SMBCリーガルX株式会社(以下SMBCリーガルX)は2025年の設立と同時に、インド・ムンバイを拠点とするCLMベンチャー、Volody Products Pvt Ltd(以下Volody)との協業を発表しました。
電子契約が急速に普及する一方、契約プロセス全体のデジタル化は依然として進んでいない現状があります。両社はこの課題をどう捉え、どのような未来を描いているのでしょうか。
SMBCリーガルX Director, COO 平 皓瑛氏と、Volody創業者でCEOのDinesh Sharma氏にお話を伺いました。
契約DXの“未解決領域”に挑む
まず、SMBCリーガルXとVolodyが協業に至った背景について教えてください。
平コロナ禍を契機に電子契約は急速に普及しました。しかし、契約プロセス全体を見渡すと、作成、レビュー、管理・保管、分析といった一連の流れは依然としてアナログ業務が根強く残っています。ひとつのパーツだけを電子化しても全体の業務改善には繋がらず、顧客から周辺業務の要望が日々高まっているのを肌で感じていました。
また、企業の法務コンプライアンス意識もまだ十分とは言えず、契約行為自体が適切に運用されない、あるいは不祥事につながるといった課題も残っています。こうした問題は、企業規模にかかわらず「経営課題」として認識され始めていることを、現場で見てきました。
これは日本だけの課題ではなく、グローバルでも共通しています。こうした状況を踏まえ、私たちは契約業務を一気通貫で支えるContract Lifecycle Management(以下、CLM) 事業をグローバルに展開する必要があると考え、各領域で強みを持つパートナーとの連携を模索する中で、Volodyとの協業に至りました。
平 皓瑛氏
DineshVolodyは2015年のインドでの創業以来、契約プロセスの効率化に取り組んできました。祖業はワークフローシステムで、複数の部署が横断的に関与し、複雑に絡み合う業務プロセスを支える仕組みを基盤として、CLMサービスの開発を進めてきました。
インドには大小さまざまな企業が存在し、取り扱われる契約数も膨大である一方、その管理は紙やメールベースで行われるケースが多く、デジタル化の余地が非常に大きい市場です。私たちはAIを組み込んだCLMプロダクトを開発し、いち早くインドの大企業を中心に展開してきました。
一方で、販路の拡大には課題を抱えていました。SMBCリーガルXは、SMBCグループが有する巨大なネットワークを通じて顧客にリーチできるだけでなく、日本市場の特性を深く理解しています。
こうした強みを持つSMBCリーガルXと協業することで、インドに展開する日本企業が求める高い品質基準にも応えられると感じました。さらに、グローバル展開を前提とした戦略において、インド市場でも相互に補完し合える関係性を構築できる点が、協業の決め手となりました。
信頼・技術・価値観──協業を決断した理由
Volodyにとって、リーガルXはどのようなパートナーなのでしょうか。
DineshSMBCリーガルXは、SMBCグループの一員として高い信頼性と強固なネットワークを有しており、日本企業の契約文化や業務プロセスにも精通しています。私たちだけでは十分にカバーしきれない領域を補完してくれる存在でした。
技術面においても、Volodyが有するCLMおよびAI関連技術と、SMBCリーガルXの高いサービス開発力を組み合わせることで、より付加価値の高いソリューションを提供できると感じました。さらに、「グローバルで共に成功し、それをインドから実現していこう」という強いパッションを、SMBCリーガルX株式会社 President, CEOの三嶋さんや平さんから感じられたことも、協業を決断した大きな理由の一つです。
Dinesh Sharma氏
平Volodyはプロダクトの完成度が高く、生成AIの活用を含めた技術力において非常に優れています。さらに、Dineshさんは金融機関での勤務経験を持ち、セキュリティやガバナンスに対する理解も深い方です。また、法律事務所を家族で経営している背景から、法務の観点においても豊富な知見を有しています。商談を重ねる中で、銀行基準でサービスを運用する私たちと、視点や価値観が非常に近いことが明らかになりました。
加えて、協働事業に対する強いコミットメントを常に感じており、「この方であれば長期にわたり信頼できるパートナーシップを築ける」と確信しました。SMBCリーガルXとして、Volodyと手を組むことに迷いはありませんでした。
技術と市場理解が生んだ、新しいCLMのかたち
先日リリースされたLX Signはどのようなプロダクトなのでしょうか。
平LX Signは、グローバル利用を前提に設計した電子契約サービスです。SMBCリーガルXの提供する「LegalXross」プラットフォーム内で提供しています。LX Signは国内法に準拠しながらも、国や地域に応じて海外仕様の電子署名機能を追加し、順次対応していきます。これはVolodyとの協業があって初めて実現できるものです。
多言語設定、手書き風署名、フリーテキスト入力、並列承認など、企業規模を問わず柔軟に利用できる高度な機能を備えています。また、「LegalXross」のAI契約書管理サービスとシームレスに連携し、契約締結から管理までの一貫した体験を提供します。
DineshLX Signは、Volodyが持つ技術力とSMBCリーガルXの市場理解が組み合わさって生まれた成果です。企業が国内外で契約業務を行う際、統一されたプロセスとツールを提供していける点は大きな強みです。
インドから始まる、グローバルCLM戦略
今後のグローバル展開やインド市場についての考えを教えてください。
Dineshインド市場では、契約業務のデジタル化が急速に進んでいます。日系企業の進出も増えており、SMBCリーガルXとの協力は非常に大きな意味を持ちます。外務省やJETROなどの公開資料によれば、現在、約1,500社の日系企業がインドに進出しており、今後はさらに増加すると見込まれています。両社が連携することで、インド企業へのCLM導入支援はもちろん、日系企業が現地において適切に契約管理を進めるためのサポートも可能になります。
今後は、SMBCリーガルXと共にアジア各国へもサービスを展開し、グローバルで統一された契約プラットフォームの提供を目指します。
平日本企業の海外展開は増加し、契約管理の複雑性は高まっています。各国の法律や言語、業務プロセスに対応するCLMを提供するには、現地に強いパートナーと協力することが不可欠です。Volodyとの協業は、まさにその実現を加速させる取り組みです。
世界標準の契約基盤を、共に創る
最後に、両社が描く未来についてお聞かせください。
平契約情報は、企業経営の中核を担う重要なデータです。これを正しく、かつ効率的に扱える環境を整えることが、日本企業の競争力向上につながると考えています。また、生成AIを日々の業務に当たり前のように取り込み、業務を積み重ねていくことで、それ自体が将来に向けた価値ある資産となっていきます。
Volodyと共に、国内外の企業が安心して利用できる契約基盤を構築し、業務プロセスの中核となるCLMの新しいスタンダードをつくっていきたいと考えています。
Dinesh私たちの目標は、企業が国境を越えて事業を展開する際に、契約管理が障害ではなく推進力になる世界をつくることです。SMBCリーガルXとの協業はその実現に向けた大きなステップです。今後も共同で開発を進め、グローバルCLMの未来を切り開いていきたいと思います。
PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。
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SMBCリーガルX株式会社 Director, COO
平 皓瑛氏
2011年東京およびタイにてモバイルゲームパブリッシング事業およびクラウドファンディング事業を展開する企業を創業。2017年弁護士ドットコム(株)へ入社後、2019年SMBCクラウドサイン(株)の取締役に就任。2025年(株)三井住友銀行へキャリア入行し、2025年より当社Director, COOに就任。経済同友会会員。
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Volody Products Pvt Ltd Founder & CEO
Dinesh Sharma氏
ドイツ銀行にて12年間、信用リスク管理・財務・業務自動化に従事。2010年CRISIL(S&P Global傘下)のグローバルCFOに就任し、財務・調達・コンプライアンスを統括。2015年、契約管理を自動化するVolody Products Pvt Ltdを創業し、グローバル展開を推進。
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