氏

    高校卒業後に運送会社へ就職し、21歳で個人事業として運送業を開始。求人広告会社での営業経験を経て起業し、1998年に広告宣伝業を創業。2015年に株式会社ジンジブを設立し、高卒就職支援サービス「ジョブドラフト」を開始。求人サイトや就活イベント、キャリア教育、学校向けDX支援などを展開し、高校生の選択肢拡大に取り組む。2024年3月、東証グロース市場に上場。

  • 株式会社プラリタウン 代表取締役 CEO

    並木 亮氏

    2008年三井住友銀行へ入行。法人営業に従事した後、法人営業部門の企画・統括部署にて、事業開発に従事。2020年5月プラリタウンを起業、同社代表取締役に就任。

  • 株式会社三井住友銀行 法人審査部 兼 社会的価値創造推進部

    小川 敦大氏

    2009年三井住友銀行へ入行。法人営業に従事した後、融資審査の企画業務に従事。現在は融資審査の業務に加え、高校生のキャリア支援事業立上げの発起人としてプロジェクトを推進中。

その他の記事を読む

DX
(Digital Transformation)

類義語:

  • デジタルトランスフォーメーション

「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の頭文字をとった言葉。「Digital」は「デジタル」、「Transformation」は「変容」という意味で、簡単に言えば「デジタル技術を用いることによる、生活やビジネスの変容」のことを指す。

AI
(artificial intelligence)

類義語:

  • 人工知能

コンピュータが人間の思考・判断を模倣するための技術と知識体系。

Plari Town
(プラリタウン)

類義語:

SMBCグループが提供するデジタルサービス。ビジネスに役立つ多様なデジタルサービス、お客さまにぴったりな業界ニュースやレポートを、ワンストップで利用できるポータルサイトです。

メタバース
(Metaverse)

類義語:

「Meta」と「Universe」から形成される造語で、コンピュータやコンピュータネットワークの中に構築された、3次元の仮想空間やそのサービス。

  • その他の記事もチェック
    DX-link(ディークロスリンク)
    Webサイト
  • 最新情報はこちら
    DX-link(ディークロスリンク)
    X公式アカウント

アンケートご協力のお願い

この記事を読んだ感想で、
最も当てはまるものを1つお選びください。

アンケートにご協力いただき
ありがとうございました。

引き続き、DX-linkをお楽しみください。