請求と決済をつなぎ、バックオフィスを経営基盤へ。インフォマート×三井住友銀行の経理DX
請求と決済のデータがつながることで、企業の経理・財務は大きく変わる可能性を秘めています。これまで「管理業務」と捉えられてきたバックオフィスは、いま経営の意思決定を支える基盤へと進化し得る局面にあります。その変化の第一歩となるのが、経理・財務領域におけるDXです。
こうした中、企業間取引のデジタル化を支えるインフォマートと、法人の決済・資金管理を担う三井住友銀行は2018年から協業を開始。お客さまの経理業務におけるペーパーレス化やDX推進、法制度対応を支援してきました。
今回は、株式会社インフォマート 代表取締役社長 木村慎氏、執行役員 小野史裕氏、三井住友銀行 執行役員 トランザクション・ビジネス本部長 遠藤直樹氏、トランザクション・ビジネス本部 トランザクションバンキング営業部長 北谷展清氏に、協業の背景から現場の手応え、そして今後の展望までを伺いました。
バックオフィスは「守り」から経営基盤へ
人手不足や制度対応など環境が大きく変わる中で、バックオフィスの役割はどう変化していますか。
SMBC 北谷これまで経理・財務は、正確に処理すること自体が価値とされる“守りの業務”として捉えられがちでした。もちろん、ミスなく堅実に業務を遂行することは今でも重要です。ただ、いまは人手不足や制度対応、金利環境の変化などを受けて、単に滞りなく処理するだけでは企業競争力を支えきれない時代になっています。請求、支払、入金、消込、資金管理といった日々の業務データが整い、タイムリーに見えるようになると、経理・財務は“過去を締める部門”から、“次の打ち手を示す部門”へ変わります。私たちは、バックオフィスのDXは単なる効率化ではなく、経営の意思決定スピードと精度を高めるための基盤整備だと考えています。
トランザクションバンキング営業部長
北谷 展清氏
インフォマート 小野「攻めの守り」と言ったらやや矛盾しますが、守り、つまりガバナンス強化の比重が大きくなっていると感じます。法対応をきちんとしながら、標準化や可視化を進めていく。それだけではなく、私も経営によりインパクトを与えるような「攻め」の役割も増えてきていると感じています。トヨタ自動車が、財務・経理に精通したCFOを新社長に起用したことも、その象徴的な出来事だと考えます。
請求業務における、標準化の重要性について教えてください。
インフォマート 小野標準化しないと、業務が属人的に止まってしまい、コスト面も下がりません。さらに、自社だけではなく取引先を含めたサプライチェーン全体で進めなければ、ブラックボックスが増えていく一方です。標準化を進めることは、サステナブル経営にもつながっていきます。
SMBC 遠藤標準化の本当の価値は、単に業務手順を揃えることではありません。請求書の受領方法、承認の流れ、支払い方法、入金消込のルールが部門や拠点ごとに異なると、現場は何とか回っていても、経営としては全体像が見えません。一方で標準化が進むと、業務の再現性が高まり、属人化を防げるだけでなく、データを横串で見られるようになります。すると、どこに無駄があるのか、どこに資金が滞留しているのか、どこをさらに改善すべきかが見えてきます。つまり標準化は、効率化のためだけではなく、経営管理を高度化するための前提条件だと考えています。
遠藤 直樹氏
請求と決済をつなぐ。三井住友銀行×インフォマートが広げた経理DX
請求と決済をつなぐ協業には、どのような狙いがあったのでしょうか。
SMBC 北谷お客さまから見ると、請求と決済は本来ひと続きの業務です。請求書を発行し、相手先に届け、入金を確認し、消込をして、最終的に資金の状況を把握する。この一連の流れのどこかに紙や手作業が残っていると全体最適にはなりません。一方で、銀行が強みを持つのは決済や資金管理の領域であり、請求書発行や受領といった上流工程を単独でカバーするには限界があります。そこで、請求書領域に強みを持つインフォマートさまと連携することで、請求から決済までを分断せず、お客さまに一気通貫で価値提供できる体制をつくりたいと考えました。この協業の本質は、単なるサービス連携ではありません。お客さまのバックオフィス全体を、よりシームレスに、より経営に資する形へ進化させることにあります。
インフォマート 小野インフォマートは電子請求書サービスを10年以上前から提供していますが、当時はお客さまになかなか理解していただけず、サービス自体が広がりにくい状況にありました。標準化を進めようにも、社内のバックオフィスや取引先まで、多くの関係者を巻き込む必要があり、部分最適や現状維持バイアスが働いて、なかなか進みづらいというジレンマがありました。
一方で、三井住友銀行さまは当社では接点を持ちにくかった経営層とのつながりを多く有しています。そうした方々との対話を通じて、標準化することのメリットをご理解いただくことができ、トップダウンで標準化を推進いただけますので、お互いの強みを補い合う形で協業に至りました。
小野 史裕氏
協業後、実際にお客さまからはどのような声がありますか。
インフォマート 木村多くのお客さまから「業務が非常に効率化されて、数字が見えるようになった」という声をいただいています。三井住友銀行さまからご紹介いただくお客さまは規模の大きいケースが多く、グループ間のお金の動きを掴みづらかったところが、サービスの導入によって、「全体的な数字も見やすくなった」という評価もいただいています。
インフォマート 小野「インフラ」と置き換えていただけると分かりやすいかもしれません。三井住友銀行さまとインフォマートが提案したスキームを共通インフラとして、お客さまのグループ全体でお使いいただくことができます。グループ全体で同じものを使うことで、セキュリティの強化や内部統制が高まり、最終的にはグループ間の資金効率が向上したという事例もあります。
電子帳簿保存法やインボイス制度の改正が進む中で、取り組みが加速したとお聞きしました。
インフォマート 木村法改正の流れもありますが、コロナ禍と重なったことも大きかったと思います。バックオフィス業務、特に請求やお金回りのところは、多くの企業さまにおいて、あまり取り組みをされてこなかった実情がありました。しかしコロナ禍で出社が難しくなり、どうしてもシステムを使わざるを得なくなった。しかも電子帳簿保存法の改正やインボイス制度が開始されると、対応したシステムを導入せざるを得ない。よくも悪くも、DXは一定程度進んできたと感じています。
木村 慎氏
SMBC 北谷確かに、コロナ禍や電子帳簿保存法、インボイス制度は大きなきっかけでした。ただ、本当に成果を出している企業さまは、それを単なる“対応”で終わらせていません。請求書の電子化を入口に、承認フロー、支払い業務、入金消込、さらには資金管理まで見直していく。そこまでを視野に入れ対応することで、生産性向上やガバナンス強化、資金効率改善といった経営効果を実感されています。デジタル化そのものを目的にしてしまうと、部分最適に終わってしまうことがあります。私たちはインフォマートさまとともに、お客さまの請求業務のDXを起点に、経営に寄与する改革へつなげていくことが重要だと考えています。
請求から決済まで一気通貫に。Web21連携が変えた経理業務
今回、法人向けインターネットバンキング「Web21」とシステム連携を実施されたとお聞きしました。その狙いを教えてください。
SMBC 北谷Web21連携の狙いは、システムをつなぐこと自体ではありません。お客さまにとって価値があるのは、“請求書の処理はあちら、入金確認はこちら、消込はまた別作業”といった分断がなくなることです。請求データと銀行の入出金データがつながることで、確認、照合、消込といった日々の業務をよりスムーズに進められるようになります。これにより、経理部門の負荷軽減はもちろん、資金の状況もタイムリーに把握しやすくなる。つまりWeb21連携は、利便性向上だけでなく、経営管理のスピードを上げるための基盤整備だと考えています。
インフォマート 小野私どもの悲願は、請求と決済とを分断せずにデータとしてつなげることでした。請求書の発行から入金データの取得、消し込みまでの一連の業務をワンストップで行うことができる。このプロジェクトは千載一遇のチャンスだと思いました。
入金確認は日々の業務ですので、ワンストップでできることで利便性が大きく向上しました。お客さまからも非常に高い評価をいただいています。
SMBC 北谷DXという言葉は広く浸透しましたが、実際に社内改革に深く踏み込めている企業さまはまだ多くないように感じます。その中で、インフォマートさまとの連携を通じた請求・決済業務のデジタル化は、会社全体を見直すきっかけになり得ると感じています。
一つのプロジェクトをきっかけに、“ここだけ変えればよいのか”“資金管理まで見直すべきではないか”と議論が広がっていく。実際、キャッシュマネジメントの見直しや、グループ会社を含めた資金効率向上の議論につながるケースもあります。そうした意味でも、非常に意義のある取り組みだと思っています。
管理業務から経営の意思決定へ。経理・財務は「未来を考える」役割に
取引データが標準化・連携されることで、企業経営はどう変わると見ていますか。
インフォマート 木村業務のスピードや正確性が高まるだけでなく、データの蓄積による購買予測も可能になります。さらに請求から決済までがデータでつながれば、自社を超えて、取引先やサプライチェーン全体の経営力を底上げするような、大きな広がりが生まれるはずです。
SMBC 遠藤取引データが標準化され、請求から決済まで一貫して見えるようになると、企業経営は“締めてから考える”世界から、“動きを見ながら打ち手を考える”世界へ近づいていきます。これまでは月次で数字を確定させてから振り返るしかなかったものが、より早いタイミングで状況を把握できるようになる。すると、資金の置き方、投資判断、回収管理、グループ内資金の最適配置など、経営の意思決定そのものが変わってきます。経理・財務は、過去を処理する部門ではなく、未来の選択肢を示す部門へ進化していく。その基盤になるのが、データの標準化と連携だと思います。
最後に、今後の展望について教えてください。
インフォマート 木村請求から決済までをデータ化し、そのデータをもとに経営判断やガバナンス強化ができる。それは今後、会社が残っていく上で必要不可欠になってくると思います。企業が将来的に必要とするものを、できるだけ早く提供していく。データ経営の第一波を、両社で提供していきたいです。
SMBC 遠藤請求や決済は、どの企業にも存在する基幹業務です。だからこそ、この領域が変わるインパクトは大きい。個別企業の業務効率化にとどまらず、日本企業全体の生産性向上や経営改革の底上げにつながるテーマだと考えています。今後は、請求の電子化、決済のデジタル化、資金管理の高度化を、それぞれ別物として捉えるのではなく、企業経営を支える一つの基盤としてつなげていくことが重要です。インフォマートさまとSMBCは、それぞれの強みを持ち寄ることで、お客さまにとって“導入して終わり”ではない、継続的に価値が広がる仕組みを提供していきたいと思います。
PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。
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株式会社インフォマート 代表取締役社長
木村 慎氏
総合食品商社、コンサルタントを経てインフォマート入社。フード事業部で業界向けEDI「BtoBプラットフォーム 受発注」を全国の外食、宿泊業、卸売企業へ普及定着を進めた。2014年からは、国内最大級のデジタル請求書サービス「BtoBプラットフォーム 請求書」を現場リーダーとして立ち上げから普及まで牽引。その後、建設業界向けEDIサービス「BtoBプラットフォーム TRADE」を立ち上げ、取締役、代表取締役副社長を経て2026年1月、代表取締役社長に就任。現場視点の事業構築力と経営戦略を融合させ、日本のBtoBインフラのDXを推進している。
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株式会社インフォマート執行役員
小野 史裕氏
都市銀行にて主に決済業務やBPO事業に従事。2020年4月に株式会社インフォマートに入社し、Fintech推進室長としてFintech事業の立ち上げ、拡大に従事する。その後、事業推進3部部長として、大企業取引の新規営業の責任者やパートナー営業の責任者も兼務。2024年からは執行役員として、業界を横断したBtoBプラットフォームの提供・拡販や自治体へのBtoBプラットフォーム活用の推進を担う。
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株式会社三井住友銀行 執行役員 トランザクション・ビジネス本部長
遠藤 直樹氏
国内法人業務を中心に営業店及び本部でキャリアを重ね、2020年4月には刈谷法人営業部長、22年4月からは決済企画部長として、BtoBtoC領域を含む法人決済業務に関する戦略立案、企画管理を担当。24年4月からはトランザクション・ビジネス本部長として、決済ビジネス全般の企画・推進を担う。
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株式会社三井住友銀行 トランザクション・ビジネス本部
トランザクションバンキング営業部長北谷 展清氏
営業店での中小企業担当を経験し、外部企業へのトレーニー出向を経て、2000年より、法人向けの決済・デジタルチャネル企画・推進の業務に従事。法人向けインターネットバンキング(Web21)や、Web上の銀行窓口となる法人ポータル(ValueDoor)の立ち上げ等を担当。その後、法人向けのデジタルマーケティング体制の企画・構築や、各種手続/サービス申込のデジタル化、アライアンス企画等を推進。現在は法人向けの決済・資金管理、DXやキャッシュレス戦略等のソリューション営業を担う。
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