保険代理店事業の新会社三井住友インシュアランス&フィナンシャルサービスは、なぜ「挑戦」を掲げたのか。SMBCデジタルマーケティングが伴走したブランディング戦略
「保険とは、挑戦のためにある。」——保険における「守り」と「挑戦」という、一見相反する言葉を掛け合わせたメッセージを掲げ、新たな保険代理店像の構築に挑む会社が誕生しました。銀泉株式会社(以下、銀泉)、三井住友海上火災保険株式会社(以下、三井住友海上)、株式会社三井住友フィナンシャルグループ(以下、三井住友フィナンシャルグループ)の3社が共同出資して設立した、三井住友インシュアランス&フィナンシャルサービス株式会社(以下、SMIF)です。
新会社として何を掲げ、どのように社会やお客さまに伝えていくのか。ブランディング戦略からロゴ、キャッチコピー、キービジュアル、ブランドムービー、WEBサイト制作まで、一気通貫で伴走支援したのが株式会社SMBCデジタルマーケティング(以下、SMBCデジタルマーケティング)です。
その舞台裏を、三井住友インシュアランス&フィナンシャルサービス株式会社 代表取締役社長 金丸宗男氏、同社 執行役員/総合企画部長 佐藤泰和氏、株式会社SMBCデジタルマーケティング 代表取締役社長 奥谷智也氏、同社メディア事業部長 渡部良尋氏に聞きました。
「選ばれる保険代理店」になるために、新会社を設立
会社設立の背景を教えてください。
金丸私たちは保険業界を、国民の生活や日本経済を支える「重要な社会インフラ」だと考えています。また近年は、お客さま保護や経営の健全性を確保するため、保険会社や保険代理店への規制が強化されています。こうした中で、これからの保険代理店には、透明性や中立性の確保に加え、経営品質の向上や高い提案力、そして変化への柔軟な対応が求められています。そこで私たちは、「これからどのようにお客さまに価値を提供し続けるべきか」を改めて考え、新しい枠組みを作る必要があると判断しました。
三井住友海上が持つ保険設計の高度な知見と、銀泉の強みである販売力を掛け合わせることで、より質の高い提案ができるようになるのではないか、という考えです。こうして新会社SMIFの設立に至りました。
金丸 宗男氏
新会社設立にあたり、SMBCデジタルマーケティングにコミュニケーション戦略全般を依頼した理由を教えてください。
金丸我々が新しくつくる保険代理店はどのような存在であるべきか。その点は非常に慎重に考えていました。単に売上や利益の規模を追求するだけではなく、透明性や信頼性を備え、「ここに任せれば安心だ」とお客さまから支持される存在にならなければ、これからの時代は選ばれません。
今回は社名に「三井住友」を掲げることになります。その名前には重みがあり、社会やお客さまから寄せられる期待も大きい。だからこそ、その意味を深く理解してくれるパートナーにお願いしたいと考えていました。SMBCデジタルマーケティングは、三井住友フィナンシャルグループと電通グループの合弁会社です。三井住友グループへの理解と、コミュニケーション領域の専門性の両方を持っている点に安心感がありました。
そこで、どのようなメッセージを発信していくのかを出発点に、コミュニケーション全般、すなわちロゴやキャッチコピー、キービジュアル、ブランドムービー、WEBサイトの制作やローンチイベントの企画に至るまで、トータルでご支援いただきました。
奥谷我々、SMBCデジタルマーケティングは、SMBCグループや金融業界への深い知見を持っています。私自身も電通時代から金融機関のマーケティングやブランディングを数多く担当してきました。SMIFの皆さまと議論を重ねる中で、「一緒にSMIFを成長させる」という共通認識が生まれ、パートナーとして選んでいただけたのだと思っています。
奥谷 智也氏
ロゴ、キャッチコピー、ブランドムービー、ウェブサイトまで。新会社の世界観を一気通貫で設計
コミュニケーション戦略において最も重視したことは何ですか。
金丸新しい保険代理店として生き残るには、「今までにない価値」が必要だと感じていました。従来の延長線上ではなく、変化を恐れず、自ら変わっていく存在でありたい。その意志を表現したかったんです。
そこで奥谷社長から提案いただいたのが、「挑戦」というキーワードでした。社内でもヒアリングを行ったところ、「保険は守りのイメージが強い業界だけれど、我々は新しい挑戦を始める会社。その姿勢を象徴する言葉だ」という声が非常に多かった。
そこから生まれたのが、「保険とは、挑戦のためにある。」というキャッチコピーです。この言葉には、「お客さまの挑戦を支えたい」という思いと同時に、「我々自身も挑戦する」というインナー向けのメッセージも込められています。
佐藤社内にローンチプロモーションチームを立ち上げ、年齢や性別を問わず幅広いメンバーから意見を集めました。「挑戦」という言葉が、新会社を象徴する言葉として社内で非常に共感を呼びました。
佐藤 泰和氏
渡部実は、挑戦というキーワードが生まれる前は、「信頼」や「安心」を強調したキャッチコピーを提案していたのですが、SMIF側から「もっと攻めてほしい」というフィードバックをいただきました。
渡部 良尋氏
「保険とは、挑戦のためにある。」というキャッチコピーの具体的な設計を教えてください。
奥谷保険代理店にとって、信頼や安心は欠かせない価値です。ただ、新会社として「信頼できます」と打ち出すだけでは、それは当然のこととして受け止められてしまう。では、SMIFならではの価値は何か。SMIFの皆さまとのセッションを繰り返して、そこを考えた時に浮かび上がったのが、「挑戦」という言葉でした。
今回、すべての表現を同じトーンにそろえたわけではありません。ロゴや名刺、封筒、WEBサイトでは、金融グループとしての信頼感や品格を大切にしました。一方で、ブランドムービーやキービジュアルでは、「挑戦」という言葉が持つ力をより強く表現しています。
信頼と挑戦。この一見異なる要素を、どこでどう表現するか。その全体設計が重要でした。ブランドコンセプトから各種クリエイティブ、WEBサイトまですべてを任せていただいたからこそ、役割を整理し、全体として一つのブランド体験にまとめることができたと感じています。
ブランドムービーなどは、どのような工夫をされたのでしょうか。
奥谷保険や金融機関のクリエイティブは、どうしても落ち着いた表現になりがちです。しかし今回は、タイポグラフィ(文字や文章を読みやすく、かつ美しく配置するデザイン技術のこと)を軸にしたブランドムービーで、そのデザインやモーション、テクスチャ、ナレーション、音楽まで含めて、かなり挑戦的な表現に振り切りました。従来の保険業界にはないクリエイティブになったと思います。
佐藤実はブランドムービーも複数案をご提案いただいたのですが、最もチャレンジングだった案が、社員からも圧倒的に支持されました。
WEBサイト制作で重視したポイントは何でしょうか。
奥谷WEBサイトは、新会社の「顔」です。洗練されたデザインはもちろん、初めて訪れる方にも直感的に使いやすく分かりやすいUI/UX設計を重視しました。
金丸銀泉のウェブサイトは、どちらかといえばオーソドックスなものでした。だからこそSMIFでは、見た瞬間に「何が始まるんだろう」と興味を持ってもらえるサイトにしたかった。ただし、金融業界としての信頼感も損なってはいけない。その絶妙なバランスを表現していただけたと思っています。
ロゴ作成からキャッチコピー開発、WEBサイトも含めてすべてをお願いしたからこそ、我々が置かれている状況や訴えたいメッセージをぶれなく表現してくださったと思っています。
新卒採用サイトもSMBCデジタルマーケティングが担ったと伺っています。採用面では、どのようなことを伝えたいと考えたのでしょうか。
金丸保険は、人や企業を支える社会貢献性の高い仕事です。そして保険代理店の醍醐味は、お客さまと直接向き合い、喜ぶ姿を見られることにあります。
SMIFは、50社以上の保険会社の商品を取り扱っており、お客さまに最適な保険をカスタマイズして提供できます。だからこそ、安定だけを求めるのではなく、「難しい課題に主体的に向き合いたい」「自ら挑戦したい」というマインドを持つ人に来てほしいと思っています。
「保険とは、挑戦のためにある。」というキャッチコピーには、実はもう一つの意味があります。お客さまの挑戦を支え、自分たち自身も挑戦する——その言葉は同時に、挑戦する人と共に働きたいという採用へのメッセージでもあります。そのすべてがこのひと言に凝縮されています。
奥谷就職情報サイト上では、保険部門の人気ランキングで上位に来ているそうで、しっかりと成果が見え始めていることはとてもうれしいですね。
ブランディングからDXへ。次のフェーズも見据えて
今後の展開を教えてください。
金丸今後は、より高度で専門性の高い提案ができる会社へ進化していきたいと考えています。保険業界では今後さらにコンプライアンスや専門性が求められ、地震・水害・火災などのリスクも増大していく。その中で、企業内保険代理店が「専門家に任せよう」と切り替える流れも加速していくでしょう。「まずSMIFに相談しよう」と思っていただける存在を目指したいですね。
SMBCデジタルマーケティングには、ロゴやキャッチコピー、WEBサイトなど多くの制作物を支援いただき、おかげさまで無事にスタートを切ることができました。ただ、新会社としての発信はここで終わりではありません。事業が進化すれば、私たちが伝えるべきメッセージも変化していきます。今後も時代の変化やお客さまのニーズを踏まえながら、継続的に伴走いただきたいと考えています。
奥谷今回のキャッチコピーや各種クリエイティブは、3社が集まって生まれたSMIFの社員の皆さまが同じ方向を向くための羅針盤のような役割を果たすものだと考えています。これで終わりではなく、今後も、SMIFの成長に伴走する関係でありたいと考えています。
金丸DXの観点でも、保険業界はまだ紙文化が根強く残っています。今後はデジタル契約やデータ活用、AI活用も含め、ビジネスモデル全体を進化させていく必要があります。
奥谷SMBCデジタルマーケティングは、もともと金融データを活用したデータマーケティングを強みとしてきた会社です。そこに、電通グループのケイパビリティも掛け合わせながら、現在は支援領域を広げています。
今回はまず、新会社立ち上げにおけるブランディング支援が中心でしたが、今後はDXやデータ領域の高度化など、事業領域でも伴走できると考えています。
PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。
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三井住友インシュアランス&フィナンシャルサービス株式会社 代表取締役社長
金丸 宗男氏
1987年、株式会社住友銀行(現・株式会社三井住友銀行)に入行。主に法人営業・ホールセール部門を中心にキャリアを重ね、2015年同社執行役員、2017年常務執行役員、2021年専務執行役員を歴任。2024年には、同社取締役兼副頭取執行役員に就任しグループの中核事業を担う。2025年に銀泉株式会社代表取締役社長に就任。2026年、株式会社三井住友フィナンシャルグループ、三井住友海上火災保険株式会社との共同出資により設立された、三井住友インシュアランス&フィナンシャルサービス株式会社の代表取締役社長にも就任し両社のトップを兼務。SMBCグループにおける長年の法人金融・ホールセール領域での経験を背景に、不動産・駐車場事業を展開する銀泉、および新設の保険代理店会社の経営を通じて、金融と保険の融合による付加価値創出に取り組んでいる。
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三井住友インシュアランス&フィナンシャルサービス株式会社 執行役員/総合企画部長
佐藤 泰和氏
1992年、住友海上火災保険株式会社(現・三井住友海上火災保険株式会社)に入社。商品、企業営業、経営企画、リスク管理など多様な分野で経験を重ね、損害保険事業全般に従事。
2025年、銀泉株式会社執行役員に就任し、新会社設立を推進。2026年、三井住友インシュアランス&フィナンシャルサービス株式会社執行役員 総合企画部長に就任。経営戦略の策定および推進を担う。 -
株式会社SMBCデジタルマーケティング 代表取締役社長
奥谷 智也氏
株式会社電通に入社後、マーケティング局・クリエイティブ局・デジタル局でのクライアントのマーケティング・ブランディング支援業務を経て、事業開発・事業投資・ベンチャー投資部門でDX戦略・データ戦略支援等のトランスフォーメーション領域のプロジェクト責任者として多数従事。事業開発とマーケティング・ファイナンスのスキルを併せ持ち、ベンチャーピッチの審査員やアクセラレータープログラムの講師も多数担当。2021年にSMBCグループのデータビジネスを推進する電通グループとの合弁会社「株式会社SMBCデジタルマーケティング」を設立し、代表取締役社長に就任。
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株式会社SMBCデジタルマーケティング メディア事業部長
渡部 良尋氏
株式会社三井住友銀行に入行後、リテール担当として資産運用コンサルティングや中小企業向けの法人営業推進業務を経て、2022年より株式会社SMBCデジタルマーケティングに参画。
メディア事業部長として、豊富な金融データを活用したSMBCオウンドメディア広告の営業企画・推進を始め、SMBCグループ内外を問わず、幅広いマーケティング課題に対するソリューションの戦略立案・実行支援に従事。
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