3年連続「DX銘柄」選定。初の「DXグランプリ企業」へ。SMBCグループが描くAI時代の企業変革
企業価値の向上につながるDXを推進する仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績を上げている企業――。東京証券取引所に上場する企業の中から、こうした企業を選定するのが「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」です。
経済産業省、東京証券取引所、情報処理推進機構(IPA)は2026年4月、「DX銘柄2026」を公表しました。SMBCグループはDX銘柄に3年連続で選定され、今回はその中でも特に優れた企業に贈られる「DXグランプリ企業」に初めて選ばれました。
2026年6月5日に開かれた「DX銘柄2026選定企業発表会」で繰り返し語られたのは、「AIをどう活用するか」ではなく、「AIを前提に企業をどう変革するか」ということでした。
SMBCグループはなぜグランプリ企業に選ばれたのか。そして、AI時代の企業変革をどのように進めようとしているのか。発表会で語られた内容から、その戦略をひも解きます。
「DX」から「AX」へ。DX銘柄2026が問いかけたもの
発表会の冒頭、経済産業省の山田 賢司副大臣は、今年のDX銘柄を象徴するキーワードとして「AX(AIトランスフォーメーション)」を挙げました。
「今後は単なる業務効率化のツールではなく、AIを軸として業務そのものや組織、企業文化、風土を変革し、企業のありようを根本的に変えていくことで競争力の強化につなげていくAX、すなわちAIトランスフォーメーションの視点もますます重要になってまいります」
今回のDX銘柄に選定された企業に共通していたのは、AIを単なる効率化ツールとしてではなく、企業変革の前提として捉える視点です。具体的には、AIの利活用を支えるデータ基盤の整備や、企業間連携による新たな価値創出が挙げられました。
3年で1兆円のIT投資。AIを経営の柱に据えるSMBCグループ
そうした中でDXグランプリ企業に選定されたSMBCグループは、AIを経営の中心に据える姿勢を鮮明に打ち出しています。発表会に登壇した三井住友フィナンシャルグループ執行役社長 グループCEOの中島 達氏は、4月に発表した新たな中期経営計画について説明しました。
「中長期的に、本邦トップ、かつグローバルに存在感を発揮するプレーヤーを目指すことを明確化しました」
中島 達氏
そのうえで、「高みを目指して大胆な変革にチャレンジする」ことを基本方針として掲げました。中島氏は、その実現の鍵として、AIをはじめとするテクノロジーを位置づけます。
「特に欧米トップバンクと伍して戦える存在になるために、AIをはじめとするテクノロジーを経営の柱に据え、グループ全体のITトランスフォーメーションに集中的に取り組んでいく覚悟です」
象徴的なのが投資規模です。
「SMBCグループは今後3年間で1兆円のIT投資を計画しています。前回の3年間が約8,000億円、その前が約5,300億円ですから、大幅な増額となります。さらにAIやクラウド分野に強みを持つ専門人材を現在の約3倍に増やし、システム開発の内製化を進め、開発スピードを一段と加速させる方針です」
こうしたIT投資の拡大を梃子に、AI・クラウド人材の拡充、内製化による開発体制の強化等を通じて、SMBCグループはさらなる成長を目指しています。
Olive、Trunk、SMBC Connect──お客さまとの接点を再設計するデジタル戦略
SMBCグループのデジタル戦略の特徴は、業務効率化だけではなく、お客さまとの接点そのものを再設計しようとしている点にあります。
個人向けでは総合金融サービス「Olive」を、リテールビジネス全体をデジタル化するプラットフォームとして位置づけています。今後はさまざまなサービスをOlive上に集約し、お客さまの体験そのものを進化させていく考えです。
その一例が「Oliveコンサルティング」。資産運用サービスに24時間365日対応のAIチャットを組み合わせることで、これまで人手を前提としていた資産運用ビジネスを、新たなデジタルモデルへと転換しようとしています。
法人向けでは、2025年にスタートした「Trunk」を中小企業向けデジタルプラットフォームとして展開していきます。銀行口座、決済、資金調達、DX支援などをワンストップで提供するだけでなく、今後はファクタリング機能や経理DX機能も拡充する計画です。
中小企業経営に必要なサービスをオンライン上で完結できる環境を整えることで、企業の業務変革を支援します。
さらに2026年4月には、グローバルなトランザクションビジネスの新ブランド「SMBC Connect」を立ち上げました。SMBC Connectでは、財務状況を可視化し意思決定を支援する「CFOエージェント」や、業務プロセス上の課題をAIが明確化し業務のデジタル化を支援する「AIプロセスビルダー」などを提供します。金融サービスの提供にとどまらず、お客さま企業の業務改革そのものを支援する構想です。
これらの取り組みに共通しているのは、金融サービスを単にデジタル化するのではなく、お客さまの行動や業務そのものを変革しようとする発想です。
「私に500億円の予算をつけた」――SMBCグループ流AI変革の進め方
今回の発表会で、三井住友フィナンシャルグループ執行役専務 グループCDIOの磯和 啓雄氏は、パネルディスカッションの中で、グループのAI活用を振り返りました。
「取り組みは三つのフェーズに分かれます」
磯和 啓雄氏
まず一つ目のフェーズとして、2023年に国内の全従業員が生成AIを利用できる環境を整備しました。しかし1年後に利用状況を分析すると、多くの社員は翻訳やメール返信といった個人利用にとどまっていたといいます。
「これではだめだと思いました」
そう感じた磯和氏は、二つ目のフェーズとして、2024年、AI活用を加速させるための専用予算を設けます。
「私に500億円の予算をつけました」
磯和氏はそう振り返ります。5年間で500億円という予算をグループCDIOに集中させ、AI活用の提案を迅速に実行できる体制を整えました。
特徴的なのは意思決定のスピードです。中島社長や担当役員が参加する小規模な会議で、人件費や開発費を含めた投資判断をその場で行う仕組みを構築しました。すると現場の反応が変わりました。各部門が競うようにAI活用案を持ち込み、新たな取り組みが次々と立ち上がったのです。
その後、三つ目のフェーズとして、散在したプロジェクトを統合するため、約200人規模のクロス・ファンクショナル・チームを組成。さらに一部メンバーを中心に「AIトランスフォーメーション推進部」を新設し、全社横断での変革を進めています。
AI活用は技術だけの問題ではなく、組織設計や予算配分の問題でもある――。磯和氏の発言は、そのことを象徴していました。
磯和氏は発表会でもう一つ興味深いエピソードを紹介しました。それはAI活用の推進がクラウド化を後押ししたという話です。金融機関は安全性や安定性を重視するため、オンプレミス中心のシステム構成が多く、SMBCグループも例外ではありませんでした。
しかしAIを業務に組み込もうとすると、部門ごとに分散したデータが大きな壁になります。
「AIが広がるほど、このデータがつながっていないことが不便だということが分かってきました」
こうした課題を背景に、経営会議における議論も、部門ごとに活用しているクラウドサービスやデータ・AIプラットフォームの連携・統合のあり方など、より具体的かつ技術的な論点にまで踏み込むようになったといいます。
AI活用の推進が、IT基盤改革をさらに加速させる。このエピソードもまた、AIが企業変革の触媒になっていることを示していました。
「本業中の本業」に踏み込んだTrunkへの評価
SMBCグループの取り組みは、評価委員の目にどう映ったのでしょうか。
発表会後半の評価委員によるパネルディスカッションで、デジタル人材育成学会会長の角田仁氏が特に高く評価したのが、中小企業向けサービス「Trunk」でした。
DXは、基幹システムを担う本業から少し離れた、リスクの低い周辺領域で新しいことに挑む例も少なくありません。その点でTrunkは違う、と角田氏は言います。
「本業中の本業」――中小企業向けとはいえ、法人口座の開設という銀行にとって非常に重要な領域に踏み込んだ仕組みであり、「非常に素晴らしい仕組みを作られた」と評価しました。中小企業支援にも携わる立場から、「中小企業の皆さんにも相当喜ばれるのではないか」と、率直な期待を口にしました。
もう一点、角田氏が強調したのがデータマネジメントです。多くの企業が「重要だ」と口をそろえる一方で、「『あなたの会社にデータマネジメント人材は何人いますか』と聞くと、答えられる方はほとんどいない」。そんな日本企業の現状を引き合いに、SMBCグループが10年近く前からデータマネジメント部を置き、どの部署が何を担うのかを全社的に可視化してきた点を、先進的な事例として挙げました。
「競争力の源泉はお客さまや社会からの信頼」
ここまで見てきたように、SMBCグループは、AIをはじめとするテクノロジーを経営の柱に据え、業務や組織、お客さまとの接点そのものを変革しようとしています。
一方で、中島氏が講演の最後に強調したのは、金融機関として大切にすべきものは、これからも「信頼」であり続けるということでした。
「どれだけテクノロジーが進化しても、私たちの競争力の源泉はお客さまや社会からの信頼です」
テクノロジーの進化を取り込みながら、より質の高いサービスを提供し、その積み重ねを通じて、お客さまや社会からの信頼に応えていく。そこに、SMBCグループが進めるDXの本質があります。
PROFILE※所属および肩書きは取材当時のものです。
-
三井住友フィナンシャルグループ執行役社長 グループCEO
中島 達氏
1986年に東京大学工学部を卒業後、住友銀行に入行。新横浜法人営業部長、リテール統括部長、経営企画部長などを歴任し、2019年に三井住友フィナンシャルグループ取締役執行役専務グループCFO兼グループCSO、2023年に同執行役副社長ホールセール事業部門共同事業部門長を経て、同12月に執行役社長グループCEOに就任。
-
三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO
磯和 啓雄氏
1990年に入行後、法人業務・法務・経営企画・人事などに従事した後、リテールマーケティング部・IT戦略室(当時)を部長として立ち上げ。その後、トランザクション・ビジネス本部長として法人決済の商品・営業企画を指揮。2022年デジタルソリューション本部長、2023年より執行役専務 グループCDIOとしてSMBCグループのデジタル推進をけん引。
あわせて読みたい
-
社長らしさを宿すAI「AI-CEO」。開発の舞台裏と、その先に見据えるAI活用
SMBCグループの DX情報発信メディア DX-link
-
SMBCグループAI「SMBC-GAI」、130万件の社内文書ファイルを横断検索へ
SMBCグループの DX情報発信メディア DX-link
-
中小企業向けデジタル総合金融サービス「Trunk」誕生の舞台裏
SMBCグループの DX情報発信メディア DX-link
-
時価総額1兆円への挑戦。SMBCリーガルX、契約プロセスを変革しグローバルへ。
SMBCグループの DX情報発信メディア DX-link
-
2年連続で「DX銘柄」に選定。SMBCグループが描く、“金融のその先”の未来
SMBCグループの DX情報発信メディア DX-link
その他の記事を読む
-
その他の記事もチェックDX-link(ディークロスリンク)Webサイト -
最新情報はこちらDX-link(ディークロスリンク)X公式アカウント
アンケートご協力のお願い
この記事を読んだ感想で、
最も当てはまるものを1つお選びください。
アンケートにご協力いただき
ありがとうございました。
引き続き、DX-linkをお楽しみください。