事業を動かす、デザインの力。――三井住友銀行のデザイン組織「SMBC DESIGN」のシゴト #3【Oliver’s Guide編】
※本記事は「SMBC DESIGN」のシゴトの連載記事です。掲載写真は、「Oliver's Guide編」「Oliveコンサルティング編」の両記事の出演者による集合写真です。
三井住友銀行のデザイン組織「SMBC DESIGN」は、制作支援にとどまらず、事業の初期段階から関わり、お客さまの体験全体を設計する存在へと役割を広げてきました。本連載では、その仕事の現場に迫ります。
今回取り上げるのは、開始から約3年でアカウント数が800万に到達した、個人向け金融サービス「Olive」です。多機能なサービスであるからこそ、口座開設後にお客さまが迷わず設定を進め、必要な機能に自然とたどり着ける導線づくりが重要になります。近年は特に、ぱっと見て「分かる」「使えそう」と思ってもらえるかどうかが、最初の一歩を大きく左右します。
その体験設計の最前線に、デザインの力があります。今回は、部署の壁を越えた共創の一例として、Olive口座を開設したお客さまの「その後」を支えるガイドツール「Oliver’s Guide」に着目。リテールIT戦略部・リテールマーケティング部のメンバーに、その舞台裏とインハウスデザイナーの役割を伺いました。
連載:SMBC DESIGN
- デザインの力で金融の可能性を切り拓く。「制作支援」から「体験設計」へ——三井住友銀行のデザイン組織「SMBC DESIGN」の10年 #1
- デザインで変わる、銀行との出会い方。シンプルモード、Olive LOUNGE、そしてストアへ——三井住友銀行のデザイン組織「SMBC DESIGN」のシゴト #2
- 事業を動かす、デザインの力。――三井住友銀行のデザイン組織「SMBC DESIGN」のシゴト #3【Oliver’s Guide編】
- 事業を動かす、デザインの力。――三井住友銀行のデザイン組織「SMBC DESIGN」のシゴト #4【Oliveコンサルティング編】
お客さまの行動を徹底的に洗い出し、直感的に「使い始められる」設計へ
Oliver’s Guideが生まれた背景を教えてください。
﨑上野当行では、部署横断でさまざまなミッションに取り組む「スクワッド」が活発に動いています。本件もリテールIT戦略部・リテールマーケティング部による「口座利用促進スクワッド」として始まりました。
﨑上野 尊氏
まずは「今、お客さまにどういうコンテンツを提供できているか」をメンバーで洗い出したのですが、そこで浮かび上がったのが、Olive口座開設後のお客さまに対して、設定や利用方法、関連サービスの活用までを一気通貫で案内するコンテンツが十分に整っていないという課題でした。
個別の商品説明ページや各サービスの案内は、それぞれの担当部署で用意されていました。一方で、Olive全体として「最初にこれを設定すると便利」「こんなサービスがある」といった横のつながりを紹介する、ポータルサイトのような場所の提供が十分とは言えない状況でした。
その課題を受け、どのように企画が進んだのでしょうか。
﨑上野スクワッドの目的は、単にガイドを作ることではありませんでした。Oliveを使い始めたお客さまに、どうすれば自然に使い続けていただけるのか。その体験を考えることが出発点でした。
そのためにはUXやCXの観点が欠かせないと考え、早い段階からSMBC DESIGNにも入ってもらいました。
Oliver’s Guideではどのようなことを意識しながら設計しましたか?
大安ガイドのようなツールは、ただ作っただけでは、必ずしも必要な人に届くとは限りません。困りごとが明確な人や解決したいことがある人は来てくれますが、そもそも何をすればいいのか、どんな機能があるのか、気づいていないこともあります。また、ガイドを見てもらうこと自体が目的ではなく、その先で実際に設定し、使い始めてもらうところまでを体験として考える必要があります。
そこで、「ガイドに何を載せるか」から考えるのではなく、まずはお客さまがどのような状況に置かれ、どこで迷い、何が分かれば次の行動に進めるのか、お客さまの行動や背景を洗い出し、Oliveを自然に理解し、使い始められるよう設計していきました。
大安 慧斗氏
小栁まず、Olive開設後3カ月ほどの定着期間におけるお客さまの行動を、とにかく出し切りました。そのうえで、潜在的なニーズをあぶり出し、それを満たすにはどんなコンテンツが必要かを考え、設計に落とし込んでいきました。
小栁 慶氏
﨑上野幅広いお客さまが使う金融サービスでは、説明をじっくり読む人もいれば、読まずにまず触ってみたい人もいます。そのどちらのお客さまにも、設定や利用にたどり着いていただけるような体験を作る必要がありました。決まった答えがあるわけではなく、さまざまな状況やお客さまに対応していく難しさがありましたね。
大安さまざまなお客さまに、「自分にも関係がありそう」「やってみよう」と感じてもらえることを意識しました。だからこそ、文章だけで説明するのではなく、GIFアニメーションで実際の画面や操作の流れを見せることで、読む負担を減らし、直感的に「自分にもできそう」と感じてもらえるよう工夫をしました。
ガイドの詳細ページも、最初に大きなタイトルとイラスト、その設定によって得られるメリットやポイントを示し、興味を持ってもらったうえで、具体的な手順へ進める構成にしています。手順自体も3ステップで完了できるよう、できるだけシンプルに整理しました。興味を持ってもらえれば、少し難しくても読もうと思ってもらえる。ぱっと見た瞬間に、分かりやすそう、お得そう、面白そうと思ってもらえるか。いわば「0.5秒の戦い」です。
デザイナーが入ることで、課題の解像度が上がる
企画立ち上げ段階からデザイナーが入るメリットは何でしょうか?
﨑上野ガイドを作るにしても、デザイナー抜きで進めると設計段階での課題整理をさらっと済ませてしまいがちです。課題がどこにあるのか、何を伝えればいいかを徹底的に深掘りできたのは、SMBC DESIGNが入ってくれたからだと感じています。
小栁デザイン思考に基づいて進めなければ、課題解決の方法が単なるFAQにとどまっていたと思います。自分たちが提供したいこと、お客さまが実際に求めていること、そして開発側で実現できる範囲。この三つが重なる部分を見極めて形にしていく過程が、非常に勉強になりました。抽象から具体に落とし込む方法を、ゼロから学んだ気がします。
﨑上野会議の中では、それぞれの意見やビジョンが異なる場面もあります。だからこそ、それをしっかりと言語化し、残っている論点を整理しながら、ユーザージャーニーを設計していく必要がありました。そこは大安さんががんばってくれましたね。
大安会議では、ある意味自分が「発散させに行く役」だったかもしれません(笑)。最初からひとつの答えに絞るのではなく、まずはさまざまな意見や可能性を出してもらうようにしていました。一見似たような言葉でも、各々の立場や経験で思い描いているものが少しずつ違うことがあります。そこで、議論を発散させるだけでなく、論点を整理し、チームとして納得できる形にまとめていくことを意識していました。
佐藤UX/CXの設計にあたり、お客さまの体験を深掘りし、どこに価値を置くべきかを相談できたことは大きかったです。アプローチの仕方も非常に刺激になりましたし、解像度がぐっと上がった感覚がありました。
佐藤 唯衣氏
大安Oliver’s Guideに限らず、常に「この案件にデザイナーがいる意味はなんだろう」と考えながら取り組んでいます。金融サービスは正確性や安心・安全が求められている分、情報や仕組みが複雑で難しいといったイメージが強いですが、そこを整理して、お客さまが理解しやすく、迷わず使える体験に変えていけるところが面白いです。画面や表現だけでなく、企画の初期段階から入り、最終的にファンになっていただけるところまでをすべて一貫して考えられることが、金融デザインの醍醐味だと思っています。
最終目的は、「Oliveを好きになって使い続けてもらう」こと
Oliver’s Guideは2025年12月末に正式リリースされたそうですが、リリース後の反応はいかがですか?
佐藤店舗でOliveアカウントを開設された際にOliver’s Guideを一緒に紹介していますが、「お客さまが帰宅してから確認できるから安心」「情報が散らばっていたのが、Oliver’s Guideひとつで各サービスのメリットが分かる」という声をいただいております。
これまでは分厚い紙の案内冊子をお渡ししていましたが、Oliver’s GuideならQRコード※を読み取っていただくだけでよいので、その利便性も評価されていますね。
※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
今後、Oliver’s Guideをどのようにブラッシュアップする予定でしょうか?
佐藤Oliveを開設された方に、一番モチベーションが高いタイミングで使い始めてもらうことが、その後の継続利用の鍵になると考えています。今後はプッシュ通知やアプリ上での案内なども活用し、お客さまが求めている情報を適切なタイミングで届けられるようにしていきたいです。
大安一つひとつの体験を通じて、Oliveを好きになってもらい、使い続けてもらえるところまでつなげていきたいですね。お客さまとOliveの長期的な関係を育てていくまでを見据えて、デザインしていきたいと思っています。
﨑上野Oliver’s Guideはあくまで手段です。見て終わりではなく、実際に使っていただくことが大切です。Oliver’s Guideに限らず、お客さまが迷わず、気づいたら設定を完了できているような体験を追求していきたいと思います。
連載:SMBC DESIGN
- デザインの力で金融の可能性を切り拓く。「制作支援」から「体験設計」へ——三井住友銀行のデザイン組織「SMBC DESIGN」の10年 #1
- デザインで変わる、銀行との出会い方。シンプルモード、Olive LOUNGE、そしてストアへ——三井住友銀行のデザイン組織「SMBC DESIGN」のシゴト #2
- 事業を動かす、デザインの力。――三井住友銀行のデザイン組織「SMBC DESIGN」のシゴト #3【Oliver’s Guide編】
- 事業を動かす、デザインの力。――三井住友銀行のデザイン組織「SMBC DESIGN」のシゴト #4【Oliveコンサルティング編】
PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。
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株式会社三井住友銀行 リテールマーケティング部 デジタルチャネル推進グループ
﨑上野 尊氏
SIer・事業会社でのシステム・サービス企画を経験後、2023年に三井住友銀行に入行。SMBC内の各種商材のデジタル推進企画や、Oliveのオンボーディング推進を担当。
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株式会社三井住友銀行 リテールマーケティング部 デジタルチャネル推進グループ
佐藤 唯衣氏
2022年に三井住友カードに入社。2023年より三井住友銀行へ出向し、オウンドメディアの企画・運営やSMBCの各種商材・Vポイントの推進を経験。現在はOliveのオンボーディング推進および利用推進を担当。
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株式会社三井住友銀行 リテールIT戦略部 デザイングループ
大安 慧斗氏
2017年に大手通信企業グループへ入社。自社サービスの企画・運営およびグループ企業向けのUX/UIデザイン支援に従事。2024年に三井住友銀行へ入行し、サービスデザインを専門に、デジタル・リアルを横断した顧客体験および事業体験の設計・改善を推進。
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株式会社三井住友銀行 リテールIT戦略部 事業開発グループ
小栁 慶氏
2024年に三井住友銀行へ入行。リテールIT戦略部にて三井住友銀行アプリやOliveの利用推進、およびOlive関連サービスの企画・開発を担当。
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